オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

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晴耕雨読

 

 

/*/ カルネ・ダーシュ村・雨の日の昼下がり /*/

 

 

しとしとと降り続ける雨が、屋根や窓をやさしく叩いていた。灰色の雲が空を覆い、畑も道も濡れそぼっている。けれど、ネムの家の中は火鉢の赤い炭火が柔らかく燃え、ほんのりとした温もりに包まれていた。

 

「サぺトン、できたよ」

ネムはにこにこと笑いながら、串に刺したみたらし団子を机に並べた。照りのある餡がきらりと光り、甘じょっぱい香りが部屋を満たす。

 

「おおお……こりゃあ見事じゃ。雨の日にゃ、団子と茶ほど合うもんはないのぅ」

そう言って湯呑を手にしたのは、人の背丈ほどある直立猫――時王サぺトンである。毛並みに白が混じり、どっしりと腰を落ち着けた姿はまるで田舎の古老そのものだった。

 

「サぺトン、雨の日って退屈だよね」

「ふむ、退屈っちゅうもんもあるじゃろう。けんどの、雨の日は雨の日でええ。わしの若い頃ぁ、雨の日にゃみんなで縁側に並んで、団子やら焼き芋やらつまんでなぁ。川のせせらぎ聴きながら、よう昼寝したもんじゃ」

 

「えー、雨の日に昼寝?」

ネムはぱちくりと目を瞬かせる。

「そうよ。猫衆っちゅうもんはの、雨音が子守唄みたいなもんでな。耳ぴくぴくさせながら、丸まって寝るんじゃ。……おお、そういえば一度、昼寝の最中に川魚が縁側の桶から飛び出してなぁ。わしの顔にびたん、と当たったこともあったぞい」

「ふふっ、それっておもしろい!」

 

サぺトンは顎髭代わりの毛をひくひくさせ、にやりと笑った。

「魚といえばのぅ、子猫の頃はよう川で追いかけたもんじゃ。雨上がりの水かさ増えた川でな、石の影に隠れとるのを、ひょいっと掴む。……まあ、つかみ損ねてびっしょりになったことの方が多かったがの」

 

「サぺトンでも失敗するんだ!」

「ほほほ、若い頃は誰しもそうよ。おぬしもそのうち畑で失敗して泣く日が来るかもしれん。けんど、それもまた良き思い出になるもんじゃ」

 

窓の外、雨粒が軒先からぽたぽたと連なり落ちていく。ネムはその光景を見ながら少し心配そうに言った。

「畑、大丈夫かな……お姉ちゃん、きっと気にしてる」

「心配すな。大地は強い。雨を飲み込んでこそ、作物も根を張る。……わしら猫衆の村でも、雨上がりの稲は見違えるほど元気になっとったわい。洪水でも来ん限り、心配無用じゃ」

 

「そっか……じゃあ、大丈夫だね」

安心したようにネムは団子をひとつかじり、甘じょっぱい味に顔をほころばせた。

「うん、おいしい!」

「そりゃええ。おぬし、ほんに腕を上げおったな。わしにもう一本恵んでくれんか」

「しょうがないなぁ。はい」

 

二人は団子を食べ、湯気の立つ茶をすする。雨音は静かに続き、心を穏やかにする。

 

「……なぁ、サぺトン」

「なんじゃ」

「雨の日って、ちょっと寂しいよね」

「ふむ、そう感じることもあるじゃろう。けんど寂しさいうもんは、こうして誰かと分け合やあ、ぬくもりに変わるんじゃ。おぬしと団子を食うておる今が、まさにそうじゃ」

 

ネムは頬を染めて笑った。

火鉢の赤い炭火がぱちりと弾け、甘い餡の香りと雨音が心を包む。

サぺトンは目を細めて遠くを見ながら、ゆっくりと言葉を落とした。

 

「晴れの日は働き、雨の日は語り合う。人も猫も、そうやって季節を渡っていくんじゃ。……団子と茶と、隣に座る者がおれば、どんな雨の日も悪うはない」

 

ネムはにっこりと笑い、残りの団子を差し出した。

しとしと……しとしと……。

雨は止む気配を見せず、それでも家の中には、温かな時間が流れていた。

 

 

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