オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
/*/ ナザリック地下大墳墓 第9階層・カジノ /*/
漆黒と深紅が織りなす豪奢なカジノホール。ポーカーテーブルの周囲では、ディーラー役の男性従業員たちが沈黙を守り、配られるカードと流れるチップの音だけが響いていた。紫煙がゆらめき、空気はどこか甘く重たい。
その中心にいたのは、ジョンとルプスレギナだった。
ジョンは葉巻を片手に、ゆったりと椅子に身を預ける。カードを睨むでもなく、相手の表情を観察しているのか、狼のように鋭い視線が光る。彼の動きは一分の隙もなく、まるで「この場は俺の庭だ」と言わんばかりの余裕を滲ませていた。
そして、その隣に立つのは、真紅の髪を高く結い上げ、褐色のうなじを惜しげもなく晒したバニーガール姿のルプスレギナ。光沢ある衣装がしなやかな曲線を強調し、胸元から覗くライターを取り出す仕草に、誰もが視線を奪われる。
紫煙と艶の中で、二人は完全に場を支配していた。
「……なにこの空気」
そうつぶやきながら、施設見学中の“ぐりもあ”がホールに足を踏み入れる。館内をあちこち見て回っていた彼女は、思わず立ち止まってしまった。
目の前の光景は、もはや夫婦漫才ですらなく「夫婦の威光」そのものだった。
ジョンが大人の余裕を見せれば、ルプスレギナが色気を添える。視線は自然と二人に集中し、周囲のディーラーですら緊張を隠せない。
「……ジョンさん、あんたさぁ」
呆れたようにぐりもあは言葉を投げる。
「嫁にコスプレさせて、良い空気吸ってんじゃないよ」
ルプスレギナは頬を赤らめつつも、わざとらしく胸を張る。
ジョンはというと、待ってましたとばかりにニカッと笑った。
「だろー? うちの嫁、最高でしょ!」
葉巻をくゆらせながら、ジョンは誇らしげに言う。
「もともと、メコン川さん第一だったルプーを、俺が口説き落として振り向かせたんだぜ。努力の結晶ってやつだ」
その言葉に、ぐりもあは思わず頭を抱える。
「いや、そういう生々しい自慢をカジノのど真ん中でしなくていいから……!」
ジョンは構わず、ポーカーチップを指で弾き、テーブルの上にカランと投げた。
「俺が言いたいのはさ――この場も、こいつも、全部俺のものだってことよ」
ルプスレギナはいたずらっぽく笑みを浮かべ、ジョンの肩にそっと寄り添う。
「そうっすよー。ジョン様が選んでくれたから、今ここにいるんすから」
その甘い声に、さらに場の空気が熱を帯びる。
ぐりもあは肩をすくめ、ため息をついた。
「……あーあ。こりゃ誰も勝てんわ。カジノでも、色気勝負でも、二人して場を持ってっちゃうんだもん」
紫煙と笑い声の中、ジョンとルプスレギナは視線を交わす。
勝敗よりも、その場を支配して楽しむことこそが二人の流儀。
ぐりもあの冷やかしすら、むしろ最高の酒の肴になっていた。
ナザリックの豪奢なカジノは、その夜、夫婦の自慢話と色香に包まれて輝いていた。