オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
/*/ 魔導国・冒険者ギルド 蒼い薔薇の宿舎 /*/
回収儀式の翌日、ラキュースは静かに目を覚ました。
胸の奥の紋章は、まだ微かに青く輝いている。
しかし、昨日までと何かが違った。
剣を握る手に力を込めると、空気がかすかに震える。
まるで、世界の法則の奥に直接触れたような感覚――
塔で目撃した“始原の魔法”の残響が、彼女の魂に微かに共鳴していた。
「……この感覚は……」
ラキュースは小さく息を吐く。
心の奥底で、かつての竜王の欠片がわずかに残っていることを自覚した。
それは力となるが、同時に“代償”の影でもあった。
イビルアイが観察するように口を開く。
「なるほど、魂の一部を失ったことで“乙女の気品”という条件が外れたのか。
だから、ヴァージン・スノーはもう装備できない」
ティアが肩越しにのぞき込み、困惑気味に言う。
「え、じゃあラキュースの鎧が……?」
ラキュースは静かに笑った。
「ええ。でも大丈夫。魔導国から特別製の装備をいただけることになったの」
翌日、魔導国の工房から届いたのは、白銀の光沢を帯びた新たな戦闘舞踏服。
デザインはヴァージン・スノーに似ているが、胸当てや肩当てに施された装飾はわずかに凛々しく、乙女らしさより戦士としての威厳を強調している。
魔導国の工匠が「デカダン・スタイル」と名付けたそれは、単なる鎧ではなく、舞踏服としての優雅さと戦闘能力を両立させた特別品だった。
ラキュースが装備すると、鎧はぴたりと体に馴染み、動くたびに光が乱反射する。
力の残滓を含む体に沿うその曲線は、かつての乙女らしさを欠いたことを感じさせない、むしろ“覚醒者”としての風格を強く放っていた。
ジョンが手を叩いて笑う。
「ほほう、こりゃまた随分と凛々しいな。昔の鎧も良かったが、こっちのほうが冒険者向きだ」
ぐりもあが資料を片手に微笑む。
「性能も格段に上ですよ。戦闘舞踏服としての耐久性や柔軟性、魔力伝導率も強化されています」
モモンガはラキュースの背後で小さく頷き、冷静に言った。
「つまり、力は増したけど、もう乙女の象徴ではない。だが、戦士としての格はさらに高まった……と」
ラキュースは鏡の前で微笑む。
「そうね。魂の一部は失ったけれど、私は私。力を得て、戦える――それだけで十分」
青く光る紋章が微かに揺れ、始原の魔法への呼びかけをそっと囁く。
――塔で触れた世界の根源。
――竜王の欠片が残した力。
ラキュースは剣を構え、力強く立ち上がった。
新たな戦闘舞踏服を纏い、蒼い薔薇の仲間たちとともに、再び未知の世界へ足を踏み出す準備が整った。
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