オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
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「魔法でTVとかラジオ作れないかな。競馬場とか劇場とか作ったし、放送できたら楽しそうだよね」
ジョンはにやりと目を細める。
「いいだろ。魔法で放送。競馬中継をリアルタイムで流して、劇場の舞台を家でも見られるようにしたら最高だろ?」
ぐりもあが肩をすくめて、薄笑い混じりに返す。
「ほう、3S政策ですか。腹黒いですね。国民を娯楽で飼い慣らす──って意味で言ったわけじゃないですよね?」
モモンガは真顔で首を傾げる。
「流石はジョンさん(わかってない)」
「?」
「だって、ジョンさんは娯楽を増やすと人々が喜ぶって思ってるだけで、政策の副作用とかまったく……(以下略)」
ぐりもあは図面めいたスケッチを取り出し、無造作にテーブルに広げる。
「技術的には難しくないですよ。既にある『魔法で録画して再生する機器』を無線化するだけです。ただし、魔力を『波』として伝搬させるための仕組みが必要です。概念は電波と同じで、要は――」
(難しくないのか)
(難しくないんだ)
要点を箇条書きで説明するぐりもあ(実際には早口で延々説明するが、ここは要約):
送信側(魔導発信器)
魔力を空間に放射する共振結晶と、変調をかける符文回路。映像・音声は魔法記憶石(録画媒体)から読み出して符文で変調する。モデル名は仮に「魔導放送器」。
伝搬(魔力波)
魔力を波として空間に伝えるには、基準周波数(魔力周波数)と位相制御が必要。伸びは結晶の増幅率と地形による。中継塔(魔塔)を立てれば広域送信が可能。
受信側(魔導受信機)
共振器で特定の周波数に同調させ、復調符文で映像と音声を再生。簡易版はチューナー付きの魔晶箱。家庭用に小型化すれば農家でも扱える。
帯域と干渉
複数番組の同時放送は帯域を分ける。近接した周波数の局が干渉すると雪崩現象(映像がノイズだらけ)になる。魔獣や特異点が雑音源になるリスクもある。
録画と遅延(タイムシフト)
魔法記録石に符文で時間軸を付与すれば、そのまま時差放送も可能。複製は符文コピーで容易にできるため、著作権や統制の問題が一気に出る。
ジョンは目を輝かせる。
「なるほど、要は魔力の発信器と受信器、あと中継塔を作ればいいのか。お手軽だな!」
ぐりもあは苦笑して付け加える。
「『お手軽』ではありません。実運用では──
・増幅結晶の供給(高品質の結晶は希少)
・送信範囲と中継の配置(山間部や森は問題)
・暗号化・妨害対策(敵対勢力に乗っ取られたら放送が兵器化する)
・社会的影響(情報操作、依存、文化の均一化)
といった問題が山積みです。だからこそ『政策』を考えなければならないわけで」
ジョンはぽかんとした顔で、また的外れな一言。
「3Sって、つまりスポーツ、ショー、そして……スナックタイム?」
モモンガとぐりもあに一斉に白い目を向けられるジョン。場が和む。
ぐりもあはさらに机の上に小さな試作案を描く。
「まずは城内限定の閉域実験局を作りましょう。魔導放送器一台、受信機数台、中継は無し。映像は演劇部の上演を録画して流す。範囲が狭ければ盗聴や妨害の実験も安全にできます。成功すれば、順次中継塔を立てて辺境へ展開、鉄の騎士の拠点と連携すれば治安監視と娯楽供給を両立できます」
ジョンは指を鳴らす。
「よし、それで行こう。まずは競馬の中継テストだ。カメラ(録画符文)は既存の魔法石でできるだろ? 衛星(?)は要らない。魔塔を競馬場と城に一基ずつ置けば、試合の生中継ができるはずだ」
モモンガ(小声で)「ジョンさん、生中継って……実況の人は必要ですよね? 解説は私が……いや、無理ですかね」
ぐりもあは手元の図に赤ペンで注を加える。
「あと、情報の正確性と倫理も要検討です。フェイク映像の作成は魔導で簡単にできる。これを放置すると政治的混乱の火種になります。だから最初の局は“公的監督”下で試験放送を行い、運用ルールを作る。軍事利用と娯楽利用の境界も明確にすること」
ジョンは笑いながらも真剣だ。
「監督はいい。だが締め付けすぎると面白くない。自由に面白いものを流すからこそ人が集まるんだ。バランスだ、バランス」
場の空気は熱を帯びる。技術的な興奮、政策的な危惧、そして軽い茶話。三者三様の視点が交錯して、魔導放送計画は形になり始めた。
ぐりもあが最後に一言。
「では、第一フェーズ城内試験放送のスケジュールを組みます。録画と生中継、各1回ずつ。コンテンツは劇場の上演と競馬中継。モモンガ、あなたは実況練習をしてきてください。需要があれば、国民をどう“潤す”か、そしてどう“守る”かを同時に示す舞台になりますからね」
モモンガは大真面目に頷くが、内心は「実況ってどうやるんだ……」でいっぱい。ジョンは嬉々として立ち上がり、もう頭の中で開局イベントの演出を組み立てている。