オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
/*/ ナザリック地下大墳墓 第9階層・モモンガ執務室/*/
モモンガは報告書を机に戻し、ぐりもあに向き直った。
「ぐりもあさん、王国の魔法軽視傾向を技術導入で逆転させるには、どのような手段が考えられるだろうか。知識や観察眼を貸してほしい」
ぐりもあはやや困った表情で机を見つめる。
「僕ですか……うーん。王国は魔法使いより技術に頼る傾向にある。肥料や石鹸の導入で魔法依存を減らしていることを踏まえると、まずは人々の日常に直結する技術を浸透させるのが良さそうです」
ジョンが肘をつき、腕組みしながら口を挟む。
「そうだな。魔法を持っていない庶民でも恩恵を感じられるもの、か。物流、農業、衛生……そういった生活基盤の改善がキーになるわけだ」
ぐりもあは指を机に叩きながら考える。
「例えば、農業技術の普及。魔導国が導入したような循環型農法や堅牢な水路整備は、王国民に直接的な利益をもたらすはずです。『この技術を取り入れれば収穫が増える』という具体的成果を見せることが重要です」
モモンガは骨の指で机を叩き、頷く。
「なるほど……実績を伴った技術普及が、人々の価値観を変えるわけか。石鹸のように日常生活に密着したものなら、魔法ではなく技術そのものへの信頼が生まれる」
ジョンもにやりと笑う。
「それに、王国の権力者にもメリットを提示できればなお良しだな。収穫増、衛生改善、病気減少……権力者が導入に前向きになる理由があると普及は加速する」
ぐりもあは少し目を輝かせる。
「さらに、教育や訓練所で技術を教える仕組みを整えれば、次世代が魔法ではなく技術を武器として考えるようになる。技術者が尊敬され、社会的地位を得る流れを作れるかもしれません」
モモンガは淡く光る眼窩でぐりもあを見つめ、静かに頷いた。
「君の考えは筋が通っている。生活に直結する技術の導入、権力者へのメリット提示、教育機関での浸透……この三点を実行すれば、王国の魔法依存を低下させ、技術優位の価値観を根付かせられるだろう」
ジョンが笑みを浮かべ、肩をすくめる。
「いやぁ、ぐりもあさんの助言は実に的確だ。僕らはやることはシンプル。技術を広めて、庶民も権力者も納得させる。それだけさ」
ぐりもあは少し照れくさそうに微笑む。
「王国の未来が少しでも変わるなら、僕も協力します。現場での指導とか、技術の説明とか、何でもやりますよ」
モモンガは机を軽く叩き、満足げに言った。
「よろしい。君の知識と観察眼を最大限に活かそう。王国の人々に、魔法ではなく技術の価値を理解させるのだ」
ジョンも頷き、広間の窓から差し込む光を背に、微かに笑みを浮かべた。
「さあ、ぐりもあさん。王国に技術を普及させよう」
静かに、だが確かな決意が執務室に満ちていった。
/*/ ナザリック地下大墳墓 第9階層・モモンガ執務室/*/
モモンガは羊皮紙を机の上に畳み、ぐりもあさんに向き直った。
「王国には王立魔法学校を設立したが、技術の普及はまだこれからだ。例えば……時計のような精密機械を作れるようにする、というのはどうだろうか。魔法で補助はできるが、人々自身の手で製作できることが重要だ」
ぐりもあさんは眉をひそめ、机に肘をつき考え込む。
「僕が考えるに、時計は単なる時間計測の道具以上の意味を持てますね。精密な機械を作る技術は、論理的思考や計測能力を育て、工学の基礎にもなる。魔法に頼らず技術で成果を出す教育の象徴になります」
ジョンが隣で手を組み、微かに笑う。
「なるほどな。技術教育としても有効だし、庶民も触れる機会がある。時計の作り方を覚えれば、水車や風車などの工業機械にも応用できるわけだ」
ぐりもあさんは少し目を輝かせ、続ける。
「そうです。時間管理が正確になれば、農業や商業でも効率が上がります。王国民が自ら技術を使いこなす文化を作れる。魔法使いが万能の支配者ではなく、技術者や職人が尊敬される社会に変えるきっかけになります」
モモンガは骨の指で机を軽く叩く。
「時計を作れる技術者を輩出することで、魔法に依存しない技術文明の芽が生まれる……か。魔法学校も、単に呪文を教えるだけでなく、技術教育も組み込むと良いだろう」
ジョンは腕を組み、遠くを見つめるように言った。
「つまり、王立魔法学校を“魔法+技術教育の拠点”に変えれば、王国全体の価値観を変える布石になるってことだ。庶民も貴族も、魔法より技術を使える人材に目を向けるようになる」
ぐりもあさんは小さく頷き、興奮気味に続ける。
「さらに、時計作りを通じて材料の加工や精密な組み立てを学べば、後の鉄道や水道、港湾施設の建設にも応用できます。王国の都市インフラや産業発展の基盤としても使えるはずです」
モモンガは淡く眼窩を輝かせ、静かに言った。
「技術の教育を通して、魔法に偏らない新たな価値観を植え付ける……。時計一つでも、王国の未来を変える力になるということか」
ジョンは肩をすくめ、笑みを浮かべる。
「さあ、ぐりもあさん。王国民に魔法だけじゃない、新しい力の可能性を見せるときだ。時計作りから始めて、技術文明の礎を築こうじゃないか」
ぐりもあさんは頷き、決意を胸に執務室の静寂の中で微かに息をついた。
「はい。僕も全力で協力します。王国に技術を根付かせるために、できる限りの知識と指導を尽くします」
冷たい執務室に、しかし確かな未来への熱意が静かに満ちていった。