オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

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人類補完計画的なもの

 

 

/*/ スレイン法国・大神殿・議事堂 /*/

 

 

荘厳な神像に見下ろされながら、四人の神官長と二人の大神官・元帥が円卓を囲んでいた。

厚い石壁に囲まれた空間は冷ややかで、燭台の炎が淡く揺れている。

中央の魔導投影水晶には、帝国の軍事パレード映像──金と白銀の巨躯《アウレウス・レガリア》が、スケリトルドラゴンを粉砕する瞬間が映し出されていた。光と炎がぶつかり合うたび、映像の水晶の奥で淡い魔力光が脈打つ。

 

その場に重苦しい沈黙が落ちる。

 

「……確かに強力だな。帝国がここまで技術を高めたとは。」

土の神官長が低く呟く。手の指が無意識に円卓の縁をなぞる。

 

風の神官長が指先で卓を軽く叩き、冷たい声で続けた。

「魔導国の技術支援があったと聞く。つまり、あれは人の手だけで造られたものではない。“神々の叡智”の産物だ。」

空気が微かに震え、燭台の炎が揺れる。

 

陽の神官長が眉をひそめ、資料をめくりながら言う。

「難度にして……およそ百五十。鉄の騎士の上位互換にすぎない。しかし、我々の目標には届かぬ。」

 

闇の神官長が腕を組み、冷ややかに視線を巡らせる。

「確かに現行の鉄の騎士を凌駕している。しかし、我々が目指すのは“漆黒聖典”平均難度二百である。人智を越えた存在、神に選ばれる人類の雛型──それが本当の目標だ。」

 

議場の空気が微かにざわめく。

 

元帥が低く問いかける。

「お前は、それを軽んじるのか?」

その声は重く、周囲の神官たちの神経に緊張を走らせる。

 

「いいえ、正当に評価しています。ただし、あれは“機械の奇跡”に過ぎません。我々が追うべきは、人類自身の再鍛造です。」

大神官のひとりが静かに言葉を添える。その目には決意が宿り、意志の力で場の空気を引き締める。

 

「現状、漆黒聖典の平均難度は百四十前後。すでに鉄の騎士部隊を凌ぐ戦闘力を有している。だが目標は二百。単なる兵器や魔導機械ではなく、人の力と神の因子の結晶として生み出される“漆黒聖典”こそ、法国が目指すべき存在なのだ。」

 

大神官がゆっくり頷く。

「確かに、帝国の新兵器は驚異的だ。しかし、それは外部の力による奇跡。我々の“再鍛造”は、神の意志を内包した真の進化だ。」

 

議場の壁に刻まれた聖句が、淡く光を帯びる。まるで神が目の前で答えを与えるかのように、文字が微かに浮かび上がる。

青年の神官補佐がゆっくり立ち上がり、神像に頭を垂れる。

その瞳には、狂信にも似た光が宿り、理性を超えた信念の力が宿っている。

 

「──了解しました。

 神の形に、人を鋳直す時が来たのです。」

 

静寂を切り裂くように、大神殿の鐘が深く響き渡る。

その音は石壁を伝い、地下議事堂全体に低く振動を伝えた。

法国の新たなる異端の胎動が、今まさに始まろうとしていた。

 

議場の空気は次第に熱を帯び、四方に並ぶ神官長たちの表情は険しく、だが確固たる決意に満ちている。

元帥の視線は、かすかに光る水晶に映る《アウレウス・レガリア》を捉え、歯噛みする。

「帝国の力も結構。しかし、我々の目指す人類は、そんな外部の奇跡に頼ることなく、神の意志を宿す存在でなければならぬ。」

 

四人の神官長、そして大神官と元帥。彼らの心に共通してあるのは、外なる力を超え、自らの叡智と信仰の力で次世代の戦士を創造する決意だった。

灯りが揺れる議事堂で、静かに、しかし確かに、法国の新しい神聖計画の胎動が広がっていく。

 

 

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