オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

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森林火災

 

 

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エイヴァーシャー大森林 北東域

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――その火災は、三か月ものあいだ燃え続けた。

 

最初は落雷による小規模な山火事だったという。

だが乾いた風と積年の落葉が燃料となり、火は一晩で森を呑み込んだ。

燃える音は地鳴りのように大地を揺らし、炎は大樹を蝋燭のように舐め上げ、

やがて昼も夜も区別のつかぬ“赤い天”を生んだ。

 

遠くスレイン法国の高地修道院からも、その光は見えたという。

聖職者たちは“森の終焉”と呼び、神官たちは天罰の兆しと記録した。

しかし現地のエルフたちは――逃げ惑うだけだった。

 

水を運ぶ術も、消火の知識もなく。

精霊信仰の彼らは「森の炎もまた神の意志」と考え、

ただ祈りと共に森を離れていった。

炎は広がり、焦土は日に日に拡大した。

 

そして三か月目。

ついにスレイン法国は隣国である魔導国に救援を要請する。

「大森林の炎が大気を歪め、天候の均衡を崩している」と。

 

モモンガの執務室に届いたその報告書を読んだジョンは、

わずかに息を呑み、即座に命を下した。

 

「――ウルフ竜騎兵団、全隊出動。

 火を、森に返すな。地を守れ」

 

その号令に応じ、魔導国北部の竜棲峡谷から

数十頭のドラゴンと百騎のライダーが飛び立つ。

彼らの翼が切り裂く風は、まるで氷嵐。

炎の海へと突っ込む蒼い影は、天と地の境を裂く光の矢のようだった。

 

こうして、エイヴァーシャー大森林――

三か月に及ぶ大火を鎮める“氷の竜たち”の戦いが幕を開けた。

 

 

 

/*/エイヴァーシャー大森林 北東域 /*/

 

 

―― 昼なお暗き森が、赤く燃えていた。

 

乾いた爆ぜ音とともに炎が樹冠を舐め、風が火の舌を押し広げていく。

木の精霊たちの悲鳴が響き、逃げ惑う獣たちの咆哮が森を震わせた。

 

上空を覆うのは、ウルフ竜騎兵団の紋章を掲げた黒翼の影。

ドラゴン航空隊が旋回し、隊長の合図とともに一斉に咆哮する。

 

「全隊、ブレス射角三十! フロスト展開!」

 

轟音。

氷の嵐が放たれ、空気が一瞬で白く凍りつく。

火柱は次々と霜に覆われ、炎の勢いが鎮まっていった。

蒸気が爆ぜ、灰色の雲が一面を覆う。

 

地上では、重装歩兵部隊――鉄の鎧を纏ったゴブリンやオーガたちが、無言のまま斧を振るい、防火帯を築いていく。

倒された木々は整然と積まれ、魔導火薬で制御的に焼き払われた。

 

「エルフたちの避難は!」

ジョンが叫ぶと、報告の伝令人狼が駆け寄る。

「南区画、転移門への誘導完了! 負傷者は回収中!」

 

焦げた森の向こう、逃げ惑う影があった。

連甲熊(アンキロウルスス)――熊に似た巨獣。

全長三メートルを超える異形の肉塊。

四本の前脚が地を裂き、尾のハンマーが巨木を薙ぎ倒す。

その装甲は炎すら弾く。

 

「ドラゴン中隊、右舷旋回! 連甲熊を抑えろ!」

ジョンの指示で、蒼銀のドラゴンたちが急降下する。

咆哮とともに吐き出された冷気が獣の背を覆い、尾の動きを鈍らせた。

そこへ、重装歩兵部隊が槍陣形を組み突撃――

青白い閃光が走り、獣の喉を貫く。

 

しかし――さらに奥から、より巨大な影。

「ロード個体か!」

それは、他の連甲熊を従える“王”だった。

尻尾を一振りするたびに地面が揺れ、炎が舞い上がる。

 

ジョンは前に出て、腕を上げる。

「航空隊、翼を広げろ――俺がやる」

 

魔力が渦巻き、白狼の紋が背に浮かぶ。

ジョンの号令と同時に、上空のドラゴンたちが編隊を組む。

「第壱陣、凍結弾幕! 第弐陣、雷撃支援!」

 

天から白と蒼の閃光が降り注ぐ。

凍結と雷撃が連鎖し、ロードの鱗装が亀裂を走る。

そこへジョンが跳躍――気功を纏った拳が獣の額に叩き込まれた。

「吠えるな、森を焦がすな!」

 

轟音と共に、巨獣が崩れ落ちる。

静寂が戻った森に、霧のような冷気が漂った。

 

避難を終えたエルフの部族たちは、呆然とその光景を見つめていた。

彼らは森に生まれ、森の外を知らぬ民――

だが、目の前にいるのは異世界の竜と、それを従える白狼の王。

 

老エルフの族長が一歩進み、震える声で問う。

「……あなた方は、何者なのです? 森の神の化身か?」

 

ジョンは肩をすくめ、振り返る。

「違う。ただの通りすがりの消防隊長だ」

 

そして背後に立つ、銀髪の少年を前へ押し出した。

アリオス。

その眼は、左右で色の違うオッドアイ――“王の相”が輝いていた。

 

「この子が――お前たちが待っていた“証の王”だ。

 俺たちは、その護衛に過ぎねぇ」

 

沈黙。

そして、森のエルフたちは一斉に膝をついた。

炎が消え、氷の大地の上で、新たな“救い”の象徴が立っていた。

 

アリオスは息を詰まらせながらも、静かに呟いた。

「……森を、もう二度と燃やさせない。僕が、守る」

 

その誓いに、ジョンの背中でドラゴンの翼が光を放った。

夜明けの空へ、氷の鱗が舞い上がる。

エイヴァーシャーの森――再生の始まりの夜だった。

 

 

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