オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

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うまい!うまい!

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陸地に置かれた2m近い焚き火台から、紅蓮の炎が夜空に届けとばかりに燃え上がっていた。その巨大な赤い光源によって夜闇は遠ざけられている。

 

今日は〈蜥蜴人(リザードマン)〉5部族が一堂に会して初めての年越し、新年の祭りだ。

 

焚き火台の近くには《酒の大壺》が置かれ、何十人という〈蜥蜴人(リザードマン)〉が入れ替わり立ち替わり、その壺の中の酒を汲み上げる。尽きる事のない酒は、人間の味覚からすれば味はそれほどでもないが、〈蜥蜴人(リザードマン)〉からすれば美酒であった。

 

その味は今日、集落を訪れたカルネ=ダーシュ村の村長エンリ等は眉を顰める一品であったが、一緒に訪れたゴブリンやオーガ達は気に入ったようだった。

 

族長が勢ぞろいしての宴の席は、人間の感覚からすると貧相に大地に直接座して酒を酌み交わしている。椰子の実にも似た木の実を割った殻を杯として使い、透明ながらも強い発酵臭が漂う酒。酒のツマミは生の魚だ。もっとも今日の魚は綺麗に切り身にされており、その脇には調味料が添えられている。

 

「おー!こりゃうめぇな!」

「確かに……なんというか…美味い」

「うまい!うまい!」

 

幾つかある調味料の内、黒い調味料。初めは敬遠されていたが、つけて魚の切り身を食べるとこれまでに味わった事のない味の奥深さを感じられ、すっかり虜になった族長たちである。

 

「気に入ってくれたのは良いけど、味への語彙が貧困だな!」

 

そう言って追加の皿を持ってきたのはジョンであった。神獣様と立ち上がり礼をしようとする族長等を手で制し、ジョンも地面に胡坐をかく。

 

「その黒いのは虫醤ってな。カルネ=ダーシュ村の近くの平原で取れる虫から作ったんだ。魚からも同じようなものが作れるから、後で作り方を教えてやるよ」

 

見るとチーム時王の面々も同じように皿を持って、〈蜥蜴人(リザードマン)〉たちの間を歩き、彼らには珍しい食べ物を振舞っていた。

 

やがて、〈蜥蜴人(リザードマン)〉達が考えたアインズ・ウール・ゴウンを讃える祭りの踊りが始まる。それは〈蜥蜴人(リザードマン)〉数人で獅子舞のような形状のモモンガを模した被り物を被り、族長前の広場でうねるように踊る。モモンガの特徴的な顔と肩回りに力の象徴として竜のうねる胴体を足したような感じだろうか。

 

ジョンからすれば祭りなのだから、何も言う事は無い。

 

モデルにされたモモンガは後で録画された動画を見て、微妙な表情をしていた。

 

モモンガ獅子舞は族長たちの広場から始まり、5部族の集まりを順番に巡ると最後に水路に繋がる桟橋につけられた舟に乗り込む。

舟は全部で5艘あり、それぞれに漕ぎ手としてチーム時王の面々が乗り込んでいた。

 

5部族の族長と随伴者、エンリ村長とその随伴者護衛のゴブリン、オーガ達も分散して、舟に乗り込む。

 

蜥蜴人(リザードマン)〉たちの歓声を受けながら、舟は人狼の力強い漕ぎでモーターボートのような勢いで加速、発進する。

エンリやクルシュの悲鳴を夜闇に響かせながら、舟はカルネ=ダーシュ村を目指し、水路を一直線に走り出していった。

 

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舟が出立してしばらく。

水路の彼方に炎と歓声が遠ざかり、ようやく落ち着きを取り戻した。

 

舟の上には、祭りの余韻を語り合う声が満ちていた。

 

「虫醤……あれ、クセはあるけど癖になるな!」

「まさか魚をああやって食べるとは。人間の知恵も侮れん」

「いやぁ、我らも明日から魚を切り身にして食べるか」

 

〈蜥蜴人〉の族長たちは、興奮冷めやらぬ顔で感想を口々にしている。

一方、舟の片隅ではエンリが膝を抱えて震えていた。

 

「……速すぎて、景色が残像しか見えなかったんだけど」

「わふっ、これぐらい平常運転だぜ!」

と得意げに胸を張る人狼のジョン。

 

舟が村に着いた頃には、祭りの熱気は心地よい疲労感に変わり、誰もが満ち足りた笑顔を浮かべていた。

 

――その夜。

 

ナザリック地下大墳墓。

守護者統括アルベドが、祭りの様子を録画した映像水晶を手渡す。

 

「アインズ様。これが先ほどの蜥蜴人たちの祭りの映像でございます」

 

「……ふむ、どれどれ」

 

水晶に投影されるのは、巨大焚き火の周りで踊る蜥蜴人たち。そして現れたのは――

 

「なっ……」

 

モモンガそっくりの顔をした、獅子舞モドキ。竜のようにうねる胴体をつけ、妙に生き生きと腰を振っている。

 

「な、なんだこれは……!?」

「素晴らしいではありませんか! 彼らはアインズ様を信仰の象徴として讃え、形にしたのです!」

「いや……そうなのかもしれんが……もう少しこう……顔が……デフォルメが過ぎるというか……!」

 

横で控えていたシャルティアが吹き出した。

「ぷふっ……も、モモンガ様、なんだか……お祭りのゆるキャラみたいでございますわぁ……!」

 

「ゆ、ゆるキャラ!? やめろ! 私は支配者だぞ!? ゆるくはない!」

 

だが、その言葉を遮るように、水晶の映像の中で蜥蜴人たちが一斉に叫んだ。

 

「アインズ・ウール・ゴウン様ばんざーい!」

 

――熱気と狂喜に包まれた声は、モモンガの心に奇妙な重さを残した。

 

「……(はぁ……いや、まぁ……喜んでくれているのなら、いい……のか?)」

 

骨の指先で顔を覆いながら、主君は深くため息を吐くのであった。

 

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