オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
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ナザリック地下大墳墓 第9層・モモンガ執務室
朝会議録:冒険者ギルド訓練ダンジョン報告書確認
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いつも通りの朝。
重厚な机の上には、書類の山が塔のように積まれている。
その頂上には「冒険者訓練区画運用報告」と書かれた黒革のファイルが置かれていた。
モモンガはそれを指で摘み上げ、軽く目を通す。
向かいの椅子には、ぐりもあとジョンが並んで座っていた。
書類の紙面を眺める二人の顔色は――あきらかに悪い。
「……なんか、トラップ増えてませんか、これ」
ぐりもあが眉をひそめ、報告書の束をめくる。
「第7区画“水牢トラップ”改修済み。
“苛性ソーダ混合率”を調整し、より実戦的に――って、何が実戦的なんですかこれ!?
次、“抱擁の処刑姫”に“再構成型スライム”を追加。
“より抱きしめ力を強化”……!? モモンガさん!?」
「……ふむ」
モモンガは腕を組んで頷く。
「同じ罠を繰り返しても、教育効果が薄れますからね。
“慣れ”は最大の敵です。飽きさせない工夫は大切ですよ。」
ぐりもあが机に突っ伏す。
「教育というより……娯楽施設の更新みたいなノリなんですけど!」
ジョンは書類をめくりながら、苦笑混じりに言った。
「いや、ほんとによくもまぁ、こんなに思いつくもんだな……。
“走り続けないと丸ノコにされる通路”だの、“止まると運動エネルギー解放”だの……
普通の発想じゃ出てこねぇぞ。」
モモンガは少し照れたように咳払いをする。
「まあ……夜に考えごとしていると、つい新しい訓練案が浮かぶんですよ。
“死んでも覚える”――あれは理想的な教育体系ですから。」
「夜は寝ろ!」ジョンが叫ぶ。
ぐりもあが呆れ顔で言う。
「理想って言いましたね今!? ほぼ地獄ですよ!?
昨日なんて“走っても進まない通路”で19人引退しましたよ!」
ジョンがニヤリと笑う。
「残った1人が“死ぬのが楽しくなってきた”とか言ってたやつだろ?
あいつ、ナザリック向きだな。採用しようぜ。」
「え、冗談でしょ!?」
「いや、実際にスカウトした。訓練部第3班に転属済みだ。」
ぐりもあが絶句する。
「じょ、ジョンさんまで……!?」
モモンガは書類に判を押しながら、しみじみと言った。
「教育というのは、愛ですからね。」
ジョンが片眉を上げる。
「愛っていうより、執念だろ……」
「そう言われると否定できませんね。
ですが、今後も更新は必要です。次は“鏡面迷宮”を設計中でして――」
ぐりもあが悲鳴を上げた。
「もう増やさないでください! 誰も卒業できませんからぁぁぁ!!」
モモンガは静かにカップを持ち上げ、珈琲を一口飲む。
「では、“卒業できる罠”を新設しましょうか。」
ジョンが眉をひそめる。
「どんなのだ?」
「“扉を開けたら出られる”という、きわめて単純なものです。」
ぐりもあがぱっと顔を明るくする。
「おお! それなら安全でいいじゃないですか!」
「ただし、その扉に触れた瞬間、千本ノック式スライムが――」
「やっぱりそうなるんですねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
ジョンは吹き出し、モモンガは静かに微笑んだ。
こうして、ナザリックの朝会は今日も平常運転。
教育とは、優しさと恐怖の狭間に咲く花である。