オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

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隣り合わせの罠と青春14

 

 

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ナザリック地下大墳墓 第9層・モモンガ執務室

朝会議録:冒険者ギルド訓練ダンジョン報告書確認

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いつも通りの朝。

重厚な机の上には、書類の山が塔のように積まれている。

その頂上には「冒険者訓練区画運用報告」と書かれた黒革のファイルが置かれていた。

 

モモンガはそれを指で摘み上げ、軽く目を通す。

向かいの椅子には、ぐりもあとジョンが並んで座っていた。

書類の紙面を眺める二人の顔色は――あきらかに悪い。

 

「……なんか、トラップ増えてませんか、これ」

ぐりもあが眉をひそめ、報告書の束をめくる。

 

「第7区画“水牢トラップ”改修済み。

 “苛性ソーダ混合率”を調整し、より実戦的に――って、何が実戦的なんですかこれ!?

 次、“抱擁の処刑姫”に“再構成型スライム”を追加。

 “より抱きしめ力を強化”……!? モモンガさん!?」

 

「……ふむ」

モモンガは腕を組んで頷く。

「同じ罠を繰り返しても、教育効果が薄れますからね。

 “慣れ”は最大の敵です。飽きさせない工夫は大切ですよ。」

 

ぐりもあが机に突っ伏す。

「教育というより……娯楽施設の更新みたいなノリなんですけど!」

 

ジョンは書類をめくりながら、苦笑混じりに言った。

「いや、ほんとによくもまぁ、こんなに思いつくもんだな……。

 “走り続けないと丸ノコにされる通路”だの、“止まると運動エネルギー解放”だの……

 普通の発想じゃ出てこねぇぞ。」

 

モモンガは少し照れたように咳払いをする。

「まあ……夜に考えごとしていると、つい新しい訓練案が浮かぶんですよ。

 “死んでも覚える”――あれは理想的な教育体系ですから。」

 

「夜は寝ろ!」ジョンが叫ぶ。

 

ぐりもあが呆れ顔で言う。

「理想って言いましたね今!? ほぼ地獄ですよ!?

 昨日なんて“走っても進まない通路”で19人引退しましたよ!」

 

ジョンがニヤリと笑う。

「残った1人が“死ぬのが楽しくなってきた”とか言ってたやつだろ?

 あいつ、ナザリック向きだな。採用しようぜ。」

 

「え、冗談でしょ!?」

 

「いや、実際にスカウトした。訓練部第3班に転属済みだ。」

 

ぐりもあが絶句する。

「じょ、ジョンさんまで……!?」

 

モモンガは書類に判を押しながら、しみじみと言った。

「教育というのは、愛ですからね。」

 

ジョンが片眉を上げる。

「愛っていうより、執念だろ……」

 

「そう言われると否定できませんね。

 ですが、今後も更新は必要です。次は“鏡面迷宮”を設計中でして――」

 

ぐりもあが悲鳴を上げた。

「もう増やさないでください! 誰も卒業できませんからぁぁぁ!!」

 

モモンガは静かにカップを持ち上げ、珈琲を一口飲む。

「では、“卒業できる罠”を新設しましょうか。」

 

ジョンが眉をひそめる。

「どんなのだ?」

 

「“扉を開けたら出られる”という、きわめて単純なものです。」

 

ぐりもあがぱっと顔を明るくする。

「おお! それなら安全でいいじゃないですか!」

 

「ただし、その扉に触れた瞬間、千本ノック式スライムが――」

 

「やっぱりそうなるんですねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

ジョンは吹き出し、モモンガは静かに微笑んだ。

 

こうして、ナザリックの朝会は今日も平常運転。

教育とは、優しさと恐怖の狭間に咲く花である。

 

 

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