オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
/*/ ナザリック研究棟・通信研究室 /*/
部屋いっぱいに並んだ小型の魔導装置が、赤や青の光を微かに放っている。ジョンは眉間に皺を寄せ、装置から伸びる魔力線の動きをモニターで追っていた。
「くそ……やっぱり長距離になると文字化けするな」
モモンガが宙に浮かび、観測用の魔力結晶を手に取る。
「さっきの実験結果ですと、三十キロ以上になると受信側の文字がほとんど判読不能になっているな」
ジョンは装置を手で叩き、魔法陣の光を見つめる。
〈伝言〉魔法の応用は元々短距離向け。だがラジオとして運用するには、どうしても長距離が必要だった。
「仕方ない……やっぱり中継塔を作るしかないのか」
塔の設計図を広げ、ジョンは指で魔導石の配置をなぞる。魔力の干渉を最小化し、一定距離ごとに魔力を増幅する。
「ここに塔を建てれば……ん?」
彼は閃いたように設計図の隅を指差す。
「そうか。ラジオ用に中継塔を作るなら、〈伝言〉魔法をエンチャントした機器も同じ塔を通せば、長距離通信が安定するんじゃないか?」
モモンガが目を輝かせた。
「なるほど。ラジオと同じ魔力増幅経路を使えば、文字化けも防げる……!それに、塔ごとに魔力バッファを置けば、送信装置の負荷も減らせますね!」
ジョンは笑みを浮かべ、実験用の小型装置を持ち上げる。
「よし、まずはこの実験だ。塔経由で送信、受信。文字化けが起きるか確かめる」
部屋の空気が緊張に包まれる。装置の光が明滅し、魔力の流れが赤く脈打つ。
一瞬の静寂の後、受信装置から文字が滑らかに浮かび上がった。
「……成功だ。まったく文字化けしない」
モモンガが小さく拍手する。
「師匠、これでラジオも〈伝言〉魔法機器も、同じ塔で安定して通信できます!」
ジョンは装置を眺め、微かに笑った。
「これで通信網の基礎は完成……次は塔の配置と経路の最適化だな」
小さな実験室の中で、光と魔力が踊る。だが外の世界に向けて、安定した通信の未来が、静かに広がり始めていた。
/*/ ナザリック研究棟・通信研究室 /*/
ジョンは魔導機器の前で腕を組み、長距離通信のテスト結果を眺めていた。
「面白いことに、転移者やプレイヤーNPCの装置は、長距離でも文字化けしない……だが、元からこの世界にいる住人の〈伝言〉魔法は、距離が伸びると必ず文字化けする」
モモンガがメモを取りながら首を傾げる。
「つまり、世界との接続の“強さ”に依存しているんですね。プレイヤーや転移者は世界に干渉する魔力量が強いので、〈伝言〉が安定する……と」
ジョンは小型の魔導石を手に取り、試験装置に装着する。
「なら、中継塔で魔力をリレーしてやれば、世界の住人でも文字化けせずに通信できるはずだ」
モモンガが頷く。
「実際に塔経由で送信してみましょう」
塔の魔力増幅陣を経由し、〈伝言〉魔法を搭載した小型機器が信号を送る。
受信装置の文字列は、以前のような欠落や乱れが一切なく、滑らかに浮かび上がった。
「成功だ。世界の住人でも、中継塔を使えば文字化けなしで通信できる」
ジョンは装置を見つめ、次の課題を口にする。
「……だが、この装置はまだ大きすぎる。今後の課題は、〈伝言〉通信魔導機器の小型化だな」
モモンガが小さく微笑む。
「塔のリレー方式を使えば、どんな魔力の弱い住人でも安定した通信網に参加できますね」
光る魔導石の間を、安定した〈伝言〉が滑るように流れていく。
小さな研究室の中で、通信の未来が静かに形になっていった。
/*/ ナザリック通信研究室 /*/
ジョンは新型の〈伝言〉通信魔導機を肩に背負い、モモンガと実験結果を見比べていた。
「小型化は進んだが、今のサイズだとまだ背負うくらいで限界だな……しかも数十キロごとに中継塔が必要」
モモンガが装置を指差す。
「そうですね。塔がなければ文字化けが避けられません。逆に大型にすれば、100キロくらいは文字化けせずに送信できます」
ジョンは天井の魔力結晶を見上げる。
「大きくすれば持ち運びは大変になるけど、中継塔の数を減らせる……つまり、戦場に持ち込むなら小型で頻繁に塔を設置、固定の通信網なら大型で距離稼ぎ、か」
モモンガが小さく頷く。
「塔の設置間隔と装置のサイズで、運用方法が変わるわけですね。面白い制約です」
ジョンは肩の装置に手をかけ、軽く振ってみる。
「ふむ……これで前線通信も現実味を帯びてきたな。小型機で移動しつつ、中継塔を繋げば、どんな世界の住人でも文字化けせずに通信できる」
光る魔導石の間を、文字化けのない〈伝言〉が滑るように流れる。
小さな制約が、通信の戦略を形作る。塔の数、装置のサイズ、魔力量――すべてが戦場の通信網を設計するためのパラメータになった。
/*/ 帝国・首都城内 戦略会議室 /*/
ジョンは肩に小型の〈伝言〉通信魔導機を背負い、胸を張って会議室に入った。
対面には帝国皇帝ジルクニフが玉座の奥に座し、警戒の色を隠せずに彼を見下ろしている。
「閣下、これは……」と、側近の侍従が囁く。
ジョンはにっこり笑った。
「ジル、これは単なる小型通信装置ではない。魔導国の干渉を受けず、文字化けなしで長距離通信が可能な〈伝言〉ネットワークだ。塔を繋げれば、辺境からの報告や即時応援要請も瞬時に伝達できるぞ」
ジルクニフの眉がぴくりと動く。
「……確かに便利そうだが、その通信内容、すべて魔導国に筒抜けになるのではないのか?」
ジョンは肩の装置を軽く叩く。
「そこがこの技術の肝だ。中継塔を帝国側が管理すれば、外部干渉なしに安全に通信できる。さらに塔を都や地方に展開すれば、ラジオとして情報統制や民意の把握、一体感の醸成にも活用可能と多目的に使える」
ジルクニフはしばし沈黙し、深く考え込む。
「……なるほど、確かに戦略上、即時の応答と情報統制は帝国にとって大きな価値がある。魔導国の傍受リスクさえ管理できれば、導入を前向きに検討できるな」
ジョンは装置のスイッチを入れ、小型塔の模型を机上に置く。
「まずは試験的に辺境地区に中継塔を建設。運用効果を確認してから、全土展開を進めれば良いじゃないか」
ジルクニフは微かに笑みを浮かべ、決断を告げた。
「よかろう、技術提供と塔建設の計画を承認する。帝国の防衛と統制、双方に活かせるなら、採用だ」
ジョンは小さく頷き、肩の装置を再度軽く叩く。
「了解だ。それじゃ、辺境への塔建設と運用訓練、早速始めよう」
会議室に静かに置かれた魔導石と塔模型の光が、帝国全土を結ぶ新たな〈伝言〉通信網の未来を静かに告げていた。
/*/ 帝国辺境・通信実験現場 /*/
砂埃の舞う平原に、ジョンの指揮で中継塔が次々と建てられていく。高くそびえる塔の先端には魔導石が光を放ち、塔同士が空間を越えて魔力の道を繋いでいた。
村の広場には、ジョンたちが用意した小型〈伝言〉ラジオが配布されている。木箱に入った装置を村人たちが興味深そうに覗き込む中、ジョンはモモンガに目配せした。
「さて、試運転だ。辺境の村々と連携してみよう」
モモンガが魔力結晶を操作すると、塔を経由して〈伝言〉が滑るように村々に届く。文字化けは一切なく、村人の小型ラジオから、クリアな音声が流れた。
――その瞬間、兵士のひとりが急報を受け、村の防衛拠点に即時支援要請を送る。
ジョンはにやりと笑った。
「ほら見ろ、即時応援要請も瞬時に届く。これが帝国辺境での通信力だ」
村人たちは目を丸くし、手にしたラジオを握りしめる。戦場と村落が、魔法の力で一瞬にして繋がった瞬間だった。
しかし、ジルクニフは首都から来た視察団とともに現場を見下ろし、眉をひそめる。
「……魔導国の放送まで、村々に流れてしまうのか」
ジョンは塔の模型を指差し、説明する。
「帝国にはまだラジオ局がないので、初期運用は魔導国放送を経由している。もちろん帝国側で放送制御を確立すれば、内容は完全に管理可能だ」
ジルクニフは渋い顔をしつつも、辺境への即時通信の利便性に目を細める。
「……戦略的には有効だ。兵士との連携、支援要請、村々への情報伝達。どれも迅速かつ確実に行える」
ジョンは微笑んで塔の光を見上げる。
「ここまで来れば、辺境でも帝国軍の指揮系統は格段に強化される。次の段階では、帝国側放送局を建設し、完全な情報統制ネットワークをつくれば良い」
光る塔の間を、村々からの即時応援要請や報告が滑るように流れ、辺境の平原に小さな通信革命の波が広がっていた。
/*/ エ・ランテル 太守館 /*/
ジョンは書類の束を広げ、エ・ランテル太守ラナーを前にして椅子に腰かけた。
「ラナー、帝国の通信網だけでは不十分だ。これから放送局と新聞社を作るぞ。辺境でも都市でも、即時情報が届く仕組みを整えろ」
ラナーが少し顔をこわばらせる。
「そ、そんな……放送や新聞で、国民が自由に風刺や批判を行う……と、いうことでしょうか」
ジョンは肩をすくめ、軽く笑った。
「もちろんだ。侮辱罪はこの国には存在しない。アインズ・ウール・ゴウン魔導王や私、ジョン・カルバインを風刺するのも全然構わない。むしろやれ、国民の娯楽として歓迎する」
ラナーは驚きの色を隠せない。
「……ええと、カルバイン様、それで……国民の反乱や混乱は起きませんか?」
ジョンは机の上に置かれた小型〈伝言〉魔導機を軽く叩く。
「塔と通信網で国の情報は完全に把握できる。放送や新聞で風刺や娯楽が出ても、即座に状況を把握し、対応できる。逆にそれが国民の一体感を醸成する材料になる…と思う」
ラナーは深く息を吸い、覚悟を決めたように頷く。
「かしこまりました、閣下。すぐに放送局設立と新聞社の準備に取りかかります」
ジョンは微笑み、目の前の通信装置と塔模型を見比べる。
「さあ、帝国もこれで情報革命の時代に入る。即時通信、放送、新聞――すべてを駆使して、辺境から都まで、国全体の結束を強化するんだ」
光る魔導石の間を、文字化けのない〈伝言〉が滑るように流れる。
塔と放送局、新聞社――小さな実験室から始まった通信革命が、今や帝国全土に波及しようとしていた。
/*/ エ・ランテル放送局 初回放送 /*/
ジョンの指示で急ピッチに設立された放送局。スタジオ内では、魔導石のアンテナが青白く光り、音声と文字が空間に浮かぶ。
「こちら魔導国ラジオ第一放送局。初回番組は魔導国のニュースと天気予報・娯楽コーナーです!」
アナウンサーが明るく宣言すると、スタジオの外に設置された村々のラジオが一斉に応答する。
番組の目玉は、ジョンとアインズ・ウール・ゴウン魔導王を軽く風刺した寸劇コーナーだ。
村人たちは笑いながら耳を傾ける。兵士たちも塹壕で聞き、即時通信の実演も兼ねた放送に目を丸くする。
ラナーは緊張の面持ちでモニターを見つめる。
「……本当に、王やカルバイン様をネタにしても大丈夫なのでしょうか……?」
ジョンは肩の魔導機を軽く叩き、微笑む。
「侮辱罪はない。風刺は国民の娯楽であり、情報網の安定に貢献する。塔と通信網があれば、変な誤解や混乱も即座に把握できる」
光る塔と放送波の間を、文字化けのない〈伝言〉が滑るように流れる。
初めて耳にする笑い声と、即時の応援要請、情報のやり取り――辺境から都まで、帝国全土に通信と娯楽の新しい波が広がっていった。
まーNPCは風刺は怒るだろうね。
モモンガさんとジョンは怒らないから問題ないと言ってるだけ。