オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
/*/豚肉竜骨スープ
「何故ここに呼ばれたか、わかりますね?」
「え!?」
モモンガの執務室。真紅の絨毯に正座させられた
「
「うん、言ったよ」
「で?召喚に使う前に何をしやがりましたか?」
「
「……な、何故…それ…を…?」
「カルネダーシュ村であった事は逐一報告するように命じているのですよ……ルプスレギナに!」
「なッ!?」
ガ━━(;゚Д゚)━━ン!!と擬音のつくような表情を
振り返れば申し訳なさそうにペコペコしているルプスレギナがいる。
『お前には失望したぞ!』と言って見たかったが、言ったら大変な事になりそうだったので、それは止める
「ちょっとだけ!ちょっとだけ!だったから!ほら!召喚も問題なかったし!」
「黙らっしゃい!!そのちょっとだけで…出汁を取ったせいで失敗してたら、貴重な
「……だから、一応は補強したしー」
「最初から、そのつもりだったのか!この
執務室に〈
/*/その前日カルネ=ダーシュ村・広場 /*/
大鍋からもうもうと白い湯気が立ち昇る。
巨大な骨をぐつぐつと煮込み、香ばしい香りが広場いっぱいに広がっていた。
駄犬《ジョン》は腕を組み、満足げに頷いていた。
「うんうん。なかなか良い出汁が取れるじゃないか。……これ、ヘジンマールとかに食わせたら封神演義になるな」
そう独り言を漏らしつつ、前に仕込んでおいた日本式のチャーシューを加える。
甘辛い香りがさらに強まり、鍋の前に集まったオーガたちはよだれを垂らしながら箸を握りしめた。
「オーガとかトロール向けには太めに切った麺を短めに茹でてくれ。ゴブリンとか人間向けには細めに切った麺を長めにな」
ジョンは料理長然として指示を飛ばす。
「ジョン様ー! 私の分はー?」
ひょいと顔を出したのは、匂いに釣られてきたルプスレギナ。
ジョンは振り返りもせずに言い放つ。
「ルプーの分は太目短め。オーガ用と同じで頼む」
「えー!? オーガと一緒っすかぁ!」
ルプーは頬を膨らませ、不満げに尻尾をばたつかせる。
だが、いざ丼を受け取り、ずずっと啜った瞬間――
「え? なにこれ!? すごく美味しいっすよ!?」
さっきまでの拗ね顔はどこへやら、金色の瞳がキラキラと輝いた。
ジョンはどや顔で腕を組む。
「だろうそうだろう。うどんはオーガの怪力で練ったから人間には出せないコシがある。スープはモモンガさんから貰った霜の竜《フロスト・ドラゴン》の骨で出汁を取って、さらに煮豚を加えた。贅沢仕様だぞ」
「竜骨……!?」
ルプーが丼を抱えたまま絶句する。
「そうそう。竜の骨なんてそうそう手に入らん。だからよーく味わって食えよー」
そこへ畑仕事を終えた村人たちがぞろぞろと戻ってきた。
漂う匂いに目を輝かせ、オーガが振る舞う「うどん」を次々と受け取っていく。
「こ、こんな腰のある麺……! 俺たちの村で食えるなんて!」
「うまい……これ、何の骨の出汁なんだ?」
村人たちが感嘆の声を上げる一方、ジョンは内心で冷や汗をかいていた。
(やべっ……ルプーに「モモンガさんには内緒な!」って言い忘れた……)
ルプスレギナはすでに丼を抱え、夢中で麺を啜っている。
その様子を見たジョンは、頭を抱えて小さく呻いた。
「……これ、絶対バレたら怒られるやつだよな」
広場には笑い声と、竜骨スープの芳香があふれ――
戦場とは無縁の、温かで賑やかなひとときが流れていった。
/*/ カルネ=ダーシュ村・広場 /*/
竜骨スープうどんを頬張った村人たちの表情が次々と変わっていった。
「……なんだか、体が軽い」
「お、おい! 畑で腰を痛めてた爺さんが立ってるぞ!」
「俺の握力、倍になってる!? 鎌が折れそうだ!」
ざわめきが広がる中、ジョンは丼を置き、嫌な予感に耳を伏せた。
「……あ、やっぱり効きすぎたか」
竜の骨は魔力を帯び、長く煮込むことで栄養と力がスープに溶け出す。
それを知らずに、村人たちは夢中で平らげてしまったのだ。
「だ、駄犬さまー! 私、目がよく見えるようになりました!」
少女が目を輝かせて叫ぶ。
「おれも! 肩が……肩が回る! 前より重い荷物が持てるぞ!」
一斉に沸き立つ村人たち。
「おおー! 俺たち、なんか強くなってる!」
「これなら……オーガにだって負けねぇ!」
ルプスレギナは丼を抱えたまま、口元をにやりと歪める。
「へぇー……ジョン様。これ、冗談抜きで村人全員が戦闘要員になっちゃうんじゃないっすか?」
ジョンは頭を抱え、尻尾をぱたぱたと打ちつける。
「……やべぇ。完全に“強化食”になってる。
これモモンガさんにバレたら、ぜっっったい『なぜ勝手に人間を魔強化しているのか?』って説教コースだ……」
しかし当の村人たちはそんな事情を知らず、丼を片手に拳を突き上げていた。
「カルネ=ダーシュ村、最強の農民軍だー!」
「まずはイノシシ狩りだ! 百頭でも行ける!」
その熱気は、戦場さながらに広場を揺るがした。
ジョンは深いため息を吐く。
「……ったく、ただのうどんで兵士を量産するつもりはなかったんだがな」
背後でオーガの料理番が腕を組み、満足げに頷いている。
「団長、次はもっと竜骨を増やして大鍋で仕込みましょう!」
「やめろォ!!」
ジョンの叫びは、村の歓声にかき消されていった。