オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

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戦闘狂はMっケたっぷり

 

/*/ 第六階層 円形闘技場 /*/

 

 

「おおう。こりゃ厳しい」

 

ペッと折れた牙を吐き捨てながら、ジョンは呟いた。

戦闘開始から僅か数分。

〈自己変身〉で50Lv相当まで弱体化しているジョン・カルバインは転移後、最大級に追い詰められている。

 

「……まーだー続ける?」

 

黄色をメインカラーとするパワードスーツ(シンフォギア仕様)を着用した金髪ボブカットの少女が、エクスドライブ風にマフラーを翼のように広げ、空中からジョンを見下ろす。整った顔立ちは曇り気味で圧倒的優位に立ちながらも顔色が冴えない。

 

その少女……クレマンティーヌのちらちらと動く視線の先には、階層守護者のシャルティア。その他、ルプスレギナ、一般メイドたちが射殺す眼でクレマンティーヌを見つめていた。火傷しそうな熱視線だ。そのスポイトランスは仕舞って欲しい。

 

パワードスーツを着用し、神人たる番外席次とも戦える力を得たクレマンティーヌだが、それでも届かない高みにいる守護者に殺気を向けられては堪らない。

 

「力で何もかも捻じ伏せられる感覚は久しぶりなんだ……もう少し遊ぼうぜ」

 

脳筋〈戦闘狂(バトキチ)〉のMっケたっぷりな感想にクレマンティーヌはげっそりとする。

 

「ちゃんとフォローしてくれないと私が死にそう」

「皆わかってるから大丈夫……死んだら、事故死」

 

ジョンの事故死発言に場を包む殺気が物理的な重さも伴うように増す。

クレマンティーヌに、いつもの間延びした話し方をする余裕も無い。

 

 

 

「神獣様、やめてください。(私が)死んでしまいます」

 

 

 

そうは言っても〈神獣(ジョン)〉様の命令は絶対なのだ。

仕方なしに空中から地上に下り、クレマンティーヌはクラウチングスタートのような独自の構えを取る。

テレフォンパンチも良いところだが、ステータスに圧倒的なレベル差がついている以上、今のジョンには視認することすら難しい速度で走り出す。

手を抜くとばれるので、〈流水加速〉〈超回避〉〈能力向上〉〈能力超向上〉4つの武技を同時発動し、〈パワードスーツ(シンフォギア)〉の〈自己時間加速タイム・アクセラレーター〉まで使っての突撃。

顔から一直線に駆けていく。

 

一方、ジョンは激流を制するのは静水と言わんばかりに、〈明鏡止水〉〈天地上下の構え〉で迎え撃つ。

 

単独では【天地魔闘の構え】を再現できないジョンであるが、天と地。

すなわち攻撃と防御による2回行動で突撃のレベル差を埋めようとしていた。

そして、それは正史においてブレインがそうしたように己の限界を超えようと足掻く行為でもあった。

 

本来、反応すら許されない速度を無意識無想に繰り出される特殊技能〈無想陰殺〉と〈獣の勘〉で反応する。

〈無想陰殺〉は間合いに入った攻撃に自動でカウンターを繰り出す。その特性を〈回し受け〉に付与し、クレマンティーヌの攻撃を防御する。

 

しかし、レベル差故に完全に防ぎきれない。

 

〈アイアンスキン〉で強化された青い獣毛が血飛沫と舞う。観戦者の中でシャルティアだけが、それを視認し、歯を食いしばって声を堪える。ぎりっとスポイトランスを握る手に力が篭った。

 

同時に〈無想陰殺〉の特性が付与された〈正拳突き〉。それがカウンターで繰り出される。

〈無拍子〉〈浸透勁〉〈手加減〉を上乗せされた〈正拳突き〉は重い金属同士がぶつかり合うような轟音を幾千の戦士の雄たけびのように奏であげ、ぶつかりあう2つのエネルギーは土煙を上げて円形闘技場をもうもうと覆い隠す。

 

そして、土煙が静まった時、背中合わせに数十m離れたジョンとクレマンティーヌの姿があった。

 

ジョンは脇腹を向こうが見えるほど大きく抉られ、ボタボタと血を流しながら残身を取っている。

一方、パワードスーツの防御を抜かれたクレマンティーヌは本来30Lv少々のHPであり、カウンターによるダメージ増加もあって、50Lv相当の攻撃は〈手加減〉のおかげで即死を免れた状態だ。

 

「……クレマンティーヌ。お前、手ぇ抜いたろ?反応が間に合ったぞ」

「してません!あん畜生とやる時と同じ、本当に全力でした!」

 

クレマンティーヌ必死の叫び。同時に身体の深奥を打ちぬかれたクレマンティーヌの身体は限界を迎え、彼女は鳩尾のあたりを抑えながら、ガハっと吐血しながら倒れていく。

背中越しに本気の匂いを嗅ぎ取って、ジョンは

 

「……そうみたいだな。疑って悪かった……」

 

そう言って、そのまま力尽きたようにがくりと膝をつく。

急速に暗くなっていく視界と手足の先から感覚が霧散して、世界に溶けていくような感覚。

 

弱い身体で全力をふり絞った。弱い身体で全力をふり絞り、より強きに挑んだ。

力を出し切り、可能性を掴み取った充足感。

精神が満たされ、身体が世界に霧散していく快感よ。

 

 

「ああ……今日は良い日だ……」

 

 

己の周囲をシャルティアや一般メイドたちが取り囲んでなにやら言っているのが、薄暗くなっていく視界の端に見えた。

回転する自らのチャクラが空気に接続されていくような奇妙で充足感に溢れた感覚に、満足の吐息を漏らし、瞳を閉じた。

 

 

大回復(ヒール)

 

 

一瞬のうちに傷が塞がり、失った血が血管をめぐり始める。心臓は力強くポンプを始め、意識を通常状態へと引き戻す。

充足感も世界に溶けていく解放感も失われた。

 

「……イイところだったのに…」

「本当に死んじゃうからダメっす!」

 

叱ってくるルプスレギナへ、ジョンは心底に残念そうな表情で零す。

 

「そうです!お隠れにならないでください!」

「……皆は別に死んだわけじゃないぞ?」

 

シャルティアの悲痛な声にボソっと呟くが「ジョン様、そう言うこっちゃないですよ」とルプスレギナが顔をひくつかせながら続ける。

 

「これでも余命40秒までは我慢したんっすよ」

 

主人=使い魔(マスター=サーヴァント)〉間のラインが繋がってるルプスレギナならではの計り方だった。

 

「もう一声!」

 

シモベ達を悲しませた事を省みないようなジョンの声にルプスレギナは静かに切れたのか。

 

「モモンガ様に言いつけます」

「すいませんでした」

 

流れるような土下座だった。

効果はバツグンだ!

 

至高の御方を脅すような物言いだったが、シャルティアも一般メイドも誰もルプスレギナを責めなかったと言う。

 

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