オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

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隣り合わせの罠と青春27

 

 

/*/ エ・ランテル冒険者訓練ダンジョン 第十一試練区画 /*/

 

 

 曲がりくねった通路の先に、古びた木製のドアが見えた。

 半開きで、わずかに隙間から光が漏れている。

 「押して開けるタイプ」――取っ手の横に、丁寧にそう書かれた札が掛かっていた。

 

 四人の訓練冒険者たちは、そこで足を止める。

 戦士が眉をひそめ、仲間を振り返った。

 「……怪しいな。半開きで“押して開け”とか、罠臭い。」

 

 魔法使いがうなずく。

 「開閉反応式かもしれない。何かが落ちるタイプもある。」

 

 だが、若い盗賊が鼻で笑った。

 「まさか。訓練だぜ? こんな初歩的なトラップがあるわけ――」

 

 押した。

 

 ――ザラァッ。

 

 鈍い音とともに、何かが頭上から降ってきた。

 次の瞬間、きらきらと光る粉末が一斉に降り注ぐ。

 冒険者たちは反射的に目を閉じ、咳き込んだ。

 

 「うわっ!? なんだこれ、ガラスか!?」

 粉は細かい粉砕ガラス。

 衣服と鎧の隙間に入り込み、肌を刺激する。

 金属鎧を着た戦士は、動くたびにギシギシと軋み、

 「うああ、気持ち悪ぃ! やめろ! 痛ぇ、かゆぇぇぇっ!」と悲鳴を上げる。

 

 盗賊は軽装だったが、それでも首筋を押さえてうずくまった。

 「ちくちくして……集中できねぇ……!」

 

 魔法使いは冷静を装いながらも、目を細めた。

 「……死にはしないが、精神的には拷問級だな。永続型の“集中妨害呪詛”付きか……」

 

 その後、パーティはかろうじて訓練を終えたが、鎧の中や衣服の下に入り込んだ粉は落ちきらなかった。

 皮膚のかゆみとチクチクとした痛みが続き、夜になっても誰一人として熟睡できなかったという。

 

 

 /*/

 

 

 数時間後、清掃班が現れる。

 いつもの顔ぶれ――バニアラ班長、若者、老人、無口な大男。

 

 バニアラがドアを見上げ、呆れたようにため息をつく。

 「出たな、“ガラス粉の部屋”。訓練生に一番嫌われるやつだ。」

 

 老人が魔導掃除機のような装置を取り出し、粉末を吸い上げながら苦笑した。

 「人体には致命傷を与えないが、精神を削る罠。よく考えられていますな。

  不快感は永続。皮膚と鎧の隙間に入り込んだ粉が動くたび刺激を与え続ける。

  おそらく、“集中力を乱された状態で行動できるか”を試す訓練でしょう。」

 

 若者が掃除を手伝いながら顔をしかめた。

 「これ、落ちにくいんですよね。しかも光るから照明で舞うんですよ。

  ……あっ、目に入った。うわ、いてぇ!」

 

 無口な大男が淡々と上を指差す。

 天井の梁には、逆さに固定された金属製のバケツが見える。

 その中には細かいガラス粉末が再装填されていた。

 

 バニアラ班長が記録符に書き込む。

 「第十一試練:“ガラス粉の罠部屋” 死亡者ゼロ、精神的被害多数。

  罠装置点検済み。次回訓練まで補充完了。」

 

 老人がぼそりとつぶやく。

 「……これを考えた設計者、性格悪いですな。」

 

 バニアラは口の端を上げて答えた。

 「性格悪くなきゃ、罠なんか作れないさ。」

 

 粉が舞う光の中、彼らは静かに後片付けを続けた。

 再び訓練生たちがやって来るとき、バケツはまた、

 “何事もなかったように半開きのドアの上” に戻っているだろう。

 

 

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