オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
/*/ ナザリック地下大墳墓 魔導生物研究棟 /*/
青白い魔導灯が並ぶ通路の奥で、ぐりもあが両手を後ろに組み、にこにこと歩いていた。
その背中の後ろ――なぜか水滴を垂らした巨大な影がずるり、ずるりとついてくる。
「ねえ、モモンガさん」
「なんだね、ぐりもあさん」
モモンガは書類から顔を上げた。
その視線の先で、ぐりもあが満面の笑みを浮かべて言う。
「グラ―キとってきて、地底湖で飼ってもいいでしょう?」
……一拍の静寂。
「……グラ――キ?」
「はい、旧支配者の一種です。あの、眼がいっぱいで、背中に棘がにょきにょきしてて、
“地底湖で眠る神”とか呼ばれてる可愛い子です!」
モモンガの赤い瞳がゆっくりと点滅する。
「ぐりもあさん。旧支配者なんて飼えるわけないでしょう。
もとの場所に返してきなさい」
ぐりもあはしょんぼりと肩を落とす。
「えぇー……でも、もうジョンさんが“やってやったぜ”って顔で咥えてきてるし……」
「咥えてきてないよ!?」
隣の扉から顔を出したジョンが全力でツッコミを入れた。
「俺はただ、あの湖の周りで散歩してただけだ! なんで勝手にクトゥルフ持ち帰り犯にされてんの!?」
ぐりもあはあっけらかんとした笑顔で答える。
「だって、ジョンさんの“ドヤ顔”見たら、絶対なんかやったと思うじゃないですか!」
「やってねぇよ!!!」
モモンガは頭を押さえ、ため息をついた。
「……というか、どこからどうやって連れてきたんだ?」
ぐりもあは指を立てて説明する。
「地底湖の召喚口を少しだけ開いて、“ちょっと見るだけ”のつもりだったんですけど、
そしたら、こう――ぐにゃって穴が広がって、ずるって這い出てきちゃって……
今、廊下で半分寝てます」
「半分寝てる旧支配者」
ジョンが顔を引きつらせる。
「それ、ナザリックの気温とか魔力濃度で目覚めたらアウトだぞ!?」
モモンガは即座に魔導通信を開いた。
「アルベド、至急警戒網を展開。魔導生物研究棟通路に“旧支配者”がいる。可能な限り優しく外へ返すんだ」
通信の向こうでアルベドの悲鳴が聞こえる。
『きゅ、旧支配者!? な、なぜそんなものが!?』
「ぐりもあさんが拾ってきた」
『ぐりもあ様ぁぁぁ!?』
ぐりもあは目を逸らしながらぼそり。
「……だって、あの子、目がいっぱいで、瞳のひとつひとつがすっごくきれいだったんですもん……」
ジョンが肩をすくめてため息。
「そうやって見た目で拾うから、毎回研究棟がホラー動物園になるんだよ」
モモンガは沈黙し、ゆっくりと玉座に頭を預けた。
「……次から、連れて帰る前に相談してくれ。
ナザリックの防衛システムが“水棲旧支配者対応モード”に切り替わったせいで、
第七階層の溶岩が冷えているし……」
「えっ!? あっ……あはは、やっちゃいました?」
「笑ってる場合かあぁぁぁ!!」ジョンの怒号が響く。
ぐりもあはぺこりと頭を下げた。
「反省してます。でも、次はクトゥルフ本体を観察してみたくて――」
「ダメだっつってんだろ!!!」
モモンガとジョンの声が完全にハモった。
その瞬間、通路の向こうで――ぼごり、と水の泡が弾けた音がした。
ぐりもあ「……あ、目がひとつ開きましたね」
ジョン「おい封印魔法準備しろぉぉぉぉぉ!!!」
モモンガ「誰かアルベド呼んでこい!!!」
――こうして、ナザリック魔導生物研究棟はその夜、
「史上初の“旧支配者返却ミッション”」に追われることとなった。