オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

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隣り合わせの罠と青春30

 

 

/*/ エ・ランテル冒険者訓練ダンジョン 第6層・遺骨保管区 /*/

 

 

古びた石の部屋に、十数体のスケルトンが立っていた。

それぞれが錆びた武器を持ち、冒険者の侵入に備えている。

だが、その中に一体だけ、奇妙なものがいた。

 

――天井から吊り下げられたロープを、握っている。

 

「なんだあれ……? 操り人形か?」

戦士が首を傾げる。

「いや、あれスイッチかもしれねぇ。触らずに――」

盗賊が言い終わる前に、魔法使いが〈魔法の矢〉を放った。

光弾がスケルトンを砕く。

 

パキン。

 

握られていたロープが、緩んだ。

 

「――あ」

 

音もなく、天井全体が沈み込む。

一瞬のうちに、重厚な石板が落下。

部屋を埋め尽くす轟音と粉塵。

 

沈黙。

 

わずかに覗くのは、つぶれた冒険者の盾と、粉々になった骨。滲み出す赤黒い液体。

 

 

/*/

 

 

数時間後。

 

通路の外側で、重装備の清掃班が到着した。

ランタンの魔光がゆらめき、淡い光が塵に反射する。

 

「……はい、今回も全滅。外部操作盤、接続完了」

バニアラ班長が手袋越しに魔導板を操作する。

低く唸る音とともに、巨大な天井石がゆっくりと上昇していった。

 

床には血の染みと肉片、砕けた骨。

老人が鼻で笑う。

「ま、ロープ持ってるスケルトンを見りゃ、罠だと気づくもんだがね」

「新人は戦闘しか見ないんですよ。学ぶ前に潰れる」

若者が肩をすくめて答える。

 

無口な大男が遺体を慎重に持ち上げ、台車に積む。

骨の破片も箒で集め、麻袋に入れる。

「罠動作確認」

バニアラが短く指示を出す。

 

老人が魔法の杖を突き出し、青い光を放つ。

ロープが再び天井から垂れ、

別のスケルトン――やってきた“補充個体”が、無言でそれを握った。

 

「固定完了。握力維持の魔法、正常」

「天井リセット良好。再稼働確認……はい、完璧」

 

バニアラは記録板に淡々と書き込む。

《第6層訓練部屋 罠再構築完了/被害:冒険者4名》

 

老人が小さくため息をつく。

「死ぬほど高い授業料だな」

「でも、ちゃんと学んだ人は生きて出る」

バニアラが言うと、若者が苦笑した。

「生きて出るまで、何回か死ぬけどな」

 

三人が笑う中、無口な大男だけは黙々と最後の片づけをしていた。

血を拭き取り、床を磨き、破損した壁面を修復する。

その姿は、まるで儀式のように静かだった。

 

「よし。次は第7層。水没通路の吸水ポンプが止まってる」

「了解、班長」

 

台車の音が遠ざかる。

再び静まった部屋では、ロープを握ったスケルトンが、

何事もなかったかのように、冒険者を待ち続けていた。

 

 

/*/

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