オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
/*/ 魔導国・ナザリック地下大墳墓 第9階層・執務室 /*/
玉座の前の長卓に、巨大な設計図が広げられていた。
そこには、玉座を据え付けた巨大なバギー型ゴーレムの姿――まるで『北斗の拳』のサウザーが乗っていそうな、威厳と暴力の象徴のような車両が描かれていた。
ジョンは興奮気味に身を乗り出し、両手を広げて力説する。
「見てくださいよ、モモンガさん! この“覇王号ゴーレム”! 大地を轟かせて進む支配の象徴ですよ! パレードでこれに陛下が乗って現れたら、民衆の目は釘付け! 人気うなぎ上り間違いなしです!」
一方、玉座に腰かけるモモンガは、無言のまま設計図を眺めていた。
静寂。
その空気の重さに、ジョンは自分の声が少しだけ響きすぎた気がして肩をすくめる。
やがてモモンガが小さくため息をつき、骨の指でこめかみを押さえた。
「……却下です、ジョンさん」
「なぜ!?」
「まず、あのサイズで市街地を走るつもりですか? あれでは街道が壊滅します」
「腕によりをかけたローマ式石畳はこんな程度で剥がれない!」
「気合では石畳は直りません。しかもあの見た目……どう見ても侵攻兵器ですよ。民心より、隣国の軍が震えるタイプの“象徴”です」
ジョンは一瞬考え、指を立てた。
「じゃあ、俺が代わりに乗ってパレードを――」
「なお悪いです」
モモンガは低くうめくように言い、玉座にもたれかかった。
「ジョンさん、私は“威厳ある国家”を築きたいのであって、“暴走するカルト教団”を作りたいわけではありません」
ジョンはしゅんと肩を落としつつも、設計図を抱えた。
「でも……人気、うなぎ上りなんだけどなぁ……」
モモンガは沈黙のまま、その背を見送った。
――だが翌日、鍛冶区画の奥では、誰の指示でもないのに「覇王号ゴーレム」の試作フレームが静かに組み上げられ始めていた。
/*/ バハルス帝国・王都・皇宮前中庭 /*/
青空の下、巨大な機械の影がゆっくりと動いた。
金と宝石で飾られた車体。七色に光る装甲が陽光を受けて虹のような光芒を放つ。
その中心には――玉座。
ジョンが胸を張って腕を広げる。
「どうだい、ジル! これぞ改良版《覇王号ゴーレム・レインボーエディション》! 七色に輝き、帝都のどこからでも見える存在感! 陛下がこれに乗ってパレードすれば、“バハルス帝国の希望の光”として後世に語り継がれること間違いなしです!」
皇帝ジルクニフはゆっくりと車体を見上げ、無言のまま顎に手を当てた。
隣で、腕を組んでいたモモンガが低く呟く。
「……ジョン。なぜ、魔導国でやらない」
ジョンは不満げに肩をすくめた。
「だって、モモンガさんが黒とか白とか、地味なのばっかり好むんだよ。骨の玉座とかさぁ……。たまには“キラッ☆”としたやつでもいいじゃないか!」
モモンガは沈黙。
その隣で、ジルクニフがため息をついた。
「……皇帝の威厳とは、大道芸人のそれではない。却下だ」
ジョンは一瞬黙り、次の瞬間――
ぱぁっと笑顔を咲かせて親指を立てた。
「Noと言える皇帝、素敵!」
ジルクニフのこめかみがぴくりと動く。
モモンガは無言で顔を覆い、
「……ジョンさん、外交火種を撒くのはやめてください」とだけ呟いた。
その日、帝都の片隅では、未練がましく“虹色覇王号”のエンジンテストを続けるジョンの姿があった。
――やがて史書に、「帝都を七色に染めかけた狂技師」として、ほんの一行だけその名が残ることになる。
/*/ 魔導国・映像魔導局(通称:魔導TV) /*/
闇の中に稲妻が走る。
雷鳴を背に、七色に輝く巨大バギー――《覇王号―レム》。
全長十メートルを超える鋼の獣が、地鳴りを伴って大地を裂くように走る。
その玉座には、青と白の毛並みをなびかせた人狼ジョン。
風を切り裂き、金の瞳を燃やし、腕を組んで前を見据える。
――その姿、まさしく“北斗の拳OP”の覇者の構図。
魔導TVの編集部が総力を挙げて制作したその映像は、光と音の暴力そのものだった。
雷鳴の中にタイトルが炸裂する。
――『覇王号―レム』 ―走れ、鋼の魂よ!――
背後では、シンセとギターを混ぜたような魔導楽器の旋律が轟き、
スクリーンにはスローモーションで爆散するアンデッドたち。
ジョンが片手で拳を振るうたびに、閃光が走り、骸骨が吹き飛ぶ。
ナレーション(渋い声のデミウルゴス風):「彼の名は――覇王ジョン。
死地を駆け、屍を砕く、鋼の魂。彼の走る道が、新たな伝説を刻む!」
その背後で、カッツェ平原の地平線を裂いて走る覇王号。
爆風の中で舞い上がる砂塵のシルエットが、まるで巨大な狼の姿を描く。
映像のラスト、カメラがズームアップ。
玉座でジョンがマイクを握り、真顔で叫ぶ。
「次回、『覇王号―レム』爆走篇! 希望の光を見よ!」
そしてロゴが燃え上がる。
――「魔導TV 新番組予告」――
――翌朝。
モモンガの執務室。
机の上に積まれた視聴者感想文。
「子どもが泣き出した」
「爆音で家のガラスが割れた」
「最高にくだらなくて好き」
「もう一回放送して!」
モモンガは無言で紙束をめくり、ゆっくりと椅子を回す。
背後の壁に貼られたポスターには、
“次回予告:覇王号―レムVS吸血姫号、制作進行中”の文字。
「……ジョンさん」
「はい!」
「……あなた、どこまでやるつもりですか」
「もちろん、シリーズ化です! 魔導TVの看板番組にしますよ!」
モモンガは顔を覆ったまま、静かに呟いた。
「……もう止めても無駄なんですね」
「止まれないんですよ、覇王号は!」
その瞬間、編集室の窓の外を、
七色に光るバギーが“ドゴォン!”という音と共に通り過ぎていった。
/*/第1話「カッツェ平原の幽霊船」/*/
/*/ オープニング前カット /*/
荒れ果てたカッツェ平原。
夜明け前の稲光の中、砂上を滑るように走る“幽霊船”が映し出される。
船底の推進輪が土を掻き、霊気の残光が尾を引く。
モモンガ(ナレーション)
「カッツェ平原――古戦場にして、未だ死が彷徨う地。
だが今、その地に新たな愚者が挑む……」
ズガァァン! 砂を吹き飛ばして登場する覇王号―レム。
タイトルロゴ:
『覇王号―レム 第1話:カッツェ平原の幽霊船』
/*/ 本編開始 /*/
ジョン:「あー、最高のコンディションだなモモンガさん! 湿気がちょうど良い、砂が締まってる!」
モモンガ(通信越し):「砂のコンディションを語るレース作品は初めて見ましたよ……」
地図上には三本の“折れ塔”が赤く点灯。そこを結ぶ三角形の周回コース。
実況(デミウルゴス):「ルールは簡単――三周先に走り切った者が勝利だ!」
幽霊船、甲板から光の砲撃を放つ!
ジョン:「うおっ!? 地上戦仕様じゃねぇのかよ!?」
レムが急旋回、砂煙の中をドリフトで滑る!
ドリフト中に青白い毛が風をはためかせ、背後でアンデッドが吹き飛ぶスローモーション。
ナレーション:
「見よ! 90度コーナーを制する覇王の技! 地を喰らい、風を裂くドリフトの閃光を!」
BGMがボーカル入りに切り替わる:
「光を裂け! 砂を喰え! 死をも越えて突き進め!」
幽霊船が亡霊の艦隊を呼び出す。
モモンガ:「ジョンさん、何隻いるんですかあれ!」
ジョン:「知らねぇけど……派手でいいじゃねぇか!」
炎と光の中で、覇王号がドリフトしながら90度ターン!
エフェクトが爆裂、視界が一瞬真っ白になり――幽霊船の舵輪を粉砕!
/*/ エンディングカット /*/
爆風の中、覇王号が静かに停車。
ジョン:「ふぅ……今週も勝ったな!」
モモンガ(通信越し):「今週? ……まさか毎週やるつもりですか?」
ジョン:「止まれないんですよ、覇王号は!」
ナレーション:
「次回――『血の砂丘! 吸血姫号の罠!』
勝利の光を見逃すな!!」
エンディングテーマ:「風よ、覇王を抱け(Vo:ルプスレギナ)」
テロップ:
提供:魔導国技術庁・魔導TV
協賛:魔導エナジー飲料“スカルチャージ”
(飲めば速くなる! ※体感には個人差があります
/*/
『覇王号―レム』第2話:「血の砂丘! 吸血姫号の罠!」
北斗の拳第2話あたりの“美しき敵との衝突”のテンションでお届けします。
/*/ オープニング前カット /*/
赤く染まる夕暮れの砂丘。
風に乗って、乾いた砂がきらめく。
ナレーション(コキュートス風):
「カッツェ平原の戦いから三日――覇王は休むことを知らず、砂の海を駆ける。
だが、その先に待つは……血と美の罠。」
映像:
砂の上に並ぶ巨大な魔導反射板。
その中心に立つ、漆黒のマシン《吸血姫号》。
運転席には、血のように赤い瞳を光らせる少女――イビルアイ。
タイトルロゴが燃えるように浮かぶ:
第2話 「血の砂丘! 吸血姫号の罠!」
/*/ 本編開始 /*/
覇王号―レムの操縦席。
人狼ジョンがサングラスを外し、前方の砂丘を見据える。
ジョン:「モモンガさん、あの影、見えますか?」
モモンガ(通信):「ええ……赤い光。まるで夜明けを待つ吸血鬼のようですね」
ジョン:「だろ? たぶん、俺を待ってる」
モモンガ:「やはり行くんですね」
ジョン:「もちろんだ。挑まれた勝負は、受けてこそロマンだ!」
覇王号が砂煙を上げて急加速。
対する吸血姫号は無音で浮上し、まるで滑るように前へ出る。
BGM:スラップベース+女声コーラス「Bloody Mirage」
(どこか80年代アニメっぽい)
ナレーション:
「砂丘を滑る闇と光! 美しき吸血姫、イビルアイ!
そのマシンは夜の魔導技術の結晶――
エンジンは魔晶血液駆動、タイヤは死者の魂で編まれた影の輪!」
砂丘の斜面を走る二台。
覇王号が上段から、吸血姫号が下段から。
二つの光跡が交差し、砂の渦が巻き上がる。
ジョン:「くっ……速い!」
モモンガ:「ジョンさん、あれは血を燃料にしている可能性があります!」
ジョン:「そんな燃料、燃費悪すぎだろ!」
吸血姫号の側面が展開し、赤い魔力ビームを放つ。
覇王号がドリフトで避けるが、砂煙の中からイビルアイの声。
イビルアイ:「美しくないわね、その走り――覇王を名乗るなら、もっと“魅せて”みせなさい!」
ジョン:「言ってくれるじゃねぇか……! なら見せてやるよ、これが俺のドリフトだッ!!」
BGM転調:「覇王の疾風(ヴォーカル:ルプスレギナ)」
覇王号、九十度ターン!
砂を噴き上げながら、タイヤの摩擦で青白い炎が走る。
その軌跡が狼の顔を描く。
イビルアイ:「……綺麗……!」
モモンガ(通信):「今のは地形破壊級ですねジョンさん!?」
ジョン:「気にすんな! 視聴率は爆上がりだ!」
クライマックス。
二台が並走しながら最終コーナーへ。
砂嵐の中、イビルアイの顔が一瞬映る。
血のように赤い唇が、微笑んだ。
イビルアイ:「勝者は……私よ!」
ジョン:「させるかぁあああッ!!」
二つの車体が光の尾を引き、砂丘の頂上で交差。
爆風とともに映像がホワイトアウト――。
/*/ エンディング /*/
煙の中、覇王号がゆっくりと停車している。
ジョン:「……いい勝負だったな」
モモンガ:「勝ったのは?」
ジョン:「……次回まで内緒ってことで!」
ナレーション:
「次回――『死を呼ぶ紅蓮街道! 復活のブラド王!』
覇王号、さらなる地獄を駆け抜ける!!」
エンディングテーマ:「風よ、覇王を抱け(第2話Ver)」
テロップ:
協賛:魔導TV/魔導エナジー飲料“スカルチャージ”/カッツェ交通安全協会
(ジョンの声・小さく)
「ドリフトする時は周囲に気をつけよう!」