オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

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いざ作ると大変

 

 

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ジョンが思わず顔をしかめ、ぐりもあの返答に大きく息を漏らした。

 

「……海が4か所だから、一か所につき3艦としても12艦もつくらないといけないのか」

「できれば、その倍は欲しいですね」

 

ジョンはテーブルを軽く叩いて、珈琲を吹きかける真似をした。

「まじかー。二十四艦って、うちの造船ラインが泣くぞ。材料もコアも人手も――あ、いや、人手は要らないか。アンデッド作業隊がいるんだったな」

 

ぐりもあはニヤリと設計図をめくりながら言う。

「人が乗らないメリットを活かしましょう。考え方としてはこう。『同一設計のモジュール生産』で数を稼ぐんです。コア・発射ユニット・推進モジュール・外殻パネルを分割しておいて、現地で接合。転送陣や夜間搬入を併用すれば、目立たずに複数展開できます」

 

モモンガが静かに口を開く。

「冗長は正義だ。倍を用意するというのは備蓄と保全の観点から理にかなっている。稼働率を考えれば、配備数の二倍を用意しておくのが望ましい。整備と回収を前提にしたローテーション運用が可能になるからだ」

 

ジョンはぐりもあの言葉を受けて、少し笑って頷いた。

「理屈は分かる。問題は“どこから材料とコアを回すか”だな。マナ核を二十四基とか調達すると、魔導炉の負荷も大変だぞ。だが、モジュール化してコアを共有できる仕組みを入れれば、同時稼働数を減らせるかもしれない」

 

ぐりもあが目を輝かせる。

「コア共有いいですね! 『ドッキング式補助炉』で、運用中の艦と後方の補給艦が魔力リンクを結んでバッテリー供給できるようにすれば、コア数を節約できます。あと、魚雷や巻物は回収・再利用ループで資源消費を抑える方向で設計します」

 

ジョンは掌を広げて肩をすくめた。

「よし、じゃあこうしよう。基本方針は三つだ。モジュール生産、コアの共有運用、回収・再利用ループ。これで“見かけの数”は十二でも、“常時射線”は二十四分の一以上の蓄えで回せるはずだ」

 

モモンガが静かに指を鳴らした。

「加えて、配置戦術も重要だ。四海に均等に配備するのではなく、脅威に応じて重点配備と予備配備を組む。情報網と連携して、局所的な密度を上げる方が効率的だろう」

 

ぐりもあが設計図にメモを走らせる。

「了解です! ではまずは『基準艦(15m案)』を二機分、試作で完全稼働させてから量産モジュールの型を固めましょう。材料はミスリルフレームと魔素濃縮層を中心に調達リスト作ります。回収ループの要は“発動コア回収器”です」

 

ジョンが茶目っ気たっぷりに言った。

「俺はその間、港で『象徴的エスコート』をやる役だな。巨大化案は封印するけど、顔出しくらいはしてやるよ。宣伝にもなる――何でも利用するのが俺の流儀だ」

 

ぐりもあがふり向いて小さく突っ込む。

「ジョンさん、あなたの“象徴的”が本当に象徴的すぎて困るんですけど!」

 

三人が笑い合う中、テーブルの上に置かれた《リヴァイアサン・プロトⅠ》の縮模型が、深海の青を反射して静かに光った。

数は多い。だが案はある。ナザリックの眼は、海の四方へとゆっくりと広がっていった。

 

 

/*/ ナザリック地下大墳墓・第9層造船区画 /*/

 

 

静かな魔力の海のようなドックに、青白い光がゆらめいていた。

そこでは、既に三隻の《リヴァイアサン》級艦が、半透明の魔導液に包まれて浮かんでいる。

それぞれが魔力の脈動をわずかに発し、生まれたばかりの生物のように呼吸していた。

 

ぐりもあは組立デッキ上の観測台で、双眼鏡をのぞき込みながら満足げに頷いた。

「うん、艦体の流体反応は設計値通り。……ジョンさん、試作段階としては理想的ですよ」

 

ジョンは組立区画の鉄骨に腰をかけて、手にした帳票をぱらぱらとめくる。

「ふーむ、あとは魔力炉の安定化と浮力制御か。三隻同時起動でこの静かさなら上出来だな」

 

「造船用のアンデッド作業員、昨日から昼夜問わず動いてますからね」

ぐりもあが嬉しそうに笑った。

「あと、ナザリック技術部の方で“自動鋳造・魔力注入一体型ゴーレム”のラインが完成しました。

 これで月あたり四隻ペースなら生産できます」

 

ジョンが目を見開く。

「月四隻? おいおい、想像より速いな」

 

「ラインを完全自動化してますから。私とアルベド様の共同設計です。

 各区画でゴーレムが部材を持ち寄って、組立ドックで魔法陣が自動接合。

 あとは〈記憶転写〉で制御ユニットを同期すれば、そのまま戦力になります」

 

ジョンは感心したように頷き、低く笑った。

「……相変わらず天才的だな、ぐりもあさん。

 こりゃ二十四隻どころか、三十、四十も夢じゃない」

 

その時、転移光が走り、モモンガが現れた。

黒いローブの裾をなびかせ、静かに三隻の艦を見上げる。

 

「……壮観だな」

その声には、わずかに誇らしさが混じっていた。

 

ジョンが報告書を差し出す。

「モモンガさん。三隻、同時起動試験完了。安定航行良好。〈水中活動〉と〈静音化ルーン〉の併用で、

 自艦ノイズは予想の半分以下。――ただし、パッシブソナーの感度はやはり落ちます」

 

モモンガが顎に手を添えて考え込む。

「ふむ……代償としては受け入れられる範囲だ。

 隠密性を優先するなら、観測は別ユニットに任せる形にすればよい。

 たとえば、浮上偵察型――ゴーストのようなものを使うとか」

 

ぐりもあがすぐに食いつく。

「それ、面白いです! “浮遊ソナー・プラント”ですね。

 深海で分離して浮上、情報を中継して再合流――魔法で再構成すれば何度でも使えます!」

 

ジョンは腕を組んでにやりとした。

「いいな、それ。上は観測ゴースト、下はリヴァイアサン群。

 目と牙の連携か……まさに“深海の王国”だ」

 

モモンガはゆっくりと三隻を見渡し、言葉を続けた。

「我々は空を征し、大地を制した。

 だが、海はいまだ誰のものでもない。――その静けさに目を開いた者が、次の覇者となる」

 

ジョンが軽く笑う。

「モモンガさんの言葉は、相変わらず重いですね。

 まあ、覇者ってのは好きに呼んでもらえばいい。俺たちはただ、

 “見えないところも見ておく”――それだけだ」

 

ぐりもあは二人の会話を聞きながら、タブレット状の魔導盤に指を走らせる。

「じゃあ、“深海王国計画”のコードを起動しますね」

 

金色のルーンが走り、造船ドック全体が青白く輝いた。

新たな《リヴァイアサン》の外殻が、魔力の波に包まれながらゆっくりと形を成していく。

 

ジョンは腕を組み、満足げに頷いた。

「……いいな。これが量産される頃には、世界中の海に俺たちの“影”が泳いでる」

 

モモンガが短く笑った。

「影か。――だが、光を知らぬ影は存在できぬ。

 海を支配するのではなく、観測し、保つための力だ。忘れるな」

 

ジョンは静かに頷く。

「了解、モモンガさん。“影は光のために”だ」

 

――やがて、海の底から世界を見守る“青き艦隊”の伝説が始まる。

それは戦いではなく、世界の均衡を測る“もう一つの眼”となるのだった。

 

 

/*/ ナザリック地下大墳墓・第9層造船区画 深夜 /*/

 

 

青白い魔導灯が反射し、ドックの中はまるで海底のような静けさだった。

金属の胎動――それは、生まれつつある艦たちの鼓動。

七隻の《リヴァイアサン》が整然と並び、魔力の波を低く震わせている。

 

ぐりもあが魔導盤を片手に、寝癖のままの髪を押さえつつ報告した。

「――7号艦まで稼働確認完了。8号、9号はコア調整中です。

 明け方には10号も立ち上げられますね」

 

ジョンは梁の上に腰をかけ、静かに艦列を見下ろした。

「12隻で十分と思ってたが……こりゃ、二十四隻いけるな」

 

「ええ、材料が整いましたから。

 リザードマン領からミスリル砂、ドワーフの鋳造ゴーレム、

 それに……人工衛星〈アインズ・アイ〉群からの“軌道監視情報”が入ってきたので、

 潮流と魔力線の変動をリアルタイムで修正できるようになりました」

 

ジョンが目を細めた。

「……ああ、あれか。軌道上から海流まで読める時代になったんだな。

 あれを見た時は、正直ちょっと笑ったぞ。宇宙から海を監視するなんて、SFじみてる」

 

ぐりもあは嬉しそうに笑いながら指を走らせる。

「でも便利ですよ。人工衛星が潮位と風向、魔力濃度を送ってくれるおかげで、

 この艦たちは“潮を読む”ように動けます。まさに生きた海獣です!」

 

ジョンが珈琲を一口すすると、通信陣が青く輝いた。

『ジョン様、報告します――沿岸転送拠点、すべて整備完了しました。

 第一海域〈バハルス北海〉、第二海域〈竜王国沿岸〉、

 第三海域〈聖王国内海〉、第四海域〈リ・エスティーゼ王国西海〉。

 各拠点、受け入れ準備万端です』

報告の声はセバスのものだった。

 

ジョンが短く頷く。

「了解。……これで四海すべてに“眼”が届く」

 

ぐりもあが魔導盤を操作して、地図に四つの光点を表示させる。

その上に、人工衛星群の軌道が淡く描かれ、点滅する光線が海と空を繋いだ。

 

「第一海域〈バハルス北海〉には、北方哨戒隊を常駐させます。

 第二〈竜王国沿岸〉は交易航路の監視がメイン。

 第三〈聖王国内海〉は外交ルート――特に法国船団の動向を観測。

 第四〈リ・エスティーゼ王国西海〉は……陛下の直轄海域ですね」

 

ジョンが笑う。

「なるほど。……じゃあ、ここが世界で一番“目の多い”海になるな」

 

転移光が走り、モモンガが姿を現した。

黒曜石のようなローブをまとい、静かに艦列を見渡す。

「――順調のようだな」

 

ぐりもあが深く頭を下げる。

「はい、モモンガさん。人工衛星〈アインズ・アイ〉群との連携も良好です。

 艦隊データは軌道通信陣を通じて常時アップデートされています」

 

モモンガはわずかに頷いた。

「軌道の“眼”と、海の“眼”。

 地と空を繋ぐ監視網が、ようやく完成するわけだ」

 

ジョンが報告書を差し出しながら言う。

「三隻同時航行の安定性確認済み。〈水中活動〉+〈静音化〉の複合運用で、

 ノイズは理論値の半分以下。ただし……パッシブソナーの感度は落ちる」

 

モモンガは静かに顎に手を添えた。

「良い。――敵を見つけるより、敵に見つからない方が重要です。

 索敵は人工衛星群と、浮遊観測ゴーレムに任せよう」

 

ぐりもあが目を輝かせる。

「“浮遊観測ゴーレム”ですか! 衛星と海底艦をつなぐ中継ノードにできます!

 中層圏で浮遊して、データを衛星へ――まるで宇宙と海を繋ぐ糸みたいです!」

 

ジョンが笑いながら言った。

「……いいな。宇宙の目が海を見て、海の耳が空を聞く。

 ナザリックの“影”は、ついに惑星全体を覆うってわけだ」

 

モモンガは艦列を見上げ、静かに頷いた。

「だが忘れないで下さい。

 これらは兵器ではない――観測者です。

 空の衛星〈ヘルメス〉と同じく、世界の均衡を保つための“眼”にすぎない」

 

ジョンは笑みを浮かべ、深く頷いた。

「承知しています、モモンガさん。

 牙を隠し、ただ見守る。世界が牙を剥いた時だけ、応える。それで十分だ」

 

モモンガは黒い杖を掲げ、静かに言葉を紡ぐ。

「この計画を正式に記録する――《深海観測艦隊計画:ネプトゥーン》。

 主任技師:ぐりもあ。総監:ジョン。監督者:モモンガ」

 

魔法陣が床一面に広がり、七隻の艦が同時に蒼い光を放った。

その光は天井の結晶を反射し、軌道上の衛星へと向かって瞬く。

 

ジョンはその光景を見上げながら、ぼそりと呟いた。

「……空にアインズ・アイ、海にリヴァイアサン。

 この星の“上下”を見通す目が、ついに揃ったな」

 

モモンガが低く笑う。

「ああ。残るは――星の外側だ」

 

ぐりもあが顔を輝かせる。

「え、じゃあ次は本当に“宇宙艦”ですか!?」

 

ジョンは笑い、珈琲をすすった。

「……落ち着け。まずは海の子らを全部泳がせてからだ」

 

モモンガが微笑を浮かべる。

「焦るな。だがいつか、海と空の眼が交わる時――

 ナザリックの視界は、星を越えるだろう」

 

艦列が低く唸り、人工衛星〈ヘルメス〉からの信号がドックを照らす。

その青白い光の中で、深海艦隊の影がゆっくりと浮かび上がった。

 

――そして、ナザリックの“眼”は、今まさに、空と海の境を見据え始めていた。

 

 

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