オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
/*/ ルクス・ブリューナク降臨 ――“神槍の光雨” /*/
空が割れた。
はじめ、それは雷鳴にも似た震動だった。
風が消え、鳥が墜ち、草木がざわめきもやめた。
ゴブリンたちが空を見上げたとき、そこに在ったのは――天に突き立つ一本の光の槍。
「な、なんだ……あれは……!」
誰かが叫んだ。だがその声は、すぐに音ごと押し潰された。
雲が焼ける。
大地が白くなる。
光が降り注ぐ。
――《天槍開放:ルクス・ブリューナク》。
天空に掲げられた槍身が七輪の封印を開き、
七重の光環が幾重にも広がった。
その中心に立つ人影――ケネウス・レクス・ヴァロール。
黒金の祭服鎧の裾が炎のように舞い、祈りの声が轟音の中でもはっきりと響く。
「主よ、正しき秩序を。
不浄を焼き、世界を浄め給え――」
封印輪がひとつ外れるたび、空が揺れた。
二つ目で風脈が逆流し、三つ目で雲が消え、四つ目で大地が震えた。
五つ目の輪が開いた瞬間、世界は静寂に包まれた。
そして第六輪が外れた時、太陽がもう一つ生まれた。
最後の七輪が砕けると同時に、槍先が天を向き――光が弾けた。
光が「落ちてくる」ように見えた。
だが違う。
それは「この世のすべてが上から引き裂かれていく」光景だった。
丘を覆う十万のゴブリン軍勢が、瞬きの間に影も形もなく消えた。
焼けた地表が泡立ち、融け、白い蒸気となって空へ昇っていく。
戦旗、鉄槍、皮鎧――すべてが液状化し、跡形もなく。
数百メートル離れた後方の伝令が見たのは、
視界いっぱいに広がる“昼”の世界。
太陽ではない、神が怒った時の色。
「逃げろォォ――!」
誰かが叫ぶ。
しかし、逃げ場など最初から存在しない。
熱が、風が、祈りのように包み込み、
彼らの皮膚も骨も、やがて灰に変えた。
その中でただ一つ残ったのは、
焼け焦げた旗の支柱だけ――それすら、すぐに風化して崩れた。
光が止む。
世界が戻る。
そこはもう「戦場」ではなかった。
焦土。
直径三キロに及ぶ“無の円”が残り、
中心には、ただ一人――槍を地に突き立てたケネウスが立っていた。
風が、遅れて戻ってくる。
彼の髪が炎の灰を散らしながら揺れる。
「……神の審判、完了。
不浄は清められた。」
その声は冷たく、静かで、どこか悲しげだった。
彼の周囲に立ち尽くす聖職者たちもまた、
その威光に跪きながら、目を逸らすことしかできなかった。
翌日。
斥候が報告した言葉は、歴史書にこう記される。
“そこには灰があった。
だが影はなかった。
光が、すべてを奪っていったのだ。”
――それが、後に“ブリューナクの雨”と呼ばれる光の神罰。
人の領域を侵したゴブリン王国は、
この一撃をもって歴史と地図の両方から消滅した。
/*/
【魔導国情報統制局 高軌道観測記録】
機密指定:第零級(国家存続関連)
発信元:人工衛星ゴーレム《アインズ・アイズ》第3号機
管理責任者:情報統制局 観測主任ぐりもあ=アウラ=ノート
観測対象:漆黒聖典第1席次 ケネウス・レクス・ヴァロール
イベントコード:“LUX・BRIONAC / 赫天降臨事案”
【概要】
観測日時: 第三紀 503年 葉月11日/午後3時41分(帝国標準時)
観測位置: 北緯48°37’/東経12°14’(旧ゴブリン王国中枢丘陵地帯)
観測距離: 高度18,400m(静止軌道上)
気象状況: 曇天/大気湿度 71%/平均気温16℃(発射後急変)
観測対象: 伝説級アーティファクト《神槍ブリューナク》
観測結果: 局地的地形変動・魔素消失・熱暴走・生態圏完全崩壊
【時系列観測ログ】
15:41:02
地上部隊間に高位聖光素子の急激な励起反応を確認。
中心点に人型生命体(推定Lv.70以上)1体。識別名《Keneth Rex Valor》。
体内魔力値:推定1.9×10?MP。
周囲に聖属性粒子濃度上昇(基準値の+3200%)。
人工知能サブルーチンが“神格現象”フラグを自動認定。
15:41:07
槍状アーティファクトが天頂方向に掲げられる。
周囲魔力の流入パターン:スパイラル型。
同心円状のエネルギーリング7層形成開始。
【判定:神槍封印解除フェーズ】
15:41:13
地表気温上昇:16℃→980℃/0.3秒。
大気中水分が即時蒸散。可視光スペクトルに“白域飽和”現象。
アインズ・アイズの光学センサーが自動減光モードに移行。
15:41:14
閃光発生。
照度:太陽光強度の10.8倍。
音響:解析不能(全周波数飽和)。
磁場異常値:地磁気+24,000nT。
大気密度:局地的に1/5まで低下。
雷雲全消滅、プラズマ流発生。
15:41:15~15:41:19
高エネルギー照射持続時間:4.28秒。
観測範囲内の物質構造データ崩壊。
光学カメラに残留残光:8分以上。
15:41:20
地表推定温度:最大38,000℃。
融解範囲:直径2.9km。
周辺風圧:時速310km。
観測機体の外装温度上昇:+2.1℃(熱反射推定距離18,000m)。
15:41:30
照射停止。
地表は完全黒化。
赤外線カメラ:熱放射パターン消失=生命活動反応ゼロ。
残留魔素:検出不能。
周囲2km圏内で魔素濃度が逆位相化(マナ焼損現象)。
15:42:00
中心点に単一の熱源残留(推定人体)。
立位静止。温度:36.4℃。
識別再確認:ケネウス・レクス・ヴァロール本人。
周囲に槍状アーティファクト《Brionac》の残光。
15:42:03
彼が地に槍を突き立て、姿勢を維持。
肉声通信波形:
「……神の審判、完了。
不浄は清められた。」
AIはこの音声を“祈祷文カテゴリ”に分類。
【解析結果】
項目 内容
最大発光強度 10.8×太陽光輝度
最大地表温度 38,000℃(±2,000)
被影響半径 2.9km(全生態系消滅)
継続時間 約4.28秒
魔力変換効率 99.7%(理論値限界突破)
残留魔素 検出不能(魔素真空領域発生)
推定犠牲者数 108,000±10%(ゴブリン族・オーガ族)
地形変動 標高変化最大-42m(地表沈降)
地名変更案 “聖槍孔(ホーリーピット)”――後世命名候補