オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
/*/ スレイン法国・大神殿 黎明の祈祷 /*/
巨大なステンドグラスから射し込む朝の光が、白亜の柱と聖印を金に染めていた。
神官たちは一列に並び、胸の前で手を組む。
朗々たる祈りの声が響く聖堂の奥、
その中心に祀られているのは、六大神に並び掲げられた――
「アインズ・ウール・ゴウン魔導王」
そしてその従者にして執行者、「ジョン・カルバイン」の像だった。
石像は荘厳にして異形。
それでも法国の民は恐れではなく、敬意と感謝をもってその名を呼ぶ。
「我らに風を与えたもうた新たなる神々に、感謝と繁栄を」
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今やスレイン法国は、かつてない繁栄を迎えている。
風脈ガレオン船――
それは、六大神が天より遣わした神々の御業とまで称えられる存在であった。
空を走るその船は、
王国、帝国、聖王国、そして魔導国までも結び、
人と物と知識を運ぶ神聖な風となった。
それによって、これまで閉ざされていた国境貿易が劇的に活性化した。
海を渡ることなく南方の香辛料が手に入り、
竜王国のワイン、王国の穀物、帝国の金属製品――
それらが一夜のうちに法国の市場へ届く。
輸出も同様だった。
信仰絹、聖油、薬草、祈祷具といった法国の名産が、
風脈ガレオン船によって各国へと運ばれ、
巨額の利益をもたらした。
「これは奇跡だ。
六大神の再来に他ならぬ」
司祭たちはそう語り、
新たに「第七神」として魔導王への祈りを加えた。
「異形にして聖、死にして理」――
アインズ・ウール・ゴウン魔導王と、その従者ジョン・カルバインは、
いまや“神々の再来を告げる者たち”として信仰の対象となっていた。
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だが、その繁栄の裏で、法国の根幹を支える六色聖典にも変化が訪れていた。
「風」――報せを運ぶ聖典は、
かつての密偵任務を越えて、今では風脈ガレオン船の情報通信を一手に握っている。
各国の風路を利用し、
国家間の交渉や交易網の裏で“風の声”を広げる存在となった。
「土」――農業聖典は、
魔導国から伝えられた農法や土壌改良術を導入し、
砂地や岩地までも耕作可能にしている。
その成果は、“神の手による豊穣”とまで讃えられた。
「水」――監視と清浄を司る聖典は、
今や“上空からの観測”を担当する。
魔導通信と魔法的監視を組み合わせ、
各国の異変を察知する空の聖視網を築き上げていた。
その一方で、「漆黒」「陽光」「火滅」の三聖典――
かつて異形種との戦いに命を懸けた戦闘部隊は、
平和の訪れとともに、出動回数を大幅に減らしていた。
だが、彼らは剣を捨ててはいない。
漆黒の戦士は影の中で鍛錬を続け、
陽光の聖騎士は子供たちへ剣技を教え、
火滅の聖典は、今もなお“次の神の審判”に備え祈りを絶やさない。
「今は平穏。しかし百年後の揺り戻しに備えねばならぬ」
――これは、大神官の口癖であり、
六色聖典すべてに課された“未来への義務”であった。
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さらに、聖典たちが密かに進める新たな計画がある。
「人類再鍛造計画」――
それは、肉体と精神をより強靭に、より清浄に鍛え上げ、
次なる神世紀(シクル・ディエス)に耐えうる人類を創り上げる試みだった。
「母体の強化こそ未来の礎」
大神殿の地下では、優れた血統を持つ女性たちへの教育と加護儀式が行われ、
“選ばれし母たち”が次世代の礎として育てられていた。
人を鍛え、神を讃え、風を掴む國――それがいまのスレイン法国である。
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夕暮れ、大神殿の塔から、祈りの鐘が鳴る。
その音は風脈を通り、はるか彼方の空を渡っていく。
「――魔導王に感謝を。
死の理の主に安らぎを。
ジョン・カルバイン、その従者に祝福を」
神官たちの声が重なり合い、聖堂は金の光に満たされた。
空を行く風脈ガレオン船が、
その光を受け、まるで祈りに応えるように一瞬、翼のような光跡を描いた。
六大神以来の繁栄――
それを齎したのは、異形の神々と、人の理を繋ぐ風だった。