オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

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ナイロス・バックシステム

 

 

/*/ エ・ランテル近郊・夕暮れの野営地 /*/

 

 

焚き火の赤が、薄く霞む林の中でちらちらと揺れていた。

背嚢を下ろした冒険者たちは、夕食の準備に取りかかっている。鍋の中では干し肉のスープがぐつぐつと泡を立て、香ばしい匂いが漂っていた。

 

「なあ、レオ。お前、その背嚢……新型か?」

火の向こう側で、斥候のイリスが指を差した。

 

レオは肩から軽く外したパックを見せる。

艶のある灰色の素材が夕陽を反射して、しっとりとした光を放っていた。

 

「ああ、これな。ジョン殿の工房で作ってるっていう“ナイロス・バックシステム”だ。正式名称はなんか長いけどな」

 

「ナイロス? あの、デカダン服に使われてる耐魔繊維のやつ?」

 

「そう、それの樹脂版。表は軽くて滑るけど、刃物通らないし、魔薬こぼしても染みない。中に芯が通ってて、形が潰れない。しかもな――」

レオはパックの裏をぐいと押す。硬質のフレームが、金属のような音を立てた。

 

「パイプフレームで腰に荷重が逃げる構造だ。肩に全部かからねぇ。五十キロ積んでも、前の背嚢よりずっと軽く感じる」

 

「五十!? あんた馬じゃないんだから……」

イリスは呆れながらも、興味津々で手を伸ばした。

 

触れた瞬間、彼女の目が変わる。

「……これ、軽い。ていうか、腰の帯がすごいな。詰め物入ってる? 熱くならないの?」

 

「通気溝と緩衝符の層が入ってる。夏場でも背中に汗がたまらないようにしてある。俺は二日歩き詰めでも、背中の皮むけなくなった」

 

「はぁ……贅沢な作りだねぇ。でも、そんなの高いんでしょ?」

 

「いや、そこが肝なんだよ」

レオは指を立てて笑う。

「ウルフ竜騎兵団は機械化でこういうの使わない。だから冒険者用にコスト落としてる。魔力チャージもいらねぇ、符刻も最低限。再利用できる部材だけ残して、全部“簡易組立”。値段は普通の高級背嚢の半分以下」

 

「半分……それでこれ? 信じられない」

 

焚き火のそばで、別の男が笑いながら口を挟んだ。

「俺も使ってるぞ。〈赤牙の群れ〉の連中、全員乗り換えた。魔導機関車に積み込む時も、フレームがそのまま固定具になる。荷役が楽なんだ」

 

「まるで宣伝部だな、あんたら」イリスが笑う。

 

「違う違う、ほんとに便利なんだよ」レオは手を振った。

「特に、緊急時に逃げるとき。胸のバックル外せば、全部ワンタッチで降ろせる。俺、この前、森でサーベルタイガーに追われてさ。あの機能なかったら確実に死んでた」

 

「……それはちょっと欲しくなったかも」

 

「でだ」レオは声を落として続けた。「今度、軽量モデル出るらしい。背負い棒の数減らして、弓手や盗賊向けに特化したやつ。名前は《ナイロス・パックType-S》だとよ」

 

「Sって……スカウトのS?」

 

「スリムのSかもな」

 

イリスは小さく笑い、焚き火越しに見えるパックを見つめた。

革でも布でもない、近未来的な質感が、どこか異世界的だった。

 

「……ジョン殿って、何でも作るんだね。武器も防具も、次は背嚢か」

 

「“戦う”ってのは、持って歩けるかどうかで決まるってさ。あの人の言葉だ」

 

「……なるほど、説得力あるね」

 

火がぱちりと弾け、夜風が吹き抜けた。

その音に紛れて、イリスは小さくつぶやいた。

 

「でもこれ、ほんとに流行るかもね。背嚢が変わると、冒険が変わる――ってやつ」

 

レオは肩をすくめ、焚き火に向かって笑った。

「流行るさ。誰だって、軽くて楽なのが好きだろ?」

 

 

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