オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

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通信兵を装備

 

 

/*/ 帝国辺境戦域・灰色の渓谷地帯 /*/

 

 

冷たい風が谷を抜ける。

空の彼方で雷のような轟音が重なり、灰色の翼が翻った。

――ウルフ竜騎兵団。魔導国の空を統べる精鋭航空部隊。

 

かつて彼らのドラゴンは“砦の守護者”に過ぎなかった。

巨体ゆえに一度飛び立てば長距離の戦闘継続が難しく、また一度着地すれば離陸にも準備を要した。

だが、ジョンの開発した携帯魔導通信機と背負型通信兵装備の導入により、その運用は一変した。

 

今、ドラゴンの背には竜騎士と――その背中にもう一人、通信兵が跨がっている。

通信兵は背中に金属の筒状機器を背負い、符刻されたアンテナを立てていた。

それは風を切りながら淡い青白い光を放ち、空と地をつなぐ“声の糸”を紡いでいる。

 

「こちら第三飛行中隊! 通信兵レイン。前線からの要請を受信! 座標、北東二百! 煙幕確認!」

 

竜騎士は頷き、手綱代わりの符縄を引いた。

ドラゴンが吠える。金属を擦るような声が空を裂いた。

 

下方の渓谷では、白い煙幕が小さく上がっている。

それが合図――支援要請地点だ。

 

「突入、高度を維持――ブレス装填!」

 

竜の胸部が赤く光り、喉の奥で魔力が渦を巻いた。

炎と魔力が融合し、空気が震える。

通信兵は耳に手を当て、無線の向こうの地上隊と短く確認を取り合う。

 

「地上部隊より了解。指定目標、ゴーレム群五体――制圧許可!」

 

「よし……撃てッ!」

 

次の瞬間、ドラゴンの口腔から白熱の奔流が迸った。

炎ではない。純粋な高熱の魔力流――ドラゴン・ブレス。

煙幕の中に突き刺さり、谷底全体が一瞬、太陽のように輝いた。

爆風が遅れて襲い、地上の砂礫が渦を巻く。

 

「命中確認! 敵陣形崩壊!」

 

通信兵の声が風の中に響く。

竜騎士はドラゴンの首を叩き、旋回を指示した。

巨体が滑空に移り、風を掴むようにして上昇していく。

次の要請が入るまで、彼らは旋回しながら空を流れる雲と一体になった。

 

――かつては砦に縛られた守護竜が、いまや戦場の上を“流れる火力”として機動する。

魔導通信機を背負った通信兵の存在が、それを可能にしたのだ。

 

ひとつの地点に竜を固定する時代は終わった。

必要な場所に、必要な瞬間だけ――神の怒りのような一撃を与える。

それがウルフ竜騎兵団の新たな戦術思想、「可動火力支援戦術(モビリティ・ブレスドクトリン)」であった。

 

空の上で、通信兵レインは小さく笑った。

「これで……ようやく、俺たちも軍の“耳”じゃなく、“牙”になれたな」

 

竜騎士は頷き、再び上空を見上げた。

遥か彼方、他の飛竜隊が光の軌跡を描きながら旋回している。

戦場の空は、通信と炎と翼の音で満たされていた。

 

 

補足設定(内部資料風)

 

ウルフ竜騎兵団・通信連携運用要綱(抜粋)

 

通信兵装備:背負型魔導通信機(重量約28kg)

 

搭載符刻:〈伝言〉系統の高速符+空間伝達増幅結晶

 

通信距離:約20km(見通し線通信)

 

電源:交換式魔力カートリッジ(2時間稼働)

 

支援プロトコル:

① 地上部隊が煙幕弾により要請地点を示す

② 通信兵が符刻波を検知・確認

③ 竜騎士が上空からドラゴン・ブレスで火力投射

④ 連絡確認後、次要請へ転進

 

これにより、ドラゴンは防衛拠点から解き放たれ、戦場を渡り歩く「空の移動砲台」として再定義された。

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