オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
/*/ ナザリック地下大墳墓 第9層・モモンガの執務室 /*/
扉が勢いよく開いた。
いつものように書類の山を整理していたモモンガが、思わず骨の手を止める。
「モモンガさんッ!!」
青と白の毛並みの人狼――ジョンが、満面の笑みで部屋に飛び込んできた。
ぐりもあが慌てて書類を押さえる。
「また何かやらかした顔ですね」
ジョンは椅子の背に両手を置き、得意げに胸を張った。
「やらかしたって言うな。成功だ成功! 帝国にグライダー売り込んできた!」
モモンガが静かに顔を上げた。
「……グライダー、ですか。あの“腹ばいで飛ぶアレ”のこと?」
「そう、それ!」ジョンは尻尾をぶんぶん振りながら続けた。
「バハルス帝国第8軍にな。カルサナス都市国家連合に展開してる部隊だ。
そいつらに“空中偵察機”としてグライダーを納入するって話を通した!」
ぐりもあの瞳がぱっと輝いた。
「やりましたね! あの地域は地形が入り組んでますし、上空偵察は喉から手が出るほど欲しいはずです!」
ジョンは指を立てて得意げに笑う。
「しかも、ただ納入するだけじゃない。“〈伝言〉通信を使う魔導通信塔”の設置許可も取れた!」
「通信塔も?」モモンガの声に、ぐりもあが嬉しそうに身を乗り出す。
「ってことは――都市国家連合の全域に魔導通信網が拡がるってことですね!」
ジョンはニヤリと笑い、懐から書簡を取り出した。
「帝国第8軍のレイ将軍が許可を出した。野心家だが、動きが速い。
“通信塔の建設は帝国の協力で”って条件つきだけど、費用は全部こっち持ち。
実質、ナザリックの“目と耳”がカルサナスに届くってわけさ!」
ぐりもあが嬉しそうに拍手を打つ。
「これで都市国家連合にもTVとラジオを売り込めますよ!
塔があれば電波式魔導通信の中継が可能になりますし、商用放送の実験も!」
モモンガが手を組み、静かにうなずいた。
「……なるほど。軍用通信を隠れ蓑に、民間の情報網を展開する。
帝国の監視を利用して、むしろ通信網の信頼性を高める――さすがジョンさんです。」
ジョンは自慢げに尻尾を一振り。
「これで“風の子”シリーズも売れるし、ラジオ局も開ける。
都市国家連合の連中は文化的なもんに飢えてるからな。
“空を飛ぶ夢”と“音でつながる未来”、どっちもナザリック発だ!」
ぐりもあが楽しそうに付け加える。
「放送番組も作りましょう。“ナザリック・ニュース・ネットワーク”とか。」
「いいねぇ! オープニングは俺の雄叫びでいこう!」
「やめてください、聴取者が逃げます。」
そんな軽口に、モモンガは仮面の奥で静かに笑った。
「……だが、確かに素晴らしい進展ですね。
グライダーは空を、通信塔は言葉を――。
これで魔導国は、陸・海・空・情報、すべての線を掌握できる。」
ジョンは腕を組み、得意げに言った。
「“風の時代”の到来ってやつだな。
帝国も都市国家連合も、知らぬ間にナザリックの電波に包まれていくんだ。」
ぐりもあが頷く。
「まさに“見えざる征服”ですね。」
モモンガは書類を閉じ、静かに言葉を添える。
「では――我々は世界の風を繋ぐ“放送局”を築きましょう。」
三人の笑みが交わる。
それは武力によらぬ征服――言葉と技術で世界を結ぶ、ナザリック式の新たな侵攻の始まりだった。