オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

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至高の食事

/*/ナザリック地下大墳墓・従業員食堂

 

大理石の柱と暗いランプの灯に包まれた広間は、昼時を迎え、普段の穏やかな空気を漂わせていた。しかし、今日の空気はどこか違った。

 

「料理長、中華丼大盛で、あと大根キムチ」

 

ジョン・カルバインは重厚な椅子に深く腰を沈め、淡々と、しかし命令口調には一切の躊躇がない声で注文を告げた。

 

「ははぁー!カルバイン様、超大盛もできますが、いかがでしょうか。」

 

料理長は誇らしげに背筋を伸ばし、手に持ったお盆を軽く揺らした。普段から忠実な料理人だが、ジョンの前ではその緊張がひときわ増す。

 

「よし、其れ頼む。」

 

その一言に、料理長はにこりと笑みを返すと、厨房へと走り去った。後に残された従業員食堂は、静かな期待感で包まれる。

 

テーブルを挟み、食堂にいるメイドたちは自然と手を止め、ジョンの動きを目で追った。彼の背筋、肩の張り、そして少しだけ傾いた頭の角度。すべてが完璧な統率感を放っている。

 

しばらくして、料理長が大きな蒸し器を抱え、香ばしい匂いを伴って現れる。大皿に盛られた中華丼は、具材の色が鮮やかで、湯気がふわりと立ち上る。その横には、真っ赤な大根キムチが小皿に丁寧に添えられていた。

 

「お待たせいたしました、カルバイン様」

 

「感謝する。」

 

ジョンは皿に手を伸ばすと、中華丼の具を箸で大きくすくい、口へと運ぶ。最初のひと口が口に入った瞬間、食堂内の時間が一瞬止まったかのようだった。メイドたちの目はその動きに釘付けとなり、息を潜める。

 

「……ふむ。」

 

小さく唸るような声。だが、その声には満足感がはっきりと込められていた。ジョンはひと口ごとに箸を進め、まるで時間を惜しむかのように、口の中で味わいを楽しむ。中華丼の甘辛い醤油と、旨味の染みた具材の香りが鼻腔をくすぐる。

 

大根キムチを箸でつまむと、酸味と辛味が瞬時に口の中に広がる。ジョンは目を閉じ、少しだけ眉を上げ、わずかに笑みを浮かべた。その姿は、至高の御方が食事を楽しむ瞬間そのものだった。

 

周囲のメイドたちは、手に持った皿やお盆を静かに下ろし、息を飲む。口々に小さな声が零れる。

 

「……す、すごい……」

「……あんなに美味しそうに……」

「……見ているだけで、心が満たされる……」

 

ナーベラルは机の端で背筋を正し、目を伏せたまま手を組む。ソリュシャンは頬を染めながら、声を潜め、心の中で賛辞を送る。エントマもまた、目を輝かせ、普段の冷静な面持ちがどこか柔らかくなるのを感じていた。

 

ジョンは箸を休めず、さらなるひと口を口に運ぶ。湯気と香りが食堂に漂い、メイドたちの心に幸福感を注ぐ。彼の動きは、ただ食事をしているだけではなく、その場の空気を支配し、魅了する力がある。

 

「……ああ、これも旨い。」

 

小さな声の中に、真剣な喜びが滲む。ジョンの食べっぷりに、食堂内の緊張と憧れが混ざり合い、甘美な空気を生み出す。メイドたちは視線をそらすことも、口に出すこともできず、ただその光景に見入るしかなかった。

 

やがて、ジョンは大盛の中華丼を一気に平らげ、箸を置く。湯気の中に残る香りが、食堂全体を満たす。大根キムチも、辛味と酸味の余韻が口の中に残り、余韻を楽しむかのようにジョンはゆっくりと皿を片付けた。

 

「料理長、ご馳走だ。感謝する。」

 

料理長は深く頭を下げ、満足そうに笑った。

 

そして、食堂のメイドたちはようやく、手に持っていたものをそっと戻し、心の中で小さくため息をつく。ジョン・カルバインの食べっぷりは、ただの食事ではなく、至高の御方としての存在感を、静かに、しかし確実に示していたのだった。

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