オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
/*/ ナザリック地下大墳墓・第九階層 ジョンの私室 /*/
扉が静かに開き、柔らかな足音とともにルプスレギナが顔を覗かせた。赤い瞳が小さく輝き、尾を揺らしながら、銀のトレイを両手で抱えて入ってくる。
「ジョン様~、お疲れ様っす! 今日は特製ワッフルを焼いてきましたっ♪ 焼き立てですよ~」
手のトレイの上には、黄金色に焼き上がったワッフルが並び、湯気を立てている。格子状の窪みにバターが溶け込み、メープルシロップの甘い香りがふんわりと漂った。
「お、お前……こんなものまで作れるのか」
「ふふんっ、ジョン様専用っすから! 他の誰にも見せないですからね?」
ルプスレギナは小さく胸を張き、視線をぐっとジョンに向ける。その瞳には、焼き立てワッフルを独占してほしいという強い願いが込められていた。彼女の尾がひそかに揺れ、意識せずとも「自分だけのもの」と印をつけるかのようにジョンに近づく。
ジョンはフォークを手に取り、ひと切れを口に運ぶ。カリッとした表面を噛むと、続いて中のふんわりした生地がほどけ、バターとシロップの甘味が口内に広がった。思わず目を閉じて、味覚に集中する。
「……うまい。香ばしさと甘さのバランスが絶妙だな」
「えへへっ、嬉しいっす~。でも……このワッフルはわたしだけのジョン様用ですから。アルベド様やシャルティア様には絶対渡さないですっ」
その言葉に、ルプスレギナはそっとジョンに身を寄せ、ほほを軽く触れさせる。小さな手が彼の腕に触れ、温もりと甘い香りを共有する。まるで「ここからはわたしのもの」とでも言うように、独占欲が無言の圧となって伝わる。
ジョンは苦笑しつつも、拒むことはしなかった。フォークをもう一口運び、カリッとした食感とふんわり生地の温かさを堪能する。コーヒーを口に含めば、香ばしさと苦味が甘さと溶け合い、さらに味わいが増す。
「……なるほどな、これは確かに特別だ。仕事の合間に食べるには贅沢すぎる」
「そうっす! だからジョン様、絶対に誰にも教えちゃダメですっ。わたしだけの、ジョン様専用の時間ですから」
ルプスレギナは尾をぴんと立て、視線をじっとジョンに向けた。その瞳は、甘くもあり、少し嫉妬深くもある。ワッフルの香り、温かさ、そしてこのひとときの静けさ――全てを独り占めしたいと、無言の願いを宿している。
ジョンは再びワッフルを口に運び、コーヒーを傍らから含む。外は戦いや陰謀の渦巻くナザリック地下世界でも、この小さな部屋だけは、時間の流れが甘く、柔らかく、そしてルプスレギナの独占欲で満たされていた。
「ふふっ、ジョン様が美味しそうに食べてくれると、わたしも幸せっす♪」
ジョンは頷き、もう一口ワッフルをかじる。温かさと香ばしさ、甘味と苦味、そしてルプスレギナの小さな存在感――全てがこの私室に溶け込み、今日も二人だけの甘い時間がゆったりと流れていった。