オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ 作:ぶーく・ぶくぶく
/*/バハルス帝国・帝都アーウィンタール/*/
皇帝ジルクニフは玉座に座り、机上の地図と書類をじっと見つめる。
「……この穀物生産地帯の完成は、まさに奇跡だ。しかし、この肥沃な土地を支える肥料は国内だけでは不足する……魔導国からの輸入に頼らざるを得ないのが悩みの種だ」
側近のロウネ・ヴァミリオネンが静かに答える。
「陛下、国内での生産も検討しましたが、量産には限界がございます。魔導国からの安定供給が不可欠です」
皇帝は地図上に広がる耕地帯に指を置く。
「だが、この土地はアインズとジョンの力でわずか数ヶ月で完成した。元来なら百年規模の計画が必要だった工事だ……超魔法と巨大化の力があって初めて成し得た」
顎に手を当て、遠くを見つめるジルクニフ。
「これで皇帝直轄領の穀物自給率は飛躍的に向上した。しかし、魔導国が供給を止めれば、安定は脅かされる……外交関係の維持も不可欠だ」
ロウネは慎重に続ける。
「陛下、交易路の確保と保護、冒険者の監視活動を組み合わせれば、供給の安定は十分に維持可能かと」
皇帝は静かに微笑む。
「なるほど……ならば、新しい街道や交易路の整備も視野に入れるべきだ。バハルス帝国と魔導国、両者の力を巧みに活かし、この肥沃な土地を守らねば」
窓の外、黄金色に輝く穀倉地帯を見つめ、ジルクニフは帝国の未来を思う。
──奇跡的な治水と耕作の成果。その恩恵を享受する帝都アーウィンタールの背後で、魔導国との外交と交易の重要性は、かつてないほどに増していた。
/*/王国北部・治水工事現場/*/
広大な河川敷で、モモンガは空中に魔法陣を展開し、奔流を自在に操る。ジョンはその下で巨大化し、巨大な堤防を積み上げ、土砂を瞬時に整形する。通常なら百年かかる工事も、二人の力によって数ヶ月で進行中だ。
「この水路、角度を少し変えれば流量が均等になりますね」とアウラが図面を広げながら指示する。彼女はレンジャーでもあり、地形や土壌、水量の変化を考慮した設計ができる。
モモンガは図面に目をやりつつ、魔法で水を制御し、ジョンの巨大な手が土砂を動かすたびに「ここをもう少し浅く」と細かく調整する。
工事の進行を見守る兵士たちは、超位魔法と巨大化の力にただただ圧倒される。これまでの人力では不可能だった規模の堤防や水路が、目の前で次々と完成していくのだ。
アウラが水路の図面に鉛筆を走らせる。
「この支流の角度を微調整すれば、下流の農地への供給も最適化できます。土砂流出のリスクも低減されます」
ジョンは頷き、巨大な手で土砂を均しつつモモンガに耳打ちする。
「この工事、完成すれば北部の農業地帯は安定するな。魔導国からの肥料輸送路も考えながら設計するか」
モモンガは魔法陣を微調整しながら答える。
「うん。魔導国の穀物供給を支えるためには、精密な水路設計が不可欠です」
──北部の大地は、超魔法と巨大化、そして熟練レンジャーの緻密な設計によって、新たな肥沃地帯として息を吹き返そうとしていた。
/*/ザナック国王直轄地・治水工事現場/*/
北部の工事を終え、モモンガとジョンはふと視線を南に向けた。そこにはザナック国王直轄地の河川と肥沃地帯が広がっている。
ジョンは肩をすくめる。
「北部の工事も手ごわかったが、こっちも少し手を入れてやるか」
モモンガは微笑みながら魔法陣を展開する。
「軽い気持ちで援助、ですね。まあ、帝国や王国の生産地を支えるのは悪くない」
瞬く間に、二人は河川の流れを解析し、魔法で水位を調整、ジョンの巨大な手が堤防や水路を整形していく。北部の工事で培った連携は、ザナック直轄地でも同じように効率的に発揮される。
地元の役人や兵士たちは呆然としつつも感謝の眼差し。誰も、数日で巨大な治水工事が完成するとは思っていなかったのだ。
アウラも同行しており、図面を広げて細かく補正する。
「この支流の角度を少し変えれば、都市部の洪水リスクを大幅に減らせます」
ジョンは頷き、土砂を整えながら呟く。
「これでザナック国王の直轄地も安定する。農業も防衛も両立できるだろう」
モモンガは魔法陣を微調整し、流れる水を最適化する。
「北部の経験が活きますね。帝国も王国も、そして王国の属国も、支えられるなら支えましょう」
──ナザリック勢の軽い気持ちの援助は、しかし現地では奇跡としか言えない治水工事となり、王国直轄地の安定に直結することとなった。
/*/リ・エスティーゼ王国宮廷・王座の間/*/
ザナック国王は玉座に座り、側近の報告を聞きながら額に皺を寄せていた。
「……北部の治水工事だけでなく、直轄地まで魔導国が手を出しているとは……」
側近が慎重に答える。
「陛下、現地の報告では、魔導国の者たちは超位魔法や巨大化した力で、河川の流れや堤防を即座に整えたとのことです。まるで天変地異のように……」
ザナック国王は目を見開き、手元の書類を握りしめる。
「なぜ、これほどの援助を? まさか、ラナ―太守が何か口添えを……?」
側近は小さく頷く。
「可能性は高いと思われます。ラナ―太守は、王国の属国や隣接領土の安定を重視しています。ナザリックとの関係を通じ、援助を依頼した可能性も否定できません」
王は深く息をつく。
「……だが、これほどの支援は、帝国や王国の国内事情にも大きな影響を及ぼす。農業・治水・防衛の全てに魔導国の力が介入するとなれば、我が国の自治や権威も揺らぎかねん」
側近は口を慎みつつも続ける。
「陛下、魔導国の力を恐れるのではなく、利用の可能性を考えるべきかと……彼らの援助を受け入れつつ、我々の主権を保つ道を模索することが重要です」
王は玉座に深く腰を下ろし、遠く南の治水地帯を思い描く。
「……なるほど。だが、油断はできん。魔導国の行動一つで、国内政治は一変する。ラナ―太守とナザリック勢の狙いを見極めねば……」
ザナックは、天変地異とも言える魔導国の援助の背後に、ただの善意だけではない政治的な思惑があることを察し、戦々恐々としながらも慎重な対応を考え始めた。
そして、戦々恐々としつつも慎重な対応を考えた末、ザナックは小声で呟いた。
「……取りあえず、感謝の令状を送るか」
「それがよろしいかと」
玉座の間には沈黙が訪れ、王国の未来と魔導国との微妙な力関係が静かに交錯するのであった。