オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

62 / 395

ひゃー勤労感謝の日まで投稿まてねぇぜ!



シェケラートをどうぞ

 

 

/*/ ナザリック地下大墳墓 第9階層 ジョンの私室 /*/

 

 

静謐な夜の帳が、第9階層を包み込んでいた。

天井に浮かぶ魔導燭が柔らかく揺れ、琥珀の光が部屋の黒檀の机と深紅の絨毯を照らしている。

ジョンは執務を終え、湯気を立てるカップを手にしながら一息ついた。

 

その時――重くも規律正しいノックの音が響く。

 

「――入室ヲ願ウ。」

 

低く、凛とした声。

ジョンは顔を上げると、近くに控えていた一般メイドの一人に目を向けた。

 

「シククス、誰だ?」

「はい、ジョン様。……第5階層守護者、コキュートス様でございます」

 

「通してくれ」

 

「かしこまりました」

 

シククスは静かに一礼し、扉の前へと歩む。

優雅な動作で扉を開けると、冷気が一瞬、部屋の中に流れ込んだ。

そこに立っていたのは――氷の武人、コキュートス。

 

彼の周囲には淡く霜が漂い、青く光る複眼が静かに輝いている。

その威容に一瞬息をのむも、シククスは怯まず深々と礼をした。

 

「ようこそお越しくださいました、コキュートス様」

「御苦労。」

 

低くも礼節を持った声で答えると、コキュートスは一歩、部屋に足を踏み入れる。

その足音は石床に重く響き、まるで氷の鐘の音のようだった。

 

ジョンは立ち上がり、軽く手を差し伸べた。

「来てくれてありがとう、コキュートス。今日はお前に少し礼を言いたくてな」

 

「礼……デ、ゴザイマスカ?」

 

「そうだ。お前が日々、戦士として、そして守護者として尽くしてくれていること――心から感謝している」

 

コキュートスの冷気がわずかに揺れた。

その鋭い眼差しが、ほんの一瞬、驚きの色を帯びる。

 

「……アリガタキ御言葉……身ニ余ル光栄。」

 

ジョンは微笑み、隣の小卓へと視線を向けた。

そこには、ルプスレギナが用意していた銀盆が置かれている。

 

「ルプー、頼む」

「はいっす♪」

 

ルプスレギナが軽快に動き、冷やされたグラスと琥珀色の液体――シェケラートを運んでくる。

氷の中に閉じ込められた光が、きらめくように反射していた。

 

「ジョン様特製っすよ~。氷も〈永劫凍結水〉で作った特注品っす♪」

 

ジョンはグラスを二つ取り、一つをコキュートスへと手渡した。

「さぁ、受け取ってくれ。今日は少し、肩の力を抜いてくれ」

 

「……主ト盃ヲ交ワス……誠ニ、栄誉。」

 

コキュートスは慎重にグラスを持ち、四本の腕のひとつで掲げた。

「カルバイン様ニ――感謝。ナザリックノ繁栄ニ――乾杯。」

 

「乾杯だ」

 

カシン、と氷が触れ合う音。

それは戦場の剣戟ではなく、静かな友情と信頼の音だった。

 

コキュートスはゆっくりと一口含む。

氷の中を通して伝わる冷気に、わずかな甘味と深い香りが広がる。

 

「……ウム……芳醇ナ甘味……氷ノ如ク冷静ニシテ、心ヲ温メル味……。

 コレハ……主ノ心ヲ象徴スル飲ミ物……!」

 

ジョンは微笑んで応じた。

「お前がそう感じてくれるなら、うれしいよ。ナザリックを支えてくれる皆への感謝を込めた」

 

「カルバイン様ノ御心――氷ノ刃ニ刻ミ込ミマス。

 我ガ剣ハ、ナザリックノ栄光ノ為ニ在ル!」

 

その声は凍てつくように鋭く、それでいて熱を帯びていた。

ジョンは小さく頷く。

「頼もしい言葉だ。お前がいる限り、第5階層は安泰だな」

 

「当然ニゴザイマス! 氷ノ守護者タル我、ナザリックノ一片トシテ、永久ニ戦ウ!」

 

ルプスレギナが微笑みながら、もう一度グラスにシェケラートを注ぐ。

「おかわりっす。コキュートス様が飲んでくれるなんて、ちょっと嬉しいっすね」

 

「ウム……美味也。コレヲ造リシ者モ、誇ルベシ。」

 

シククスが静かに後方で控え、扉の外へ出る前に一礼した。

彼女の目には、氷の戦士と主との間に流れる信頼が、まるで儀式のように映っていた。

 

やがて、静かな乾杯がもう一度。

氷と光の音が響く。

 

ジョンは穏やかに言葉を結んだ。

「これからも、共に歩もう。氷の守護者よ」

 

「御意――カルバイン様。コノ身、凍テ尽キル日マデ、忠誠ヲ誓ウ!」

 

その言葉とともに、青白い冷気が部屋に漂い、ろうそくの灯が微かに揺らめく。

それはまるで、忠義そのものが形を持ち、そこに在るかのようだった。

 

今宵、第9階層の私室では、静かで誇り高い絆が、氷の杯の音と共に深まっていった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。