オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

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メイドさんレベルアップ

 

 

/*/ ナザリック地下大墳墓・第九階層 /*/

 

 

モモンガが目を離した隙に、驚くべき光景が明らかになった。

 

ジョンとルプスレギナは、この2か月の間で、一般メイド41名、男性使用人10名、さらにエクレア・エクレール・エイクレアーの計52名のレベルを1から6へ(+5)引き上げていたのである。

 

その目的は明確だった――万一の戦闘で倒れた際に、蘇生可能な状態にするためではなく作業速度向上による休憩時間の捻出。

1Lvよりは6Lvの方が作業速度、効率において上回るのは自明の理だった。一般メイドたちはモモンガに制限された使用されていない至高の御方の私室の掃除も通常シフトで行えると喜んだ。

 

しかし、その動きはモモンガの目から逃れることはなかった。

ナザリック地下大墳墓のマスターソースを確認した際に、52名のレベル変動が一目で発覚する。

 

モモンガは沈黙のまま、しかしその目には微かな驚きと、次第に笑みが滲む。

(……ふむ、ジョンさんもルプスレギナも、随分と熱心に働いたものだな……

 これは……感謝しつつ、褒美を考えねばなるまい……)

 

一方で、ジョンは気まずそうに足をもぞもぞさせ、ルプスレギナは得意げに胸を張る。

「さすがにモモンガ様には内緒だったんすよ~!」

「……ば、ばれたか……」

その場には、微妙な空気と、忠誠心あふれる小さな勇気の残滓が漂った。

 

「モモンガ様!御隠れになった御方の私室も通常通り清掃させて下さい!」

「……それは要検討でな」

 

 

/*/ ナザリック地下大墳墓・第九階層 /*/

 

 

モモンガは穏やかな声で問う。

「それで、ジョンさん。上がった分のステータスの割り振りはどうするんです?」

 

ジョンは腕を組み、少し考え込む。

「それなー……メイドだけ上げるのも芸がないし、設定と合わせてコックとか他の職種も整えるか?」

 

二人は、かつてのメンバーとの日々を思い返す。笑い、悩み、懐かしむ。温かくも少し切ない時間が、地下大墳墓の静寂を柔らかく包む。

 

「よし、まずは全員、最低でもメイド・オブ・オール・ワーク5レベルで統一しよう」ジョンが呟く。

「それに、得意分野を1レベル追加してやれば、個性も出るな」

 

モモンガはうなずきながら、手元のデータパッドを確認する。

「ナザリック地下大墳墓を面倒見るのに、41+10では少なすぎますからね。全員の底上げは必須です」

 

二人は夜を徹して52名分のステータス振りに取り組んだ。誰一人取りこぼさぬよう、名前を呼び、性格や趣味、得意分野を思い浮かべながら数字を割り振る。

 

「……ナース(乳母)希望が何人かいるんだな」

ジョンは眉をひそめる。

「まだ子供も作ってないのに、なんでだよ。

 

「まだ……?」

「まだだよ」

 

モモンガは少し笑みをこぼした。

「でも、本人たちの希望も尊重してやるべきでしょう」

 

二人は、単なる数値作業ではなく、思い入れと責任感を込めた“愛情のステータス振り”に没頭していく。メイド・オブ・オール・ワークの基礎を整えつつ、それぞれの個性に合わせた得意分野も加える。コック、錬金、戦闘支援、魔法補助、あるいは意外な技能――誰一人として同じ振り方はなく、それがナザリックの守護者たちの多様性を形作る。

 

ジョンは一人ひとりの希望欄に目を通し、時折吹き出す。

「お前、錬金希望だったのか。いや、納得はできるけどさ……」

「こっちは罠設置か。あの性格で本当にできるのか?」

 

モモンガは淡々と確認しながらも、どこか楽しげだ。

「やはり、こうして全員に目を配れるのは、至高の御方としての喜びでもありますね」

 

夜は深まり、食事も取らず、休憩も最小限。二人の周囲には、ただ数字と名前、そして思い出だけが漂う。過去の出来事、笑い声、失敗、努力の積み重ね――すべてが今、ステータスという形で結晶化していく。

 

「……こうして一人ひとりを見ていると、本当に可愛く思えるな」ジョンが小さくつぶやく。

「そうですね。私も、守護者たちの努力と忠誠心には感謝しています」モモンガは微笑む。

 

アルベドやシャルティアのことも、頭をよぎる。戦場では強大な力を振るい、冷徹に戦った守護者たち。しかし今は、まだ子供じみた欲望や希望、笑い、葛藤も抱える存在としての姿が、二人の胸に重く響く。

 

「……さて、次は得意分野の微調整だな」ジョンはペンを握り直す。

「ええ。希望はできる限り叶えてあげたいですね」モモンガも同意する。

 

思い入れと責任感。愛情と忠誠心。数字の背後に潜む全ての想いを、二人は一つずつ丁寧に積み上げていった。地下大墳墓の一角に刻まれる静かな時間――それは、戦場での血と破壊の余韻とは対照的に、守護者たちへの深い慈愛の証だった。

 

数時間が経ち、朝の光が地下の闇にかすかに差し込む。52名分のステータスはすべて割り振られ、誰一人として漏れはない。ジョンは最後の確認を終え、深呼吸を一つ。

「よし、これで全員、少しは強くなったな」

 

モモンガは杖を軽く掲げ、微笑みながら答える。

「ええ。これで皆、ナザリックの一角を守る力をより確実に得ました」

 

まだ誰も知らない未来のため、二人はこうして、愛情と責任を込めて数字を振り分けた。

 

地下大墳墓に静かに残るのは、戦いを経ても変わらぬ忠誠と、守護者たちの希望に耳を傾ける至高の御方の優しさだった。

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