オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

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ガチャは悪い文化

 

 

/*/ ジョンの「劇場グッズ企画」 /*/

 

 

ジョンは地図や設計図の隅に、手を動かしながらニヤリと笑った。

 

「なあ、モモンガさん。考えたんだが……各種族の若い娘を集めて、エ・ランテルの劇場で歌って踊らせるってのはどうだ?」

 

モモンガは眉をひそめ、少し間を置く。

「……それは、あり、なのか?」

 

ジョンは両手を広げ、目を輝かせる。

「ありだと思うぜ! しかも、娘たちの握手券付きグッズを売り出すんだ。握手会も開く。男衆は夢中になって通う、グッズを買いあさる……って寸法さ」

 

モモンガは頭を抱えながら、低くため息をつく。

「……なるほど、経済的には効果が見込めるんですね……しかし倫理的に大丈夫なんですか……」

 

ジョンは楽しそうに首を傾げる。

「心配すんなよ。女衆だけじゃなくて、男版も作れば、女衆だって入れ込めるだろ? みんなが楽しめるようにすりゃ問題ない」

 

モモンガはしばし沈黙したあと、苦笑を浮かべて答える。

「……なるほど、あなたは本当に、どこまでも商魂全開ですね」

 

ジョンは満足そうに頷き、地図の横で新たな計画を書き込みながら言った。

「楽しむ人も、働く人も、街も潤う。こういう文化的経済イベントも悪くないだろ?」

 

モモンガは渋い顔でうなずきつつ、内心で戦慄していた。

「……ジョンさんが考える“楽しむ”の定義は、毎度予想外すぎる……」

 

 

/*/ 劇場・小ホール リハーサル後 /*/

 

 

小ホールに鳴り響いた余韻が、やっと静けさを取り戻す。

練習を終えた若い楽団員たちが楽器を片付ける中、一人の青年がギターを抱きしめ、遠い目をした。

 

「……俺、いつかビッグになって、大ホールで演奏するんだ」

 

舞台袖で待っていた恋人らしき娘が、小さく頷く。

「うん、それまでは私が支えるからね」

 

そこに居合わせたジョンが、ずいと顔を出してツッコミを入れる。

「――って、それ典型的な“ダメなバンドマンに尽くす娘さん”じゃないですか!」

 

楽団員たちがどっと笑い、娘が頬を赤らめて抗議する。

「ち、違います! 彼は本当に才能があるんです! だから……」

 

青年はさらに熱っぽく叫んだ。

「俺の音楽は世界を変えるんだ! だから今は働いてる暇なんてないんだ!」

 

ジョンは両手を上げて笑う。

「ほら! もうフラグびんびん立ってる! こういうやつは十中八九、先に腹を空かせるんですよ」

 

モモンガが横で腕を組み、苦笑を浮かべる。

「……ジョンさん、そんなこと言いながら、こういう若者が文化を育てるんじゃないですか?」

 

ジョンは肩をすくめ、にやりと笑った。

「まあな。大ホールで本当に演奏する日が来たら、その時は俺も握手券つけてやるさ」

 

 

/*/ 宝くじとガチャ文化の伝播 /*/

 

 

「モモンガさん、宝くじをやろう」

唐突にジョンが言い出した。

 

「……宝くじ?」

 

「そうだ。村や街道町で売るんだ。夢と希望を売りつけるんだよ!

 そして次はガチャだ! 景品を入れて回す箱を作って、金貨を入れたらカラカラ回って――みんなガチャ沼に沈めてやるんだ!」

 

エルダーリッチのモモンガは眼窩の奥で青白い光を瞬かせた。

「……ジョンさん。それは、悪い文化ではないか?」

 

ジョンは身を乗り出し、拳を握りしめて熱弁した。

「思い出せ、モモンガさん! 俺たちが人間だった頃を!

 飯代をケチってでも、課金ガチャに突っ込んでいたあの頃を!

 俺たちがガチャを伝えず、誰がこの世界にガチャを伝えるっていうんだ!」

 

「……」

 

モモンガはしばし無言だった。だが、やがて諦めたように肩を落とした。

「……そう、ですね。確かに、我々の使命なのかもしれません」

 

こうして――エ・ランテルに「夢くじ」と「運命ガチャ」が設置された。

街の広場で回されるガチャ筒からは、小物の護符やお菓子が出たり、ごくまれに魔導国謹製の便利な魔法具が当たったりする。

 

「今日こそ当ててやる!」

「あと一回……あと一回で出るはずなんだ!」

「お母さん、ご飯よりガチャがしたい!」

 

――数日で、街は熱狂に包まれた。

 

ジョンは高笑いし、モモンガは静かに頭を抱える。

「……本当に広めてしまいましたね、ジョンさん」

「いいんだモモンガさん! これが文化だ! 課金は正義だ!」

 

エ・ランテルは新たな“ガチャ文明”を芽吹かせてしまったのであった。

 

 

/*/ 夢くじと運命ガチャの経済効果 /*/

 

 

エ・ランテルの広場に設置された「夢くじ屋台」や「運命ガチャ筒」は、最初こそ奇妙な見世物扱いされたが……やがて人々の心をつかんだ。

 

「この金貨一枚で、もしかしたら魔法の護符が当たるかもしれない」

「いや、私の隣の奴が小さな魔法石を引き当てていた! 次は私の番だ!」

 

農民も、商人も、兵士も、神官までも。

気が付けば、空き時間や余った銅貨を片手に、列を作ってガチャ筒を回すようになっていた。

 

そして――。

 

「アルベド様、報告です」

エルダーリッチの行政官僚が巻物を差し出した。

「わずか一月で、夢くじとガチャによる収入は銀貨十万枚に達しました。これは従来の市税を上回る額にございます」

 

「……すごいわね」

アルベドは書面を手に、目を細めた。

「民衆は不満を言うどころか、自ら進んで納めている……これは税としても理想的な形ではないかしら」

 

デミウルゴスが静かに頷く。

「加えて、経済効果も見逃せません。屋台の菓子職人は“ガチャの景品に使ってほしい”と供給を始めましたし、

玩具職人や彫金師も景品製作で新たな仕事を得ています。需要が拡大し、産業そのものが活性化しているのです」

 

アインズは玉座に深く腰を掛け、骨の手で顎を支えながら考え込んだ。

「つまり……税収増と産業振興が同時に進む、か。

 ……ジョンさん。貴方の悪ふざけが、結果的に魔導国の富を増すとはな」

 

ジョンは胸を張って、にかっと笑った。

「言ったろ? 文化なんだよ、モモンガさん! 楽しみながら国が豊かになる。最高じゃねえか!」

 

こうして――エ・ランテルを中心に「娯楽税制」とも言うべき新たな仕組みが根付き、

夢と希望を求める民衆の遊び心が、魔導国の経済基盤を強固にしていった。

 

ジョンは肩を震わせながら、両手を広げて笑う。

「(ΦωΦ)フフフ…愚かな人間どもめ」

 

モモンガが思わず身を乗り出す。

「やめろ! 本当に悪の支配者っぽく聞こえるから!」

 

 

 

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