オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

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やったことない真面目な人ほどハマるよね

 

 

/*/エ・ランテル劇場前・グッズ売り場/*/

 

 

劇場前は、華やかな衣装に身を包んだ若い娘たちが歌い、踊る喧騒で満ちていた。観客席からは歓声が上がり、グッズ売り場には握手券つきのアイテムがずらりと並ぶ。

 

その熱気の中、法国から出張に来ていたニグンが、真剣な表情でグッズを買い漁っていた。小さな袋に次々と詰め込み、目を輝かせながらレジに向かう様子は、もはや神官というより熱狂的なファンそのものだ。

 

「これは神の御心に従っての事だ。弱き人間だからこそ、さまざまな種族に寄り添い……」

ニグンは独りごちるように、購入する理由を神聖な使命にすり替えていた。

 

その時、背後から声がかかる。

「あれ? ニグンさん」

クレマンティーヌが腕を組み、けらけらと笑いながらニグンにからかう。

「えー、ニグンさん、はまっちゃったのー? いっがーい!」

 

ニグンは少し顔を紅潮させながらも、真剣な眼差しを向ける。

「貴様にはわかるまい。これは神命だ。神は見ておられるのだ」

 

灰色の瞳に硬質な光を宿したその表情は、アイドルグッズ購入の熱狂とは思えぬほど真剣そのものだ。

 

クレマンティーヌは首を傾げ、首をすくめる。

「? ニグンさん? なにいってるかわかんないよ?」

 

ニグンは少し息をつき、拳を軽く握る。

「これは、我が信仰の道である。神の御心に従い、弱き人々に寄り添うための行い……それを軽んじてはならぬ!」

 

クレマンティーヌはその硬い言葉に目を丸くするが、すぐに笑いをこらえきれず、ふふっと鼻を鳴らした。

「……うーん、相変わらず硬派だねぇ、ニグンさん」

 

ニグンは少し照れたように目を逸らすも、信仰への熱意は揺らがない。

「神は見ている。だから、私の行いも正しいのだ……」

 

クレマンティーヌは笑いを抑えきれず、肩を揺らしてくすくす笑いながら言った。

「まあ、楽しんでるならそれでいいんじゃない?」

 

劇場前の喧騒の中、ふたりのやり取りは他の観客の耳には届かないまま、少し微笑ましい空気を作り出していた。

 

クレマンティーヌは、ニグンの真剣さと熱狂ぶりを横目に見ながら、ふと心の中で呟く。

「……クソ兄貴も、こうやってはまって身を持ち崩さないかなぁ」

 

口には出さず、微かに笑みを浮かべながら、少し興味深げに考える。

「いやー、絶対ハマりそうだけど、どうなるんだろうねぇ……ふふっ」

 

隣で楽しそうに握手券つきグッズを抱えるニグンを見て、クレマンティーヌは想像を膨らませる。

「熱心すぎて、神の御心とか言いながら、実は完全にアイドルの虜になっちゃったりして……」

 

劇場前の喧騒の中、クレマンティーヌの視線は、少し悪戯めいた好奇心を帯びて遠くを見つめる。

「ふふ、もしクソ兄貴がこんな風に熱中したら、ちょっと面白いかもね……」

 

その思いに小さく笑いを漏らしつつ、クレマンティーヌは再びニグンの熱意を眺め、軽く肩をすくめるのであった。

 

クレマンティーヌは、ニグンの熱狂ぶりを見つめながら、眉をひそめるように問いかける。

「ねぇ、陽光神官長になったんでしょ? 仕事は大丈夫なの?」

 

ニグンは一瞬だけ目を細め、灰色の瞳に硬質な光を宿す。

「今日の仕事は、完璧に終わらせたとも」

 

その自信に満ちた答えに、クレマンティーヌは少し首をかしげる。

「ふーん……なるほど、神の御心もアイドルの御心も両方追いかけられるってわけね」

 

ニグンは頷きながらも、買い漁ったグッズを抱え、誇らしげに胸を張る。

「弱き人間たちのため、そして神のため――どちらもおろそかにはできぬのだ」

 

クレマンティーヌは、少し呆れたように笑いながらも、心の中で思う。

(……なるほど、神官長としてもアイドルファンとしても完璧か……恐るべし、ニグンさん)

 

劇場前の喧騒と熱気の中、二人のやり取りは、少しだけ静かで微笑ましい光景となっていた。

 

 

/*/エ・ランテル劇場前・グッズ売り場/*/

 

 

漆黒聖典の「無限魔力」と呼ばれる女性は、蓮っ葉で気だるげな口調が特徴だ。服装は魔術師風でありながら、帽子以外はほぼ下着かビキニ同然のだらっとした装い。青い髪を三つ編みにまとめ、巨大な帽子で顔の半分以上を覆っている。帽子と前髪の隙間から覗く瞳は暗く淀み、何を考えているのか読みにくい。

 

「命令に従って行動したら、責任は上が取ってくれるから……」

彼女の言葉は自己正当化に過ぎず、周囲のメンバーからは「他人に責任を押し付けるのが上手い」と皮肉られるが、本人は気にするそぶりもない。

 

ある日のこと、クレマンティーヌはエ・ランテルの劇場前でその女性を目撃した。男性アイドルの握手券付きグッズを次々と買い漁り、だらしない格好のまま両手いっぱいに袋を抱えている。目を輝かせながら品定めをする姿は、普段の冷淡な態度とはまるで別人のようだ。

 

クレマンティーヌは思わず眉をひそめる。

(……こいつもハマってるのか……あの蓮っ葉口調で気だるげな魔術師が……)

 

興味といたずら心に駆られ、クレマンティーヌはそっと近づき、にやりと笑いながら声をかける。

「……あれ、無限魔力さん? そんなに熱心に買い集めて、まるで子供みたいじゃなーい?」

 

無限魔力はちらりと帽子の隙間からクレマンティーヌを見やり、だるそうに肩をすくめる。

「……べ、別に、子供じゃないし。ただ……責任ある行動をしているだけ……」

気だるげな声ながらも、ほんの少し赤みを帯びた頬が見える。

 

クレマンティーヌはその反応にくすくすと笑い、袋の一つを軽く指でつついてみる。

「ふふ、ほんとにねぇ。命令の責任ってやつで、こんなに買い漁るんだ……やっぱり、無限魔力さんって変わってる」

 

「……変わってないし……誰もわかってくれないだけ……」

無限魔力は帽子の影からちらりと目を細め、クレマンティーヌを睨むように見つめるが、怒りではなく、少しだけ楽しそうな雰囲気が混ざっている。

 

クレマンティーヌはにやりと微笑む。

「まあ、こうして見ると可愛いもんだね。楽しんでる顔、なかなかいいじゃない」

 

無限魔力は軽く鼻を鳴らして、だらっと肩をすくめる。

「……別に、あんたに褒められる筋合いはないし……」

 

クレマンティーヌはそのもごもごした返しに満足し、少しだけ無限魔力の肩をつついて、からかいを続ける。

「でもさ、こういう無防備なとこ、ちょっと見せちゃうのも面白いんじゃない? 帽子の下の顔、もうちょっと見せてみなよ」

 

無限魔力は帽子の縁をぎゅっと握り、だらけた口調のまま応じる。

「……し、仕方ないわね……ほんの少しだけよ……」

 

クレマンティーヌは満足そうに笑みを浮かべ、劇場前の喧騒の中で、二人の間に軽い挑発と笑いが交わされるひとときが生まれた。熱狂する観客や買い漁るファンの中で、二人だけの静かな、からかいの時間だった。

 

クレマンティーヌはくすくすと笑いながら、無限魔力に問いかける。

「ところであんた、ニグンさんの護衛じゃないの?」

 

無限魔力はだらっと肩をすくめ、帽子の影からクレマンティーヌをちらりと見やる。

「ニグンさんなら、そこにいるし……」

 

指先が自然とさきほどまで二人で会話していた女性アイドルのグッズ売り場を示す。そこには、握手券付きのグッズを抱え、熱心に品定めを続けるニグンの姿がある。

 

クレマンティーヌは目を細め、ふふっと笑いながらつぶやく。

「……あら、ほんとに自由にやってるのね。護衛なのに、全然見張ってないじゃん」

 

無限魔力は気だるげな声で答える。

「……見張ってる必要なんてないのよ。ニグンさん、自分で責任持ってやってるんだから……」

 

クレマンティーヌは帽子を軽く押さえながら、肩を揺らして笑う。

「ふふ、責任感の塊が、アイドル商法にはまっちゃうんだ……面白いわねぇ」

 

無限魔力はぐったりした様子で鼻を鳴らしつつも、心の奥ではほんの少し楽しんでいるようだった。

劇場前の喧騒と観客の歓声に包まれながら、二人は静かにニグンの様子を見守る――からかい心とちょっぴりの羨望を交えて。

 

 

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