オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

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測量海岸線

 

 

/*/ 測量国外編・アーグランド評議国沿岸/*/

 

 

ジョンは双眼鏡を手に、穏やかな波が打ち寄せるアーグランド評議国側の海岸線をじっと見つめていた。

「ふむ……ここが主要港か。沿岸の地形、砂浜の幅、潮の満ち引きも押さえておく必要があるな」

 

傍らに控える冒険者組合の幹部は、少し戸惑った表情で言う。

「はぁ……何をやっているのか、現地の者たちは理解できていないようでして」

 

ジョンは軽く肩をすくめ、冷静に応える。

「なら文句を言われる前に、測量できる分は測量してしまえ。効率が大事だ」

 

幹部は小さく頷き、測量用具を広げる。

「承知しました、カルバイン様……我々の理解を超える手際ですね」

 

ジョンは波打ち際に足を踏み入れ、潮に濡れた砂の感触を確かめながら、海岸線をなぞるように地図に記録を付ける。

「潮流の影響も考慮する……ここは浅瀬が広がっているから、艦船の接岸には注意だな」

 

幹部はメモを取りつつ、ふと心配そうに呟く。

「……向こうの評議国、何も言ってこないのでしょうか」

 

ジョンは微かに笑みを浮かべる。

「言ってくるまでに必要な情報は全部取る。それがこっちの作戦だ」

 

その視線の先では、港湾の建物や倉庫、船着き場の位置が一目でわかる。小型の魔導観測装置を設置すれば、潮の流れや船舶の出入りも正確に把握できる。

 

「よし……浅瀬の深さも確認完了、砂浜の幅も計測済み。次は水流の変化と波の周期を記録だな」

ジョンは手元の魔導器具を操作し、波のリズムや潮の流れを数値化する。

幹部はそれを記録しながら、ジョンの手際の良さに改めて感心する。

 

ふと沖合に小さな漁船が現れ、評議国の漁師たちが作業を始める。

「……向こうに見えるのは漁師か。警戒心はまだ薄いな」

ジョンは微笑みながら呟き、観測用の魔法を遠隔で展開して波や船の動きを正確に把握する。

 

幹部は少し心配そうに尋ねる。

「……万が一、向こうに気づかれたら」

 

ジョンは肩をすくめ、冷静に答える。

「気づかれる前に情報を取ればよい。後で文句を言わせる暇もないようにするのが、計画というものだ」

 

太陽が海面に反射し、光の帯が砂浜を照らす中、ジョンは測量を続ける。

評議国側の目も、まだ気づかぬうちに――ナザリックの作戦は着々と進んでいった。

 

波音が穏やかに響く沿岸で、ジョンの冷静な目と、魔導器具が描く正確な地図。

これにより、後日行われる港湾攻略や船舶運用計画の下準備が完璧に整えられようとしていた。

 

 

/*/ アゼルシア山脈を挟んで帝国側の北の海岸線/*/

 

 

険しい峰々を背に、ジョンは手にした古い地図を広げ、皇帝ジルクニフを見つめた。

「ジル~、この地図を基に魔導国の測量隊に調査させてくれよ」

 

ジルクニフは額に皺を寄せ、少し苛立った声で答える。

「……何を言ってる。正確な地図を作られたら、我が帝国の戦略が丸裸になるではないか!」

 

しかし、ジョンは軽く肩をすくめ、微笑を浮かべながら言った。

「ふふ、見ただけで、うちの測量技術が凄いってわかるお前もすごいんだぜ」

 

ジルクニフは眉をひそめながらも、ジョンの言葉と測量用具を前にして、思わず感嘆の息を漏らす。

「……確かに……この精密さは……我が目を見張るものがある」

 

ジョンはさらに付け加える。

「出来た地図はやるからさ、うちの冒険者の測量隊に測量させてくれよぉ~」

 

ジルクニフは頭を抱え、悔しげに舌打ちする。

「ぐぬぬ……嫌だが……この精密な技術を目の当たりにしては、拒否もできぬ……測量技術を指導するのと引き換えだ!」

 

こうして、帝国側の皇帝も半ば呆れながら、魔導国の測量隊の進入を許すことになった。

 

ジョンは満足げに地図をなぞり、険しい海岸線の入り江や崖、浅瀬の位置まで正確に把握していく。

冒険者の測量隊は魔法で補助された精密機器を駆使し、波の干満や潮流の変化まで記録していった。

 

帝国側の警戒心を逆手に取りつつ、魔導国は北部海岸線の測量を着々と進め、ジルクニフは悔しげに眉をひそめつつも、測量隊の手際と技術の高さに舌を巻くしかなかった。

 

 

/*/ 各国海岸線測量作戦/*/

 

 

魔導国の計画は北部帝国だけに留まらなかった。ジョンは次々と指示を下し、各地の海岸線の測量を着々と進める手はずを整える。

 

「法国と竜王国にも、我が冒険者の測量隊を送り込め。沿岸の地形、港湾設備、潮流の変化まで、すべて記録するんだ」

傍らの幹部は驚きつつも、ジョンの指示に従って各国の海岸線へ測量隊を派遣する。

 

法国の沿岸では、冒険者たちが小型の魔法装置まで用い、断崖や砂浜の幅、波の強さまで精密に測量。

竜王国では、ビーストマンの活動も考慮しつつ、沿岸の地形や船舶の接岸可否まで記録された。

 

一方、ローブル聖王国については、ジョン自らがカルバイン様を称える会との協力を取り付ける。

「会との協力で、地元の協力を得やすくなる。礼節を重んじつつ、正確に測量だ」

会の協力を得た測量隊は、港湾や防波堤、沿岸の丘陵地帯まで隅々を記録し、効率よくデータを収集した。

 

ジョンは各地から送られてくる報告書に目を通しながら、冷静に分析を続ける。

「各国の海岸線を把握すれば、魔導国の交易や防衛計画も万全になる。誰も文句を言う前に、必要な情報は全部押さえるさ」

 

こうして、魔導国の測量隊は国外各地で精密なデータを収集し、ジョンの戦略的視野はさらに広がっていった。

各国はその正確さと手際の良さに驚きつつも、気づかぬうちにナザリックの計画の一部に巻き込まれていくのだった。

 

魔導国は国外測量の手をさらに拡大した。次の対象は、警戒心の強い都市国家連合の海岸線である。

「都市国家連合側も、冒険者測量隊に任せろ。誰にも気づかれず、正確に海岸線を押さえるんだ」

 

幹部たちは顔を見合わせる。

「……完全に秘密裏に、ですか?」

「もちろんだ。観光客や警備に見つかっても困る。誰も疑わずに測量できるよう、魔法と変装も駆使する」

 

冒険者測量隊は小型の魔法装置と幻術を用い、夜間や人の少ない時間帯に沿岸を測量。

波打ち際の入り江、船着き場の構造、潮流や風の向きまで記録され、魔導国本国に送られる。

小さな隠し船や幻影を使って、人目につかずに沿岸データを採取するその手際に、隊員たちも驚きを隠せなかった。

 

ジョンは本国の指揮室で、各地から送られてくる精密な測量データを確認しつつ、冷静に呟く。

「都市国家連合も、気づく前に押さえておけば情報は完璧だ。これで魔導国の海洋戦略は万全……ふふ、海の向こうが楽しみだ」

 

こうして、魔導国の冒険者測量隊は帝国、法国、竜王国、ローブル聖王国に加え、都市国家連合の沿岸も秘密裏に測量し、ナザリックの計画は国外各地で静かに着実に進行していった。

 

 

/*/ 都市国家連合・インシマウの失踪/*/

 

 

魔導国の冒険者測量隊は、都市国家連合沿岸のさらに奥地へ東へ進んでいた。

湿地帯が広がり、霧が立ち込める河口沿いの町――インシマウ。ここが彼らの最後の立ち寄り地となった。

 

町に足を踏み入れた冒険者たちは、荒れ果てた街並みと、静まり返った通りに薄気味悪さを覚える。

だが、任務の緊張と好奇心が、彼らを押し留めることはなかった。

 

その日の夕方、測量隊が魔法で河口周辺の地形データを取得している最中、町の住人と思しき影が近づいてくる。

「……こちらを見ろ……」

目がぎょろりと魚のように光る、異様な者たちが立っていた。両目が異常に大きく、光を反射してぎらついている。

 

測量隊は驚き、警戒するも、瞬時に全員の視界を奪う幻影や魔法が町の者たちによって展開される。

そのまま連絡は途絶え、調査に向かった後続隊も町の入り口で濃霧と幻覚のような現象に阻まれ、消息は掴めなかった。

 

本国に戻る報告もなく、魔導国の幹部たちは不安を募らせる。

「……インシマウか……あの湿地に囲まれた町に、何か異常な力でも……?」

「冒険者たちの全員が、忽然と姿を消した。河口の地形も、データも一切送られてこない」

 

ジョンは淡々とした声で呟く。

「……ふむ。都市国家連合の沿岸、奥地に何か想定外の存在がいるようだな……」

 

こうして、インシマウを最後に、都市国家連合側の測量隊は消息を絶った。

両目が魚のようにぎょろりと光る町の住人――その異様な存在は、魔導国の計画に未知の影を落とすこととなる。

 

 

/*/ 国外測量に潜む想定外の存在/*/

 

 

インシマウの一件を受け、魔導国の幹部たちは情報を整理していた。

「どうやら、想定外の存在が潜む場所は、都市国家連合だけではないようですな……」

 

ジョンは冷静に地図を広げ、各国の沿岸データを確認する。

「帝国側でも、沿岸の一部の湿地帯や崖地に、魔法的な障害や奇怪な反応が記録されている」

幹部は頷く。

「王国、アーグランド評議、ローブル聖王国、法国、竜王国でも、局所的にデータの欠落や異常がある場所があります」

 

ジョンは指で地図上のポイントをなぞりながら言った。

「インシマウみたいに目に見える奇怪な存在だけでなく、魔力や幻術で隠されている場所もある。こういう場所は、測量隊の進行に予想外のリスクをもたらすだろう」

 

幹部は少し顔を強張らせる。

「つまり、我々が把握している海岸線のデータも、完全ではないということですね」

 

ジョンは眉間に皺を寄せつつも、冷静に答える。

「問題は把握した。こういう想定外の存在がいる地点は記録しておく。次の作戦では、そこに近づく前に情報を精査し、必要なら魔法や補助装置で安全を確保する」

 

各国に潜む未知の存在――湿地や河口、荒れた港や秘められた入り江――それぞれの場所に独特の異常が存在し、測量隊の行動に影を落としていた。

 

ジョンは地図を閉じ、静かに呟く。

「……なるほど、国外測量は予想以上に骨が折れそうだな。だが、全て把握すれば、魔導国の海洋戦略は完璧になる……」

 

こうして、魔導国の国外測量作戦は、想定外の存在の影を意識しつつ、慎重かつ着実に進められることとなった。

 

 

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