オーバーロード~狼(以下略)~その他まとめ   作:ぶーく・ぶくぶく

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ザナック結婚!

 

 

/*/ リ・エスティーゼ王都・王宮大聖堂 /*/

 

 

王都の中心にそびえ立つ王宮大聖堂――

夜明けとともに天頂の鐘が鳴り、白金の音が城郭と街並みに反響した。

王家の紋章旗が風を受けてはためき、街の通りには祝福の花弁が舞う。

王国と聖王国、二つの王家が結ばれる日。

その朝、空は透きとおるような青で、雲一つなかった。

 

聖堂の扉が静かに開かれる。

内部は金と白を基調とした装飾で満たされ、

天井のステンドグラスから射し込む光が、床の大理石に荘厳な模様を描き出していた。

香炉より立ちのぼる香煙は、乳香と竜涎香の調合。

王家婚儀にのみ焚かれるその香りが、祈りのごとく空へと昇る。

 

近衛騎士団が二列に整列し、槍を掲げて道を作る。

静寂の中、堂奥より現れたのは若き王――

ザナック・ヴァルレオン・イガナ・ライル・ヴァイセルフ・リ・エスティーゼ。

深紅の王衣は黒金の糸で縁取られ、胸には祖王の象徴たる宝剣章が輝く。

その眼差しは静かに、だが揺るぎなく。

戦乱の世を越え、安寧を求める王の覚悟がそこにあった。

 

やがて、白き帷の奥より、

ローブル聖王国の聖王女――カルカ・ベサーレスが歩み出た。

その衣は雪を思わせる純白。縁には聖紋を象る金糸の刺繍が施され、

光を受けて柔らかに輝く。

一歩ごとに裾が波のように揺れ、修道女たちの合唱が高まる。

その旋律は祈りそのもの――神の加護を謳う清廉な聖歌だった。

 

「神の御前において、二つの王家は一つとなる。

この結び、血の盟約にあらず。信と誓いの盟約なり。」

 

司祭の声が響く。

カルカは静かに微笑を湛え、祭壇へと進む。

その瞳には、聖女の慈愛と王女としての覚悟が宿っていた。

ザナックが一歩前に出て、その手を差し出す。

白金の光が差し込み、二人の手が重なる――

光の中で、まるで時が静止したかのようであった。

 

高司祭が聖典を掲げ、厳粛に宣言する。

「神と民の証人として、この結びをここに宣する。

 剣と祈り、法と信、王権と聖権――今ここに統べり合う。」

 

その瞬間、

大聖堂全体に王宮楽団の奏でる調べが満ち、

百を超える鐘が一斉に鳴り響く。

音は天に届き、風を揺らし、城の塔を振るわせた。

それは祝福の響き――天地が新しき盟約を讃えるかのごとく。

 

王と聖王女は互いに金と白銀の双環指輪を交換する。

指輪には両国の紋章が並び、中央には“祈りの光輪”を象る宝珠が嵌め込まれている。

この瞬間、リ・エスティーゼとローブル――

二つの国は、血にあらずして誓いによって結ばれた。

 

列席する貴族たちは沈黙のまま膝を折り、

修道騎士たちは聖剣を掲げて祈りを唱える。

聖堂の天井に吊るされた水晶灯が輝きを増し、

花道の白花が風もないのに揺らめいた。

 

カルカは静かに囁く。

「神の御加護と、王国に永き安寧を――」

ザナックはその言葉を受け止め、微笑をもって応じる。

「そして、聖王国に我が誓いを。

 この結びが、民の未来を守る楯とならんことを。」

 

鐘はなお鳴り続けた。

その音が止むとき、

王国史に新たな頁――“王と聖女の結婚”が刻まれる。

 

 

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