星の海を渡る船   作:仁倉

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再起

天候は快晴。先ほど手に入れた馬車を引く馬の歩調にも乱れはなく、車輪も小石をひっかける程度で揺れも少ない。順調だった。一行の心を除いて。

皆、どこか気もそぞろで泥濁とした飲み込みがたい感情を抱えたままである。事の発端に近い十輪寺などはもうそれどころではない、深い深い後悔に苛まれていた。エンヤの最期の声がこだまする。そしてそれが今後の暗闇を暗示しているようでならなくなり、彼女は人知れずまた身震いする。……仲間の予知を見た時点で覚悟はしていた。だが、それ以上のものを見せられることも今後は免れない。それを見た時……今回のように、相談していいものか?今回のように最悪の結果を迎えるのではないか?

エンヤの死は免れなかったのだろうか。十輪寺の脳内にはそのことだけがこびりついている。

道中皆無言だった。あの底抜けに明るいポルナレフも、場を和ませてくれるジョセフも、無言だった。

 

 

「…次を、考えねばな。」

馬車の音がガタガタ響く中小さな声でジョセフが切り出すのを皮切りに、彼らはそうだな、とぽつぽつと話し出す。

「敵はカラチにいる。だがカラチは航路上避けては通れない。」

「何かされる前に先に手を出さなきゃだよな。相手の顔が割れてるのが幸いなとこだぜ。」

「肉の芽を使われても波紋がありますし…大丈夫だと思いたいですね。」

男たちが努めて平静にそれぞれ発言する。彼らなりの配慮だろうか、十輪寺に質問が飛ぶことはなかったし、予知夢に踏み込むこともなかった。エンヤについて触れることも。

そのため十輪寺は馬車の端でうつむいて、ただ沈黙していた。何か発言するべきなのはわかっている。だが、口が糸で縫われたかのように開けなかった。

ここにきて彼女の決心が揺らぎかけていた。暗闇の中でしるべを失ったかのように、彼女は独り、取り残されていた。

 

 

 ***

 

 

結局のところ敵の具体的な能力がわからない以上どうしようもないため話はすぐに尽きた。たわいもない話をして日が暮れるまで荒れ地を突き進み、敵襲に備えて交代で見張りを立てて眠ることを継続する。エンヤがいなくなっただけで昨夜と変わらないローテーションだった。

十輪寺の担当は夜明け前の最後の時間帯。それまで、と彼女は自分のテントに入るが勿論寝付けない。ただ茫洋と、テントに背を預け座って手元を見ていた。

(私は、何のためにいるんだろう。)

予知は彼女自身を振り回してきた。小さい頃から、見ず知らずの人が事件事故にあう様を見せつけられた。防げた事例もあるにはある。だが、ほとんどは彼女のあずかり知らぬところでその通りに起こってしまっているのは明白だった。何せ彼女自身顔を覚えていないような通りすがりの相手の夢を見るのだから。コンビニ強盗を防いだ時だって、見逃せなかっただけだと思っている。知っていたから動けたのであって、知らなければよかったとも思ってしまった。

本当は、誰にも会いたくなかった。高校も電車を避けて近所を選択するしかなかった。彼女はいつもクラスメイトや顔見知りが夢に出てきませんようにと祈りながら生きてきた。そして、特別仲の良い人を作らないよう、しかし何かあったときに悪い未来から引き離せるよう適度な関係は築くように、と。

それが今、良い意味でも悪い意味でも崩れ去ろうとしている。夢のことを話せて信頼できる仲間たち。しかし、その人たちをも一緒に振り回しているこの予知夢。

十輪寺は頭を抱えてうずくまった。どうするのが最善の選択なのだろうか。

 

 

彼女が思考の悪循環にはまりそうになった時、不意に外から小さな声が聞こえた。

「…ユイ、起きてっか?」

彼女ははっと顔を上げはいと返事する。声の主はポルナレフだ。一番手に見張りをしている彼が何の用だろうか。さっとドアを開けると困ったような顔をした彼がそこにいる。

「…あー…これといって用がある訳じゃないんだけどな?ちょっと話さねぇ?入っても大丈夫か?」

きまりの悪そうな彼を十輪寺は招き入れた。隣に座ったポルナレフはしばらくの沈黙を挟む。その後に、ポツリと話し出した。

「…あんま気に病みすぎるなよ。お前がいなきゃあ、あの婆さんはもっと悲惨な最期を迎えてた。」

彼は言う。

「裏切られて死ぬより、信じ切って死ぬほうが、きっといい。」

言葉を選びあぐねているのだろう。彼はいつになく迷っているようだった。口にしている内容をまるで自分に言い聞かせるように話している様子に、彼もやりきれないのだと十輪寺は察する。

「…けれど、死なせてしまった。」

うつむく彼女にポルナレフは間をおいて静かに言う。

「それだけの覚悟だったんだと思うぜ。何としても敵に情報を渡すわけにはいかなかった。…因縁的には複雑だが、俺はあの婆さんの気持ちがちょっぴりわかる気がする。…あれは、どうにかできる問題じゃなかった。」

まあ、DIOのカリスマはわかりたくもないがな、と彼は続けて沈黙した。肉の芽で強引に狂信を植え付けられたのだ、拒絶したいのだろう。

十輪寺は言葉が継げない。ただ、足を抱えて座り込む。そんな沈み切った様子の彼女を見て、ポルナレフは再び声をかけた。

「仕方なかったとは言わない。だが、お前は最善を尽くしてくれた。それは間違いない。…だからそんな顔するな。お前だけの十字架じゃない。俺たち皆で背負うぜ。」

 

「仲間なんだから。」

 

見張りがあるからな、とそれを言ってポルナレフは出て行った。残された彼女は言葉を反芻する。こんなすぐに揺らいで脆い自分に対しても仲間と言い切ってくれた嬉しさと、申し訳なさ。勇猛果敢で先陣を切る彼が共に背負うと言ってくれた心強さ。

再び彼女は思案する。最善は一体、どこにあるのだろうか。

 

 

 

時間は経過していく。いつもの夢の時刻がやってきた。あんな夢を久しぶりに見た彼女はこの時間だけは眠らないと決めていた。足を抱えたまま、その時間が過ぎるのをただ待っていた。思考の波はポルナレフのおかげでほんの少しだが凪いできた。だが根源を止めるまでは至らない。彼女の中に深く根付いてきた考えは、簡単には取り払えない。

そんな彼女のもとにまた声が掛かる。起きてるか、と簡素に聞いてきた声は承太郎だった。はいと返事を返したら、なら出てこいと声が言う。

焚火のもとに承太郎が片足を立てて座り空を見上げている。夜空には一面の星と天の川があった。

承太郎は何も言わなかった。ただ、星を見上げていた。励ますこともない、言い聞かせることもない、責めることもない。彼らしい対応だと十輪寺は思う。

こちらから話さない限り彼は何も言わないのだろう。とつとつと彼女は言葉を口にした。

「私は、最善を探しています。皆にいい結果をもたらせる、最善を。」

「…そんなもの、ないと思うぜ。」

承太郎はそっけなく返す。

「どっちかを立てようとしてもう片方が倒れることなんてザラだ。共倒れすることだってありうる。…厄介なものを抱えて生まれてきちまったのは察してやる。が、これから先それが増えることは明白だ。」

承太郎は一瞬目を閉じて十輪寺をちらりと見た。

「抱え込むことは許さねぇ。これはお前だけの責任じゃない、お袋の命がかかってる以上俺たちの責任だ。…すべて話せとは言わない。だが1人で抱え込まれるほうが危なっかしくて見てられん。」

十輪寺は言葉に耳を傾ける。『抱え込むことは許さない』、その言葉が彼女の中の天秤を左右させる。共有することは彼女の重荷を確かに軽くする。しかし話すことで未来を大きく変えてしまっては本末転倒なのも事実である。

真剣に悩む彼女を見て承太郎は言った。

「十輪寺、悪いがお前には裁量を任せねぇとならねぇ。話すか話さないかの裁量だ。話さないことで事態が良いほうに傾くというのなら。」

 

「俺たちは信じるぜ。お前の判断を。」

 

十輪寺には返す言葉がなかった。それきり沈黙があたりを包む。こんな自分でも信じてもらえる。彼はこう言いたいのだ、抱え込むことと話さないことは違う、と。たとえ話さなくても信じてくれるのだ、この不確定要素の多い予知夢のことを。

鮮明で聡明な星が希望を与え、後押ししてくれているような気がした。

2人は焚火を挟んで、星光る夜空とはぜる炎をじっと見ていた。

 

 

 

次に起きてきたのは何とも思いっきり眠そうな様子をしたジョセフだった。あくびをしながら「なんだ、十輪寺も起きてたのォ?」と暢気に問うてくる。眠れなくて、とぎこちなく笑いかけるとふむ、と顎に手をやる。

「そんなんじゃあ明日以降に響くぞ。ほれ承太郎交代じゃ。お前もよく休むように。」

「ああ。」

承太郎はすっと男たちが使う大きいテントのほうに戻っていった。入れ代わるようにジョセフは十輪寺の横によっと腰かける。

「眠れないなら何か温かいものを飲むのがいい。わしも眠気覚ましにコーヒーが飲みたいし一式出してくれんかね?」

「は、はい」

十輪寺はネイビー・モビー・ディックにやかんとステンレスマグカップ、インスタントコーヒーに水入りの瓶を出させる。

「おー、助かる。旅において一番貴重なのは水だもんなぁ。贅沢できてありがたいわい。」

ニコッと笑ってジョセフは早速準備しにかかった。自分は何を飲もうかと思案しているとジョセフは思い出したようにおどける。

「あのとんでもないにおいの紅茶は捨てたんじゃろうな…?まさか積んでるものににおい移ってたりしてないよね?」

それはインドでのこと。とりあえず現地の食べ物に色々興味が湧いた皆が買って積載したもののなかにそれは紛れ込んでいた。エキゾチックなにやらと書かれていたその紅茶は開けた瞬間部屋に何とも言えないにおいをまき散らしてくれたので、皆でテープでぐるぐる巻きにしてまで封印したものだ。その時のありさまを思い出して思わず十輪寺も吹き出した。

「さすがにすぐ捨てましたよ!なんとかにおいも残ってないし、大丈夫です。」

なんだか、たった1日だというのに久しぶりに笑ったような心地だった。それににかりとジョセフも笑みを深めて湯を沸かす。

「…やっと笑ったの。思いつめるのがお前さんの良くないところじゃよ。」

笑みを優しいものに変えてジョセフは火を見た。そしてため息をついて言う。

「あの婆さん、最期の最期に呪いのように揺さぶりをかけていきおってからに。…大丈夫じゃよ、十輪寺。わしらは軽々しく命を危険にさらしたりしない。それは誓おう。」

暖かく包むような、暗夜に火をともしてくれるような優しい道しるべの言葉だった。

 

「勇気をもって立ち向かってくれて、ありがとうの。」

 

ココアを一杯飲んだ後にもう寝なさい、と十輪寺はテントに返された。彼女は再びテントの中で足を抱えて背を預ける。しかし先ほどまでの心細い感情はもうほとんど消えかけていた。彼の言葉とホットココアは彼女の心までも温かくしてくれている。……迷うことは悪いことでは無い。言葉に出さずともそう教え諭してくれたジョセフには頭が上がらないなとふと笑みが漏れる。

 

 

 

時刻は4時を回った。それでも十輪寺は眠る気にはなれなかった。なんとなく、彼も来てくれるのではないかという期待があったからだ。そしてそれはその通りになる。外から本当に小さな声で問いかけがあった。皆が気にかけてくれている。その事実がうれしくて彼女はわずかに笑みを持って花京院をテントに迎え入れた。

「…心配する必要はなかったかい?」

十輪寺の斜め前に座りながら花京院が苦笑する。それに彼女は首を振って答えた。

「やっと持ち直したところです。…もうひと押しほしいかな。」

おどけて返す彼女に花京院も笑い返す。

「それは大役だな。さて、僕は何を聞けばいいでしょう?」

その笑顔が嬉しいとともに、十輪寺にとっては枷でもある。この旅のきっかけは目の前の青年を死なせないがためだったのだから。十輪寺は目を伏せて、彼に問う。

「花京院は、怖くないの?」

多くを問わずとも伝わっている。花京院も目を自身の手に落として話し出した。

「…怖いさ。けれど、立ち向かうと決めた。だからこの輪の中にいるのだし、戦い抜いてみせるよ。」

ふっと笑みを見せて彼は十輪寺を見やる。

「それにまだ決まった訳じゃない。それを君は身をもって証明してくれている。君がいなかったら助からなかった命がたくさんあった。それは紛れもない事実だろう?」

「そうなのかな。」

「きっとそうさ。飛行機の乗客だって、船員だって…保健室にいた彼らだって助けたのは君じゃないか。いい加減自信を持ってくれ。」

花京院は気まずげに保健室のくだりを言う。……もう、あれから20日近く経つ。そういえばそんなこともあったなと十輪寺は笑みをこぼした。

「あの時は助けようと思ったのが間違いだった、なんて思っちゃったなぁ。」

「そうだったのかい?まあ、当たり前か。僕どう見ても悪人だったものな…」

一転、真剣みを帯びた瞳で花京院は宣誓する。

「もう、あんな卑劣なことをする自分には戻らない。必ず打ち勝ってみせる。」

そして十輪寺に笑いかけた。

「君だってそうなんだろう?恐怖に負けてたまるかって、さ。」

 

「大丈夫、一緒に乗り越えていこう。」

 

じゃあ引き続き皆には内緒でね、と彼は言い置いてテントを出て行った。相も変わらず高潔で、それでいて共感を示してくれる彼にも頭が下がる思いで十輪寺は己の手を見る。

救えた命、救えなかった命。自分にはこの小さな手とモビーしかいない。そう思っていたが、それはもう過去のことでいいのだ。

これから先を、全力をもってサポートしていこう。心に余裕が戻ってきた。

 

 

 ***

 

 

テントに花京院が戻っていくのを見送って少し経った頃、彼女は朝食の準備をしだす。そのために己の半身を呼び出すと、白鯨はあろうことか腹から浮上してきてその紺の瞳でこちらをじっと見てきた。

「…もう。縁起悪いからやめてって言ってるでしょ。」

ネイビー・モビー・ディックは鯨は鯨だが、船でもあると十輪寺は思っている。だから転覆を思わせるその動作はあまりしてほしくないのだ。半身だというのに比較的自由に出現するこの白鯨はまた地面に一旦潜って今度はちゃんとマストを上にして出現してきた。……多分からかっているのだろう。十輪寺が持ち直した後には大抵こうして腹から出てくるのだ。こういう時彼女は自身のスタンドが自立意思を持っていることに感謝する。独りではないと思えるよすがだったのだ。

白鯨は言われたものを口から出す。フライパンに皆の分のステンレスカップに食材。料理ができるわけでもなかった十輪寺だが一通りのことはこの旅のおかげでなんとかこなせるようになった。準備をしだそうとする十輪寺をよそに、モビー・ディックは何故か浮上したままでどこかへ向かおうとゆっくり泳ぎだした。

「ととと…待ってモビー、どうしたの」

モビー・ディックのパワーは言わずもがな、本体である彼女を引きずることすら訳ない。仕方なしに白鯨の向かうほうに歩き出した十輪寺の目に映ったのは。

「…わあ…」

崖の合間から昇りくる、朝日だった。暗闇を背にして彼女は今、温かい太陽のもとに立っている。

「…ありがとう。」

十輪寺にとってこの夜は、忘れられない一生の思い出になった。

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

「…で、お前ら何話してたわけ?」

カラチを目前とした馬車の中。端に座った十輪寺が眠りに落ちたのを見てポルナレフが言う。

「何のことだ。」

「はて、コーヒー飲んでただけじゃよ?」

「僕もよくわからないな…君、寝ぼけたのか?その歳で?」

「…へへっ。そ~いうことにしといてやるよォ。」

振り返って皆を見ていたポルナレフは馬車の手綱に視線を戻した。

全員どこか眠そうに見えるが、その話題について触れることは誰一人としてなく。ただ、仲間の1人がこうして安眠できていることにどこか安堵を覚えるのだった。

 

 

「うむ、わかった…。おおい!十輪寺!ちょっといいかの?」

カラチの手前で運よく電話を使えたジョセフはこれ幸いと方々に連絡を取っていた。その間他の皆は寂れた飲食店で休養を挟んでいる。そのさなか十輪寺はジョセフに呼ばれて席を立ち電話のもとに向かった。

「…アヴドゥルが話したいと言っとる。お父さんと話してることにしとくから終わったら切っていいぞ。」

言ってジョセフは仲間のもとに戻っていく。

「もしもし、変わりました。どうされたんです?」

『やあ、十輪寺。…昨日戯れに占っていたら君が随分と悩んでるようだったからね、杞憂だといいんだが。』

その言葉に十輪寺は目を丸くした。そうでした、と回答するとアヴドゥルは笑った。

『ならば解決したのだな。それはよかった。…君は数奇な運命のもとに生まれている。だが、同時にそれを切り開いて前進するだけのパワーも持ち合わせている。占うまでもない。』

 

『再会するのが楽しみだよ。皆にもそう伝えておいてくれ。』

 

先を灯す炎そのものからの激励にはい、と返事を返した。傷の具合は回復傾向、あと少しで皆が再び揃う。十輪寺にはそれが、不謹慎かもしれないけれど楽しみでならなかった。

 

 

 ***

 

 

「…十輪寺、すまんが頼むぞ。」

「大丈夫です。注意してあの男を見つけ出します。先手は取られるわけにはいかないですからね。」

カラチの標識が見えたところでジョセフが皆に号令をかける。敵の能力は不明。肉の芽を何らかの方法で植えてくるということしかわからない。十輪寺は波紋の呼吸を最大限集中して練り上げていた。

馬車が街の入り口の露店の立ち並ぶ一角に入った。夢で見た光景が思い浮かぶ。看板の位置、張り紙の配置が酷似している。

(何としても守ってみせる。)

この手で命を救うのだ。そう決意改にしようとした時だった。

 

 

不意に手に違和感を感じた。まるで手を合わせて拍手をしている時のような軽い衝撃が数度。波紋ではない。妙な感覚に十輪寺は首をかしげる。

そして道の真ん中に、1人の男が拍手をしながら堂々と立っていた。

「…あの男です!」

十輪寺は小さく鋭く皆に告げた。手を上げ目を閉じて馬車の前に立ったその男を見て皆さっと警戒を強める。一行は馬車を止めカラチの大地を踏んだ。

「…あー…、そこの方。馬車の邪魔になるから、ちと退いてくれないか」

「必要ないですよ、ジョセフ・ジョースター。」

ジョセフがわざとらしく言うのを、その男は制した。

「私の名はスティーリーダン…。そこの4人、お命頂戴いたします。」

 

「そして十輪寺結…。あなたには、私と同行してDIO様に跪いていただきます。」

 

スティーリーダンがそう言ったと同時に承太郎はすでに動き出していた。

『おらあッ!!』

スタープラチナがこぶしを一発入れて彼を吹き飛ばす―――それとともに十輪寺の体が後方に吹っ飛んだ。

「ぐあっ!?」

「何ッ!?」

窓ガラスに叩きつけられるダン。咄嗟にモビー・ディックを出現させてそれに衝突した十輪寺。

「ユイがこいつと同じように飛んだ…!?」

ポルナレフの驚く声にふふ、とスティーリーダンは不敵に笑いながら起き上がる。

「馬鹿が…説明もまだしてないというのに。もう戦いは始まっているのですよ。」

 

「彼女の脳の奥には私の『恋人(ラバーズ)』がもう潜り込んでいるのだから!」

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