星の海を渡る船   作:仁倉

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操り人形~裁きは下される~

「JOJOだけでなくあなたまでなんて、今日は何か起こるのかしらね?」

うふふと楽しそうに笑う保健医に十輪寺はハハ、と乾いた笑みを返した。

(多分…そのとおりです。)

ここは学校の保健室。十輪寺が腕の痣を理由にしてその戸を叩いたときには既に保健室には夢に出てきた面々が勢揃いしていた。

「にしても変な痣ね。何があったの?」

「…それが、よくわからなくて。」

曖昧に笑って保健医の問いをはぐらかす。十輪寺の頭の中はあの惨劇を止めなくてはの思いでいっぱい……余裕がなかった。

保健医から視線をそらすと、椅子にどっかりと座って横目でこちらを見る空条と目があった。十輪寺は内心ヒヤリとしながらも、努めて表情には出さず目礼を返す。空条は破帽を目深にかぶり直した。彼なりの目礼だろうか。

保健室の奥には、この様子を面白げに見る不良2人の姿があった。学区一の不良と柔道部のエース。傍から見ればそのように見える2人が介しているのだ。気にならないわけがないのだろう。十輪寺が目を向けると2人は慌てて目をそらした。

(全く…見世物じゃないんだから。)

つっぱっていなければ気のいい連中なのだが。なおのこと助けなければと思いを改にする十輪寺をよそに、もう1人の助けたい人物である保健医はコロコロと笑って空条と向き直っていた。

「ほほ、まあいいわ。…さて、見たところこっちの転んじゃったアワテンボさんの治療のほうが先かしらね。」

言って女医はシャキンとなるハサミを取り出した。それを見て空条は眉をひそめる。

「おい待ちな。何をする気だ……?」

「ズボンを切るのよ、手当できないわ。」

それをきいて空条はぱっと立ち上がり保健医から離れる。

「冗談じゃねーぜ、脱ぐよもったいねー。」

その様子を見て保健医はまたコロコロと笑う。セコイやつね、と言いながら今度は不良たちの方を向く。

「さあ、JOJOがズボンを脱いでる間、君たちの体温計って仮病だってこと証明したげるわ。」

そんなぁ、と声を上げる不良たちを尻目に机に向かっていく保健医。……彼らの意識が自分たちから離れたのを確認して、十輪寺は恐る恐る、空条に話しかけた。

「…あの」

「何だ。」

チラ、と横目で十輪寺を見下ろしながら空条は返答した。彼にとってはただ見ただけであろうが、十輪寺にとっては身長差もあってなかなかに威圧感を受けている。相手はゆうに190は超えているのだ。

声をかけたものの、話の糸口が見つからない。彼があの青年のことをどこまで知っているのかも、スタンドに関する知識も不明のまますべてを話すのは疑われるだけだ。仕方なく十輪寺はありきたりなことから尋ねていくことにした。

「…その怪我、どうしたんですか?」

「さっき言ってただろ。転んだ。」

多くを語らない人物だろうなとは思っていたが、ここまでとは。会話が途切れてしまう。無理くりにでも、会話を継続させる。

「…それにしては、スパッと切れているように見えますが…」

「だから何だ?」

「…ええと。」

……いい加減本題にたどり着かなくて耐えきれなくなってきた。十輪寺は意を決して、きっと空条を見上げ核心を突くことを決める。

「誰かにやられたのではないですか?…例えば、先程話していた赤髪の人。」

予想通り、空条は眉間に皺を寄せた。その射抜くような視線を一身に受けて十輪寺は肝が縮む思いをする。空条は十輪寺に向き直る。その時、彼の学ランからハンカチが1枚滑り落ちた。それに構わず空条は続ける。

「そういえば十輪寺てめー、あの場にいたな。…何を知っている?」

あの場にいたことを気づかれていた。その上名前も知られているとは予想しておらず十輪寺は思わずさっと視線をそらす。

疑われている。これでは本当にやましいことをしているみたいだ……と思ったその時、視界に先程のハンカチが映りこんだ。

「…あ」

「…ん?」

落ちた際に広がったのか。……何か、文字が書かれている。思わず声をもらした十輪寺の視線を追って、空条もハンカチの文面を目にした。

『空条承太郎 本日中にきさまを殺す 私の幽波紋で! 花京院典明』

その時だった。十輪寺が不意にカバンを引かれたような感覚を覚え、はっとして目をやるとカバンの持ち手には巻き付いた緑のか細い帯。シュルリ、とそれがほどけた。

「まさか…つけられた…!?」

「何…?」

つぶやきを耳にした空条が十輪寺の方に視線を戻そうとした時だった。不良たちの方から悲鳴が上がった。

「せ…先生!な、なにをしているんです…!!」

十輪寺と空条はさっと振り返る。そこには恐ろしく顔をゆがめ、万年筆を振るう女医の姿があった。十輪寺はバッと女医の足元を見る。――緑のきらめく帯が、女医の足に巻き付き這い上っていく。

「せ、先生!それは万年筆ですッ!!」

「万年筆ですって?!これが!万年筆にみえるの?!」

夢と同じ光景。女医にあれが、彼のスタンドがとりついた。となると次は。

「まずい…ッ!」

判断を下す前から十輪寺の体は動いていた。ぱっと女医に向かって走り出す。

「なんて!頭の悪い子たちでしょうッ!それじゃあよくッ!見てッ!」

ガボゴボと口から泡を拭き異様な形相で万年筆を振るう女医。万年筆を振り回しながらフラフラと恐怖で身動きが取れない不良たちに向かっていく。

「見なさいッ!!!」 

「だめッ!!」

ヒュッと万年筆が不良めがけて振り下ろされる瞬間、彼女は保健医の体に体当りした。バランスを崩し2人はそのまま床に倒れ込む。

操られた女医よりも先に体勢を整えたのは十輪寺の方だった。さっと起き上がった十輪寺はそのまま女医の腕を後ろ手に回し、関節を決めて押さえ込む。が、しかし。保健医は奇声を上げながらその力に抗うようにギシギシと音を立てて動き出した。とても女のものとは思えぬ尋常でない力。十輪寺の額に冷汗が吹き出す。

(まずい…!このまま押さえ込んでたら骨が折れる!!)

「ひっ…!」 

「何してるんだ!逃げて!!」

今までの信じられない光景に悲鳴すら出ない不良2人を十輪寺は必死の形相で叱咤した。その声にハッとした2人は慌ててベッドから降り出口に向かう。

「ひぇぇ〜!先生がぁ〜!!」

音を立てて不良が出ていく。それを確認した十輪寺がバッと保険医から飛び退ろうとしたその時。

ズルリ、と保健医の口から緑の人型が顔をのぞかせた。これが、と十輪寺が考えたときには、人型は十輪寺の体に文字通り重なるように溶け込んでいた。

「しまっ…!」

とりつかれた。思考する前に、十輪寺は体のうちから腕が動かされるような不気味な感覚を覚える。

「何だこれは…!十輪寺ッ!!」

空条が目を見開いて身構えた。彼の呼び声がどこか遠くから聴こえるような奇妙な感覚に、十輪寺は総毛立つ思いを抱く。体が自分の意思に反して立ち上がろうとするのに必死に抗うが、体は軋みながら勝手に動き出していた。

「と、とり…っつかれ…っ!」

声すら満足に出せない。内側から喉が締め付けられる。

(これでは…呼吸も整わないッ!)

女医の持っていた万年筆を、手が拾い上げる。いまいち触った感覚がつかめない。

ギチギチと体が勝手に空条の方に向かっていく。これから自分が仕出かすであろうことを理解して、必死に抵抗を試みるがいうことを聞かない。

「空…せんぱ…逃げ…ろ…ッ」

「…チッ。」

空条は逃げる様子もなく舌打ちをして、ゆうゆうと構えを取った。その様子に焦りを覚えながらも十輪寺は自分の体に抗い続ける。

だが、それは限界を迎えた。ヒュッと万年筆を振り上げ、空条の目にめがけて腕を振り下ろしてしまう。内側から抗っている影響か女医にくらべれば鈍い動きの腕を空条は簡単に捕まえる。だが、力に関しては別だった。ギギギとそのまま振り下ろしていく腕は、空条の片手ですら止められなかった。

「うおおおッ!?」 

「ぐう…っ!」

両手を使って抵抗する空条だったがそれでも十輪寺の腕を止められず彼の頬に万年筆がくい込んでいく。

十輪寺も内から抵抗をしてはいるが、自分のどこにこんな力があったというのか。あり得ない力で空条を突き刺さんとしているのが僅かに伝わる感覚でわかった。

「ち、く、しょ…!」

「この腕力ッ…いくら何でもおかしいッ!石段でおれの足を切ったのも…!」

「そのとおり…」

静かな声が、十輪寺たちの背後から聞こえてきた。

「…あ、な、た…ッ!」

「て…てめーは!」

 

 

 

 ***

 

 

 

水を打ったような静かな声。声の方向に2人が視線を向けると、保健室の窓枠に悠然と腰掛けた赤髪の青年がそこにいた。

「やあ、さっきぶり。お二方。」

くすりと笑って手に持った操り人形を楽しげに揺らしながら青年――花京院は続ける。

「そいつにはわたしのスタンドがとりついて操っている…。わたしを攻撃することは彼女をキズつけることだぞ、ジョジョ。」

その言葉にちくしょう、と十輪寺は歯噛みする。言うなれば自分は人質として利用されているのだ。油断した。

「しかし難儀だな。わたしの”ハイエロファント”にとりつかれても抵抗できるとは。」

ちら、と十輪寺をみて花京院は形だけの関心を寄せる。彼女はそりゃあどうも、と内心吐きすてながら満足に声が出せない自分を呪った。

「き…きさまッ、な…何者だ!?」

ドスの効いた声で空条は花京院に吼える。

「わたしのスタンドの名は『法皇の緑(ハイエロファントグリーン)』。お前のところにいるアヴドゥルと同じタイプのスタンドよ…」

空条に視線を戻しながら、花京院は操り人形を揺らして答えた。

「わたしは人間だがあのお方に忠誠を誓った。」

(人間だが…?)

その言葉を聞いて十輪寺と空条は眉をひそめた。十輪寺は話が見えないため、空条は話しの先がわかったために。

「だから…」

不意にぐん、と自分の中で首が閉まるような感覚が十輪寺を襲った。――息が、出来ない。

「貴様を殺す!!」

まずい。絞め落として完全に操る気だ。反射的に理解した十輪寺は空条に向かってありったけの力で声を上げた。ここまできて能力をひた隠しにしている場合ではない。

「せんぱ…、私を、殴れ…っ!」

「何…!?」

十輪寺が声を上げるため腕の抵抗を解いたので、空条の頬には万年筆がグイグイとくい込んでいく。十輪寺の咄嗟の言葉に空条は驚いたように目を見開くが、構わず十輪寺は唸りあげた。

「早く!!突き飛ばせ…ッ!!」

「ちぃ…!」

空条は顔を歪める。彼のポリシーに合わぬ行動なのだろう。それをなんとなく理解してはいたが、十輪寺とてこのまま操られたままは許したくない。

もうすでに息ができなくなりつつある。ギッと空条を睨みつける他術はない。

……十輪寺の覚悟は伝わったらしい。険しい顔をしながらも、彼はその身から重なるように青い戦士を出現させた。

「……すまねえ。」 

(こちらこそ。)

空条が呟くと戦士は動いた。十輪寺の腹にとてつもない衝撃とともに掌底が飛ぶ。

それと同時に離される空条の手。十輪寺は後方に吹っ飛ぶ。意識まで飛ばされそうな刹那、ありったけの思いで、彼女は自身の分身を呼んだ。

『モビー!!私ごと食い千切れ!!』

思いに呼応するようにズオ、と地面から巨大な歯並びが出現した。そのまま、宙を舞う十輪寺の体に巨大なスタンドの歯がくい込む。

「何ぃ!?」

空条と花京院は、同時に驚愕の声を上げた。空条は十輪寺がスタンド使いであることに対し、花京院は自分の身をかえりみない戦法を取った十輪寺に対し。その声に十輪寺はにや……と笑みを浮かべた。思い切り食われているにも関わらず、十輪寺は至って平静だった。

ギチィ!と大きな音がして、花京院のみがうめき声を上げた。と同時に十輪寺の体から透過した緑の人型がもがき出る。

一気に体が軽くなった十輪寺はふっと自身のスタンドを消して着地し、息を乱しながらも地面に倒れ伏した保険医のそばで構えを取った。

「あんた…舐めるなよ。もう人質は取らせないッ!」

「きっ…さま…っ!!」

血反吐を吐いて花京院は十輪寺を睨みつける。その様子ににっと強がりを返して十輪寺は続けた。

「賭けに勝ったのは私だった。…モビーは私を傷付けたりしない。」

十輪寺が行ったのは自分の体の中に潜むハイエロファントだけを攻撃する事。だが、これは十輪寺自身にとってもハイリスクな賭けだった。何せ自分の体を通り抜けて攻撃させるという荒業など試したことも無かったのだから。

口から血を流し険しい表情だった花京院は、ふとその表情を嘲りの色が混じったものに変えた。

「大人しく操られていればいいものを…」

「…やなこった。」

その嘲りの意味を十輪寺は大体理解している。……口の中に鉄の味がする。大方、出ていくときにご丁寧にも喉を傷つけていったのだろう。ということは。

その言葉の意味には気が付いていない空条はそれを花京院の強がりと捉えた。

「花京院!」

空条はぐんと距離を縮め、己の青い巨人で花京院の緑の人型の首をむんずと捕えた。

「っ!」

「ちょいと締め付けさせてもらうぜ。気を失ったところで貴様をおれのじじいのところへ連れて行く…」

2人のやり取りに注意を向けつつも、十輪寺は女医を慎重に引きずりじわりじわりと戸口に向かう。空条が気を引いているうちに彼女を安全な場所に逃さなくては。

その時だった。――法皇の手から、緑の輝く液体が溢れている。

バタン、と音がして空いていた窓が閉じた。

「くらえ、我がスタンドハイエロファントグリーンの…」

「花京院!妙な動きをするんじゃねえ!!」

「危ない!!そいつを放して!!」

空条と十輪寺が同時に警戒し叫んだ。花京院が操り人形を構える。同様に法皇も手を構えた。その手の間に緑の濁流が流れ出る。

『エメラルドスプラッシュ!!』

ぐい、と法皇が手をひねった。

 

 

この光景に、十輪寺は見覚えがある。

ただし風景から倒れている人物、おかれている状況はそっくり全く異なるものだったが。

音を立てて棚に向かって吹っ飛んだ空条。緑の宝石を飛ばし、平然と立っている花京院。ガラガラと壊れる保健室の壁。

(なんてこと…)

この有様に十輪寺は戦慄した。スタンドとはこんなにも危険で恐ろしいものなのか。

ごふ、と血を吐きながら空条が辛うじて花京院を睨みつける。その有様を見て花京院は冷淡に微笑する。

「『エメラルドスプラッシュ』。我がスタンドハイエロファントグリーンの体液に見えたのは破壊のエネルギーの像!」

勝ち誇ったように花京院は空条のもとにかつかつと進み出る。

「貴様自身の内臓はズタボロよ。」

ダメージのフィードバック。十輪寺は漠然としながら、過去学んだことを思い出していた。

「そして彼女も…」

おもむろにこちらに視線を向けた花京院に、呆然としていた十輪寺ははっと身をこわばらせた。と、同時に抱えていた女医がうめき声をあげる。

「う…あ、あ」

その口からつつ、と血が流れ出るのを目撃し、空条はハッとし歯噛みする。こうなるだろうと予測していた十輪寺はギリリと歯を噛み締めて花京院を睨め上げた。

「わたしのハイエロファントは広いところが嫌いでね…強引に追い出され怒って彼らの喉を傷付けたのだ。…居合わせた貴様、強がってないで本当のところはどうなんだ?」

「…感心しているよ。久し振りに血を飲んだ。」

「それは光栄だ。もっと飲ませて差し上げよう。」

花京院が狙いをこちらに定め向き直った時だった。ガラリと音を立てて空条が上体を起こした。

「おや…?自責の念でも感じてくれたかい?これはお前の責任だ、JOJO。」

花京院にとっては十輪寺など二の次なのだろう。またくるりと空条の方に踵を返し、淡々と空条に言葉を突きつける。

「お前のせいだ。最初からおとなしく殺されていれば女医は無傷で済んだものを…」

余りの言い草に十輪寺はふつふつと怒りが湧き上がるのを感じた。

(こいつ…ッ!助けたいと思ったのが間違っていた!今この場で倒さねば!!)

夢の勇敢な瞳など、彼には無い。濁った目に冷酷さを纏ったこの男は、今倒さなければ大変なことになる。

十輪寺が玉砕覚悟で己の分身を呼び出そうとした、その時だった。

 

 

よろける体を叱咤して、破帽の不良は立ち上がった。

「…この空条承太郎は…いわゆる不良のレッテルを貼られている…」

冬の湖面のように鋭く静かな低い声。十輪寺は思わず息をのむ。

「だがこんなおれにも…吐き気のする「悪」はわかる!!」

水面が一変した。何物にも負けない大河の本流が、その声には宿っていた。

「「悪」とは!!テメー自身のためだけに弱者を踏みつける奴のことだ!!!ましてや女をっ!!」

緑の瞳は、怒りを伴った激しい光を写している。

……滅多に感情を顕にしない空条の怒号が飛ぶ。

「おめーの「スタンド」は被害者自身にも法律にも見えねぇしわからねえ……だから!!」

ビッ!と破帽のつばを一閃撫ぜながら、空条は己の覚悟を口にした。

「おれが裁く!!!」

相対する花京院は嘲りながら高らかに宣言する。

「それは違うな。「悪」?「悪」とは敗者のこと…「正義」とは勝者のこと…生き残った者のことだ!過程は問題じゃあない!負けた奴が『悪』なのだッ!」

法皇の帯が空条に向かって矢のように飛ぶ。さっと空条は横に身を躱すと、壁を走り抜けて花京院の背後を取った。法皇は、彼めがけて帯を飛ばす。――空条は、避けなかった。

ビシリ!と空条の全身を拘束した花京院は、勝ち誇ったように操り人形をかざして言った。

「とどめ食らえ『エメラルドスプラッシュ』!」

きらめきながら飛んでくる宝玉のエネルギー弾。だが、空条はニヤリと笑って分身を……青い戦士を呼び出した。

「なに?敗者が『悪』…それじゃあッ!!やっぱりィ!!」

戦士が腕で宝玉を受け止めた。

「てめーのことじゃあねーかァーーッ!!」

パァァンッ!!

戦士が腕を振り抜くと、あれほどの破壊力を持っていた翠玉が粉々に砕け散る。

「なにィ?!エメラルドスプラッシュを弾き飛ばしたッ?!」

グンッと戦士は手を伸ばす。――速い。逃げる間もなく法皇は首をむんずと摑まれた。

「オララララオラァ!!裁くのはッ!!」

拳のラッシュが法皇を直撃した。

「おれの『スタンド』だッー!!」

最後の拳は、法皇ごと天井を叩き壊すとんでもない威力だった。呼応するように、一直線に教室の窓ガラスが割れる。十輪寺は思わず悲鳴を上げ、女医を庇いながら身を伏せた。

ぱぁん、と花京院の全身から血が吹き出した。

「な………なんてパワーのスタンド…だ……」

ドサリ、と「悪」が崩れ落ちる。勝負は決したのだ。

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