ありふれた錬成師とありふれない魔槍兵で世界最強   作:ゴルゴム・オルタ

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今回何時もより少し長くなってしまいました。
本当なら何話かに分けたかったのですが、時間と尺の都合により1話分に圧縮しました。
過去編前編となりますが、誤字などがあればご指摘ください。

今回からタグに新しい項目を加えます。


第0章
魔境の主


「漂流・・・者?」

 

俺の目の前に現れた謎の女性の問いに対し、目の前で起きた突然の事で頭が混乱しつつも小さく答えた。

九死に一生を得て助かったのもあり、俺は意識を失った。

体の限界を超え、眠るように仰向けに倒れた。

 

「・・・ふむ、小僧とは言え聊か刺激が強すぎたか・・・」

 

その声の持ち主たる女性は、俺を担ぎ何処かへ歩いて行った。

彼女は俺を担ぐや、住処である城へ足を運んだ。

 

 

気が付くと、俺は見知らぬ部屋の床で横になって寝かされていた。

体には申し訳程度の毛布が掛けてあり、自分が生きていることに改めて実感した。

此処は何処なのか、先程襲って来た謎の獣は一体何なのか、俺を助けた女性は何者なのか、様々な考えが頭を過った。

すると部屋のドアが開いた音が聞こえた。

振り向くと、其処には俺を助けた謎の女性がいた。

 

「目は覚めたようだな小僧」

「貴方は・・・一体?」

「ふふ、アルスターの女を見るのは初めてか。小僧、名を何と言う?」

 

その女性に言われ、俺は自分の名前を告げるのであった。

確か外国では名前が先で名字が後であったのを思い出し、「タツヤ・シノザキ」と答えた。

俺はそう名乗ると、目の前の女性の名前を尋ねると、女性はそうかと言い話をするのであった。

 

「ふむ、どう言うべきかな。改まって名を語る等久しくてな。お主のように偏見無く名を聞く者は何時以来だろうかな。腕に自信のある戦士達は力を求め城を目指した。魔獣や亡霊は私を恐れ戦いを挑んできた。皆、私の正体を知りつつも恐れていた。」

 

その女性は、自らの事を語るのが久しぶりなのか何処か嬉しそうで、穏やかな顔と口調で語った。

俺は目の前の女性から放たれる只ならぬ気配に背筋を縮ませていた。

まるで、知っていて当然と言わんばかりにだ。

そもそも外国に行くのは初めてであり、この女性の素性等全く分からない。

それを察したのか、目の前の女性は自らの素性を語るように言った。

 

「私は世界の外側に在り続け、老いず死なず永遠にあり続ける者」

「世界の・・・外側?」

「我が名は影のランサー。異境にして魔境たる、影の国の主である。」

「ラン・・・サー?」

「まあ、異国の者であるお主が知らぬのも無理もない。見知りおくがよい」

 

俺は、ランサーと名乗る女性にここが何処かを聞くことにした。

彼女は構わんと言い、此処が何処なのかを教えてくれた。

 

此処は世界の裏側にして影の国である事。

本来であれば、此処に到達するには様々な行程を踏まえなければ辿り着く事が出来ぬ神秘の場所であると言う。

気紛れで、城を出て散歩がてら歩いていたら、俺が漂流され獣に襲われている所に立ち会ったとの事だ。

俺が地上に帰る術は有るのだが、準備に時間が掛かるとの事だ。

世界の裏側やら影の国やら知らない単語が出てくるが、目の前の彼女がとても嘘を言っているようには思えなかった。

曲がりにも命の恩人である彼女に不躾な態度をとるわけにはいかなかった。

 

「本来ならば私の許し無く生きたまま我が領地に踏み入れた者は、即座に死ぬ筈なのだが・・・お主はどうやって生きながらえておる?」

 

そう問われ俺は回答に困った。

そう言われても思い当たる節が全くない以上答えようがなかった。

 

「答えられんか・・・まあいい。如何なる理由があれ、我が地に足を踏み入れた以上すべき事がある」

 

そう言うと、突然目の色を変え何処から出したか分からない槍を俺の喉元へ突き立てた。

矛先が喉元ギリギリで止まるや彼女はこう答えた。

 

「小僧、我が領地を生きて出たくば、お主には生きる術を身に着けてもらう」

「なッ!!!!」

「我が城に無償で滞在できるとでも思ったか?経緯はどうであれ、我が領地である影の国に来た以上、お主が選ぶ道は二つだけだ」

「・・・・・!!!!」

「私の元で武術と魔術を学び生きる術を身に着けるか、今此処で死ぬかだ。選ぶがいいぞ小僧」

 

それは突然の事で、頭が追い付かなかった。

ただ、何方か選ばなければ俺は確実に死ぬという事だ。

刃物何て包丁かハサミぐらいしか握った事が無い俺が武器を持てだって!?

混乱する頭の中で俺がとった選択は、前者であった。

こんな訳も分からない所で死ぬなんて御免だ。

俺は生きて両親と会って家に帰りたい。

その一心で、彼女の元で生きる術を学ぶことを決めざるを得なかった。

 

「ふふ、安心しろ小僧。こう見えても私はこれまで多くの戦士達を弟子に取り、鍛え上げ送り出してきた身だ。お主のように一から鍛え上げ、唯の人から戦士へと育てるのもまた一興だ」

 

彼女は俺に笑ってそう言い、今日の所は休めと言って部屋を後にした。

それ以降、俺はあの人の事を便宜上、師匠と呼ぶ事にした。

生きて帰るためには師匠の下で生きる術を学ぶしかない。

その為にはどんな事があろうとやってみせると誓った。

だが、俺はこの時分かっていなかった。

師匠の鍛錬は、ハードとかスパルタ等と言った生易しいものではなく、文字通り命がけの特訓だというのも知る由もなかった。

 

翌日、師匠の元で修行が始まった。

最初は、プロのアスリートも真っ青な基礎体力訓練から始まった。

武術以前に基礎体力の練成から地獄が始まった。

しかも、与えられたノルマが達成できなければ、俺の命を貰うという通告を受けてだ。

俺はただ、死にたくない一心で必死にやらざるを得なかった。

やっていて分かったが、師匠の言う鍛錬は世間一般が思い描く安全面に考慮したもの等ではない。

一言で言うなら殺し合いだ。

世に言う生かさず殺さずなどと言った生温いものじゃない。

生かす事無く必ず殺すスタイルと言う、安全性完全度外視の明らかにヤバい教育方針だ。

まず師匠の赤い瞳から放たれる殺気が半端ない。

目力だけで人を軽く殺せそうなくらいだ。

だが、地獄はまだ始まったばかりであった。

この世界には太陽のような明るさや温かさ等無く、暗闇に覆われた冷たい世界だ。

時間の感覚が麻痺してしまうのぐらい日数の感覚がなくなっていた。

 

基礎体力が付き、今度は武器を持った戦闘訓練となった。

獲物は、師匠の長年の経験と勘を持って俺に適した武器が槍に選ばされた。

槍の特性を学ぶべく軽くレクチャーを受け、武器を持った素振りから始まった。

最初の内は俺が間違っていれば、小さい小言だったのが何時の間にか頭頂部への拳骨へと変わっていった。

世界の裏側とは言え、生きている以上腹は減る。

寝床は何とかなるが、食事事情は何とかしないといけない。

最初は師匠からの施しで最低限の食事を貰って何とかなっていたが、生きる以上食事は必要である。

そんな生活が一か月近く続き、何とか武器の扱いを得た次に、ステップアップと言わんばかりに次の段階へと強制的に進められた。

 

武器の扱いを文字通り、体で覚えた俺を待っていたのは、実戦訓練であった。

最初の敵は、ガイコツの群れ10000体であった。

この程度の敵などで梃子摺るようでは生きるなど夢のまた夢等と師匠に告げられた。

その数を聞いた時は嘘だろうと思った。

ケルトの勇士にとって数など問題などではないと師匠は言い、俺に笑い飛ばすのであった。

相手は既に臨戦態勢に入っており、最早戦う以外の選択肢などなかった。

激励なのか発破なのか分からないが、師匠は俺にこう言った。

 

「小僧!!お主の初陣とは言え戦いだ!まずは戦え!考える前に戦え!悩み惑うのは戦の後に生き残った者の特権だ!故に戦え!戦って己の生と勝利を勝ち取れ!それがケルト流だ!」

「ド畜生・・・やってやらあああああああああああ!!!!!!!!!」

 

俺はそう叫ぶと、ガイコツ兵の群れに槍を構え立ち向かうのであった。

立ちはだかる敵を前に俺は槍を振りかざし、千切っては投げ、時には蹴り飛ばし本能の赴くまま生き残る為に戦った。

その戦いの詳細は、実はと言うとはっきりと覚えてはいない。

ただ、言えるとすれば無数にあった死から奇跡的に掴み取った生還と言う勝利だけだった。

気が付けば、俺は着ていた服が破け散り上半身裸になっていた。

寧ろこの方が勝手がよかった。

何となくだが、肌を露出する事で五感が研ぎ澄まされ、迫りくる殺気や気配をいち早く感じる事が出来た。

すべての敵を倒し終えたその場には俺以外誰も立っていなかった。

それを見ていた師匠から賞賛の言葉を得るかと思ったが、更なる地獄を言い渡された。

 

「ふむ、アレを乗り切るとはな。ならば次は、翼竜と魔猪の群れを相手にしてみるとしようか」

 

それを聞いた俺は顔面蒼白となった。

 

後日、師匠の告げられた翼竜と魔猪の群れとの戦いを繰り広げられることになった。

翼竜と言う名のワイバーンと呼ばれる空を飛ぶ魔獣と、魔猪と言う名の猪の魔獣の群れの退治を俺は師匠に課せられた。

断るという選択肢は俺には無く、生き残る為に戦うしかなかった。

前日倒したガイコツ兵の群れより数は少ないが、戦闘力が段違いであった。

お陰で、全身切り傷と擦り傷だらけで体には無数の傷跡が出来ていた。

只闇雲に槍を振るうのではなく、相手の動きをよく観察し近づいて来た所をギリギリで躱しカウンターで突き刺したり、地形を利用して自分に有利な状況を作るべく戦術を練ったりした。

師匠曰く、いい加減自分の飯ぐらい自分で狩って食えと言われ、与えられた修行も兼ねて自分の食い扶持を得るのだった。

俺は、倒した魔獣の鱗と毛皮を剝ぎ取り、肉を切り出していく。

最初は慣れない手つきで中々苦戦したが、生きる為の術として身に着けるのだった

切り取った肉を只焼いて食う。

それだけだが、他に食料が無い以上、魔獣の肉を食って腹を満たし生き延びるのだった。

師匠の教え方は超を幾つ付けても足りないくらい厳しいが、生きる術を体で覚え付け教えてくれるだけ分かりやすかった。

時間を見つけては与えられた課題以外に自主鍛錬に励んだ。

魔獣と戦う以上今の体格は駄目だと思い知り、自ら鍛え上げることに決心した。

此れも生きて帰る為と思い、限界を超える為にひたすら鍛錬に励んだ。

 

魔物との実戦訓練以外にも、師匠は俺にルーン魔術を伝授してくれていた。

師匠の使うルーン魔術は、ファンタジー物でありがちな魔法の詠唱はなく、ルーン文字というのを刻むことで魔術的神秘を発現する代物だ。

それぞれのルーンごとに意味が違い、強化や発火、探索などと幅広く活用できるそうだ。

師匠が使うのは原初のルーンと言うものらしいが、何のことかよくわからなかった。

どうやら、師匠曰く俺には槍だけでなく魔術の才もそれなりにあるらしく、基礎的な事ではあるがルーン魔術なる物を伝授してくれた。

その為に、俺の体に眠る魔術回路を開くため、何やら俺の体を調べたら思いの外に魔術回路の数が多く、戦士だけで無くドルイドの適正もあると言われた。

現段階ではその領域に到達出来ない為、基本的なルーン魔術を習得する所から学ぶのだった。

 

魔法だの魔術など詳しい事は分からないが、呪文や詠唱を唱えずに発動できる便利さもあって、俺は基本的に槍を使った武術をしつつ、魔術は補助的な要素として師匠に学ぶのであった。

使える物多くは無いが、基礎部分だけ身に着けた。

だが、この時ある問題があった。

師匠の服装である。

俺にルーン魔術を伝授する際の服装は何故か、何時もの全身タイツ(師匠曰く戦装飾)ではなく、長い髪を短く束ねて普段掛けない眼鏡を掛け、色気のある女教師とも言えるスーツ姿であった。

普段の服も大概目のやり場に困るが、此れもそれと同じぐらいであった。

思春期の少年である俺には刺激が強いのだが、それを分かってやって来る師匠も師匠である。

修行と言う命がけの戦いの後は、師匠が俺にルーン魔術を使って体力を回復してくれていたが、傷跡だけは体に残っていた。

槍を使った戦いに魔術を加えてやってみた所、以前と違い効率よく魔獣を倒すことができるのが新たに分かった。

 

師匠から槍を使った戦いと魔術を伝授して幾らか月日がった。

この時になると、今何年何月なのか忘れて唯ひたすら自身の鍛錬に励んでいた。

最初の頃は師匠への返事が「はい」から何時の間にか「応!」になっていた。

自分でも驚くぐらい師匠の言うケルト流に染まっていたようだ。

俺の体格は以前までのごく普通の一般人の体格からアスリートもビックリな引き締まった体付きになっていた。

筋骨隆々とはいかないが、無駄な物は削ぎ落されやや細身ではあるが自分でも驚くぐらいマッチョになっていた。

装備面も城の武器庫から選び自分に合った物を探す。

師匠の許可もあり好きに使えと言った。

今では上半身裸でなくとも五感を研ぎ澄ませることができ、ルーン魔術を活用した戦術を練り上げる事が出来る。

 

そう思っていた時であった。

師匠が俺が滞在する部屋に突然現れた。

 

「今からお主の最終試験を行う、着いて来い」

 

そう言うと俺は師匠の後を追って城の外へ出た。

ついていった先は俺が流れ着いた何もない浜辺であった。

すると、師匠は手にした槍を海に目掛け投擲した。

同時に巨大な水柱が立ち上がり巨大な怪物が現れた。

その大きさは10メートルは有ろう巨大な魔獣であった。

 

「お前に課す最後の試練は海獣クリードとの一騎打ちである。見事果たして見せよ」

「応!!!!」

 

師匠にそう答えると俺は、目の前に立ちはだかる海獣クリードに対し槍を構え闘志を燃やす。

初めは魔獣に対し恐怖心を抱いていたが、今では強敵を前にして闘気を滾らせている。

恐怖心に対し、逃げずに敢えて立ち向かう事で理性や正気を失う事無く戦えるのだ。

俺はこれまで培ってきた経験と五感、鍛え上げた体と教わった魔術すべてを駆使して戦いに挑むのだ。

 

「行くぞ海獣クリード、俺とお前との最初で最後の大勝負だ。全力で来い!!!!」

「ガオオオオオオオオンンンンン!!!!!!!」

 

俺の宣戦布告に答えるかのように、海獣クリードは雄叫びを上げ答えるのであった。

海獣クリードはその巨体を生かし、自前の両椀で俺を砂浜ごと横薙ぎに大きく振り払うのであった。

俺はそれを避けるべく真上に跳躍し回避する。

奴と俺の体格は一目瞭然である以上、敢えてそれを生かした戦法を取らざるを得ない。

振り払った腕に着地するや、そのまま奴の腕を駆け上がり、生物の急所である頭部を目掛けて魔力を込めた槍を放った。

チマチマ攻撃しても埒が明かないのは分かっている。

要は大きい敵は頭を潰すだ。

一点集中で頭部だけを狙い、他の攻撃はすべて避けつつ、機会を見て頭部に攻撃し続けるのが即席ではあるが俺が考えた作戦だ。

 

これは師匠に課せられた課題の応用である。

翼竜と魔猪の群れにはリーダーと言える巨大な魔獣がいた。

他の個体と違い、色だけでなく大きさも違っていた。

幾等胴体に傷を付けても決定打には至らなかった経験がある。

その為、一点だけを狙った集中攻撃に切り替えた所、効果が現れ倒すことが出来た。

今回戦う相手はこれまで陸地で戦ってきた魔獣と違い、下半身を水場に隠し、上半身だけ水面に出している。

足場の悪さは、ルーン魔術で身体強化をしつつ、機会を伺いながら攻撃を続ける。

相手は巨体を生かした力任せな戦いしかしない為、動きが読みやすかった。

何度も頭に攻撃が集中されるのが嫌なのか、俺が鬱陶しく思ったのか急に暴れだした。

同時にそれは奴に攻撃が効いている証拠でもある。

連続で頭部に攻撃が集中されたのか、奴の頭部に罅が入っているのを見つけた。

それを見た俺は、最後の一撃を与えるべく体全体に魔力を流し込むと奴の頭上に跳躍した。

同時に、槍に全ての力を込めた渾身の一撃を放つのだった。

 

「穿て・・・抉れ・・・ぶち抜けぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」

 

渾身の力を振り絞って投擲された槍は、見事海獣クリードの急所たる頭部に突き刺さった。

海獣クリード断末魔の雄叫びを上げつつ、海面にその骸を叩きつけた。

 

「はあ・・・はあ・・・やった・・・んだよな」

 

敵の攻撃はすべて避けるスタンスを取ると言っても、巨体から繰り出される衝撃波で、少なからず体中傷だらけであった。

俺は片膝を砂浜に着け何とか息を整えた。

その一部始終を見届けていたのか、後ろから師匠が歩いてきた。

 

「見事だ小僧。否、もう小僧とは言えんな」

「・・・師匠?」

「よくぞクリードを仕留めた、褒めて遣わすぞタツヤ」

「ッ!!!!!」

 

師匠と向き合うと、俺の頭に手を置き優しく撫でた。

思わず溜め込んでいた涙が溢れ始めた。

これまでの苦労が報われた気がして凄く嬉しかった。

師匠は俺の頭を撫でつつ、とんでもないことを言い放った。

 

「幼体とは言え、お主はクリードを仕留めたのだ胸を張り誇るがいいぞ」

 

え?

幼体?

あの図体で?

さっきまで流していた涙が事切れ、頭が真っ白になった。

すると、後ろから巨大な水柱が立ちあがり、先程まで俺が死闘を繰り広げたクリードより遥かに大きい個体が現れた。

すると師匠は、撫でるのを止め槍を手にしその巨大な海獣と向き合った。

横目で俺を見るや、不敵な笑みで俺にこう言った。

 

「お主は其処で見るがいい。異境にして魔境、影の国の女王たる我が真髄をな!!!!」

 

師匠は両手に深紅の槍を手にすると、目の前の敵に対し一気に駆け出した。

そして、唯等なる魔力と殺気を放ちクリードに迫った。

 

「刮目するがよい我が弟子タツヤよ、絶技!発動!!!!」

 

師匠がそう叫ぶと両手に持つ槍に魔力が流れ、槍から溢れるかのように全体を包むと鋭利な形状へ形成していく。

そして、クリード目掛けて駆け出すのであった。

 

「槍こそが我、我こそが槍・・・刺し穿ち、突き穿つ!!!!」

 

師匠の右手に持っていた槍は凄まじい轟音と共に放たれ、相手の胴体に投擲し動きを完全に止める。

残った左手に持った槍に、師匠の魔力で更に赤く染め上がる。

同時に周囲の空気が震えるかのように振動する。

 

「『貫き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク・オルタナティブ)』!!!!!!!!」

 

凄まじい魔力、尋常じゃない速度で投擲された槍は、巨大なクリードの心臓部分を一撃で穿ち、断末魔の雄叫びを上げる暇も無くで一瞬で絶命させた。

敵を仕留めた槍は主人の元へ忠実な猟犬の如く戻っていき、師匠はその槍を掌で遊ぶように回し、左手で長く美しい髪を払うような仕草を見せた。

 

「私を殺せる者は何処だ・・・ふふっ、居る筈も無いか」

 

そう言うと師匠は何事も無かったかのように海に背を向け、俺の元へと歩いてきた。

師匠は俺の肩に手を置き、「城に戻るぞ」と言うやその場を後にする。

俺は来た道を辿り、師匠の住む城へ帰路を歩いた。

 

 

城に帰るや、風呂に入って来いと言われた。

案内された場所は大浴場とも言える広さの風呂だった。

ルーン魔術を使い、水をお湯に変換し体の汚れを洗い流し湯船に浸かった。

何か月ぶりの風呂なのか分からないほど長い事風呂に入っていなかった気がする。

これまで一度たりとも気が抜けた事が無いほど戦いに明け暮れていた為、それどころではなかった。

ゆったり湯船に浸かっていると、後ろから物音がしてきた。

まさかと思い、振り向くとは湯煙で所々隠れているが、裸姿の師匠の姿が目に映った。

 

「何をボサっとしておる、背中を流してやるから来い」

 

そう言うと師匠は手招きをしてきた。

言いたいことが山程あるが、断る訳にはいかず前を隠しつつ師匠の前に背を向け座った。

師匠は俺の背中を優しく撫でるかのように洗い流すのであった

今まで師匠から課せられた修行の数々でも緊張感にあふれたことがあったが、これは逸れ以上だ。

背後には恐らく裸姿の師匠がいると考えると、体が強張って仕方ない。

 

「背中加減はどうだタツヤよ。」

「ふぁっ!?」

 

すると、俺の背中に何やら柔らかい者が当たっている感触がした。

もしかしてしなくてもアレが当たっているのか!?

師匠のアレが当たっているのか!?

それを考えると心臓がバクバクして超ヤバイ。

俺の頭の中では凄まじいGRANDなBATTLEが繰り広げられていた。

前髪で片目を隠し、巨大な十字型の盾を持ち鎧姿の少女の盾兵が、「Arrrrrrr‼‼‼」とか「thrrrrrrr‼‼‼」等と叫びながら重火器をぶっ放す黒い靄の掛かった騎姿をした狂戦士の男の攻撃を必死に防いでいる異様な光景だ。

そんな光景を頭に浮かびつつ、ドギマギしている仕草に気が付いたのか師匠は更なる追撃を仕掛けてきた。

 

「ふふっ・・・どうだタツヤよ。普段からお主が熱く凝視しておる物が背中に当たっているぞ」

「!!!!!!??????」

 

耳元で囁くように師匠がそう呟いた。

てか何で知ってるんだ師匠!?

そりゃあ俺だって男だ、興味の一つや二つ無い訳がない。

てか師匠だって四六時中あんな全身タイツみたいな姿でいるし、大変ご立派な胸部装甲だから見ろと言わんばかりだ。

そんな物をほぼ毎日見せられてはそんな気持ちにならん方がおかしいのだ。

 

「まあいい、今度はお主の番だぞ」

「はっはひぃぃぃ!!」

 

やや上擦った声で返事をし、俺は背中を向けた師匠を洗い流す番となった。

お湯で浸かった布を絞り、あまり力を入れすぎずゆっくりと師匠の背中を洗っていく。

よく見ると師匠の髪は凄く艶のあって綺麗な成り立ちであるのが分かった。

背中姿も凄く美しく思わず触ってしまいたくなるほどだ。

まじまじと見ていると、後ろに目があるのか思うかのように、俺にこう言ってきたのだった。

 

「何だったら後ろから気が済むまで揉んでみても構わんぞ」

 

急に何を言うんだこの人は!?

すると、師匠は急に此方を向き俺の手首を握るや、自分の胸に寄せるのであった。

掌に柔らかい感触が伝わってきた。

余りの事に思考が停止した。

だが、俺の意思に反するかのように指先だけは動いて、師匠の胸を揉みしだいていた。

想像以上に柔らかく、何時までもこうしていたい感覚が脳に刺激した。

 

「ほれ、中々であろう私の胸は」

「あ・・・ああああ」

 

俺は頭から湯気が出るかのように床に倒れた意識を失った。

余りの出来事に思考がオーバーヒートしたのだった。

そんな光景を師匠は怪訝そうな顔で見て呟いた。

 

「・・・ふむ、やはりこやつは此方の分野に関しては免疫が無いか・・・仕方ない奴め」

 

師匠は俺を介抱し、体を拭き取ると自身への部屋へ担ぎ込むのであった。

 

 

目が覚めたら見知らぬ天井が視界に映った。

薄目で周りを見ると、何処かの王室かのように豪華な装飾品が並ぶ部屋であるのが分かった。

そして頭には凄く柔らかい感触が・・・。

ん?柔らかい感触・・・これは太腿?

まさかと思い見上げると、其処には俺の顔を覗き込む穏やかで優しい顔立ちの師匠が俺の顔を覗き込んでいた。

この状況、俺は師匠の太腿に頭を乗せ膝枕されているのか?

周囲の状況を把握し一瞬で理解した。

 

「ん?漸く起きたか、全く何時までも世話を焼かせる弟子だ、まったく」

「師匠?なんで・・・此処は一体・・・」

「ここは私の部屋だ」

 

起き上がろうとしたが、寝たままで良いと師匠は言った。

寝たままでいると師匠はある事を俺に告げてきた。

外への門が開く準備ができ、明日の早朝に城を出て山頂に向かうとの事だった。

それを聞いた俺は、心が躍った。

漸く帰れるのだと。

それに対し師匠は何処か寂しそうな顔をしていた。

よく考えれば師匠はこれまでずっとこの城で過ごしてきたのだ。

俺が帰れば師匠は再び一人きりの生活になるのだ。

そう思うと何とも言えない気持ちになった。

 

「私の事は気にするな、むしろお主はこれまでよく頑張ったのだ胸を張り誇るがいいぞ」

 

すると師匠は俺と出会ってこれまでの事を語りだした。

最初は取るに足りない小僧であった事。

鍛錬や修行は気まぐれで始めた単なる暇つぶしであり、あまり乗り気ではなかった。

だが、師匠から見た俺は驚くべきことに、簡単に死なないどころか生きる事を決して諦めない瞳をし、それが眩しく見えた。

悪態や文句を言わなければ、鍛錬を怠らず真剣に取り組む姿勢を見て、重い腰を上げた。

長い年月を生きてきたが、これ程までに見込み有る者は久方振りであり、気が付くと嬉しくなっていた。

自身の肉体は生きていても、魂は当の昔に死んでいる。

俺が弟子となってそこそこ欲が出てきたそうだ。

嘗て自身の槍すら授けたある男と俺が重なり、昔を思い出させる感覚すら覚えた。

気が付くと師匠から見た俺は、見立て通りどころかそれ以上の存在になっていた。

 

「全くお主といると昔の頃を思い出すよ」

「昔の事?」

「こう見えてもな、若い頃は王女だったのだぞ」

 

なるほど、道理で気品ある佇まいな訳か。

師匠からは王者の気質を感じる時があったのはその為だったのか。

俺は折角なので、師匠から色々話を聞いてみる事にした。

師匠の弟子たちの事等聞いてみたかったからだ。

構わんぞと言い、話を聞くことにした。

今何時ぐらいか分からないが、そんな事など関係ない。

明日には師匠の元を離れる身だ。

聞けるときに聞いておきたいと思い、師匠の弟子たちの事、特に槍を授けた男の事について聞いてみたかったからだ。

 

師匠の弟子たちの話を聞くにつれ、愛用の槍を授けた男の名前はクー・フーリンと言う名の戦士だそうだ。

俺は何処となくその男と似ているそうだ。

正確には、その男の若き頃にだが。

性格は違うが、眩しいまでに輝く魂はそっくりだと言った。

 

「さて、明日にはお主は此処を経つのだが一つ聞いておかねばならん事がある」

「なんです?」

「お主、女を知らぬ童貞か?」

「ブッ!!!!」

 

いきなり何を言うんだこの人は!!

そりゃあそうだけどさ、幾等何でも直球過ぎるだろう。

師匠はそうかそうかと言うと、俺を寝かせていたベッドへ押し倒すのであった。

完全にマウントを取られ身動きが取れない状態になった。

 

「この城にはお主と私以外居らんのだ。何も遠慮することは無いぞ」

「師匠!?冗談にも程がありますよ!!」

「知るか。私と閨を共にするのは一流の戦士だけなのだぞ。光栄に思うがよい」

「いや、ですから・・・・」

「私自ら筆を下ろしてやろう。その童貞、貰い受ける!!!!」

「ちょっ・・・まっ・・・アッーーーーーー!!!!」

 

こうして師匠による夜のGRAND BATTLEが幕を開けた

その日、俺は師匠によって大人の階段を上るのであった。

 

 

 

 

数時間後。

 

 

 

 

肌が艶々な師匠に対しごっそり搾り取られ干乾びた姿の俺がベッドに横たわっていた

詳しくは言わないが、これまで経験したどの戦いの中でも一番の激戦だったと言っておこう。

敢えて言う事があるとしたら、師匠との最果ての死闘は命懸けであると言っておく。

精気だけでなく生命力から魂までごっそり搾り取られるヤバいものだった。

何とか起き上がり、お互い身支度を始めた。

 

「では行くかタツヤよ」

「応!!」

 

今では定着した返事でそう返した。

色々あったが、師匠と過ごしたあの城ともお別れとなると感慨深くなった。

城を出る時俺は深く頭を下げ一礼をした。

そして振り返る事無く、師匠と影の国で一番高い山の山頂を目指した。

不思議な事に魔獣の襲撃も無く難なく山頂へ到着できた。

山の上から見ても相変わらず光など無い暗い世界であった。

師匠は、槍を地面に突き立てルーン文字で魔法陣を展開すると、目の前に巨大な門が現れた。

 

「この門の向こうにはお主がいた地上へと繋がっている。後は門に手に触れ開ければそれで帰る事が出来る」

「この門の先に・・・」

「ああ、行くがよい我が弟子タツヤよ。お主との日々、楽しかったぞ」

「師匠・・・今までありがとうございました!!!!」

 

俺はこれまでお世話になった師匠に深々と頭を下げ感謝の言葉を伝えた。

頭を上げ向き合うと、師匠は、「おっといかん、忘れる所であった」と言い、俺の右手にある物を手渡してきた。

それは、師匠が持っていたあの赤い槍だ。

驚く俺に師匠はこう語った。

 

「影の国で修行と鍛錬を行い、私から武術と魔術を学んだ者への報酬だ。」

「だけど俺は・・・」

「何、槍の一本構わんさ、それよりも私から槍を授かる者は、クー・フーリンの奴以来だからな。誇るがいいぞタツヤよ」

「師匠・・・・」

「確かに今のお主にはその槍の真価は発揮できん。だが、お主は何時かその槍を手にし戦う日がやって来るだろうな」

 

そう言うと師匠は忠告とも言える助言を俺に伝えた。

『鎖に縛られし白き獣を救え』

何やら意味深な言葉だった。

何れ分かる時が来ると思い、その事を胸に仕舞う事にした。

俺は門の前に立ち触れる前に師匠にある事を尋ねた。

それは師匠の名前だ。

会った時にランサーと名乗っていたが、何となくそれは偽名のように思えたからだ。

師匠はそういえば言っていなかったなと言い、改めて向き合うとこう告げた。

 

「我が弟子タツヤよ。心して我が真名を聞くがよいぞ。我が真名は『スカサハ』。異境にして魔境たる、影の国の女王である」

 

その名前を聞くと俺は改めて師匠にお礼を言い、門に触れその先に進んだ。

その光景を師匠が笑って見送ってくれた気がした。

門を抜けた先には、雲の隙間から朝日が差し込み目に入った。

一体何か月ぶりになるであろう朝日の輝きが目に染みた。

振り返ると其処には先程の門は無く、唯の岩陰があった。

右手には師匠から授かった槍を握っていた。

 

「帰って・・・来れたんだよな」

 

あの出来事は決して夢などでは無い。

そう思うと俺は、山を下山する事にした。

槍は魔術で隠し、服装は俺が影の国へ来た時の最初の服をルーン魔術で直した物に着替えた。

左胸に何かあると思い調べると、身分証明書があった。

パスポートが無いのは不便だが、何とかなるだろうと思いゆっくりと進んだ。

取り合えずアイルランドにあるであろう日本大使館へ向かう事を決めた。

俺は両親が無事でいるのを信じつつ、目下の街に足を運んだ。

道中、巡回中の警察官らしき人が乗る車と遭遇した。

運が良い事に日本語が分かる方であり、事情を説明し車に乗せてもらう事になった。

警察署に着き、待合室で待っていると担当の人が現れ、日本大使館と連絡が取れたと聞き、向かう事になった。

車に乗って数時間経過し、ようやく日本大使館に到着した。

同行してくれた警察官の人にお礼を言い、大使館の職員の人に連れられ中に入った。

中には日本から外交官として派遣された、内閣情報官である風鳴八紘(かざなり やつひろ)さんと会った。

俺は早速、両親の安否を確認するのだったが、その人は心苦しそうな渋い顔で俺にこう伝えた。

 

「・・・残念だが、君の両親は・・・・亡くなっている」

 

告げられたのは両親の生存ではなく訃報であった。

 

 




次回予告『炎(ほむら)』

今回登場した竜也のお師匠ですが、分からない方は「スカサハ(fate)」で検索してください。

FGO以外にもPS4『Fate/EXTELLA LINK』にて登場する人気キャラです。
既にプレイされている方も多々いると存じますが、未プレイの方はぜひやってみてください。
fateを知らない方に主人公が経験した修業がどんな物かを分かりやすく例えるならば、特撮ヒーローでかの有名なウルトラマンレオが経験した、数々の地獄の特訓フルコースを運動経験のない一般人の人間が行うと思ってください。
運動に自信のある方は是非チャレンジしてみましょう(笑)

追伸
尚、途中でリタイアする方には、某運命の夜に登場する中華飯店『紅洲宴歳館・泰山』の激辛麻婆豆腐10皿を1分で完食することを義務付けられますのであしからず。
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