ありふれた錬成師とありふれない魔槍兵で世界最強   作:ゴルゴム・オルタ

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更新が遅れてしまい申し訳ありません。
今後の展開を考え過ぎもあり、中々筆が進みませんでした。
お待たせした分の期待に応えられるか不安ですが、頑張りました。


ハウリア・ブート・キャンプ

ハウリア族を連れて亜人族の国フェアベルゲンであるハルツィナ樹海に到着した俺達一同を待っていたのは歓迎の声では無く追放の声であった。

自分たちの住む森に人間だけでなくシア達を連れてきた事にいきり立っている様子であった。

何でも、亜人族の長達から遠回しではあるが追放勧告を言い渡せれたのだった。

理由としては、亜人でありながら魔力の使えるシアの存在もある。

そのような異端とされる存在であるシアと、それを匿ってきた兎人族を同胞とみる事等断じてできず、結果追放する事が長老会議で決められたそうだ。

俺達としては、樹海の最深部にある大樹の下へ行くのが目的である。

その理由と経緯、迷宮攻略の証である指輪を見せた所、渋々ながら承諾してくれた。

一部、血気盛んな虎や熊の亜人達が反論するも、長老たちに説き伏せられ引き下がるのであった。

意外とあっさり樹海の最深部へ通してくれるものと疑問に思ったが、それには理由があった。

 

それはコハクの存在であった。

一見、コハクの姿は狐の亜人族に見えそうなのだが、彼女の本質を亜人族は理解したらしい。

亜人と呼ばれる種族には耳と尻尾があるが、コハクの存在は彼らにとって異質であった。

狐の亜人もいるのだが、他の亜人同様で尻尾は一本しか無いのに対し、コハクは九本あるのだ。

白い髪に九本の尻尾を持つその容姿を見た長老の一人である亜人がコハクに対し、恐る恐るこう尋ねてきた。

 

「貴方様はもしや、伝説に聞く『厄災の獣』なのですか?」

 

その名を聞いた他の亜人族とシア達兎人族は身震いするのであった。

彼らの素振りを見た所、どうやらこの世界の人間族でなく亜人族まで『厄災の獣』の名前と存在は畏怖される存在だと理解した。

彼らからすれば、兎人族だけでなくコハクまでも厄介事を招く存在に見えたのだろう。

コハク自身はそんな事等知った事が無いように流し、無言を保ったままであった。

結局俺達とシア達兎人族は、追放される形で亜人族の里を離れ、樹海の奥へと向かう事になった。

道中、コハクの事が気になりシアが恐る恐る声を掛けた。

 

「あの・・・コハクさん」

「なんだ?」

「コハクさんは・・・・その・・・」

「あの者達の言う通りこの世界では私はそう呼ばれている。それがどうした?」

「この・・・世界?」

「まあいい。どうせいつか話す予定だっただけだ」

 

コハクはそう言うと、自身の事をシア達に話すのであった。

元々この世界にの住人では無く、俺たちのいた世界の存在であり、エヒトによって拉致に近いやり方でこの世界に呼び込まれ世界の敵になった事。

人間から迫害され命を脅かされるのは慣れたもので、その都度返り討ちにしてきた事。

行方不明になった姉を探すために俺達と行動を共にしている事等をシア達に話すのであった。

俺はその様子を見て少しだけ驚いた。

基本的にコハクは他者と距離を取るスタンスである。

今だからこそ、俺やハジメ、ユエと親しく話せる仲ではあるがまず自分自身の事は話したりはしない。

此れは俺の勝手な予想だが、他者から迫害され畏怖される兎人族に一種のシンパシーを感じているのではないかと感じた。

同じ痛みや苦しみと理解できる物同士からこそ分かる心情なのだろうか。

俺にはそう感じるのであった。

そう思った俺は思わずコハクの肩に手を置いた。

 

「コハク・・・」

「気遣いなら無用だ。私の居場所ならもう既にあるさ」

「・・・そうか。ならいいんだ」

「ああ、竜也。お前の傍こそ私の居場所だ」

 

人前にも拘らずコハクは堂々と俺に言ってくれた。

そう思うとなんというか嬉しいやら照れ臭いやらそんな気持ちになった。

俺とコハクがそんなやり取りをしている最中、シアが突然こう言ってきた。

 

「ところで気になったんですけど、竜也さん達って一体何者なんですか?」

「そういや話していなかったな」

 

名前以外教えていなかったのもあり、移動がてら俺達の素性を話すのであった。

他のハウリア族も気になったのか俺達の話を聞くのであった。

それが済むや今度はハジメがハウリア族の今後の事について話すのであった。

まず、樹海の最深部までの案内で、俺達が彼らを守ると言うのはシアから聞かされている。

問題はその後である。

俺達は大迷宮の探索と攻略がある為、場所が分かり次第この森から離れる。

そうなれば、戦う術の無いハウリア一族は他の一族や人間族から蹂躙されるのは目に見えている。

俺の目から見ても今の彼らは余りにも弱すぎる。

であれば樹海の最深部に行くまで面倒がてら彼らを強くすることになった。

それを聞いた彼らは難色を示したが、何れにせよ彼らハウリア族に選ぶ道は二つに一つだ。

弱いまま蹂躙されるか、家族や一族を守れる程強くなるかだ。

暫く考えたのち、族長であるカムが声を上げた。

 

「ハジメ殿、タツヤ殿、コハク殿。どうか我らを強く、そして戦う術を教えてください!!」

 

こうしてハウリア族の戦闘訓練が始まるのであった。

シアはと言うと、俺達の旅に同行する為にも強くなりたいと懇願してきたのだった。

ハジメとユエは最初は拒むのであったが、条件付きで承諾した。

それは、此れから十日間でユエと戦い、一撃でも攻撃を当てられれば、俺達の旅に同行するという条件だ。

そういう訳もあり、シアはユエに任せると俺達はカムたちの戦闘訓練に移るのであった。

それぞれ、ハジメが錬成した武器を支給し、俺とコハクで武器の扱いから覚えさせた。

彼らハウリア族の強みである索敵能力と隠密能力を生かし、奇襲と連携に特化した集団戦法を身に着けて貰う予定であった。

だが、訓練は思わぬ形から壁にぶつかった。

 

「ああ、すまない・・・罪深い我らを許したまえ!!!」

 

それは、彼等があまりにも平和主義と言うか何というか、虫一匹殺すどころか魔物を仕留めても懺悔をするかのように泣き叫ぶやとても訓練にならなかった。

他にも花や虫を踏みそうになる度に飛び跳ねては悲鳴を上げていた。

そんな光景を見兼ねた俺達は、堪忍袋の緒が切れかける寸前であった。

コハクに至っては、全身から蒼い炎を吹き出し今すぐにでも燃え盛る一歩手前であった。

 

「お前達兎人族と言うのがよ~くわかった・・・・」

「同感だ。命のやり取りをするっていうのに甘ったれた考えでいると言うのがな・・・・」

「ああそうだな・・・この駄兎共にはかなり灸をすえねばな、フフフ・・・・」

「「「「「「「「ヒィィィィッ!!!!」」」」」」」」

 

その光景を見たハウリア族は体を震わせるであった。

この瞬間俺達三人の怒りが爆発した。

 

「聞け!!!!この性根まで腐りきった駄兎共!!!!テメエ等やる気あんのか!!!!」

「「「「「「「「ハイィィィィ!!!!!」」」」」」」」

「なんだその腑抜けた返事は!!!!根性見せて見ろ!!!!!」

「「「「「「「「おっ・・・押忍!!!!!!」」」」」」」」

「此れから先、脱落する者は容赦なく切り捨てる。死に物狂いで励め!!!!」

「「「「「「「「押忍!!!!!!!」」」」」」」」

 

気合が入った所で、俺はハジメとコハクにある提案をする。

それは今後の彼らの教育方針だ。

生半可な鍛え方では強くなることなどできはしない。

しかも時間が十日しかなければ、結構詰め込む必要がある。

其処で俺が考えたのは、『影の国流ケルト戦士育成方法』だ。

要するに、俺がやって来た死に物狂いの特訓と修行を彼らにすると言うものだ。

出来なければ容赦なく切り捨てる超スパルタ教育であるが、此れも彼らの為である。

指導の匙加減はハジメとコハクに一任し、俺はアドバイザーとして教育する事にした。

その内容に若干引きつつも概ね了解してくれた。

二人の承諾もあり、今度は俺が彼らの前に立ちこう叫んだ。

 

「いいか!!これから行う訓練は生死を掛けたものだ!!出来ない奴は切り捨て、出来る者のみが先を進むことが許される物だ!!わかったか!!」

「「「「「「「「押忍!!」」」」」」」」

「気合が入っていねえな!?返事は応だ!!わかったか!!!!」

「「「「「「「「応!!!」」」」」」」」

「訓練開始だ!!!!」

 

こうしてハウリア一族の存続と生死を掛けた戦闘訓練が改めて行われるのであった。

行う内容は、俺が影の国で体験した命懸けの修業の再現だ。

本家より難易度は下がるが、彼等には十分なものだ。

其れから十日間、ハウリア族の戦闘訓練と言う名の地獄の日々が始まった。

魔物の群れと命掛けの戦いや、俺達との模擬戦。

その他数々の修業と特訓を行っていくのであった。

初めはかなり苦戦しつつ辛勝ばかりであったが、徐々に学習していったのかそれなりに戦えるようになった。

魔物戦だけでなく、今後予想されるた種族との戦闘にも備え、対人戦を叩きこんでいく。

その為に、ハジメにある物を錬成してもらい、彼らに実践してもらった。

 

それは、ボクシングである。

通常のボクシングと違い、革のグローブでは無く、スパイクの付いた金属製のグローブだ。

それを付けて彼等に本格的かつ、実戦的なボクシングを教え戦わせた。

此れは元居た世界で店の常連客であった風鳴弦十郎さんから教わり、俺自身が実践したことのある特訓だ。

なんでも、弦十郎さんが子供の頃に読んだ少年漫画であったのを実際に再現した物らしく、行う相手が居なく困っていたところ、俺が行う事になった。

実際にやってみると非常に危険処か命懸けであった。

弦十郎さん曰く、「血も涙も汗も流さなくて男が磨けるかよ!!」と言っていた。

結果は引き分けであったが、何故か凄く楽しかった。

昔の事を思い出しつつ、俺達はハウリア族との訓練に励むのであった。

時にハジメがドンナーから発射されるゴム弾で意識を失った者を強制的に起こし、コハクが蒼炎と式神を使い歩みを止めた者を走らせる等、戦闘訓練は日々激しさを増していった。

 

 

戦闘訓練が始まって一週間が経過した頃であった。

ある日の夜、俺はいつも見る夢の中で彼と出会うのであった。

その人物こそ、我が兄弟子にしてケルト神話の大英雄であり、『クランの猛犬』でアイルランドにその名を轟かせたクー・フーリンだ。

 

「よお、坊主元気にやってっか?」

「兄貴!!俺は何時もと変わんねえよ」

「ははっそうりゃあよかった。」

 

何時もと変わらない顔立ちで兄貴はそう言うと、俺にこう言ってきた。

 

「まずは宝具の真名解放までは出来たみたいだな坊主」

「ああ、此れも師匠や兄貴のおかげだよ。本当にありがとうございます」

「固え事いうなって、確かにそうかもしれねえがこれも坊主の頑張りもあってだぜ。胸を張りな兄弟!!」

「応!!」

 

すると今度は結構真面目な顔になり、ある事を告げてきた。

何だと思い俺はそれを聞くことにする。

 

「だが、その槍の力はまだまだそんな物じゃねえぞ。真名解放まで行ったとは言え、良くて四割ぐらいしかまだ坊主は引き出せていねえからな」

「・・・・・・」

 

俺自身分かっていた事であった。

まだこの槍の全力を出すにはまだまだ未熟だと言うのが実感していた。

自己採点で五割行ければいいと思ったが、全開には程遠いのが分かった。

俺はまだ、師匠や兄貴の領域には遠い存在なのが分かった。

 

「まあ気長にやっていこうや。焦る奴ほど失敗するんだぜ」

「兄貴・・・・俺、もっとこれからも鍛錬して強くなっていくぜ。いつか師匠や兄貴に認められるぐらいになるまでこの槍を使いこなして見せる!!」

「へへっ言うじゃねえか。それでこそ俺の弟弟子ってもんさね。」

 

兄貴はそう言うと俺の前に槍を立てきた。

そして、こう告げるのであった。

 

「クー・フーリンの名において命ずる。我が弟弟子たる篠崎竜也を赤枝の騎士団の一員として迎え受ける!!!!」

「兄貴!?良いのかよ俺なんかが・・・」

「良いも何も師匠の下で槍と魔術を学んだ所か、槍まで授かって生きて帰れたんだろ?資格なら十分過ぎる位にあるだろ。」

 

この時俺は凄く嬉しくて涙が出そうになった。

まだまだ未熟で、師匠から授かった槍もまだ完全に使いこなせないのにもだ。

生まれた国や生きた時代が違うにも関わらず、兄貴は俺の事を弟として見てくれている。

その期待に応えるべく、俺は槍を強く握り締めるのであった。

 

「まあ変に気負う必要はないぜ。騎士団って言っても不忠さえしなけりゃ何やっても構わねえんだしよ。坊主は坊主でやりたい事やりゃあいいしな」

「兄貴・・・俺まだまだ未熟だけどやってみるよ。何時か師匠や兄貴と肩を並べる位に強くなってみせる!!!!」

「応!!がんばりな。それはそうと今後とも俺が坊主の修業を手伝うぜ」

「俺の・・・・修業?」

 

ふと思えば不可思議な事が思いつく。

何時も夢の中で兄貴と戦ってきたが、その経験が現実の世界に反映されるのか、俺の体は強くなっているのが分かった。

一体どういう原理でそうなるのか不思議で仕方なかった。

それを兄貴に聞いてみた所、意外な回答が帰ってきた。

 

「ああそれな。師匠がある奴に頼んで夢の中を通して色々手を回してんだよ」

「ある奴?誰なんだ・・・」

「まあその内分かるってもんさ。そいつを通して坊主の夢の中に俺が使いで送られるってもんさね。詳しい理屈は分かんねえがまあいいだろ」

 

何とも言えないが、俺自身強くなれるのならそれで構わない。

其れで大切な者や愛する人を守れるのであればだ。

 

「まあ安心しな。坊主の修業の相手は暫く俺がやるからよ」

「兄貴・・・よろしくお願いします!!」

「応さ。俺はスカサハの鬼婆みたいに鬼畜な事はしねえから安心しな」

「鬼婆って・・・・師匠に聞かれたら槍が降ってきますよ」

「はっ!!んなことあるわけね・・・え!?」

「ん?え?ええええええ!!!!!」

 

真上を見上げると、見覚えのある紅い魔槍が無数にあった。

 

「「ちょっ!・・・まっ!・・・えええええ!!!!!!!!!」」

 

それが豪雨のように俺達に降り注いできた。

全身に激痛が走るような痛みを感じる暇も無く俺と兄貴は串刺しになった。

 

『誰が鬼婆だ莫迦弟子が・・・』

 

薄れゆく意識の中で、師匠の怒気を含んだ低い声が耳に聴こえた。

兄貴は兎も角なんで俺まで槍が降って来たんだ?

 

 

「・・・・酷え目に遭った夢見た」

 

目を覚ますと其処は森の中であった。

横にはコハクが静かに寝息を立てながら眠っていた。

その様子を見て俺は安堵するのであった。

俺はコハクを起こさないように立ち上がり、朝食の準備を開始した。

今日は兎人族の戦闘訓練で最終試験を行う日だ。

最後まで気を抜かずに取り組んでいくのであった。

最終試験とは、俺達の手を借りずに指定した魔物を狩って来ると言うものだ。

此れまでのハウリア族では不可能であっただろうが、それは昨日までの常識だ。

 

「ボス!!お題の品仕留めてきましたぜ」

「俺は一体だけで良いと言ったが」

 

ハジメの目の前には数匹分の魔物が並べられていた。

十日前に見た軟弱な兎人族は、立派な戦士となっていた。

そう、彼らは此れまでの狩られる存在ではなく、狩る側の存在になるまで成長したのである。

体付きも大きく変化していた。

寧ろ画風が濃ゆくなったと言うか何というか。

正確には生まれ変わったと言った方がいいのだろう。

 

「兄貴!!こっちも仕留めてきましたぜ!!」

「ほう・・・よくやったぞ。素手で仕留めるとはやるじゃねえか」

「応!!此れも兄貴のご指導あっての事です」

「姐さん!!魔物の素材剥ぎ完了しやした!!」

「そうか・・・ご苦労下がっていいぞ」

「押忍!!ありがとうございます!!」

 

俺の目の前には上半身裸で、武器も持たず拳のみで仕留めたのか、逞しい筋肉を自慢するかのようにマッスルポーズを取るウサミミの男たちがいた。

コハクの目の前には魔物の牙や爪が山済みで献上されていた。

因みにだが、ハウリア族の中では俺が兄貴、ハジメがボス、コハクが姐さんと言う名が定着していた。

俺達がそう呼べと言った訳でもないのだが、彼等から率先してそう呼ばれるのであった。

最終試験は無事問題なくクリアとなった。

そんな時であった。

 

「ボス!!ご報告があります」

「言ってみろ」

「はっ!!熊人族と虎人族の集団が接近しつつあります。」

「なるほどな・・・大方こっちを狩りに来たって訳か」

 

周辺に斥候として向かっていた兎人族の若者が報告を上げた。

熊人族と虎人族の集団か。

結構思い切ったことするもんだ。

そんな中、一族の長であるカムが声を上げた。

 

「ボス、もしよろしければ我らにお任せできないでしょうか?」

「・・・・やれるのか」

「もちろんです。兄貴や姐さんに鍛えられた頂いた身、早々無様を晒したりなど致しません」

 

折角来ていただいたんだ、生まれ変わったハウリア族の力を示すいい機会だ。

彼等には実戦訓練の相手になってもらうとするか。

 

「いいだろう・・・聞け!!此れより実戦訓練を行う!!相手は熊人族と虎人族の集団だ!!」

「ほう・・・奴等、俺達にケンカを売りに来たって訳か」

「いいねえ、そうこなくっちゃなあ・・・」

「兄貴、!!奴らの相手は俺達に任せてください!!」

「姐さん!!俺達もやりますぜ!!」

「此処で戦わなくては男が廃るってもんですぜ!!」

 

カムと言い他の連中もすっかり逞しくなったもんだ。

此れなら任せてもいいだろう。

 

「元よりそのつもりだ!!派手に暴れてこい」

「ふっ良いだろう。命知らずな馬鹿共に貴様らハウリア族の力を示せ!!」

「「「「「「「「応!!」」」」」」」」

 

俺とコハクの鼓舞もありハウリア族は闘志を燃やすのであった。

結果は言うまでも無く圧勝であった。

完全にハウリア族を舐めて掛かり、彼等からの奇襲戦法で成す術も無く、熊人族と虎人族は蹂躙されていくのであった。

鍛えられた身体能力を生かし、目にも止まらぬ速さで跳躍し相手を倒していくのであった。

一部、「卑怯だ!!」とか「正々堂々戦え!!」と言う声もあるがそんな事などお構いなしだ。

俺から言わせれば、相手を舐めて掛かって、キルゾーンに誘き寄せられたのにも知らずに、ノコノコやって来る馬鹿が悪い。

戦いは何時だって命懸けだ。

卑怯?正々堂々?

糞喰らえだ。

対するハウリア族はと言うと、初の実戦にも拘らず狂気に呑まれる事も無ければ、敵をただ圧倒していった。

狂気に呑まれ理性も正気も失った戦士を『狂戦士(バーサーカー)』と言うが、彼らハウリアの戦士は、狂気に呑まれる事無く、理性も正気を保ちつつ戦いを楽しむ『天然狂戦士(ナチュラルバーサーカー)』となっていた。

別名ケルト戦士とも言うのだが。

 

「オラオラ!!そんなもんかよテメエ等の力は!!!」

「最強種を名乗るなら力を示せ!!このハウリアに!!!!」

「お前等熊人族と虎人族なんぞ、俺達兎人族の敵じゃねえんだよ!!!」

「どうしたそんなものか!?張り合いが全くねえぞ!!」

 

案の定ボコボコにされる熊人族と虎人族であった。

戦いに赴く前にカムたちには伝えていたが、トドメを刺す事無く俺は敢えて生かして返すことを選んだ。

理由としては、今回は実戦訓練であり戦争ではない。

万が一殺してしまえば、色々と収まりがつかなくなるからだ。

だから今回は敢えて見逃すことにした。

戦意を失った熊人族と虎人族の者達の前に立つと、俺達はこう言った。

 

「今回はこれぐらいで勘弁してやる」

「だが、次も見逃してもらえると思ったら大間違いだ。」

「兎人族はもはや最弱ではない、それは身をもって知っただろう。」

「分かったらさっさと失せろ!!」

「だが、忘れるなこれからもハウリア族は強くなる」

「もしも再び貴様らが戦いを挑むならば、フェアベルゲン最後の日と知れ」

 

そう言うと熊人族と虎人族は我先にと逃げ出していくのであった。

これでいい。

相手を全滅するのではなく、屈服させるには高くつくと言う認識を相手に与えればそれだけで抑止力になる。

暫く、アイツらは大人しくしている筈だ。

その間にもハウリアは更に力を付け強くなればいいのだ。

カムたちは俺達の前で跪くと、先の戦いの

 

「ボス、兄貴、姐さん!!我らの戦いは如何でしたでありましたか!!」

「上出来だ。これからも訓練を怠るな」

「俺が言えたものじゃないが、日々の鍛錬を継続あるのみだ」

「弱き者は淘汰される。悔しければ強くなれ分かったな?」

「「「「「「「「応!!」」」」」」」」

 

こうしてハウリア族はトータス版ケルト戦士として生まれ変わり爆誕するのであった。

その光景を見ていたシアは絶句し、「父様達が別人になっちゃたです!!」と叫んでいた。

尚、シアの特訓の方は無事終わったらしく、終始ご機嫌であった。

ユエはと言うとやや落ち込んでいるのか、渋々シアの同行を許可するのであった。

俺から見ても今のシアは何となくだが、初めて会った時の頃より背筋も伸びて少し自信が付いたようにも見える。

ユエ曰く、魔法の適正はハジメと変わらないが身体強化に特化しており、今後次第で大きく成長が見込めるそうだ。

その後、カム達の案内で樹海の最深部にある大樹の元へ案内されていった。

到着した俺達を待っていたのは、枯れ果てた大樹であった。

恐らく此処が大迷宮の入り口なのだろうが、全く見当がつかないのであった。

木の根元には石板があり、調べていくと裏側に窪みがあり、其処に指輪を刺すとある文字が浮かんできた。

 

『四つの証、再生の力、紡がれた絆の道標、全てを有する者に新たな試練の道は開かれるだろう』

 

色々考えた結果、この大迷宮の攻略は後回しになった。

七大迷宮の半分を攻略した上で、再生に関する神代魔法を入手しなければならないと判断したからだ。

まあ、大迷宮の所在が判明できただけでも収穫はあったと思えば、苦にはならない。

気持ちを切り替え、他の大迷宮の攻略をした後、再びこの地に来るのを決意した。

急遽、ハジメが集合を掛けた。

 

「俺達は、他の大迷宮の攻略を目指すことにする。お前達と交わした大樹への案内の約束も果たされ完了した。今のお前等なら樹海でも十分生きていけると俺は確信している」

「ボス・・・・・」

「だが、俺達は再びこの地に戻って来る。それまで、この地の守りをお前たちに任せる。いいな!!」

「「「「「「「「応!!」」」」」」」」

「それまで鍛錬でもして今以上に強くなって待っていろ。」

 

ハジメがそうカム達に告げると、「早速訓練開始だ!!」と言い励むのであった。

シアが俺達の旅に付いて来る事になったのは良いが、その理由を聞いていないのを思い出した。

改めて理由を聞こうとすると、シアは顔を赤くし体をモジモジさせていた。

 

「えっと・・・聞いても怒りませんよね・・・」

「怒らねえから早く言え」

「は・・・ハジメさんの傍に居たいんです!!!好きですから!!!!」

 

それを聞いたハジメとユエは固まり言葉を失った。

ハジメ的には結構雑な扱いをしていたのだが、シア曰く絶対に見捨てる事無くなんやかんやで世話焼きな所が好きになったそうだ。

まあ、俺もコハクと優花といった二人の女性を好きになっている手前、余り口出しできないがハジメも根負けしたのか「勝手にしろ、物好きめ」と吐き捨てるように言い、シアの同行を許すのであった。

その後、俺達はハウリア一族の見送りの元、ハルツィナ樹海を後にするのであった。

今後の予定は、一旦近郊の街に寄って準備を整えた後、ライセン大峡谷の大迷宮を攻略するのが決定した。

何時ぞや戦った帝国兵から拝借した世界地図によれば、北の方角の進むと『ブルック』という町があるらしい。

まずそこで買い出しなどを済ませる事になった。

俺自身、この世界の食事事情にも興味があり、まだ見ぬ異世界料理に期待を膨らませていた。

道中で野営の最中、シアが料理が出来ると知り作ってもらった結果、非常に美味かった。

料理を通して、シアと少しだけ仲良くなれた気がしたのだった。

 

 




相も変わらず酷い駄文ですいません。
次回予告『ブルックの町にて』


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