ありふれた錬成師とありふれない魔槍兵で世界最強 作:ゴルゴム・オルタ
眩しい光に目を閉じ、再び目を開くと其処は先ほどまでいた教室とは全く違う空間であった。
それは、石造り建築物でまるで聖堂や教会のような雰囲気が漂う場所のようであった。
周囲のクラスメイトは突然のことに困惑を隠せない表情をしていた。
俺自身も内心驚いてはいるが、努めて冷静に周囲の状況を確認するのであった。
すると、部屋の奥にある扉が開き、数名の人物が現れた。
「ようこそ、トータスへ勇者様とご同輩の皆様方。歓迎致しますぞ。私は聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申します。以後、宜しくお願い致しますぞ」
教皇を名乗る老人は配下であろう神官らしき人物同様そう挨拶するのであった。
その後、イシュタルという名の教皇の案内で大広間に移動することとなった。
周囲には豪華そうな調度品、壁画などが飾られていた。
長いテーブルがありそれぞれ席に座り、とりあえずこの世界の事と、何故俺達が召喚された理由を聞くべく話し合いをすることとなった。
「さて、あなた方を召喚する事となた理由をこれから説明していきますので、どうか最後までお聞きくだされ」
詳しい話を簡単に要約するとこうだ。
この世界トータスには人間族、魔人族、亜人族の三種族が存在し、現在人間族と魔人族は戦争状態である。
何百年も続く戦争で戦力が拮抗したかに見えた矢先、魔人族が魔力を取り入れ変質した生物、魔物を使役するようになり均衡が崩れ始めたそうだ。
このままでは人間族が滅ぶのは時間の問題であり、そんな危機を救うべくこの世界の神であるエヒトが俺達を召喚したのであった。
そんなイシュタル教皇の説明に猛然と抗議する人物がいた。
召喚時にたまたま教室にいた畑山愛子(はたやまあいこ)先生だ。
俺達のクラスの担任の先生ではないが、子供に戦争をさせようとする教皇に抗議するのであった。
「(・・・・さて、どうしたものか)」
俺はそんな風景を横目で見つつ、自分が置かれている状況を頭で整理していた。
この世界が危機に瀕しているとは言ったが、それはこの世界の人間たちの問題だ。
はっきり言って関係ない俺達を巻き込まないでほしい。
この世界に召喚したというエヒトとかいう神もだが、正直教皇の話はどうも胡散臭い。
絶対に信用してはならない存在だと俺の直感が告げている。
さらに、教皇と先生の会話を聞いていると、元居た世界への帰還は現状不可能だと告げられ、周囲のクラスメイトがパニックになった。
誰もがパニックになる中、テーブル叩き席を立った奴がいた。
クラスメイトの中心人物と言ってもいい天之河光輝(あまのがわこうき)だ。
そいつは何を言い出すかと思ったら、なんとこの世界の戦争に参加を宣言したのだった。
挙句に何の根拠があるかわからないが、世界を救う為に戦おうなどと言い出した。
それに釣られたのか他のクラスメイト達も賛同し始めた。
そんな光景に畑山先生はオロオロと涙目になっていた。
結局その場の流れで全員戦争に参加することとなっていた。
「(天之河の馬鹿野郎が!! あいつ本当にわかってるのか!? 戦争をするって意味を!!)」
俺は内心、天之河に愚痴りつつもその行動に呆れていた。
言い出しっぺの天之河が、戦争に参加する本当の意味を分かっているのか正直怪しいが、恐らく分かっていないのだと俺は確信していた。
あいつは以前から思っていたが、自分自身が正義だと絶対に疑わない性格で都合の悪い事は目を逸らし、ご都合解釈をする難儀を通り越して面倒な人物だ。
今回もそれが悪い方向に進みこうなったわけだ。
クラスメイトが盛り上がる中、横目でチラリと視線を横にすると、其処には冷静に何かを考えている南雲の姿が映った。
「(・・・あれは何か考えている目だな)」
こういう状況の中、周囲に流されず冷静に思案する事ができるとは大した人間である。
ああいう人間が一番信頼できる。
俺はそう思うのと自分自身に置かれている状況を思案する事に天井を見上げた。
「・・・こうなる事が分かって俺を鍛えたんですかお師匠」
誰にも聞かれることなく俺は小さく呟いた。
こうして俺たちは異世界トータスでの生活と戦いの渦に巻き込まれていくのであった。
原作のほうも参考にしつつも私なりの解釈で文章にしてみました。
次回もお楽しみにしてください。