ありふれた錬成師とありふれない魔槍兵で世界最強 作:ゴルゴム・オルタ
普段より少し短いかもしれませんがご了承ください
ライセン大迷宮を攻略した俺達は、徒歩で近くにあった町ブルックに再び足を運んだ。
あの泉からブルックまでの距離は馬車で一日ほどの場所であり、その場にたまたまやって来た服屋の店主『クリスタベル』と宿屋の娘と遭遇した。
何故そんな所にいたかと言えば、隣町からブルックへの帰還中に立ち寄ったそうだ。
なんでもこの服屋の店主、元金ランク冒険者であり現在は新人の育成の為に服屋で生計を立てているとの事だ。
問題はその容姿であり、身長は二メートル強で屈強な体格に筋肉と言う名の天然の鎧を身に纏ったオネエ口調の漢女(おとめ)であった。
ユエとシアは何故か彼?彼女?な漢女との話が合うらしくあっさり会話が進んだ。
流石に大迷宮を攻略して外に吐き出されたとは言えず、冒険の途中でこうなったと答えた。
相手もそこまで深く聞き入りすることも無く、折角だから町まで一緒に来ないかと誘われ、俺達は厚意に甘える事になり馬車へ同乗する事になった。
道中、馬車の中で着替える事になったのだが、コハクの服をどうするかで困った。
実はと言うとコハクの服には替えが無く、代わりになる服が無いのだ。
準備をしていなかったコハクもそうだが、このままでは風邪を引くといけない為、仕方なく俺は宝物庫(試作品)からコハクのサイズに合いそうな服を選び着替えさせることにした。
何とか着替える事が出来たのは良いが、渡した服に問題だった。
それは、リブ生地のセーターで色は白のホルターネックであり、背中が大きく開いた服で合った。
分かりやすく言うならば、元居た世界では『童貞を殺すセーター』で有名な服である。
何故それを選んだかと言えば、ユエやシアと違い、コハクの尻尾が通せる服がそれしかなかった為であり、他の服と言えば胸開きタートルネックだったりする。
他の服では尻尾がつっかえたりする以上、その服を着る以外の選択肢はコハクにはなかった。
胴の裾は長いのか、太腿より少し上あたりであり後ろから見ても尻は見えなかったりするのは不幸中の幸いだ。
「(こんな事ならブルックの町へ寄った時にコハクに服を買ってやればよかったな)」
俺はそう思いながら今更ではあるが後悔した。
その服を着ていたコハクを見る視線は十人十色であった。
ユエは自身との胸の大きさに格差があるのを再確認したのか驚愕し、シアはと言うと「コハクさんも結構胸が大きいんですね」とあからさまに胸の部分をガン見していた。
ハジメは視線を合わせないように腕を組み明後日の方向を見ていたが、馬車に同乗していた男達はというと、コハクの容姿と服から溢れ出る色気に無言で唾を呑み凝視していた。
集まる男どもの視線に睨みを向けるも、自身の服装が原因と自覚しているのか何処か羞恥心を隠せない目で合った。
その光景に俺は何とも言えない雰囲気で固唾をのんでいた。
そんな事もあったが、一同は無事ブルックの町に到着するのであった。
ギルドへの報告は翌朝に済ませる為、すぐに宿屋へ向かう事にした。
馬車を下りてからもコハクは終始無言で、人前であんな醜態を晒したのがショックだったのか、視線も耳も力無く垂れていた。
部屋は俺とコハクが二人部屋で、ハジメ達が三人部屋となった。
それを知ったコハクは足早に部屋へ向かうと、勢いよく扉を閉め部屋に入り込んだ。
これはハジメが俺とコハクに気を使ったのもあるが、前回泊まった時に二人部屋を俺達に譲る約束をしていたのもある。
俺が部屋に入ると、濡れていた服も乾いたのかコハクは何時もの服装に戻っていた。
下の階で食事を摂ることも無く、ベッドに入り込むや不貞寝を決め込んでいた。
「寝ているのかコハク?」
「・・・・・・」
「飯食って無いだろ?持ってきたぞ」
厨房から運んできた食事を手にした俺は部屋に入るや、ベッドで眠るコハクに話しかけた。
コハクの好きな肉料理もあり少しは機嫌が戻ればいいと思っていたが、予想以上に事態は深刻のようだ。
無理も無い。
親しい関係の俺達ならともかく、知らない人間の前で肌身を晒したも同然なのだから、落ち込むと言うより恥ずかしいと感じないのは仕方がない。
此処に来るまでのコハクと言ったら「もう・・・お嫁にいけない」と言わんばかりであった。
だからこそ、家族である俺が励まさなくてはならないのだ。
食事を部屋にある備え付けの机に置くと、コハクの傍に寄るのであった。
コハクは、頭まで毛布をかぶり、手足と頭を引っ込めた亀のようになっていた。
外の音を聞き取れるように耳だけ出してはいた。
そんな様子を見兼ねた俺は、優しくコハクの耳を触るのであった。
案の定、耳を触られたのかビクンッと動かし少しずつ毛布から顔を出してきた。
「腹減ってるだろ、飯食うか?」
「・・・・食べる」
目元まで顔を出したコハクは弱弱しくそう返事をし、ゆっくりと起き上がるのであった。
持ってきた料理をコハクに出すと、少しずつではあるが食べ始めた。
食べ終わったコハクはベッドに腰を掛け、俺はその傍に座った。
少しは元気が出ればよかったのだが、コハクはまだやや落ち込み気味であった。
俺はコハクの隣に座り腰に手を回し、優しく引き寄せた。
コハクに元気が無いのは恐らく例の服の事だろう。
事故とは言え俺以外の男に肌身を晒した事が凄く恥ずかしかったのだ。
其処で俺はある事を思いついた。
明日にはギルドへ寄る用事もあるが、服屋へ行ってコハクの服を買ってやろうと考えた。
「なあ、コハク。この世界の冒険者が着る服には興味あるか?」
「服だと?」
「ああ、今回の事で替えの服が無いと困るだろ。折角だから買う気は無いか?」
傍から見たら単なるご機嫌取りにも見えるが、折角の機会だから普段コハクが着ている着物以外の服も見てみたいと思ったからだ。
服と聞いて耳をピクンッと立てたコハクは横目で俺を見つつ、何かを考えていた。
少しばかり考えてはいたが答えは早く出た。
「わかった。だが、竜也に見繕ってもらうぞ」
「おう、任せろ!」
「・・・所で何時まで私の腰に手を回しているつもりだ?」
コハクはジト目でそう言い俺の顔を見た。
二人っきりでいる際はこうして傍に居る事が多く、俺も自然とコハクに寄り添う体勢となっていた。
するとコハクの口から意外な言葉が出てくるのであった。
「まあいい。折角二人部屋を譲ってもらったのだ、今から夜戦をするぞ」
「ふぁっ!?」
するとコハクは俺をベッドの上に押し倒し、マウントを取った。
これまで何度もベッドの上でコハクとは愛し合ってきたのだが、誘うのは俺の方からでありコハクからは今まで一度も無かった。
「何を驚く必要がある。散々交わってきただろう、偶には私から誘っても構わないだろう」
「別に悪くはないが、コハクの方から来るとは思って無くてな、少し驚いたんだよ」
「ふっ・・・夜は長いからな、たっぷりとお前を味わうとしよう」
そう言うとコハクは俺と唇を合わせるかと思ったら、首筋に咬みつくのであった。
思わぬ行動に「痛って!」と言うと「獣の本能だ気にするな」と返してきた。
すると、今度は嚙んだ所を舌で舐め始めるのであった。
コハク曰く、咬んで舐めるのは一種の愛情表現であるとか言っていた。
舐め終わると、俺の両肩を掴み勢いよく口づけを交わすのであった。
お互いの舌を絡ませる深い口づけであった。
こういう事は此れまで何度もやってきたので、お互いお手のものである。
「んっ・・・偶にはこう言うのも悪くはないだろう」
「そうだな、初めの頃と比べたらコハクもだいぶ積極的になったものだ」
「・・・お前が私を『女』にしたんだろうが」
あの夜、オスカーの隠れ家で俺とコハクは文字通り一つになった。
俺自身、体を重ねるのは愛情表現でもあり、お互いの心と気持ちを一つにし繋がりも深める事が出来る。
何度も交わりあい繋がりを深くして言った俺とコハクは一心同体の存在になった。
違う言い方をすれば、共に困難に立ち向かい、同じ道を歩み互いを支えあう運命共同体だ。
その関係を見て異を唱える輩はこれから先も出るだろう。
だが、そんな事等俺には関係ない。
コハクは俺の大切な家族であり、命を懸けても守るべき存在だ。
「コハク」
「なんだ?んんっ!?」
今度は俺がコハクへ口づけを行った。
俺からの突然の口づけにコハクは目を開き驚いた表情を取った
深く長い口づけを交わした俺は、コハクの唇からようやく離れた。
コハクはと言うと頬を赤く染めていた。
「愛している。俺がコハクに抱いている嘘偽りのない気持ちだ」
「竜也・・・私も同じ気持ちだ」
そう言うと、俺は部屋の明かりを消し、ベッドの上でコハクと何度も重なり合うのであった。
深夜とも言える時間まで愛し合い漸く眠るのであった。
翌朝、朝食を取る為に一階へ降りてきた。
俺とコハクを待っていたのは宿屋の娘と宿泊客達、ハジメ達の暖かい眼差しであった。
そして口を揃えてこう言ってくるのであった
「「「「「「昨晩はお楽しみでしたねご両人」」」」」」
「は?・・・・・・あ」
此処で俺はある事を思い出した。
部屋の外へ音が漏れないように普段からやっていた筈の防音処置を忘れていた事だ。
何時もならルーン魔術でやっていたのだが、あの夜すっかり忘れていたのだった。
つまり、俺とコハクと愛し合う音と声が部屋の外へ響いていたのである。
となりの部屋で眠るハジメ達だけでなく、扉に耳を当て盗み聞きしていた宿屋の娘にも丸聞こえである。
何とも言えない雰囲気となる俺であったが、それを聞いていたコハクはと言うと、昨日同様に羞恥心を隠せない表情になり、完全に顔を赤くしていた。
宿屋をチェックアウトした俺達は、ギルドへ向かった。
其処に着くまでの間、コハクは普段から持っている狐のお面を被り顔を隠すのであった。
ギルドへ向かい、受付のキャサリンさんに軽く挨拶をした俺達は、旅に必要な資金を稼ぐ依頼がないかを探し始める。
次の目的地は『グリューエン大砂漠』にある七大迷宮の一つ『グリューエン大火山』だ。
その為に大陸の西へ向かうのだが、途中に大陸一の商業都市で有名な『中立商業都市フューレン』がある。
大迷宮の攻略も大事ではあるが、折角異世界にいるのだ。
冒険者らしい仕事をしても悪くはない。
フューレン関連の依頼が無いか探していたら、キャサリンさんから声を掛けられた。
「それだったら商隊の護衛依頼で丁度良いのがあるけど引き受けるかい?」
依頼内容は、商隊の護衛依頼で中規模な商隊が十五人程の護衛を求めているらしい。
約二名程空きがあり、俺とハジメに白羽の矢が立った。
ユエとシア、コハクは冒険者登録をしていない為、俺達の連れという事になる。
結果、俺とハジメはその依頼を受ける事になった。
形式上キャサリンさんからの推薦という事もあり、依頼を受けるのに必要な手紙ともう一つ、ギルド関連の手紙も渡された。
内容は、他の町で揉め事や厄介事に巻き込まれたらギルドの職員かお偉いさんにそれを渡せば少しは役に立つかもしれないものであるとか。
手紙一つでお偉いさんに影響を及ぼせるキャサリンさんは何者なのか考えたが、折角なのでありがたく貰っておくことにした。
キャサリンさんの推薦もあり、俺達はフューレン行の商隊の護衛依頼を受ける事になった。
商隊の出発は昼過ぎと言うのもあり、必要な食料と備品の買い出しを行う事にした。
昨晩コハクと約束した服の新調も兼ねた買う為、クリスタベルさんが営む服屋へと向かった。
相変わらずすごい顔つきの巨漢の化物ではあるが、結構いい人であった。
コハクに似合う服を探しているとクリスタルベルさんおススメの服を推奨された。
見た所、青と白のツートンカラーでそれなりではあるが着物や浴衣に近い感じがした
折角なのでコハクにその服を試着してもらう事になった。
試着室から出てきたコハクに俺は驚いた。
なんでもクリスタルベルさん曰く、弓兵の天職を持つ冒険者向けで作ったものらしい。
装備の方は武器屋にあるためこの店にはないそうだ。
上半身は白の道着と黒の胸当てに襷掛け、下半身はミニスカートにアレンジされた蒼い弓道袴と腰の前垂れの金属プレートには「カ」の文字が入っている。
「何か見たことがあるような服装だな・・・」
その姿の何故か俺は既視感とも言える感覚を覚えた。
元の世界に合ったゲームの一つにコハクの着ている服装と良く似たようなキャラクターを思い出した。
艦隊をコレクションするゲームに出る、美少女へ擬人化された正規空母と似ているのであった。
コハク自身も、「どういう訳だか分からんが、不思議としっくりくるようだ」と言っていた。
結局その服を買う事となった。
昼過ぎとなり、正面門に向かうと、出発の準備をする商隊のまとめ役と十四人の冒険者が見えてきた。
商隊のまとめ役である『モットー・ユンケル』と言う人物にキャサリンさんからの推薦状を渡した。
推薦状もあってか難無く自己紹介を終え、俺達は護衛の仕事を受ける事となった。
フューレンまでは馬車で約六日の距離であり、それまでは景色を楽しむことができる。
勿論、護衛の仕事をしつつだ。
こうして俺達五人は次の目的地である中立商業都市フューレンへ向けて出発するのであった。
おまけ
竜也達がブルックにて一夜を過ごそうとしていた頃であった。
ウルの町にて夕食を終えたある少女は非常に不機嫌な表情を取っていた。
「優花ッちどうしたの!?なんかあったの!?」
「ううん、特に何もないよ。けどね・・・予感がしたの」
「・・・予感?」
話を進めるに連れ優花の瞳からは輝きが消えハイライトが消えた状態になっていく。
「白髪で狐耳を生やしたすっごくスタイルの良い綺麗な女性が竜也と、二人っきりの部屋でなんかすんごくイチャイチャイチャイチャ、羨ましいぐらいにまで良い事をしているような予感がしたの・・・」
「落ち着いて優花ッち!目が病んでいるよ!」
「なんか優花の後ろに何かいるんだけど!?」
優花の背後には何か黒い人物らしき物が浮かんでいた。
それは全身が黒く屈強な体格で、黒いヘルメットに顔を隠すように黒い仮面を着けていた。
拳には熊のような鋭い鉄の爪を装備し、仮面の目と口に位置する部分は赤く光り、禍々しい笑顔で「コーホー」と呼吸しファイティングポーズを取っている姿が妙子と奈々の瞳には映っていた。
優花の天職は投術師の筈なのにその背後にはス〇ンドらしきものがいた。
彼らが出会う日はそう遠くないのである。
次回予告『冒険者ギルド フューレン支部』
クリスタルベルの服屋で調達したコハクの服と、オマケで出た優花の背後に現れた者の元ネタはお分かりでしたか?
ご感想お待ちしております。