ありふれた錬成師とありふれない魔槍兵で世界最強   作:ゴルゴム・オルタ

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ありふれのアニメ二期放送が来年一月に決定しましたね!
年内は無理かと思われていたのですが、発表があった時は大喜びしました。
問題は作画や脚本がどうなるかが気がかりです。
一期ではそこまで評判が良くなかったのですが、二期からはしっかりとした内容に期待したい所存です。


北の山脈地帯

フューレンのギルド支部長であるイルワからの依頼でウィル・クデタの捜索の為に湖畔の町ウルへ足を運んだ俺達を待っていたのは、畑山先生とパーティを組んでいたクラスメイト、そして幼馴染である優花であった。

突然の再会に頭が追い付かず若干パニックになる俺を、優花は泣いているのか喜んでいるのか分からない声を上げて抱きしめ、嬉し泣きをするのであった。

そんな様子をコハクは静かに見守ると言う何とも言えない雰囲気が店の中を包んだ。

散々泣いたのか漸く落ち着きを取り戻した優花は俺から離れるのであった。

 

「・・・・気は済んだか?優花」

「ぐすっ・・・うん・・・・大丈夫」

 

気が済むまで抱きしめられた俺は、優花の頭を頭に手を置き優しく撫でてあげる事にした。

俺の方も混乱状態から立ち直り冷静さを取り戻すことが出来た。

そんな様子を見ていたハジメ達や先生とクラスメイト達の視線に気が付いた優花は、我に返って顔を赤く染め、俺の体を壁代わりにして隠れるのであった。

今更恥ずかしがってどうするんだと内心思ったが、敢えて口にせずにいた。

傍から見たら離れ離れになっていた男女のカップルが感動の再会を果たした場面なのだが、俺にはある懸念事項があった。

コハクの事である。

一応、優花の事はコハクに話しているのだが、まさか此処で再会するとは思いもしなかった為、どう説明するか悩んだ。

遅かれ早かれコハクの事は優花にも紹介するつもりでいた為、そういうかはあらかじめ考えてはいる。

ただ、コハク自体回りくどい言い回しをせず結構ストレートに話す事がある為、内心かなり冷や冷やしている。

下手すりゃ修羅場待った無しの展開が脳裏に浮かび、胃に穴が開きそうな気分になった。

その状況を見兼ねたハジメがある提案をしてくるのであった。

 

「なあ先生。俺達今から飯食うんだけど、お互い話したい事は飯食いながらで良いか?」

「ふぇっ?・・・はっはい、良いですよ。」

 

取り合えず、夕食には何とかあり着ける事が出来そうだ。

他の客の目もあり、先生の案内でVIP席とも言える専用の部屋へと向かうのであった。

その部屋は先生たちが使っているのか非常に清潔感ある部屋であった。

店の店主には先生が話を通してくれたのか俺達も同席する事が出来た。

俺達の座る席と机を挟んで向き合うような形で優花達と先生が座席に着いた。

優花は俺の隣に座りたかったのか何故かしょんぼりしていたが、コハクの姿を見た瞬間表情が変わった。

俺と再会した直後とは違う驚いた顔であった。

その視線に気づきつつもコハクは俺とメニュー表に提示してある料理を選んでいた。

 

「竜也、お前の故郷で言うカレー?なる料理はどれだ?」

「ああ、それな。ここに書かれているニルシッシルと言うのらしいんだ。それにするか?」

「私は一切構わんが、ハジメ達はどうする?」

「俺もそれでいいぞ。久しぶりの米だからな、マジで楽しみだったんだよ。ユエとシアもそれでいいか?」

「ん・・・私もハジメの好きな味知りたいからそれにする。」

「さり気ないアピールをここぞとするとはユエさん。私も負けませんよ!店員さぁ~ん、ニルシッシルを五つ、注文お願いしまぁ~す」

 

周囲の事など知らんとばかりに、元気よく注文するシアであった。

呼ばれて出てきたのは水妖精の宿のオーナーであるフォス・セルオである

スっと伸びた背筋に、穏やかに細められた瞳、白髪交じりの髪をオールバックにしている宿の落ち着いた雰囲気がよく似合う男性だ。

その姿を見た俺は、何となくではあるが優花の父親である博之(ひろゆき)さんの面影を浮かべた。

お店の雰囲気も何となくではあるが、優花の実家でもある洋食店『ウィステリア』に似ている気がする。

料理が運ばれてくるまでの間、俺達と先生達とで話をする事にした。

 

「南雲君、篠崎君。二人が無事で生きていてくれて凄く嬉しいです。先程から気になっていましたが其方の女性たちは何方でしょうか?」

 

先生からの問いにまず最初に答えたのはハジメであった。

 

「まあ、先生達からすれば他人だろうが、俺にとっては大切な仲間だ。紹介だけはするがこいつらは・・・」

「・・・ユエ」

「シアです!」

「「ハジメの女/ハジメさんの女ですぅ!」」

 

ユエとシアによる衝撃的とも言える自己紹介を先生とクラスメイト達の前でするのであった。

思わぬ自己紹介に衝撃と驚愕が奇跡のコラボレーションをしたような表情で言葉を失う畑山先生と優花達。

優花達に至っては、四か月前に奈落に堕ちて死んでしまったと思っていた同級生が、まさか生還していただけでなく女を作って帰ってきたと言う事実に唖然とした。

玉井達男子三人に至っては、ユエとシアの美貌に見蕩れ顔を赤く染めていた。

 

「ユエは兎も角として、シア。お前は違うだろうが!」

「えぇ~酷いですよハジメさん!私と運命のファーストキスしただけじゃなくて、ずきゅんどきゅんと走り出して、ばきゅんぶきゅんと駆けて行く勢いで、虹の彼方まで行ったじゃないですかぁ~」

「行ってねえよ!!何、勝手に過去を偽造してんだ!!」

「あの時の私は感じました。今日の勝利の女神様は、ユエさんではなく私にだけチュゥをすると!!」

「さっきから何言ってんだお前は!!」

 

なんだがシアが何処か変な電波でも受信したかのように可笑しなことを口走るのであった。

シアの妄言を真に受けたのか畑山先生が、顔を真っ赤にして背中から黒いオーラを出しながら低いトーンで「南雲君?貴方と言う子は・・・」と言いながら怒りをあらわにするのであった。

恐らく先生の頭の中では、ユエとシアと言う二人の美少女を両手に侍らして高笑いしている光景が浮かんでいたのだろう。

その様子は正に怒り爆発五秒前と言える。

畑山先生の様子にハジメの顔は若干引き攣っていた。

誤解を解こうにも俺がフォローしようにも手遅れであった。

 

「女の子のファーストキスを奪っただけでなく、ふ、二股で!先生は・・・先生は絶対に許しませんよ!!そこに直りなさい、南雲君!!」

 

案の定とも言えるが畑山先生の雷が落ちるのであった。

ハジメはやれやれだとぼやきつつも深い溜息を吐き、何とか誤解を解く為にも説明をするのであった。

 

 

散々、畑山先生が吠えて漸く落ち着きを取り戻した時であった。

暫くして、注文していた料理である異世界版カレーであるニルシッシルにある着ける事になった。

俺から見たニルシッシルはシチューに近いホワイトカレーであった。

ハジメは黙々と食べ、ユエやシアは美味そうに感想を言い合いながらニルシッシルに舌鼓を打つ。

コハクも初めて感じる味覚に驚きつつも表情は非常に満足そうである。

食べながらではあるが、畑山先生が時折質問を投げかけられつつも、ハジメの事だからおざなりに返していくのは目に見えた為、俺の方からもフォローしつつ答えていく事にした。

 

Q、橋から落ちた後、どうしたのか?

A、超頑張った。

A、お互いに生き延びる為に協力し合った。

Q、なぜ白髪なのか?

A、超頑張った結果。

A、度重なるストレスで変色した。

Q、その左肩の鎧はどうしたのか?

A、超超頑張った結果。

A、詳しくは言えないが義手として装着している

Q、なぜ、直ぐに戻らなかったのか

A、戻る理由がない

A、その前に果たすべき約束がある。

 

そこまで聞いた畑山先生が今度は俺に視線を向ける。

大方俺とコハクとの関係を聞くのだろう。

俺は一息つき、先生や優花達からの質問に答える事にした。

 

「篠崎君。そちらにいる女性は一体誰で、どのような関係なんですか?」

「まあ聞かれるとは思ったが紹介する。彼女の名前はコハク。俺の家族だ」

「家・・・族?」

 

その問いの答えに優花が驚いた顔をする。

この中では優花が俺と深い関りがある為、ある程度事情を察しているのだと推察する。

まあ、優花が俺の家庭内事情を先生達に説明しているかどうかは分からないが、場合によってはその辺も話すつもりだ。

 

「えっと・・・コハクさんで良いでしょうか?」

「なんだ?私の事は竜也が言った通りだ、それ以上でもそれ以下でもない」

 

それまで沈黙を保っていたコハクが初めて声を出した。

 

「では質問を変えます。篠崎君とはどういった過程で家族になったのですか?」

「詳しく話す気はないが、行く当てもない私を竜也が家族として迎え入れてくれた。それだけだ」

「一緒に行動する理由は何ですか?」

「そうだな。強いて言うなれば私には唯一の身内でもある姉がいる。その姉を探すのと竜也達と世界を巡るのとでお互いの利害の一致するからだ」

 

そこまで言うと、コハクは再び沈黙を保った。

必要以外の事は喋らないと言う姿勢に先生や優花は困惑した。

俺にとっては先生や優花達は知り合いでも、コハクにとっては赤の他人も同然だろう。

付かず離れずと言った微妙な距離を取りつつも様子を伺っているようにも見えた。

だが、そんな様子に拳をテーブルに叩きつけながら大声を上げた者がいた。

 

「貴様!愛子様が質問されておられるのだぞ!真面目に答えろ!」

 

畑山先生の傍から離れようとしない見知らぬ男だ。

外見から見て教会から派遣された神殿騎士にも見受ける。

それもそうだろう。

先生や優花達はこの世界では神の使徒として認知されている。

王宮の外の世界に足を運ぶのに護衛を付けない方がおかしい。

少し考えれば分かる話だ。

当のコハクはと言うと騎士の恫喝など知った事かと言わんばかりに柳に風と言った様子であった。

 

「此処は食事をする場だ。行儀よくすることも出来んのか?」

「行儀よくだと!!」

「折角の美味な食事が不味くなるだろうが。分を弁えろ人間」

「なんだと!!獣風情が!!」

 

コハクに取っては忠告のつもりが相手には挑発に聴こえたのだろう。

腰にある剣を今にも抜かんとばかりの剣幕をしていた。

そんな様子を見ていたシアはビクッと体を震わせ顔を俯かせるのであった。

この世界では、亜人は差別的対象として見られる。

ブルックの町ではそんな視線が無かっただけでも幸運とも言えよう。

亜人族に対する直接的な差別的言葉の暴力を直接受けると言う不意打ちを受け、落ち込むシアである。

あんまりな物言いに、思わず畑山先生が注意をしようとするがある事に気が付いた。

その騎士の手が震えていることにだ。

よく見るとそれは武者震いでもなく、恐怖に怯えるような物であった。

コハクと目を合わせたその騎士、その名をデビッドと言うが一種の恐怖に全身を包み身動きが取れないでいた。

コハクが狐の亜人であれば、難無く剣を抜けていただろう。

だが彼の目の前にいるコハクの姿は、亜人の皮を被った別物に見えていた。

コハクの目力とも言える眼光から放たれる威圧にデビッドは恐怖を覚えていた。

彼の脳裏にはある物が浮かんでいた。

自身が所属する教会に伝わる禁忌とも言える『厄災の獣』という存在を。

コハクの外見とも言える白い髪に九本の尻尾の姿に恐怖を覚えていた。

この世界の人間族にとって厄災の獣は所謂トラウマとも言える存在だ。

恐怖を覚えるのはデビッドだけではない。

コハクから放たれる桁違いの威圧感に、先生や優花達も顔をガクガクと震えている。

そんな存在を前にして平常心を未だ留めているだけデビッドは理性的とも言えよう。

一触即発とも言える空気を漂わせている室内を、変える者がいた。

竜也である。

 

「よう、神殿騎士さんや。うちの家族に何か用か?」

「なに!」

「此処は穏便に行こうじゃないか。それとも何か?神殿騎士様は所構わず剣を抜く野蛮人か何かか?」

「我らを野蛮人と侮辱する気か貴様!!」

「コハクが言った通り此処は食事をする場所だ。そこであんた等神殿騎士が乱闘騒ぎを起こしたら、畑山先生だけじゃなく教会にも迷惑をかけるんじゃないか」

「ぐっ!!」

「まだやろうってんなら・・・」

 

俺は手にゲイ・ボルクを出すと、その騎士の喉元に突き付けた。

やろうと言えば喉元を穿てる距離を保ちつつ、こう言って警告するのであった。

 

「言っとくが、俺の家族に手を出そうってんなら、その時は・・・決死の覚悟を抱いて来い!!」

 

静かにではあるが俺は怒気を含めた声でその騎士に言い放った。

流石に戦意も消え意気消沈した騎士は大人しく席に着いた。

そんな様子を静かに見ていたハジメ達は、黙々と残った料理を食べ終えるのであっていた。

優花達は唖然とし、言葉を失っていた。

一触即発とも言える状況を経験した優花達は何とも言えない空気を漂わせていた。

言いたい事はあるが、言い出せないと言うもどかしい物であった。

そんな空気を察したのか分からないが、コハクがシアに対しフォローを入れるのであった。

 

「・・・シア、この程度の事で一々落ち込んでいてはこの先、身が持たんぞ」

「コハクさん・・・・私たち亜人って・・・やっぱり」

「ふっ・・・案ずるな。少なくともハジメはシアの事を好意的に思っているようだがな」

「なっ!!いきなり何言いやがるコハク!!」

 

まさかコハクから話を振られるとは思わず動揺するハジメであった。

ハジメに向けコハクは不敵に笑うとこう言い放った。

 

「何を言う。シアが寝ている際に耳を気が済むまで触っている奴がどの口で言う」

「なんで寄りにも寄ってコハクがそれを知っているんだよ!!」

「シアのウサ耳は可愛い、ハジメのお気に入り・・・」

「ユエ・・・お前まで」

「私のウサ耳お好きだったんですね!。ハジメさん・・・えへへ」

 

シアが赤く染まった頬を両手で押さえ悶えるかのように、ウサ耳をパタパタと動かし喜びを表現するのであった。

つい先ほどまで重い雰囲気に包まれていたのにも関わらず、ラブコメちっくな桃色空間が広がっている不思議に首をかしげる優花達であった。

 

「あれ?さっきまでコハクさん?だっけ。マジで怖かったんだけど、今はそんな超綺麗で着物美人と家族関係までを築いてる篠崎に殺意しか湧いてこないや・・・・・・」

「お前もか。つーかあのユエさんとシアさん、ヤバイくらい可愛いだけでなく超ドストライクなんだけど・・・目の前にいちゃつかれるとかマジで拷問だろ」

「・・・南雲や篠崎の言う通り、何をしていたか何てどうでもいい!。異世界の女の子と仲良くなる術だけは、何としてでも聞き出したい!そうだろ昇!明人!」

「「地獄に行く時は一緒だぜ、淳史!」」

 

シリアスな雰囲気が吹き飛び、本来の調子を取り戻し始めた一致団結する愛ちゃん護衛隊の男勢三人。

そんな男子共を尻目にしつつも、優花を含む女生徒達はユエ達よりもコハクの事を観察していた。

 

「・・・まさか異世界で着物美人を見られるなんて思ってもいなかったよ!」

「コハクさんだっけ・・・なんか大人の魅力が触れると言うか・・・凄くスタイル良くて綺麗・・・だね」

「うん・・・・そうだね。」

「どうしたの優花っち?元気ないけど・・・」

「ううん。大丈夫・・・コハクさんが・・・竜也の家族・・・」

 

優花の頭に浮かぶのはコハクと言う名の白い狐の亜人?の事であった。

竜也の家庭内事情は知っていたつもりではあった。

まさか、竜也の家が狐との深い縁があるのは分かってはいたが、異世界で家族とも言える存在を作っていたとは夢にも思わなかった。

その事に驚きつつも、何故か嬉しく思う優花であった。

元居た世界での竜也は独りぼっちな感じがしていた。

事故で家族を失って以降、何処か暗い一面を感じずにはいられなかった。

自分だけでは竜也の心に空く穴を埋める事が出来ない気がしていた。

突然現れた竜也の家族と名乗る存在に驚きつつも、自分に出来ない何かを優花は感じていた。

そう思っていると、ハジメは食事を終え部屋を後にしようとする。

慌てて畑山先生が止めに入ろうとするが、「明朝、仕事に出て依頼を果たしたら、そのままここを出る」と言い、ユエとシアと共に部屋を後に二階の客室へと階段を上っていった。

残ったのは俺とコハクなのだが、明日は朝早くから仕事があると先生や優花達に言うとその場を後にすることを決めた。

優花やクラスメイトに対しもっと話したいことがあるのだが、仕事は仕事である為に明日に備えて寝る事に決めた。

すると、去り際にコハクが意外な事を口走るのであった。

 

「一つ尋ねたい事があるが、『優花』と言う名の娘は・・・お前か?」

「えっ・・・私?」

 

何故かコハクは優花と目を合わせると名指しで目を合わせた。

コハクから名指しをされた優花はそう返事をすると、コハクは優花に対しこう言った。

 

「・・・そうだ。お前に話がある、少し顔を貸せ」

「えっと・・・私も貴方に話したい事があります」

「ならば好都合だ。着いて来い。安心しろ取って食ったりはせん」

 

コハクに指名された優花はその事に驚きつつもコハクの後を追い部屋を出た。

先生やクラスメイト達は心配そうに優花とコハクを見るも、俺が大丈夫だと言い聞かせた。

優花の事はコハクに任せた俺は、部屋に戻る事にした。

その際、コハクからは「悪いようにはせん」と言われた。

俺は、パートナーであるコハクを信じて優花の事を任せると、先に部屋で寝る事にした。

 

 

翌日、月が輝きを薄れさせ、東の空がしらみ始めた夜明けと言える頃合い。

俺達五人は旅支度を終えて宿を出た。

朝靄が立ち込める中、俺達は北の山脈地帯に続く街道へと続くウルの町の北門へと向かい歩く始めた。

特に荷物とも言える物はないが、コハクの手には小さい風呂敷を手にしていた。

中身は朝食に作った握り飯である。

移動しながらでも食べられるようにとコハクが起きて早々宿の厨房で握ったものだ。

炊飯自体は宿屋のオーナーであるフォスが事前に準備してくれたそうで、本当に感謝しかない。

山脈への道は馬だと丸一日だが、魔力駆動二輪で飛ばせば三、四時間と言ったところである。

表通りを北に進み、やがて北門が見えてきた辺りで複数の人の気配を感じると、門の目の前には畑山先生と優花達六人がいた。

何故此処にいるのかと思ったが、コハクが「私の方から誘った」と言い出した。

てっきり先生達に対し私達と関わるなとばかり言うかと思ったのだが、意外であった。

それを聞いたハジメが「何で先生まで来てるんだよ」とコハクに詰め寄るも、「私が誘ったのは優花だけだ」と返した。

コハクが誘ったのは優花だけであったのだが、その話を聞いたクラスメイト全員が参加する事になった。

すると、畑山先生が俺達に詰め寄ってきた。

 

「行方不明者の捜索なら人数は多いほうがいいですよね?私達も行きます」

「却下だ先生。園部だけならまだしも何で先生たちまで付いて来るんだよ」

「先生は、どうしても南雲君や篠崎君からもっと詳しい話を聞かなければなりません。移動時間とか捜索の合間の時間で構いません。」

「悪いが、先生達に合わせてチンタラ進んでなんていられないんだよ。」

「それに行方不明になった人の中に清水君も含まれているんです。どうか一緒に私達も連れて行ってください」

 

この町に来て優花達と再会してから気づいたことがある。

王宮にいた時にパーティを組んでいた一人である清水幸利の存在が居ない事だ。

先生体の話を聞くと、ウルの町に着いた翌日の朝には姿を消していたと言う話だ。

人攫いにでもあったかと思われたのだが、痕跡らしきものは全くなく行方知れずになっていた。

懸命に周辺地域を捜索し、冒険者にも依頼を出したにも拘らず行方は掴めないまま二週間が過ぎたそうだ。

これを機に俺達の仕事でもある捜索対象を探しながら清水の手掛かりが無いかを調べようと思ったのである。

どうするか悩んでいたハジメであったが、時間が惜しい為、同行を許すことにした。

 

「着いて来るのは良いが危険な事に巻き込まれる可能性だってある。それでもついて来るのか先生?」

「当然です!ちゃんと南雲君と篠崎君の口から聞いておきたいだけですから」

「全く、先生はブレないな」

 

そう言うとハジメは宝物庫から魔力駆動二輪と魔力駆動四輪『ブリーゼ』を取り出した。

ブリーゼの形状は軍用車両であるM1151ハンヴィーをベースに、ハジメによって若干アレンジされ大型化した乗り物である。

突然、虚空から大型のバイクと中型車両が出現し、ギョッとなる優花達。

バイクと車と言う異世界には似つかわしくない存在感に度肝を抜かれている中、「こ、これ南雲が作ったのか?」とバイク好きの相川が若干興奮したようにハジメに尋ね「まあな」と返した。

すると畑山先生達の同行を許すのかとユエとシアが尋ねてきた。

 

「・・・ハジメ、本当に連れていくの?」

「ああ、まあどうせ行っても聞かないしな先生は」

「生徒さん想いの優しい人なんですね」

 

結果、優花達六人が捜索に参加する事になった。

人数の割り当て上、魔力駆動四輪『ブリーゼ』の運転手にハジメと先生達、魔力駆動二輪は俺が乗る事になった。

 

「あのさ、私が竜也に後ろに乗っても・・・いい?」

「ん?ああ、良いけどよ」

 

俺がバイクに乗ると優花が詰め寄って来たのだ。

てっきり俺の後ろにコハクが乗るのかと思ったが、優花が俺と相乗りする事になった。

そういう風に人数の割り当てをしたのはコハクだそうだ。

優花曰く、コハクから「漸く竜也と会えたのだろう。ならば離れていた分、竜也の傍に居ろ」と言ってきたのである。

それを聞いた俺は、コハクが何を考えているのか少しわからなくなった。

昨日の夜、コハクが優花を連れ出して何を話したのか聞いても答えてくれなかった。

悪いようにはしないと入ったものの妙に気になって仕方ない。

俺はバイクのハンドルを握ると、優花は俺の腰に手を回してしっかり握ると出発する事にした。

同時にハジメが運転する魔力駆動四輪も移動を開始した。

普段、俺の背中にいるのはコハクなのだがこれはこれで何とも言えない感覚であった。

元居た世界でもいつかはバイクの免許を取って優花とツーリングでもしようかと考えていたのだが、まさか此処で叶うとは思いもしなかった。

普段コハクが俺の背中に当てる胸の感触と大きさと比べるとなんだか、優花は若干小さく感じるなと不謹慎ながら考えていた。

すると、その考えを読み取ったのか優花が俺の腹を指で強く摘まんできた。

 

「・・・ねえ、竜也。今なんか失礼なこと考えなかった?」

「か、考えるわけねえだろう・・・」

「ふ~ん、まあいいか。コハクさんに比べたら私の胸は小さいかもしれないけど、こっちに来てから少しくらい大きくなったんだよ。」

「お、おう。そうかそりゃ良かったな」

「雫まではいかないけど、香織や妙子ぐらいはあるんだから」

 

ハジメの運転する魔力駆動四輪の後を追うように進み、優花の鼓動と胸の感触を背中に感じながらも、目的地である北の山脈へ向けて移動をするのであった。

 

 

数時間後、目的地である北の山脈地帯へと到着するのであった。

標高千メートルから八千メートル級の山々が俺達を待ち構えているかのように聳え立っていた。

生えている木々や植物、環境がバラバラであり、日本で言う紅葉が咲き誇る秋の山のような場所もあれば、夏の木のように青々とした葉を広げていたりと様々であった。

現在確認されているのは四つ目の山脈までであり、其処から先は完全な未知の領域である。

車とバイクで進めそうな場所まで到着すると、此処からは徒歩での移動になる。

とは言え、闇雲に探しても非効率な為、俺達はある方法を取った。

コハクの保持するアーティファクト「飛行甲板」から発進する式神に『遠透石』を組み込み、無人ドローンとして上空から捜索をする事にした。

因みに遠透石と言う鉱物はライセンの大迷宮で遠隔操作されていたゴーレム騎士をハジメがちゃっかり鹵獲した物から抜き取ったものである。

コハクが式神を操作し外部の映像を送り、ハジメの右目に装着している眼帯型アーティファクトへ送られた映像を確認すると言う仕組みだ。

尚、ハジメの右目に付けてある眼帯型アーティファクトの名前は『ターレットレンズ』である。

名前の由来は、某装甲騎兵のロボットアニメであり形状もそれに似せて作って在る。

ハジメとコハクのアーティファクトに驚く優花達であったが、三十分近く経ってからようやくめぼしい物が見つかったそうだ。

 

「これは、鞄・・・か。」

 

式神から送られた映像を確認するハジメの目に映ったものは、小ぶりな金属製の盾と折れた剣であった。

魔物の目撃情報があった山道の中腹より少し上、六合目から七号目の辺りである。

畑山先生が何事かと目を輝かせハジメに詰め寄った。

 

「此処から先に進んで行った所に痕跡らしきものがあった。たぶん冒険者の物だな」

「そう・・・ですか」

「此処からは歩いて進むしかないようだな」

 

そう言うと、ハジメが先頭に立ち山道へと入っていく。

ハジメに続くようにシアとユエ、俺とコハクに優花が後を追っていく。

先生たちの様子に気を配りながらも、かなりハイペースな行軍速度で進んで行き、一時間以上かけて六合目付近まで到着した。

詳しく周囲を探る必要があるついでに、近くの川で休憩を取る事にした。

後ろを振り向くと、四つん這いになり必死に息を整える先生達がいた。

 

「ぜぇーぜぇー、休憩・・・ですか」

「はぁはぁ・・・もう休んで・・・いいのか?」

「ゲホゲホ・・・南雲達の体力は・・・化け物か」

「皆体力無さすぎだよ」

「なんで・・・優花ッちは・・・平気そうなの」

「そりゃあ、日頃から鍛えているもん」

 

俺達の移動速度が速すぎるのもあってか、殆ど全力疾走しながらの登山となり体力を消耗しきってフラフラになっていた。

だがしかし、優花だけは問題なく平気そうであった。

聞いたところ、時間があれば体力練成を欠かせなかったそうでクラスメイト達の中で一番体力があるそうだ。

優花も、何時までも守られるばかりは嫌だそうで、王宮にいた頃からトレーニングと訓練を欠かさず行っていたと言った。

折角なので、此処で昼休憩を取る事にした。

朝飯である握り飯はコハクが作ったのだが、昼の弁当は優花が作ったものであった。

地面にシートを広げると、背負っていた背嚢の中から木製で出来た大きめの弁当箱を取り出すのであった。

弁当箱の中身はサンドイッチである。

人数分作っているのか、種類と量も豊富で結構な出来栄えである。

定番とも言えるタマゴサンドやハムチーズサンド、ベーコン・レタス・トマトを使ったBLTサンド、タマゴとハムカツのポケットサンドを含む華やかな物であった。

それ等を見ていた女性陣や男性陣から喝采の声が上がった。

俺も久しぶりに優花の手作り料理が食べられると知り、内心喜んでいた。

ハジメやユエ、シアやコハクにも優花の料理が口に合ったのか満足気味であった。

 

「他にも色々作りたかったのもあったけど、また今度ね」

「ああ、その時を楽しみに待ってるぜ優花」

「うん!私も竜也に食べて貰えて嬉しいよ」

 

隣で座っている優花が、俺の肩に頭を乗せてそう言ってきた。

俺も優花の気持ちに答えるように手を結ぶのであった。

傍から見たら、俺と優花は付き合い始めたカップルの様にも見えた。

突如、発生した桃色空間に畑山先生は頬を赤らめ、菅原達女生徒はキャーキャーと歓声を上げ、玉井達男子はギリギリと歯を噛み締め、手頃な岩を殴り始めるのであった。

ユエ至っては、ハジメにベッタリと付き、それを見たシアもまた背後から抱き着くのであった。

そんな様子を何処か微笑ましそうに見ながらも、サンドイッチを口に運ぶコハクが一瞬だけ目に映った。

俺達は行方不明者の捜索と言うの仕事を頭の隅にやり、ちょっとしたピクニックを楽しむのであった。




次回予告『白狐と黒竜』

タイトルでネタバレになりがちかもしれませんが、次回はコハクが本領発揮して大活躍しますのでお楽しみに。
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