ありふれた錬成師とありふれない魔槍兵で世界最強   作:ゴルゴム・オルタ

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頑張って執筆して仕上げる事が出来ました。
タイトル詐欺になっていなければ幸いです。
読む前にコーヒーをご用意しておくことをお勧めします。

追記
☆9評価にultrakussy様、☆8評価に弥七様、ありがとうございます。



Unite~君と繋がる為に~

宿屋へ向かい部屋に入ると俺と優花はベッドに腰を掛けて座った。

優花の方から話があるという事なので俺はその事を考えていた。

この町で優花と再会したものの、まともに話をした事が無かった。

遅かれ早かれこうなるのは分かっていた為、折角の機会なので俺は、優花と話をする事に決めた。

 

「話がしたいって言ってたが、何に関しての話なんだ優花?」

「うん・・・・。えっとね、竜也と南雲が奈落に堕ちてから今までの事とかあるけど、私が一番知りたいのは、その・・・コハクさんとの事かな・・・・」

「そうか・・・・」

 

奈落での出来事を聞かれるのはまあ分かっていた。

正直言って奈落に堕ちて生還できたのは奇跡だ。

運が悪ければ落下中に頭を打って死んでもおかしくなかった。

取り合えず俺はその辺から話をする事にした。

コハクとの出会いと馴れ初めも話す気でいる。

これはオスカーの隠れ家にいた時に決めていた事だ。

いざそう言った場面になると結構緊張するものだ。

俺は深く息を吸い込みゆっくりと吐き出すと、話を切りだすのであった。

 

「あの日、奈落に堕ちた俺とハジメはそれぞれ別の場所で行動を開始していた」

「一緒じゃなかったの?」

「ああ、どういう訳か違う場所へ離されたみたいでな。」

 

俺は奈落の底へ堕ちてからこれまで起きた事をを優花に話し始めるのであった。

 

薄暗い洞窟の中を歩き回りし、ハジメを探している途中で出会った鎖に縛られている九尾の白狐。

話を聞き俺達と同じ世界の住民で500年前の日本から連れてこられたと言う事実。

その白狐には姉と呼ばれる存在が居て奈落に堕ちる前に逸れた事。

先祖代々から伝わる教えに従い、九尾の白狐を鎖から解き放つ。

人の姿になったがこれと言った名前が無く、困っていたところで白狐の名前を反転し「狐白(コハク)」と俺が名付けた。

俺は南雲の捜索と元居た世界への帰還の手掛かりを得る、コハクには行方不明となった姉を捜索する為に地上に出る事を決意し協力関係を結ぶ。

ダンジョンをお互いに協力し合い捜索している途中で、豹変したハジメと再会する。

姿や言動は大きく変わったものの、お互いの事が分かり協力し合う事になる。

同時に、ハジメと再会した部屋で封印されていた吸血鬼族の生き残りである金髪の少女ユエとも出会う。

それぞれのパートナーと言える存在が心を闇に堕とさないでいる事となり支えとなり、奈落の底の最深部へと到達する。

最深部の守護者との激闘を繰り広げる中、敵の思わぬ反撃にあり俺は重傷を負う。

それを聞いた優花は、若干強張った顔をし怪我はなかったのかと聞いて来るが、心配ないと俺は答えた。

意識を失った俺は、夢の中である人物と出会う。

それは、同じ師匠の下で槍と魔術を学んだ年の離れた兄弟子とも言える人であった。

 

「師匠?それに槍と魔術って・・・竜也はそれを何処で教わったの?」

「元居た世界で2年前に俺と家族が旅行先の事故に巻き込まれたのは知ってるよな?」

「うん。竜也は重傷で生きていたけどそれ以外の人達が亡くなったあの事故だよね」

「ああ、だがそれは表向きの事であって実際は俺はあの事故で怪我なんてしなかった。だが代わりに俺はある場所へと迷い込んでいた」

「ある・・・場所?」

「世界の裏側とも言える場所で、魔境にして異境『影の国』と呼ばれる場所だ」

 

影の国とはアイルランドに伝わるケルト神話に登場する国で、強さを求め多くの戦士達がその国の統治者である女王の元へと集まった。

日本ではケルト神話自体、余りと言うかほとんど知られないマイナーなものであり優香は首をかしげていた。

俺はあの航空事故で生き残り、理由は分からないが影の国へと迷い込んだ。

そこで、俺はそこで生きる術を教えてくれた師匠とも言える人物、影の国の女王と呼ばれる『スカサハ』と出会った。

師匠は生きて元居た世界に帰りたくば、此処で生きる術を学べと言い俺は彼女の元で修行を始めた。

過酷と言う言葉では言い表せない程の死と隣り合わせの修業を積み、俺は生きる術として槍と魔術の腕を磨いていった。

何時しか俺は彼女の事を師匠と呼び敬意を払うようになった。

最終試験を乗り切った俺は、師匠との別れ際に魔槍『ゲイ・ボルク』を授かった。

同時に、師匠から『お前は何時か、その槍を手にし戦わねばならない時が必ずやって来る』とも言われるのであった。

漸く元居た世界へ帰還する事になった。

返ってきたのも束の間、俺に待っていたのは両親の訃報であった。

そこから先の話は優花も知っている為、割愛させてもらう。

 

「それで、竜也はどうやって奈落の底から帰ってきたの?」

「あの時俺は、本当に死ぬかと思った」

 

話を戻そう。

最奥の守護者との戦いの最中、俺は重傷を負い意識を失った。

意識が混濁する中、夢の中に現れたのは師匠の弟子とも言えるある人物だ。

その人物こそ、アイルランド全土にその名を轟かせたケルト神話の大英雄にして俺の兄弟子である『クー・フーリン』であった。

俺は兄弟子とも言えるその人から、槍の本当の使い方と力を教わった。

それにはまず、アルスターの戦士が立てる聖約〈ゲッシュ〉を誓う事であった。

其処で俺が立てた聖約〈ゲッシュ〉は〈大切な者達を守る為に戦う〉だ。

取り合えず先ず一つではあるが、兄弟子に背中を押された俺は戦う道を選ぶのであった。

意識を取り戻す最中、俺は白い狐の面を付けた少年と少女と、亡くなった両親の姿を見た。

まるで背中を押してくれるようにも感じた俺は戦う覚悟を決め目覚める。

意識を取り戻した俺はステータスプレートを確認し、これまで黒字で伏せてあった項目が判明するのを知った。

解放された天職と技能を知り、槍を手にした俺は再戦を果たすのであった。

最奥の守護者との決戦は熾烈を極めた。

だが、槍の本当に力を引き出せるようになった俺は、真名を解放し最奥の守護者を葬り去った。

満身創痍ではあったが、どうにか大迷宮を攻略する事が出来た。

 

「・・・とまあ、オルクスではこんなことがあった。」

「話だけでも聞くと本当に凄いんだね。竜也と南雲は」

「正直言って生きてるのさえ不思議に感じる戦いだった」

 

オルクス大迷宮を攻略した俺達は、最奥にあるオスカーの隠れ家にて地上への帰還の手がかりを見つけ世界の真実を知った。

その為にも地上に出て活動する準備をするべく二か月近く過ごすことになる。

同時に、俺とコハクとの関係も大きく変わる。

 

「それで・・・隠れ家で竜也はコハクさんとナニがあったの?」

「・・・優花、もしかして怒っているのか?」

「別に・・・・怒ってなんかないし、嫉妬なんてしても無いよ」

 

そう言うわりにはなぜか不機嫌そうな顔をするのである。

最悪、修羅場になる事を覚悟し俺は話を続けた。

 

正直この事を優花に言うべきか悩んだのだが、隠しても仕方ない為、話す事にした。

これまでコハクとの関係は利害が一致した協力者とも言える物であった。

オルクスを攻略してからと言うもののコハクの様子が大きく変わった。

最奥の守護者との戦いが終わり、隠れ家で体を休めていた俺の傍にコハクが寄り添い始めるのであった。

食事はもちろんの事、睡眠時や入浴時までほぼ一緒に過ごしていた。

今までどことなく他人とは壁を作り、距離感とも言える間柄であったのにだ。

一体どういう事なのか考えていたところ、コハクの口から意外な事を知るのであった。

それは、戦いの最中でコハクの古い記憶が蘇った事から始まる。

まだ日本にいた頃の話で、人間達から迫害されていたコハクはある時、猟師が仕掛けた罠に引っ掛かり絶体絶命の危機が訪れた。

その時、罠にかかっていたコハクを助け、傷の手当てをした男と出会った。

自身を助けた男に対しコハク名何故助けたのかと聞くとこう返した。

 

「白い狐様は神様の御遣いであって、決して悪さをする獣ではない」

 

コハクは助けてくれた男にお礼として白い狐の面を男に渡したのである。

長い年月を得て、その事を思い出したコハクは俺とその男がよく似ているだけでなく、同じ魂の波動を感じ重ね始めるのであった。

俺の家には昔から代々、白い狐を神様の御遣いとして讃える風習がある。

実家の神棚には白い狐のお面が祀られており、そのお面がコハクが持つ者と同じである事に気が付いたのだ。

遠い昔、コハクの命を救った男こそが俺の先祖であるという事を。

先祖代々から続いた縁が異世界で時間と世界を超えて再び結び繋ぐ事に、コハクは俺との出会いは運命そのものだと言った。

異世界に召喚され、戦いに巻き込まれ、奈落の底で俺はコハクと出会い共に過ごしていく内に、ある感情が芽生え始めるのであった。

それは、コハクの事を優花と同じぐらい大切な存在であるという事だ。

優花の事は今でも一番大切な人である事には変わらない。

それどころか心から愛おしく思える程の好きな人と呼べる存在と言ってもいいだろう。

コハクの事もそれと同じくらい好きである。

普段から傍に居て、離れ離れになってからようやく俺は、コハクと優花も異性として意識し始めるのであった。

 

「コハクはな、人間嫌いな所もある九尾の狐で、常識はある戦闘狂みたいな性格だ、けど何よりも他人を思いやる優しさを持った奴なんだよ」

「・・・・・そうなんだ」

「何よりも、コハクが好きになったのは着物美人で気が強い所が、結構どころか凄い好みのタイプってのもあってな」

「ふふっ、竜也って昔から着物姿の女性が好きだったもんね」

「否定できないな・・・・」

 

優花は怒った様子など無く何処か納得しているようにも見えた。

コハクと過ごしていく内に俺はある事を考えた。

それはもし元の世界に帰れたとしてその後の事である。

両親が亡くなってからは俺はずっと一人暮らしをしていた。

朝起きて学校に行って帰って来ても、声を出しても返事が帰ってこない誰もいない静寂に包まれたあの家で過ごす事となるのが何故か嫌になった。

一人で生きていくと決めた筈だったが、コハクと過ごす内に人の温もりと家庭の暖かさを再び感じるのであった。

コハクも同様で、元の世界へ帰ったとしても行く当てなどないのだ。

そう思うと、俺はある事を決心する。

元居た世界に帰る事が出来る日が来たのなら、コハクとお姉さんを同じ家で住む家族として迎え入れるという事だ。

帰りを待ち出迎えてくれる人が居れば俺はそれだけでも十分満足である。

其処で俺はコハクに好きだと告白をする。

コハクは人間でも無ければ亜人でもない、九尾の狐だ。

だが俺はそんな事など関係ない。

コハクが何者であろうと、俺はコハクの事が好きであり傍にいて欲しいと想いを告げた。

それを聞いていた優花は俺の話を聞いて胸を撫で下ろすように息をした。

 

「優花・・・その、怒らないのか?俺が他の誰かを好きになった事を・・・・」

「怒らないよ。竜也と再会してコハクさんが家族って聞いた時は驚いちゃったけど、今の話を聞いたらなんか納得しちゃった」

「その・・・色々と心配かけてすまなかった」

 

俺は、優花に一言謝ろうとした時であった。

 

「あのさ、竜也。あの夜、私がコハクさんに呼ばれた日のこと覚えてる?」

「ん?ああ、二人共一体何を話したんだ?」

「それはね、コハクさんと竜也との関係を聞いたの」

 

すると今度は優花から話を始めるのであった。

 

 

その日の夜、優花はコハクと言う名の女性に呼ばれ、月の光が水面に反射してやや薄明るいが人気のない湖にある桟橋に足を運んでいた。

話があると言われ付いて行くと、其処でコハクと話を始めるのであった。

 

「あの、話って一体なんですか?」

「お前の事は竜也から色々と聞かされているのでな。」

 

竜也の名前を出され、内心ドキリとする優花であった。

目の前にいる着物姿の女性は一体何者で、竜也とはどういった関係なのかを知りたかった。

するとコハクは優花にこう告げるのであった。

 

「私と竜也は家族であり、男と女の間柄だ」

「えっ!?」

「所謂、夫婦と言っても過言ではない」

「ふっ夫婦!?」

「竜也が私に嫁に来いと言うぐらいだからな」

 

コハクから告げられた衝撃の事実に優花の頭はパニックになった。

後ろから頭を殴られたような衝撃を感じ取るのであった。

奈落の底へ落ちていった幼馴染が、生きていただけでなく女を作って帰ってきた事に驚きを隠せなかった。

一瞬、「この泥棒狐!」と言う台詞が喉元まで迫っていた。

同時に、悲しくもあった。

竜也が自分以外の女性を好きになった事もあるが、コハクなる女性が堂々と竜也の女発言したことに憤りを隠せなかった。

コハクは対して後ろめたい様子も無ければ優花の事を気に掛けることも無く淡々としていた。

複雑な感情が頭に入り混じる中で、コハクは優花にこういうのであった。

 

「娘、お前は竜也の事をどう思っている?」

「えっ・・・・」

「私は竜也からお前の事を聞いたが、お前自身は竜也の事をどう思っている?」

 

それを聞いた優花は、頭を冷やしていく。

まるで、目の前の女性から頭を冷やせとでも言われた気分になった。

コハクから告げられた衝撃の事実に一瞬でも揺らぎかけたが、何とか踏ん張れた。

 

「(そうだ・・・私は今まで竜也が生きているのを信じて頑張ってきた!)」

 

もし此処で折れたりでもしたら、今まで私は何のために頑張ってきたのだと自身を鼓舞する。

自分自身を奮い立たせると、深く息をしゆっくりと吐き出す。

全神経を集中した呼吸をし息を整える。

そして優花は胸の内に秘めてきた想いを言葉に出す決心をした。

竜也の事をどう思っているだと?

そんな事は分かり切っている事だ。

 

「私は・・・私は竜也の事が大好きです!!」

「ほう・・・それで」

「貴方が誰で何者か知りませんが、竜也を想う気持ちと大好きなのは誰にも負けません!!」

「そうか・・・ならば私から言えるのはこれだけだ」

 

澄ました顔で優花を見ていたコハクは、ゆっくりと近づいて来た。

コハクの容姿は見て分かる通り非常に整ったプロポーションもあり、着物姿が似合う大人の女性であった。

その瞳から発せられる覇気とも言える視線に竦みそうになるものの何とか堪えた。

距離的に目と鼻の先ぐらいまで近づいて来たコハクに内心冷や汗を出していた。

するとコハクから発せられる言葉に優花は言葉を失った。

 

「娘。お前も竜也の女になる気はないか?」

「ふぇ!?」

「何だその気の抜けた返事は?どうなのかと聞いている」

「だって、竜也にはその・・・貴方が居て・・・」

「私が何時、竜也を独占すると言った?そんな気は元よりない」

 

思いがけない言葉に優花は戸惑わずに居られなかった。

するとコハクからこう話された。

コハク自身、竜也を独占する気も無ければ他の女を突っぱねる気も無い。

優花の事は竜也から聞かされていたので、どういった娘かを直接確かめたかった。

竜也に女が出来たのを知り折れる位なら、その程度の奴と見限りを付ける気でもあった。

折れずに食い下がった優花を見て問題なしと判断した。

竜也の女と言う席には自分以外にも、姉の分を含め複数あるから席に問題はないという事だ。

 

「私以外にも何れ姉様も含まれるのだ。今の内に空いている席に座れ」

「あの・・・コハクさんでしたっけ?その何というか・・・その・・・」

「なんだ?不満でもあるのか?言っておくが正妻の席はやらんぞ」

「そうじゃなくて!竜也はその・・・私の事をどう思っているんですか?」

「安心しろ。竜也もお前の事を非常に気に掛けているぞ。私と同じくらいに竜也もお前の事を愛していると言っていたしな」

「竜也が・・・私の事も好きって事ですか?」

「ああ、お前と竜也が結ばれるのは決定事項だ。そこは安心しろ」

 

それを聞いた優花はほっとしていいのかどうか分からなくなったが、コハクから竜也が自身を想っているという事を聞き安心するのであった。

それから優花はコハクからこの町にやってきた理由を聞くのであった。

フューレンのギルド支部長からの指名依頼でこの町に寄り、明日の早朝から捜索を開始するとの事であった。

それが終わればこの町を出ていくという事を聞くのであった。

 

「お前と竜也の関係は概ね聞いている。想いを告げたくばこの町にいる内に済ませておくといい。何だったら私の方で仲人役もやっても構わないが」

「えっと、何で其処までするんですか?その・・・してくれるのは嬉しいんですけど・・・・」

 

優花にはある疑問が浮かぶのであった。

何故コハクは恋敵とも言える相手に塩を贈る真似ができるのかと。

もっとも、実際は塩どころか嫁入り道具一式を渡されたのも同然なのだが。

これで戸惑わない筈がない。

すると再び意外な言葉が返ってくるのであった。

 

「竜也と体を重ね、心を繋げて見てあることが分かった」

「えっ?それは一体なんですか?」

「心に広がる巨大な穴だ。」

「穴・・・ですか?」

「大方、両親と言う家族を失った事により空いたのが大きな要因だろう。私一人ではとてもでは無いが埋められそうにない」

 

その事を聞いた優花は心当たりがあり、ある事が思い過る。

まだ元の世界にいた頃の話である。

一人暮らしを始めた竜也に夕食を作りに行ったり、家へ招待したことがあった。

竜也の両親とは長い付き合いもありそう言った事が何回もあった。

優花の両親の目の前では平然と保ちつつも、心配をかけないようにふるまっているのが優花には分かっていた。

夕食を食べ終わり、家へ帰路に着こうとするときの竜也は何処と無く寂しそうな気配を漂わせていた。

自身が夕飯を作りに行った時も、帰り際に見送る時の竜也の顔は何処か暗い表情をしていた。

 

「竜也の心に空いた穴を埋めるには、どうしてもお前の存在が必要だ」

「・・・・・」

「お前達は幼い頃から共に過ごしてきた仲であろう。夫婦として共に歩み寄る資格など十全にある」

「あの、コハクさんでしたっけ?男女の仲になるにはその・・・段取りと言うのがあるんですけど・・・」

「男と女の仲になるのに回りくどい事をする必要が何処にある?さっさと竜也に想いを告げて抱かれて女になって来い」

「っ!!!!!!」

「話は終わりだ、明日の早朝には山脈へ出発する予定だ。着いて来るのは勝手だが、どうするかは自分で決めろ」

 

そう言うとコハクはその場から立ち去り宿へ向かっていった。

その場に残された優花はコハクに言われたことを悶々と考えるようになった。

コハクに女になって来いと言われ思わず優花は赤面するのであった。

竜也とは幼馴染ではあるが、それから発展し恋人になると考えると恥じらいを感じないわけではない。

そうなるのは嬉しいのだが、流石にそこまで即決できる勇気を持ってはいないのである。

それはそうとコハクの貞操概念が色々おかしいようにも見える。

人間の男女が関係を結び付くには恋人→夫婦→家族が一般的だ。

しかし、コハクはと言うと、恋人=夫婦=家族となっている。

その事に疑問を持ちつつも、頭を切り替えた優花はコハクの言う山脈での捜索と言うのを聞き、その為の準備を始めるのであった。

 

 

優花から話を聞き終えた俺は、終始無言であった。

あの夜コハクと優花がそんな話をしていたとは思いもしなかった。

それと同時に、俺が優花の事が好きであるのに対し、優花も俺の事が好きであると言うのが知り嬉しくもあった。

すると優花が俺の手を握りながらこう言った。

 

「ねえ、竜也はコハクさんだけでなく、私の事も好き?」

「もちろんだ。元居た世界にいた時からこの世界に来てからもその気持ちに嘘はない」

「私もね。ずっと竜也の事が好きだよ」

「優花・・・・・」

「そりゃあ私以外の人で竜也に好きな人が出来たのは驚いたけど、コハクさんなら許してあげる」

 

優花は穏やかな表情そう言うと俺に微笑むのであった。

それを聞いた俺は、内心ドキッとした。

言うなれば俺は二人の女性と関係を持つ二股男だ。

正確にはコハクのお姉さんも加われば三股ではあるが、常識的に考えれば許される物でもない。

だが、それでも優花は俺とコハクの関係を許すと言ってくれた。

すると優花は俺の手首を握ると、自身の左胸に手を当ててきた。

突然の行動に俺は驚くも、優花の顔は真剣そのものであった。

掌から胸の柔らかさと、優花の心臓の鼓動が高鳴っているのが分かる。

 

「ねえ、竜也。私、今凄くドキドキしているのが分かる?」

「ああ、分かる。」

「私ね、どうしても竜也の口から聞きたい事があるの」

「何を聞きたいんだ?」

「竜也が私の事をどう思っているのか・・・」

 

俺はその事を聞いて覚悟を決める決意をした。

奈落の底から地上に戻る際に決めていた事を今こそ果たすべきなのだと。

今更怖気ずく必要などはない。

元居た世界から何時かは優花にこの想いを告げるのを決めていたのだ。

この世界に召喚され奈落に堕ちて離れ離れになったとしても、お互いの気持ちに変わりはなかった。

後は、それを言葉で伝えるだけである。

想いを告げる覚悟をした俺は優花と向き合い目を合わせると、想いを告げる事にした。

 

「優花、俺はずっと前からお前の事が好きだ。」

「うん」

「この想いは何処へ行こうと、誰に言われようと変わる事が無い。」

「うん」

「確かに俺はコハクの事が好きで家族として迎え入れたが、優花の事も同じ位大切な存在だ。」

「うん」

「俺は、篠崎竜也は園部優花の事を心から愛しています」

「私も、竜也の事が幼馴染ではなく、異性として好きです」

「優花・・・・」

「竜也、大好きだよ!!」

 

互いに想いを告げた俺と優花は、見つめ合うだけでなく唇を交わし合うのであった。

優しくそっと触れ合うような軽い口づけではあるが、それでも互いに惹かれあう男女が想いを告げるのには十分な物である。

気が付けば、外の景色は夕日が見える頃合いの時間となっていたが、そんな事等お構いなしに俺と優花は時間の感覚など気にしない位、熱く深い口づけを交わし続けるのであった。

俺としては優花とキスから先の事もしたくはあるものの、これから北の山脈地帯から押し寄せる魔物の大軍勢を前に体力を消費するわけにはいかず、自制するのであった。

その事を言ったら、優花は乙女チックに顔を赤く染め恥ずかしがるものの、終わったらしても良いよと小さく呟くのであった。

一度だけでなく二度も俺と優花の繋がりは切れかかった。

だが、お互いに想う心がある限り俺と優花の繋がりは決して途切れる事は無いと断言して言える。

もう俺は二度と優花の事を手放したりなどする物かと決心した。

 

その日、俺と優花は幼馴染と言う関係から恋人と言う新たな関係へと足を進めるのであった。




*装甲騎兵ボトムズの予告BGMとナーレーションである銀河万丈さんの声を脳内再生しながらお読みください。

予告
異形の怪物達が大地を踏みしめ押し寄せる。
鉄の騎兵が走り、跳び、吠える。
機銃が唸りを上げ、ミサイルが弾け飛ぶ。
降り注ぐ火玉と荒れ狂う暴風。
ひたすら圧倒的パワーが蹂躪し尽くす。
弾倉が回り、撃鉄が起き、撃心が空の薬室を撃ち、空しい音を立てる。

次回『装甲騎兵』

回るターレットからハジメと竜也に熱い視線が突き刺さる。
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