ありふれた錬成師とありふれない魔槍兵で世界最強   作:ゴルゴム・オルタ

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投稿が遅くなり本当にすいません。
自分としては週一を目指しているのですが、話作りに手間取ったり、当初の予定を変更し修正したりで中々執筆が進みませんでした。

それと、最近ウマ娘で漸くライスシャワーをお迎えする事が出来ました。
遂に私もライスちゃんのお兄様になったと思うと嬉しさ余って感無量となり、心がぴょんぴょんどころか、ぴょいぴょいしてました。

ウルの町編は今回と次回で締めくくる予定となります。
☆10評価にレヴァンチスト様、☆8評価に豊国大明神様。
誠にありがとうございます。


闇に潜む暗躍者

「(何だこれは・・・一体何なのだ!!)」

 

ウルの町を襲う数万規模の魔物の大群の遥か後方である男は、目の前の惨状を直視していた。

正確には、余りの惨状に思考を停止する寸前であった。

ありえない光景と信じたくない現実に、内心で言葉を失っていた。

男の名前は、レイスといい魔人族の男性で選りすぐった特殊部隊の者である。

この男の目的は、数ヵ月前にこの世界に召喚された神の使徒の中で勇者より厄介な存在である『豊穣の女神』と呼ばれる存在である人間の抹殺が目的である。

各地を転々としている同志とは別にある目的でこの地に来た男は、ある人間と出会った。

その人間は、神の使徒でありながら同じ人間族に憎悪を抱き、魔人族にとって有益な情報を持って現れた。

なんとウルの町に『豊穣の女神』が訪れていると言う。

情報によると豊穣の女神は各地を回り、その力で農作物を豊かにしているとの事だ。

今後の戦いにおいて人間族の兵糧が減る処か増えるのでは勇者より厄介な存在で、何としても抹殺せねばならない。

この男は清水と言う名の人間の少年からもたらされた情報を頼り、契約を結ぶのであった。

それは、豊穣の女神の女神の抹殺をする見返りに魔人族側の勇者として招き入れる事であった。

あるお方から賜った魔物達を清水に預けた男は、早速魔物の大軍勢を結集させるのであった。

清水の力は予想以上であり、僅か二週間と少しという短い期間で6万にも及ぶ魔物の軍勢を作り上げたのだ。

レイスと言う男は神の使徒の持つ力に驚くと同時に畏怖を感じた。

それは人間が持つには余りに強大な力であり何時自分達へ向けられるかもしれないと言う恐怖であった。

そこで考え付いたのが、魔人族との契約と言う建前の事、勇者として招き入れると言う餌を清水にちらつかせ、豊穣の女神諸共抹殺する事であった。

事が無し終えれば清水は用済みとなり、殺すつもりでいた。

男にとっては豊穣の女神の抹殺とウルの町の壊滅、清水と言う危険分子の排除がなせるという事もあり良い事尽くしである。

だが、いざ戦いが始まればこの惨状である。

数万の魔物の軍勢をもってすればウルの町など容易く壊滅でき、人間族への見せしめも兼ねて魔人族の力を誇示できると思っていた。

ウルの町は未だ無傷で健在であり、目の前には僅か数人の相手にあれだけ居た魔物の軍勢が壊滅状態となっていた。

見た事の無い武器に魔法、緑色で三つ目のゴーレムの戦う姿に言葉を失った。

 

「(これでは女神抹殺どころではない!私自身の命さえ危うい!!)」

 

このまま魔物の軍勢が全滅し、何の成果も上げられぬまま本国に帰還したとしても待っているのは粛清と言う死だ。

戦いの混乱に紛れ込み女神を抹殺した後、敵の情報だけでも持ち帰らねばならないと思い、その場を動こうとした時であった。

何処からか聞き覚えの無い轟音が聞こえ始めた。

ブロロロロロロロッ!!!!!!

すると、男の目の前には見た事の無い鉄の塊に乗った人間が崖を登り現れた。

ブロロロォォォォン!!!!!!!

それは馬でも無ければ魔物でもない未知の物であった。

しかも、それに乗っているのは人間の男だけではなく、白髪で尻尾が9本ある亜人であった。

 

「よぉ!!こんな所でかくれんぼでもやってんのか?魔人族のお兄さんや」

「どうやら魔人族で間違いないようだな?」

 

黒髪に紅い槍を手に持ち、それを担ぐかのように肩に乗せて現れた人間が話し掛けてくるのであった。

レイスは突然現れた男女の一組にただ、混乱するのであった。

 

 

外壁からシュタイフに乗って山脈方面へ走らせている俺は、立ち塞がる魔物を蹴散らしつつも先へ進んでいた。

俺の読みが当たっていればそろそろ見つけてもいい頃合いである。

コハクに頼み上空から式神を使って索敵しているが、未だ発見には至っていない。

どうした物かと思いつつも先へ進んで行く。

俺が探している相手とは、清水などでは無く裏で操る黒幕の存在である。

魔物の集団を使役しているのは十中八九、清水であると言うのが俺とハジメの見解である。

洗脳と言った闇系統の魔法を駆使し、数万の魔物の軍勢を作り出すと言う事が出来るのは、俺達同様にこの世界に召喚されチート級の天職を持ったものである。

そして、ティオから齎された情報を整理し考えた結果、2週間前に行方不明となったクラスメイトの清水であると判断した。

清水単独でこれだけの事を仕出かしたとは考えにくい。

そう考えている内に、俺の背中にいる相棒であるコハクから報告が上がった。

 

「竜也、獲物を見つけたぞ。どうやら奴はお前の読み通り、戦場を見渡せる場所で観察していたようだ」

「よくやったコハク!!それじゃあ奴さんの面でも拝みに行くとしますか!!」

 

コハクが放った式神から本命の位置を割り出した俺は、急な崖を一気に駆け上った。

そして、登り終えた先には本命である人物の姿が視界に入った。

その男の正体は、褐色肌に尖った名が耳が特徴の魔人族であった。

突然現れた俺達の登場に面食らっているのか、驚きの表情を浮かばせていた。

シュタイフから降りた俺とコハクは、警戒しつつも戦闘態勢を整えるのであった。

本来であれば見つけ次第始末したいのは山々だが、俺はこの男からまだ聞かねばならない事があるのだ。

 

「さてと、何でここが分かったって顔してんなアンタ?こそこそ隠れているつもりだったようだが、真上から丸見えなんだぜ」

「ッ!!!!」

 

その男は咄嗟に真上を見ると十字型の青い紙が浮かんでいるのを見て驚愕していた。

そして察するのであった。

監視していたつもりが実は監視されていたのだと。

悔しさを込めた感情で俺を睨みつけ歯軋りをするが俺は言葉を続けた。

 

「テメエの目的なんざ聞くまでもねえ。当ててやろうか?目的は『豊穣の女神』の抹殺だろ」

「何故・・・貴様がそれを知っている!?」

「答え合わせと行こうか?理由は簡単だ。魔物の数があまりにも多すぎるからだ」

 

理解できないと言った顔で俺を見る魔人族の男はまたもや驚くのである。

俺が言った魔物の数が多すぎると言うのには理由がある。

それは、至って単純な事だ。

6万と言った大軍勢を使役したのは大方、清水であるのは間違いない。

それだけの数を集めたのは驚きだが、俺は此処である違和感を感じるのであった。

ウルの町に攻め込むのになぜそれだけの数がいるのかと。

はっきり言って過剰戦力であると言うのは素人が見ても分かる。

あの町は強固な城壁に囲まれた防衛拠点でも無ければ城塞都市でもない。

ごく普通の湖畔に面した田舎町だ。

もし俺があの町を攻め落とすのであれば、数万も必要ない。

大きく見積もって千程の数が在ればことは足りる。

なのに6万と言った大軍勢を用意する必要性が無いのにも拘らず、清水は行った。

まるで清水自身が自分の力を誇示でもするようにも感じた。

もしそうだとして、その後の事を考えても人間族に反旗を翻した裏切り者として扱われ、清水自身にデメリットしかないからだ。

だが、そうなったとしても問題が無いとすれば一つだけ行く当てがある。

それは、この世界において何百年もの間、人間族と戦争を繰り広げている相手である魔人族だ。

魔人族が後ろ盾となれば当面の生活が保障されるだけでなく、それなりの地位になり得ると言うメリットがあるからだ。

それは、魔人族としては人間族が召喚した神の使徒が持つ力と天職といった情報を得るだけでなく、魔人族側に付いたと言う情報がこの世界の人間族の間に流れれば、士気の低下と言った精神的打撃を与えられるからだ。

時が進み戦況次第では、他にも魔人族側に付く者が現れる可能性もある。

もしそうなればこの世界の人間族の間で、味方である神の使徒が他にも寝返るのではないのかと言う疑心暗鬼の状況を作り出す事だってできる。

この世界の人間族に義理立てする気はサラサラないが、もしそうなったりでもすれば俺達の旅の良く先にも多大な影響が及ぶのは間違いない。

最もこれらは本来の目的を達成したことで得られる副産物でしかない。

コイツの目的は先程にも言った通り、畑山先生の暗殺若しくは抹殺といったところだろう。

先生を魔物の大群で殺させるのも良し、混乱に乗じて自ら仕留めるなどいろいろやり方はある。

どう言った経緯と形で清水と出会ったかは不明だが、尋問なり拷問なりと何らかの手段を使いあの町に畑山先生事、豊穣の女神がいると言う情報を得たこの男は行動に移ったのだ。

この場所は高所から平地であるあの場所を監視するのは打ってつけであり、事が済めば清水を自陣に引き込むか用済みとして殺すのは考え付く。

 

「まあこんなとこだろうな。理由はどうあれ清水の奴を嗾けて利用すると言ったところか?」

「・・・・それが分かった所で、貴様に何が出来ると言うのだ!!」

「別にどうと言った事はねえよ。理由はどうあれ先生の命を狙うだけじゃなく、戦いに関係ない町の人達まで襲うってんだ。その落とし前はきっちりつけさせてもらう!!」

 

そう言った俺は目の前にいる魔人族の男に殺気を飛ばした。

そいつは背中に装備している弓矢を手にするのであった。

 

「私の存在を知ったからには容赦せん!!貴様は此処で死ね人間!!」

「やってみろよ魔人族。テメエなんぞに出来るもんならな」

「死ねええええええ!!!」

 

俺の挑発が癇に障ったのか、怒りのまま矢を俺の顔目掛けて放つのであった。

だが、その矢は俺に当たる事無く明後日の方向へと弾き跳ぶのであった。

男は矢がそれたことに驚くも、執拗に矢を放ち続けるのであった。

俺は槍を肩に担いだままその場を動かなかった。

技能の一つである『矢避けの加護』もあり、俺に飛び道具は通用しないのだ。

過信する気はないが、万が一の時は避けるか槍で弾き返す事だってできる。

その間、俺の後ろで待機しているコハクに指示を出すのであった。

 

「コハク、悪いが崖下にいる魔物の掃討を頼めるか?」

「構わんぞ。ハジメ達の所にいる魔物の残りなど大したものではないからな」

「ああ、折角用意してくれたご馳走だ。一匹残らず食って来い!」

「ふふっそうするとしよう。有象無象とは言え獲物は獲物だ。存分に食らい尽くしてくるとしよう」

 

コハクは不敵な笑みを浮かべると、山脈側から来る魔物の最後尾の辺りまで行き文字通り狩りを行うのであった。

戦いは終盤もあり城壁に迫っていた魔物も逃げ腰となっていた。

大方、ハジメとシアによって駆逐されているのだろう。

山から逃げる魔物と山へと逃げる魔物同士で押し潰し合ってくれると後処理が楽だからだ。

最もコハクが狙った獲物を見逃す筈もなく、魔物は一匹残らず駆逐されるのは時間の問題である。

 

「さてと・・・そろそろこっちもやるとするか」

 

俺は槍を構え戦闘態勢に移ると、両足に魔力を込めると魔人族の男との間合いを一気に詰めた。

男は俺の突然の強襲に驚きつつも距離を取ろうとする。

だが、それは余りにも遅すぎた。

下から振り上げるように槍を振るうと、相手の武器である弓を半ばから切り落とすのであった。

俺の追撃の手を緩めることなく攻撃を続けていく。

刺すように突き、そこから払うように振り回し相手に反撃の隙を与えないでいた。

相手も避けるので精一杯なのか、俺の攻撃を何度も躱すも体中に傷を増やしていき動きが鈍っていくのが分かった。

俺は相手が怯んだ隙を見逃す事無く、刺すと見せかけたフェイントを入れた攻撃で槍を払い、遂に相手の右腕を切り落とす事が出来た。

振り上げた動作と同時に俺は相手の腹部を蹴りつけるのであった。

俺に蹴られた魔人族の男はそのまま地面に強く叩きつけられ転げまわるのであった。

男は自分の腕が切り落とされたことに驚くも、地面から這い上がり俺をまるで仇敵でも見るかのような目で睨みつけ、未だ戦意を無くしてはいなかった。

 

「貴様・・・その強さは一体・・・・本当に人間なのか!?」

「俺としてはそのつもりなんだがな。」

 

そう言い軽く流しつつも俺は魔人族の男との戦いの中、ある事を感じていた。

想定していたよりも相手が弱く感じたのだ。

何百年もの間この世界の人間族と戦争をするのだから、もう少し強いとばかり思っていたそれなりに警戒して挑んだつもりが、案外拍子抜けであった事に溜息をついていた。

俺自身が強いなどと自惚れる気は微塵も無いのだが、呆気なく感じた。

単にコイツが接近戦に弱く奇襲されることが想定外で、大した装備を持っていなかったのもあるのだが、妙に肩透かしを受けた気になった。

とは言え手を抜くつもりなど無い。

コイツは確実にここで仕留める腹積もりだ。

 

「さてと、そろそろ仕舞いにするとするか。何か言い残す事でもあるか?」

「今に見ていろ・・・・何れあのお方が貴様たちを葬り去ってくれる!!」

「あのお方ね・・・そいつが何であれ俺達の敵として立ちはだかるってんなら潰すまでだ。」

「神に逆らう異教徒がっ!!」

「そうかよ。ならばこの一撃、手向けに受け取れ!!」

 

俺は槍に魔力を込めると魔槍の真名を解放する準備を整えた。

相手がまだ奥の手を隠し持っているとも限らない以上、全力を持って潰すことを決意した。

魔人族の男は、腰から短剣を取り出すと腰だめに構え玉砕覚悟で突っ込んできた。

どうやら奥の手はなさそうだと思った俺は、相手に狙いを定め魔槍を放つことにした。

 

「その心臓、貰い受ける!!刺し穿て、ゲイ・ボルク!!!!」

 

俺は前へ突き刺すように魔槍を刺しつけた。

真名を解放された魔槍は赤い閃光を放ちつつ、一直線に相手の心臓を穿つべく生き物のように鋭く突き進んでいく。

男は俺に到達するまでも無く心臓を穿たれ、力尽きるように倒れこんだ。

程なくして魔槍は相手の血を吸い込み終えたのか紅く輝き、元の状態へと戻った。

俺は槍先についた血を振り払い、魔人族の男の亡骸へと近づいていく。

首元に手を当て脈が止まっているのを確認し終えた俺は、ルーン魔術のアンサズで男の亡骸を燃やし荼毘に臥す事にした。

俺は亡骸が完全に燃え尽きたのを見届けその場を後にした。

崖下を見下ろすと、辺り一面が蒼い炎で埋め尽くされ、黒い灰のようなものが地面に散乱していた

どうやらコハクが残りの魔物達を掃討し終えたようだ。

黒い灰の正体は魔物の肉体が炭化したことによるものだと推測する。

周囲を見渡すと魔物の姿はなく、白い髪に九本の尻尾をした見慣れた姿を見つけた。

俺は崖を下りコハクの元へと近づいていく。

 

「よう、コハク。そっちは終わったか?」

「見ての通りだ。数はそこそこ多かったがあまり歯応えの無い獲物ばかりだったがな。」

「そうかい。見た所、魔物の魂魄を吸い終えたって所か?」

「ああ。ついでに蒼炎で魔物共の死骸を浄化した。死臭が風に流れて街に来ることはないだろう。竜也の方はどうだ?」

「問題ない。ちょいと梃子摺るかと思ったが拍子抜けだった」

 

周囲の安全も確保できたのを確認し終えた俺は、シュタイフを取り出しこの場を去る事にした。

コハクが乗るのを確認した俺は、外壁に向け帰路を取るのであった。

ついさっきまで暗い夜空が明るみを照らし、空の景色が変わろうとしていた。

程なくして、俺とコハクを乗せたシュタイフは外壁まで戻って来るのであった。

戦いが終わったのを確認したのか、町の住民たちは家へと戻り、外壁部に残っているのは護衛隊の騎士達と町の重鎮達が幾人かである。

遠目で見るとユエとシア、ティオとハジメの姿が見えてきた。

俺達の姿を見て駆けつけてくる人影があった。

それは優花であった。

シュタイフを下り、走ってやって来る優花を見て俺はゆっくりと歩きだしていく。

 

「竜也!無事だよね!?怪我とかしてない!?」

「心配性だな優花は。俺もコハクも問題ないさ。それよりハジメは何処だ?」

「南雲ならそこにいるよ」

 

優花が指さした先には、畑山先生の隣に立ち黒い何かを見下ろしているように見えた。

よく見るとそれは、魔物達を使役していた黒ローブの男の姿であった。

意識を失っているだけでなく、大方ハジメが強引に確保したのだろうか、見るも無残で敗残兵の様な姿になっているクラスメイトの清水であった。

未だ白目を向いて倒れている清水に、畑山先生が歩み寄ろうとし護衛の騎士達が制止するも、それも聞き入れず顔を覗くのであった。

先生の隣には優花が寄り添い見守るのであった。

清水が町を襲撃した犯人だと知り、悲しそうに表情を歪めつつも、清水の目を覚まそうと揺り動かすのであった。

すると、やがて意識を取り戻した清水は周囲を見渡し、自分の置かれている状況を理解し上体を起こす。

警戒心を露にし、目をギョロギョロと動かしている。

 

「清水君、落ち着いて下さい。先生は、清水君とお話がしたいのです。どうしてこんなことをしたのか、先生に、清水君の気持ちを聞かせてくれませんか?」

 

畑山先生が清水を宥めるように話しかえるも、それが返って逆効果なのか清水はボソボソと聞き取りにくい声で悪態をつき始めた。

 

「なぜ? そんな事もわかんないのかよ。どいつもこいつも馬鹿にしやがって!!俺はただ自分の価値を示したかっただけさ。そうさ、俺こそが勇者に相応しいんだってことをな」

「アンタねぇ、愛ちゃん先生がどんだけ心配してたと思ってるのよ!」

 

反省どころか、周囲への罵倒と不満を口にする清水に優花が憤りをあらわにし反論する。

それを見ていた畑山先生は、声に温かみが宿るように意識しながら清水に質問するのである。

 

「沢山・・・不満があったのですね。気が付かなくてごめんなさい。でも、どうして町を襲おうとしたのか先生には分かりません。あれだけの力をこんな風に使うなんて間違ってます。」

「・・・・・・・」

「清水君、どうして答えてくれないんですか?こんなことをしたって何の意味なんて・・・」

「意味・・・あるさ・・・魔人族になら」

 

その名前を聞いて俺達を除く、畑山先生と護衛の騎士達は驚愕するのであった。

俺自身が立てた予想はどうやら的中したようだ。

先生たちのその様子に満足気な表情となり、清水は先程までよりは力の篭った声で話し始めるのであった。

 

「魔物を捕まえに、一人で北の山脈地帯に行ってその時、俺は一人の魔人族と出会ったのさ!!。その魔人族は、俺との話しを望んでわかってくれたのさ!!。俺の本当の価値ってやつをな!!だから俺は魔人族と契約したんだよ!!」

「契約・・・・ですか?それはいったい・・・」

「先生・・・あんたを殺す事だよ!!」

「えっ・・・・」

 

自分が魔人族に狙われているという事を知り畑山先生はポカンとした表情で驚愕する。

魔物の軍勢を使役する者の目的が、畑山先生である事をハジメ達には言ったものの、先生本人には伝えていなかった。

敵の目的がウルの町の壊滅ではなく、先生自身だと知れば余計な心配と気苦労を掛けると思い俺なりに配慮したつもりが返って裏目に出てしまったようだ。

 

「何だよ、その間抜面は?。まさかあんた、魔人族から目を付けられていないとでも思ったのか?ある意味、勇者より厄介な豊穣の女神なんて存在を魔人族が放っておくわけないだろ!!町の住人ごとあんたを殺せば、俺は『魔人族側の勇者』として招かれるそういう契約だった。なのに・・・・」

 

すると清水は俺達の方へと憎しみと嫉妬を交ぜた視線を向け喚き立て始めた。

 

「せっかく魔人族から超強い魔物も貸してくれて、想像以上の軍勢も作れた。なのに・・・なんでだよ!!何なんだよっ!何で、六万の軍勢が負けるんだよ!あり得ないだろこんなのって!!何で異世界にあんな兵器があるんだよっ!!なんで俺の邪魔をするんだよお前等はっ!!」

 

清水の目は最早、狂人の領域に達していた。

思い通りにいかない現実への苛立ちと陰鬱さや卑屈さが籠った目である。

俺は今にも襲い掛からんとする目の前にいるクラスメイトの罵倒を冷ややかな目で見ていた。

それはハジメ達も同じであった。

コハクに至っては清水の事を完全にゴミを見るような目で見ていたのもあり、それが清水を激昂させる原因になっていた

 

「清水君、落ち着いてください!!」

「うるさいっ!!あんたなんかに何が分かるってんだよっ!!」

「君の・・・特別でありたいと言う願いは、人として自然な望みです。でも、魔人族側には行ってはいけません。力を示したいと言うのならもっと他にもやり方はあったはずです。それなのに・・・」

 

清水は、畑山先生の話しを黙って聞きながら、何時しか肩を震わせていた。

護衛の騎士たちは、漸く畑山先生の言葉が通じた者とばかり思っていた。

だが、現実はそう甘くはなかった。

俺は清水の様子を見てそれは言葉が通じたからではなく、怒りに震えているものだと知った。

 

「力を示すだって・・・・俺が力を示すのは・・・魔人族にだっ!!!」

「清水君っ!!」

 

清水の手には何時の間にか黒く細長い針のような物を手にしていた。

どうやらローブの中に隠し持っていたのだろう。

こんな事であれば、ハジメに清水を確保した時点でボディチェックをするように言っておくべきだったと後悔した。

当の本人であるハジメもそれを想ったのか、苦虫をかみ砕くような表情でそれに気づきドンナー・シュラークを手にして清水を撃つ態勢に入ろうとする。

俺も動くに動けない状態であり、畑山先生は清水の持つ凶器に刺される数秒前の状態であった。

畑山先生も清水の取った凶行に全く対応できていない。

まさか、教え子である生徒に殺意を向けられるなど想像もしていなかったのだろう。

誰もが間に合わないと思っていたその時であった。

 

ドゴスッ!!!!!!!!

 

何かが清水の顔面を真横から強烈な一撃を叩き込むのであった。

突如として襲い掛かった衝撃的なそれは清水を真横に吹き飛ばし、外壁に叩き付けた。

 

「清水・・・・アンタ・・・愛ちゃん先生に何しようとしたの?」

 

清水の顔面に真横から強烈な一撃を叩き込んだのはなんと意外な人物であった。

その人物こそ、畑山先生の横に寄り添っていた優花であった。

優花の手には銀色に光るガントレットと呼ばれる籠手を装着し、プロボクサー顔負けのファイティングスタイルで清水を殴り飛ばしたのだ。

優花はと言うと、明らかに普段と違う雰囲気で体からは闘気らしきオーラを漂わせていた。

俺は優花のその姿に思わず声を失った。

それは俺だけでなくその場にいた全員がそうであった。

両手に装着したガントレットで拳同士をぶつけた優花は、目に覇気を灯し眼前にいる外壁に体をぶつけ立ち上がろうとする清水を見据えていた。

それを見ていたコハクは優花に話しかけるのであった。

 

「娘、必要なら手を貸すがお前はどうする?」

「いいえ、これは私だけでやります。なので、手出しは無用です!」

「そうか。ならば私は手を出さん。お前も竜也の女と言うのであれば力を示して見せろ。」

「はい!!!!」

 

どうやら優花はやる気満々であるようだ。

この町で再会してから優花の変化に俺は驚いていた。

オルクスの大迷宮で俺が奈落に堕ちる前よりも、体付きが良くなり背筋が伸びているように感じた。

それだけではない。

優花の体から溢れる覇気と闘気を肌で感じ取り、驚くのであった。

俺と別れて再開するまでの間、優花に一体何があったのか気になるが、今は見守るしかないようだ。

すると優花は俺の方に顔だけ向けてこう言った。

 

「竜也、私はもう守られるだけの女の子じゃない所、見ててくれる?」

「・・・・ああ、見ててやるよ。もしもの時は俺が助けてやるから安心しろ」

「うん!!わかった。それが聞けて良かった」

 

俺にそう言い笑顔で返すと、優花は清水と向き合いゆっくりと歩き始める。

清水もまた自身を殴り飛ばした優花に対し殺意の籠った眼差しで睨み立ち上がるのであった。

 

「清水。ちょっと少し・・・・頭冷やそうか?」

 

優花は小さく呟くようにそう言うと、拳に力を入れボクサーのようなファイティングポーズを構えるのであった。




次回予告『TAKAMATI式OHANASI』

Q.優花の心境を現すのであればどんな状態ですか?
A.クリリンをフリーザによって目の前で殺された孫悟空。

Q.原作と違い本作の優花はどれほど強くなっているのですか?
A.持ち前のステータスに思いやり+愛情+友情+優しさ+信じる心+諦めない不屈の心+全集中の呼吸+女子力で最早別人と言っても可笑しくない位強いです。

Q.優花の女子力を数値で表すならばどれほどになりますか?
A.本作における優花ちゃんの女子力はクラス最強で53万あります。

Q.優花の女子力はこれから先も進化していくのですか
A.これは現段階の数値であり竜也と親密度が深まれば深まるほど進化していきます。尚、進化の度合いは3段階あり女子力に加え愛妻力が将来的に加わる予定です。

2021/6/21 物語の展開の変更と修正の為、次回のサブタイトルを変更させていただくことになりました。
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