ありふれた錬成師とありふれない魔槍兵で世界最強   作:ゴルゴム・オルタ

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今回、いろいろ話を詰め込みすぎたせいか4000字を超えてしまいました。
めっちゃ疲れた。
ぶっちゃけると、早く本編に進みたいのもありましたがね(笑)
長編連載している人達、マジでスゲーとあらためて思いました。




錬成師の鍛錬

訓練が始まって数日が経った日の事だっだ。

戦闘系天職組のクラスメイトは着実にレベルと技能を上げていた。

最初の頃は、本物の武器を手にする事に戸惑いを見せたものの、概ね慣れて来たようだ。

 

だが、それと同時に俺はある事に気が付いた。

非戦系天職組の南雲の成長だ。

彼の天職は錬成師であり、明らかに戦闘に不向きだ。

それもあり、周囲からは無能、役立たずだの陰口を叩かれている。

挙句に、天職が勇者の天之河からは努力が足りないなどと言われている。

 

俺からすれば、非戦系天職である錬成師を戦わせる事自体、間違いだと思う。

元居た世界で例えるなら、文系の美術部や演劇部に、体育会系の野球やサッカー、柔道に空手をやらせるようなものだ。

素人が見ても不向きかつ不適切なのは一目瞭然だ。

さらに分かりやすく言うなら、洋食一筋の五つ星シェフに、日本の寿司を握らせるのと同じと言えば分かるだろう。

優花にそう言ったら納得しつつ苦笑いで相槌した。

 

その事を誰も気づかず、指摘しようとしない。

最早、見るに堪えかねないと思った俺は、ある行動に移すのであった。

それは、この世界に召喚され色々と検証と考察を重ねたある計画があった。

その為には、南雲の天職たる錬成師の存在が必要不可欠だと確信した。

 

その日の訓練が終わり、俺は計画実行の為、メルド団長の下に向かい相談し、実行に移る事にした。

俺は計画実行に必要な人物の元を巡り根回しをするのであった。

 

翌日、俺は城と目と鼻の先にある城下町に早朝から訪れていた。

最も、来たのは俺だけではないが。

 

「ねえ、篠崎君。朝早く町に来て一体何処に行くの?」

 

俺が連れてきたメンバーの一人である八重樫雫(やえがししずく)が訝しげに尋ねてきた。

彼女からすれば、疑問以外何でもないのだがこれも必要な事だ。

 

「まあ最もな質問だが、来れば分かる」

 

俺はそう言い、目的地に向け先に進んだ。

昨日、俺が実行する計画に必要な人物に南雲を含む他のクラスメイトにも声を掛けた。

それが南雲、八重樫、優花、畑山先生の4人だ。

優花は、何となく察してくれたが、八重樫は頭に?が付いた顔で一応承諾してくれた。

 

「さて、到着したぞ、此処が目的地だ」

「「「「えっ!?」」」」

 

其処は、鍛冶職の人間が働く工房だった。

4人が驚く中、俺は中に入っていくのだった。

 

「親父さん、約束通り来たぜ」

「おう、よく来たな坊主」

 

工房の奥からまさしく屈強という言葉が似合う口髭を生やした中年男性がやってきた。

この人の名はアレクス・ローレンツ。

王国城下町にある鍛冶屋の親方だ。

つい最近知り合い、気が合って仲良くなった人だ。

 

「本日は我が工房にようこそお越しいただきました、神の使徒様方。心より歓迎いたします」

 

親方とその従業員の方々が深く下げてきた。

そんな光景を目にしつつ、優花が質問してきた。

 

「ねえ、竜也。私達を連れてきた訳を教えてくれない?」

「ああ、いいぞ」

 

優花の質問に俺は、4人にこの場に連れてきた訳を話すのであった。

 

実はここ数日、俺は城の外を出て、この世界の生活状況をこの目で見て回った。

そして、城での訓練を見て俺はある事を思った。

まず、南雲の天職はどう見ても戦闘向きでない事だ。

今まで通り訓練をやっても成長は見込めない。

空を飛ぶ鳥に魚の泳ぎを教えても仕方ない

ならば、大空を飛ぶ方法を教えればいい。

 

彼の天職を生かせる場で成長させてはどうなのかと。

餅は餅屋、錬成師は鍛冶屋へだ

其処が此処、鍛冶屋である。

此処ならば、武器や防具に必要な鉱物の鑑定や錬成も出きると踏んだのだ。

錬成の練度と経験を重ねれば、今より強力な装備を作れるはずだ。

城での戦闘訓練で鍛錬を積むより、遥かにレベルと技能、経験を実用的かつ効率よく得れるだと。

将来的には修練から得た経験で、それに相応しい武器だけでなく、防具も作れるようならば、戦闘は出来なくとも、戦う人間の装備を整えることはできるはずだ。

 

八重樫を連れてきたのは、彼女の獲物にもある。

今、八重樫が使う武器はサーベルであるが、戦闘訓練を見ている内に気が付いた点があった。

明らかに、彼女の戦闘スタイルと武器が一致しない事だ。

パッと見た感じではあるが、彼女の剣は居合の型でこそ真価を発揮するタイプだ。

それに気が付いた俺は、彼女に合った武器が必要だと思った。

八重樫に合う理想的な獲物は、日本刀のような重く速い、切れ味のある鋭利な武器であると。

この世界に日本刀のような概念を持つ武器はない以上、一から作るしかないのである。

 

優花を連れてきたのは、個人的な感情がある。

彼女の実家は洋食屋である。

そんな彼女に人殺しの延長である戦争なんてしてほしくないし、刃物を取り扱うのは調理場だけにしてほしい。

あと、個人的な所見だが、優花の作る料理は絶品だ。

それだけは誰が何と言おうと譲る気はない。

如何に良質な食材があっても、それらを取り扱う調理人が居ないのであれば全く意味がない。

料理するに至って、細々とした調理道具も必要だ。

それも南雲に錬成師としての技量があれば可能だと俺は踏んでる。

 

最後に、畑山先生を呼んだ理由は非常に重要だ。

先生の持つ技能は概ね把握しているが、その技能を生かすことを俺は思いついた。

俺達が異世界に召喚されてから数日が経つが、ある懸念事項が頭を過った。

それは、ホームシックだ。

元居た世界でも、ある程度問題視されてはいたが、日本から海外、又は海外から日本へ留学する人間で起こりがちな生活習慣系の問題だ。

分かっているが俺達は、望んでこの世界に来たわけではない。

当然、故郷に帰りたい願望が多々ある。

今はいいが、何れは近い将来にホームシックという問題に直面するのは明白だ。

そうなってからでは遅く、今の内に対策を取らねばならない。

 

俺なりに考えた打開策だが、この世界の料理で故郷の料理を再現する事だ。

逆にホームシックを加速させる気もしたのだが、故郷の料理を食べる事により、帰還への希望を持ってもらうという俺なりの考えだ。

というか、俺自身故郷の和食を食べたい。

贅沢を言うなら、朝食に白米・味噌汁・納豆が食いたい。

その為に、俺はここ数日城の外を出て、この世界の人間の食生活を知るべく自分の目で見て聞いたりしてきた。

結果、食材や調味料に関しては元の世界と名称は違えど、味は概ね同じだという情報を得た。

当然、市場に足を運んで確認した確かな情報だ。

これにより、故郷の日本ではありふれた調味料である、塩、砂糖、胡椒の調達、マヨネーズ、ケチャップだけでなく、和食を作るのに欠かせない味噌の生成も可能だと知った。

調味料の調合と生成には、畑山先生の技能と存在が必要である。

それに必要な道具も調達しなければならない為、それこそ南雲の錬成師という天職は、計画実行に必要不可欠な存在である。

 

一部のクラスメイトが無能だの役立たずなどほざいてるが、そいつ等の見る目が節穴の間抜けなだけであって、南雲自身に非は無い。

寧ろ錬成師の存在を理解しない連中こそ無能である。

今回俺が立案した計画は、一つの事で複数の問題を解決する合理的かつ効率的に解決する案件だ。

 

「・・・以上が俺が考えた計画の概念だ。異論はあるか?」

「「「「・・・・・・・・」」」」

 

あれ? なんか4人の反応が薄いな。

口を開いたままポカンとしているが、そんなに変な事俺は言った訳じゃないはずだ。

すると、正気に戻ったのかそれぞれ口を開いた。

 

「その・・・篠崎君は、錬成しか取り柄の無い僕をそう考えてくれてたんだね」

「何ていうか・・・凄く驚いたわ。普段無口な貴方が其処まで考えてたなんてね」

「もう竜也ったら。そんな事言われたら、私も張り切るしかないじゃない」

「先生は・・・凄く嬉しいです。だって・・・篠崎君が・・・こんなにも皆の事を思って・・・いたなんて」

 

南雲は、自分の天職を俺にこれほどまで評価されていたのが嬉しいそうにしていた。

というか自身への評価低すぎだろ、もっと自信を持て。

八重樫は、これまで特に付き合いがなかった人物が、実はもの凄い人間だった事を知った目で俺を見て、驚いていた。

まあ、この辺はしょうがないか。

あんまり話したことないしな。

優花に至っては、一番長い人付き合いもあるが、凄く頼りにされていた事に照れ顔で喜んでいた。

俺は優花の作ったオムライスが超食べたいのが、一番の理由だが。

畑山先生はというと、半泣き状態で、泣いてるのか喜んでいるのか判断が着かない顔だった。

別に皆の為ではないですよ先生。

何時も生徒の事を考え頑張ってくれてる先生への感謝と慰労も兼ねてやるんですから。

俺は敢えて声に出さず、そう頷くのであった。

 

「兎も角、行動していかないと始まらないんだ。皆、やってくれるか?」

「うん、やってみるよ!」

「ええ、頑張るわ!」

「任せて、竜也!」

「先生も頑張りますよ!!」

 

こうして、計画実行の為に行動を開始するのであった。

 

 

やることはシンプルだ。

南雲にはひたすら錬成し、鉱物を鑑定し、練度と技能を上げ、技術を磨くのである。

精製に必要な素材があれば、俺と八重樫が城外の草原に出て、手頃な魔物を討伐し、素材となる部位を剝ぎ持ち帰る。

それと並行し、戦闘面で八重樫との連携訓練も出来る為、一石二鳥である。

 

畑山先生と俺で町の市場を回り、必要な食材を調達していく。

資金はと言うと、俺達が神の使徒というのもあり、必要な額を王国から提供して貰った。

概ね、俺達の故郷の料理に興味を持ったのか、先行投資も兼ねての出資だろう。

折角なのでありがたく使わせてもらう。

調達した食材を俺と先生で調合と生成、発酵させていく。

必要な調理器具は南雲が精製した物を使用した。

作り方の指示を俺が出し、先生が調合と生成を行う。

何度も調合と生成、試食を行った結果、マヨネーズ、ケチャップ、ソース、醤油、味噌が完成した。

俺の見積もりではもっと時間が掛かると思ったが、先生の頑張りもあり、想定していたよりも早く調味料の分野は完了した。

 

優花は、南雲が錬成若しくは精製した調理用具を手にし、問題点と改善点があれば的確に指摘していた。

これにより、南雲の錬成スキルが大幅に向上し、ステータスプレートに錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物融合]が追加されるのであった。

完成した調味料を使い、町の飲食店にある厨房を借りると、俺と優花は早速調理に掛かった。

腕に振るいを掛けて、優花は洋食の『オムレツ』を、俺は和食の『鮭大根』を作った。

優花自身、本当なら俺が好きなオムライスを作りたかったらしいのだが、ライスの元になる米が入手困難な為、妥協案でオムレツになった。

俺が何故、和食の中から鮭大根を選んだかと言うと、これには理由がある。

昔、俺の家が居酒屋を開いていた時、常連客の一人が好んで注文してくれたからだ。

その人は、富岡という人で、無口で無表情な人であったが、鮭大根を食べる時だけは凄く嬉しそうな顔をしていたからという思い出があるからだ。

当然、南雲、八重樫、畑山先生に試食してもらい、文句無しの一発合格を貰った。

行く行くは、城で出す料理のメニューに追加してもらう予定だ。

お陰で、俺と優花のステータスプレートに、「食品鑑定」「食品管理」「調味料生成」「栄養調理」「料理作成」の技能が追加された。

料理の面ではこれにて完了となった。

 

南雲の錬成スキルが向上し、調理器具の完成度で優花から合格を貰った翌日には、武器の錬成と精製と言うステップに移ってもらった。

八重樫の本来の獲物である刀と言う武器は、非常に繊細かつデリケートな代物だ。

流石の南雲も刀の精製には難を極めた。

幾千幾万とも言えるような失敗と精製を繰り返し、八重樫が俺との模擬戦で強度と鋭さを何度も試し、漸く満足のいく代物ができた。

刀自体の完成度は実戦でも使えるレベルまで出来たが、今後の南雲の錬成スキル向上次第では、更なる完成度が期待される為、日本刀(試作品)として八重樫の新たな獲物となったのである。

 

もう少し時間があれば練度も上がり良い物が出来るであろうと思って城に戻った矢先、メルド団長からある事が告げられた。

オルクス大迷宮と呼ばれるダンジョンで行われる実践訓練だ。

この出来事が、俺と南雲の運命を決める転換点になるとは思いもしないのであった。




次回『オルクス大迷宮、そして・・・』


次回も頑張って更新します。
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