ありふれた錬成師とありふれない魔槍兵で世界最強   作:ゴルゴム・オルタ

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新年あけましておめでとうございます。
今年もどうかよろしくお願いいたします。


最深部の守護者

奈落の底に堕ちたクラスメイトのハジメと、そこで会った少女ユエと合流し共に行動するようになって1週間以上が過ぎていった。

襲い掛かる魔物を蹴散らし、その肉を食べる事により、ステータスが初期の頃より大幅に向上していた。

俺のステータスプレートに表示される天職と技能には、まだ解放されていないものの、一部だけ分かった技能があった。

『獣殺し』と『矢避けの加護』だ。

 

『獣殺し』の技能は文字通り、魔物や魔獣と言った野生動物の弱点や癖を見切り易くなり、与えるダメージが大きくなる特攻技能だ。

『矢避けの加護』の技能は、飛び道具に対する防御技能と言ってもいいだろう。原理としては向かってくる飛来物に対し魔力による受け流しを自動的に行うものである。

此処に来るまで、口や尻尾から毒針や爪を、弓矢や銃の弾丸のように飛ばし放ってくる魔物が多々いた。

その時に対し、この技能が発動し攻撃を避けられる事ができ大変助かったりしている。

ある程度レベルが上がり、ステータスプレートを再度確認すると、黒字で伏せてある技能が増えていた。

さらに増えた黒字で伏せられている技能にも気になるが、今自分に出来る事を最大限やっていくため、前へ進むのであった。

 

奥に進むにつれ魔物も強くなり、罠や迷路のような階層があり困難が続くが、俺とコハク、ハジメ、ユエと協力し警戒しつつ慎重に突破していくのであった。

途中、ユエが敵の罠に引っ掛かり、魔物に人質として捕らえられる事があった。

だが、そんな事などお構いなしにハジメは銃を発砲し、ユエの頭皮すれすれを狙い撃ちし魔物を倒すことがあった。

俺も少しは手を貸そうと思ったのだが、あまりの光景に苦笑いするしかなかった。

お陰でユエがしばらくご機嫌斜めになったのは余談だ。

 

迷路のような階層を進み続け、そして遂に最深部思われる階層に到着し、その扉の前まで辿り着いたのだった。

此処に来るまでの道中、ハジメは新兵器『シュラーゲン』を造っていた。

普段使う拳銃『ドンナー』の強化版で、ユエが封印されていた部屋にいたサソリ擬きの外殻を加工して造り出し、強力な魔物を相手に使う予定であるそうだ。

コハクは、刀以外に薙刀等を出し、戦う相手に合わせ柔軟に戦法を切り替えて使っていた。

その武器は何処で手に入れたかを聞くと、この世界に召喚される前、自身を討伐しに来た者達を返り討ちにし手に入れた『戦利品』だそうだ。

 

「さてと、行くとするか」

 

俺達は、装備と準備を整えると巨大な扉を開け中に入るのであった。

中に入ると、光る水晶の柱らしきものが並んで立っており、此処へ来る者を待っていたかのように並んでいた。

ある程度進むと、床に巨大な魔法陣が浮かび中から巨大な魔物が現れた。

 

「コイツは・・・首二本足りないヤマタノオロチか?」

「どちらかと言うとヒュドラが近いかもな」

 

目の前に現れた魔物の特徴を見て俺とハジメはそう呟いた。

体長30メートルはあり、6本の頭と蛇のように長い首、鋭い牙に赤い目と大きい胴体。

 

「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」

 

俺達を見ると部屋全体に響き渡りそうな雄叫びを上げた。

それと同時に、俺達は戦闘態勢に入り行動を開始した。

 

「行くぞ、皆!!全員でコイツを仕留めるぞ!!!!」

「おう!!」「うん」「ああ!!」

 

ハジメとユエ、俺とコハクが左右に分かれ牽制攻撃を行った。

まず、ハジメがドンナーで赤い頭の蛇を撃ち抜き、コハクが黒い頭の蛇に式神を放ち蒼炎で燃やし、後方でユエが魔法を放ち緑の頭の蛇に攻撃する。

残った青い頭の蛇に俺が接近し、顎から脳天へ槍を突き刺すのだった。

残りの頭が二つになり、このまま一気に一斉攻撃をしようと思った時であった。

白い頭の蛇が叫んだと思ったら、倒した筈の蛇が回復し元の姿になった。

すかさず、ハジメがドンナーで白い頭を攻撃しようとするが、黄色い頭の蛇が壁となり攻撃を防ぐ。

 

「白い頭が回復、黄色が盾、残りが攻撃とはバランスが良いこったな!!」

「ああ、回復を潰そうにも残りと盾が邪魔して厄介だ」

 

ある程度戦って分かったが、白色が回復と全体指揮をし、黄色がそれを守る盾となり、残りの赤が炎系魔法、青が氷系魔法、緑が風系魔法、黒が不明だが意外と連携が取れて攻めあぐねる。

どうしようかと思った時であった。

ユエの方から悲鳴が上がり振り向くと、膝をついて体が震えあがり、明らかに様子のおかしいユエの姿が目に入った。

すると、ハジメがユエの元に駆け寄り後方に連れて行った。

俺とコハクはその穴を埋めるようにフォローに入った。

 

「コハク、ハジメたちが戻るまで足止めだ!!」

「ああ、どうやらそのようだな。蛇の分際で小癪な!!」

 

ハジメたちが回復するまで俺とコハクが足止めをするべく敵の前へ立ちはだかった。

ジリ貧なのは分かるが、現状それしかできず、迫りくる脅威から仲間を守るため戦うのであった。

コハクは、式神だけでなく刀を持ち接近戦に持ち込むが、盾役の蛇に阻まれ断念せざるを得なかった。

俺とコハクで白頭と黄色頭を狙っても良かったが、そうすればハジメたちが無防備になる為、迂闊な行動をするわけにはいかなった。

このままでは持たないと思っていた時だった。

 

「遅くなってすまねえ竜也、コハク!!あとはコイツで纏めて薙ぎ払う!!」

「もう、これ以上やらせない!!」

 

振り向くと、其処には新兵器である狙撃銃シュラーゲンを構え発射体制に入ったハジメと、その隙を狙わせないかのようにユエが凄まじい速度で魔法を次々と放ちカバーしていく。

黄色頭がハジメの攻撃を察したのか防御態勢に入るが、其処を俺とコハクが肉薄し深手を負わせる。

すかさず白頭が他の頭を回復させようとするが、それこそ俺達の狙った奴の弱点だ。

白頭が回復を行う際、他の頭が動かなくなり無防備な姿を晒す。

僅かな隙ではあるが、其処を見逃す俺達ではない。

事前に打ち合わせを行ったわけでもなく、即席の連携が取れたのも此処まで苦難を乗り越えた俺達だからこそできたのだった。

ドガァァァァァン!!!!!!

ドンナーとは比べ物にならない轟音が響き、爆発が6つの頭の蛇に襲い掛かった。

煙が晴れると其処には、焼けただれ瀕死の姿となった怪物がいた。

 

「今だ!!畳みかけろ!!」

 

俺の号令の下、ダメ出しと言わんばかりに、ユエが色取り取りの魔法を叩きこみ、赤青緑黒の頭を潰す。

トドメは俺とコハクで行った。

コハクが手にした刀を横一閃に振り払い、黄色頭の頸を跳ね飛ばす。

最後に残った白頭の脳天を高く跳躍した俺が、渾身の一撃を持って突き刺し息の根を止めた。

槍を引き抜き息の根を止めたのを確認した俺は、ハジメ達の所に向かう事にした。

 

「お疲れさん、よく頑張ったなコハク」

「それはお互い様だ、あれ程の相手は久方振りでな、少々梃子摺った」

「まあ、何がともあれお互いよく生き残れたんだ。」

「ふふっそうだな。あれ程の敵を前にし、逃げる事無く戦い生き抜いたのだ。竜也、お前には強者の資格があるようだ」

「そう言うコハクも凄かったぞ。式神の使い処もだが刀を使った戦いも綺麗だったぞ」

「そんなに言うな・・・馬鹿」

 

頬を若干赤くしそっぽを向くものの、尻尾の方がパタパタ動かし喜んでいるのが分かる。

よく見ると、お互い所々擦り傷があり、着ている服にも汚れや傷があった。

俺とコハクはお互いの健勝を称えつつ、ハジメ達の所に合流するのため歩き出す。

そうした時であった。

 

この時、俺は自分らしくもない失態を犯した。相手の心臓が確実に停止し、死んでいる事を確認していなかったのだ。

後ろには倒した相手である怪物が、再び息を吹き返し動き出した瞬間を見逃してしまった。

それに気が付いたハジメ達が慌てて俺に叫ぶが遅かった。

気が付いた時には奴は口を開き、其処から収束された魔法が俺とコハクを狙っていた瞬間であった。

コハクは咄嗟の事で体が動けていなかった。

俺は、彼女だけでも助けるべく横に突き飛ばした。

同時に俺に目掛けて光の渦が濁流のように俺の体を襲った。

体全体に激痛が走り、何処かに頭をぶつけたのか、段々意識を失い視界を暗闇が包み込んでいった。

 

「(コハク・・・・・無事でいてくれ・・・・・優花・・・・ワリィ・・・・)」

 

俺は意識を覆っていく闇に抗う事も出来ず、深く沈んでいった。

 

「クルゥァァアアン!!!!!!」

 

本当の戦いはここからであると言わんばかりに迷宮の守護者は高く咆哮するのであった




今回、何時もより若干短いですがすいません。
次回からが本番なのでお許しください


次回予告
夢に見たあの日の影、届かぬ叫び
明日に自分を描くも、消えぬ願いに濡れる
零れ落ちる欠片を、その手で掴み
揺れる心を抱き、夜へ跳びこむ
誰かの為に生き、この一瞬がすべてならば
見せかけの自分を捨て、ただ在りのままの姿へ

次回『魔槍、真名解放』

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