竜の群を束ねる女王がドラゴンより弱いとでも思ったか 作:Amur
ファーストコンタクト
ゴッ――!
竜王国からアゼルリシア山脈に向けて一頭の
「最近は哨戒任務が増えたな。未知の建造物の発見、もしくは地形に違和感を感じたら即座に連絡せよとの指示だが、一体なにを探しているのであろうな」
上層部の思惑を考えながら飛行している彼が平原を抜け、トブの大森林に達しようかという時、それに気が付いた。
「む……あんなところに丘はあったか? それも複数も……」
記憶では森まで平坦な大地が続くはずだったが、見知らぬ丘がいくつもあるのを発見する。
「我の記憶違いという可能性もあるが……もし何かあれば絶対に近づくなということだったな」
ここでドラゴンが丘に近づかず、即座に上官に<
ーーーー
竜王国――
竜魔法部隊の隊長であるヘジンマールからドラウディロンに緊連連絡が入る。
『トブの大森林近郊の平原に異変あり』
「きたか――!」
勢いよく立ち上がり、獰猛に笑う竜女王。
「……プレイヤーですか」
何事かをすぐに察したラナーは緊張の面持ちだ。
「うむ。<
「お気をつけて……」
「なんだ? 私を心配してくれるのか」
「いけませんか?」
「いいや。ふふふ――ありがとう」
「……」
「なに、そう問題は起こらないさ。万が一、戦いになっても安心して待っているがいい。私は竜王国女王、ドラウディロン・オーリウクルスだぞ」
「ええ。信頼しております」
「うむ。では行ってくる」
ーーーー
プレイヤーへのファーストコンタクトに赴くのは6人。これは一つのパーティーに推奨される最大人数。まずは冒険者として現地に向かうため、この数となった。
「さて、今回のぷれいやーはどんなやつかな」
愛用の仮面を装着しながら呟くのは
「イビルアイはぷれいやーに会ったことがあるのよね?」
そう尋ねる番外席次も含め、ここにいるメンバーはイビルアイが吸血鬼だと知っている。
「ああ。十三英雄のリーダーがそうだった。もっとも彼は最初は弱かった。そのあたりは六大神や八欲王とは違うな」
「強い相手だといいわねー」
相変わらず戦闘狂の気がある漆黒聖典最強。
「プレイヤーの中には第十位階に達している者もいるそうですな。かつての儂ならすべてを捧げて弟子にしてもらったでしょう」
平然と危ないことを宣うフールーダ・パラダイン。
女王は知ってるよと思いながら、この場で最も裏切る可能性のあった魔法狂いを見るが、その顔は余裕の笑みを浮かべている。
「神とも言われる者たちか。さて、俺の剣がどこまで通用するかな」
出発直前まで愛刀の手入れをするブレイン・アングラウス。竜王国に来てからの二年間で誰よりも過酷な鍛錬を積んだ彼はこの選抜メンバーに参加できるほどの高みに達していた。
「番外席次やブレインは戦う気満々みたいだけど、平和的に接触するのが一番だからね?」
ツァインドルクス=ヴァイシオン(が操作する白銀の鎧)が好戦的な二人に注意を促す。
「わかってるわよ」
「心配性だな、ツアーの大将」
「そりゃあね」
最後に、黒竜鱗の鎧を身に纏うドラウディロン・オーリウクルスが皆に号令をかける。
「――よし、いくぞみんな!」
「オオオーーー!!!」
ーーーー
カルネ村――
トブの大森林の南端にある開拓村。所属はリ・エスティーゼ王国。
村が開拓されてから100年以上経つが、今まで戦火に飲まれたり、野生モンスターに襲われたことがなく、村人は平和を謳歌していた。
ドラウディロン一行は報告にあったプレイヤーの拠点らしき場所――ナザリック地下大墳墓へと行く前に情報収集のため、この村を訪れていた。
「あ、ドラウ様! ようこそカルネ村へ」
元気よく歓迎してくれるのは若い村娘、エンリ・エモットだ。
「今日もトブの大森林の探索ですか?」
「ああ。どうだ最近は? モンスターの襲撃などはなかったか?」
「ドラウ様も知る通り、村はいつも通り平和ですよ。……あ、でも変わったことと言えば、見知らぬ魔法詠唱者の方が来られてますね」
「ほう?」
「トブの大森林を研究するためだとか。いまは村長さんのお宅で話をしていると思います」
「なるほど。大森林の研究なら私の活動とも一致するな。少し話をしてみよう。ありがとう、エンリ」
「いえいえ」
エンリと別れて村長宅の方に移動を開始する一行。
「――当たりだ」
にやりと仲間に笑いかけるドラウディロン。(ヘルムで隠れて顔は見えないが)
「幸先いいね」
「そうだな、ツアー。だが、平原から最も近い集落がここだ。情報収集としてカルネ村に来る可能性はそれなりに高かっただろう。さて、お次はプレイヤー本人か配下を派遣しているかだな」
「おお。ドラウ様、それにお仲間の方々もカルネ村にようこそいらっしゃいました」
一行が到着したとき、ちょうど村長が家から出てくるところだった。彼に続いて入口から姿を現したのは二人。一人は仮面を被り、杖を持った魔法詠唱者らしき男。もう一人は全身鎧を纏った戦士。体格から女性だと思われる。
「村長殿。村の人間ではないようですが、どういった方々ですか?」
杖を持った男が村長に問いかける。
「アダマンタイト級冒険者、“黒鱗”のドラウ様です。以前からトブの大森林の探索に行くときに、この村を拠点として使っていただいています」
「ほう。冒険者のアダマンタイトということは……」
「はい。最高位の方々です」
「なるほど(そんな微妙な金属が最高位なことに違和感があるなあ)」
「村長殿。エンリに聞いたのだが、そちらがトブの大森林の研究にやって来た魔法詠唱者の方かな」
「彼女からお聞きでしたか。そうです、こちらのアインズ様は僻地で研究されている魔法詠唱者で、この村には大森林の研究の一環でいらしたそうです」
「なるほど。あそこのことなら私が誰よりも詳しいだろう。なんなら、話しても構わないぞ」
ドラウディロンが前に出てそう告げると、アインズは是非にと頷いた。
「それは助かります。冒険者の活動についても興味がありますので」
「それであれば長話になる。村長殿、どこかの空き家を借りても良いか?」
「ええ。ご案内します。ご自由にお使いください」
朴訥で人が良い村長は何の疑いも持たずに一行を案内した。
先に空き家に入っていくアインズたち。
――二人だけではないな。複数の不可視化されたモンスターが護衛としてついている。さすがに用心深い。まあ、こちらも知覚範囲外にオラサーダルクたちを待機させているからお相子だな。
「ドラウ」
「ああ。皆も気が付いているな?」
番外席次の警告に他の仲間を見ると全員が頷く。選りすぐりのメンバーだけあって、見えない相手の存在を即座に看破している。そして、一行も中に入っていく。
不可視の魔物は少数が屋根に張り付き、残りは屋外で待機する。
アインズが席に着き、護衛らしき戦士は何かあれば即対応できるように、横に立ち警戒する。
空き家のテーブルは大きくないこともあり、ドラウ側も席にはドラウとツアーのみが座り、他の仲間たちは適当な場所に散っている。
6人中4人が顔を見せていない竜女王一行なので、どのような表情か窺うことは出来ない。
顔をさらしている一人であるフールーダは心なしか残念そうだ。アインズが探知防御の指輪をしていることで魔眼で見通せなかったからだろう。
ブレインはアルベドの方を注意している。あの鎧は硬そうだとでも考えているのかもしれない。
「まずは自己紹介ですね。私はアインズ・ウール・ゴウンと申します。アインズと呼んでくださって結構。そして、こちらは護衛のアルベドです」
「私はドラウ。この白銀色の騎士はツアーだ」
「見ての通り白銀と呼ばれているよ。冒険者チーム『黒鱗』の一員だ」
順番に仲間を紹介していくドラウディロン。ツアーは偽名を使うことも考慮したのだが、いずれバレると考えて、最初からこの名前でいくこととなっていた。
「さて、アインズ殿は冒険者に興味があるとのことだが」
ぴくりと傍らのアルベドが反応する。おそらく下等生物風情がアインズに対等の口を利くことが気に入らないのだろう。主の手前、自制しているが、ヘルムの中から不満そうな気配が漂っている。
――わずかな刺激で爆発する爆弾が置いてある緊張感があるな。どこかにやってくれんかな、この
「ええ。とはいえ、モンスター相手の傭兵ではなく、未知を探索する言葉通りの“冒険する者”に興味があります。少数派だと言うことはわかっていますがね」
「それが出来るのは最低でもミスリル以上で金に困らず、実力も十分な者たちだけだ。大多数の冒険者にとっては日々を暮らしていく仕事に過ぎない」
「ミスリル以上ということはドラウ殿は……」
「うむ。ロマンを求める冒険をしている。初めて会う異種族との交流や、前人未踏の地を踏破するときなどはいつもわくわくする」
「わかる、わかりますよ。その太古の建造物の中には何があるのか? この海の底に何者かが眠っているのか? 未知の探究には胸が躍るものです」
「うむうむ」
「失礼いたします」
竜女王と死の支配者が冒険者談議で盛り上がっていると、誰かが声をかけ、部屋の扉を開けた。
「――90点」
扉が開く寸前で番外席次が謎の点数を口走るが、小声だったので聞こえたのはドラウディロンだけだった。
「お待たせして申し訳ありません」
執事服を身に纏った白髪の老人が入室してくる。
アインズがアルベドに目をやると、彼女は頭を下げる。
――そうか。アルベドが念のためにセバスを呼び寄せたのか。別口で情報収集でもさせていたか? しかし、流石の判断だ。もし私たちが敵ならこれで一気にやりにくくなった。
セバスが来た理由を察すると共にアルベドの素早い動きに感心するドラウディロン。そして、執事の方を見て素直な賞賛を送る。
「立ち振る舞い、容姿、そして衣服に至ってまで完璧だな。まさに理想の執事だ」
「ふふふ……そうでしょう? ドラウ殿、彼は私専属の執事であるセバス・チャンです。同席させてもよろしいでしょうか」
「ああ。もちろん、構わない」
「ありがとうございます」
びしりと見事なお辞儀をするセバス。
その後も和やかに話が進んでいき、一通り語り終えたところで、ついに竜女王が核心に触れる。
「さて……冒険者のことも理解してもらえたようだし、こちらからも聞きたいことがある」
「なんでしょう。私の研究についてかな?」
「単刀直入に言おう。お前たちは『ユグドラシル』から来た存在だな?」
「!」
躊躇なく直球を投げつけるドラウディロン。
一瞬にしてアインズたちに緊張が走り、女王の仲間も警戒を強めるが、本人は至って自然体で話を続ける。
「ああ。警戒しなくてもいい。何故それがわかるかも含めてこれから説明する」
「……」
一気に無言になるアインズ一行に対して竜女王は話を続ける。
「なるほど。てっきりドラウ殿たちも同じくユグドラシルプレイヤーかと思ったが、そうではないのか」
まだ警戒は続けているが、一通りの説明を受けてとりあえずは納得するアインズ。ちなみに僻地で研究していた魔法詠唱者という経歴が嘘だとバレたことで、支配者としての口調に変えている。
「あっちの女戦士はそのプレイヤーの子孫ではあるがな」
ひらひらと手を振る番外席次。対応を間違えれば大惨事になる初会談でも彼女の態度は普段と変わらない。
「100年ごとにやってくるユグドラシルプレイヤー。今年がちょうどその年に当たる……か。私たちが転移してきてまだ三日しか経っていないが、これほど早く接触してきた理由がそれか」
「そういうことだ」
――つまり四日目。すでにアインズ呼びに変えているので数日は経過していると思ったが、接触タイミングとしては悪くない。
偵察として竜魔法部隊を毎日飛ばしていた甲斐はあったと内心で満足気な女王。
「過去、見知らぬ世界に放り出されたぷれいやーたちは例外なく困っていた。それは君たちも同じだろう?」
実際に何人ものプレイヤーと会っているツアーの言葉には説得力がある。
「たしかにな。そういう意味では先に転移したプレイヤーに感謝せねばな。貴方たちが来なければ、私は手探りで情報収集をしていくことになっていただろう」
「今日のところは挨拶程度のつもりだ。日を改めて我が国に招きたいと考えている」
「ふむ……」
「新たな来訪者には元の世界との違いなど話すことは多い。例えば、先程話題となった冒険者の階級でアダマンタイト程度の金属が最高位なの? と疑問に思っただろうが」
「んん! ……、ま、まあ、そうだな」
思っていたことをずばりと言い当たられて一瞬、硬直するアインズだが素直に認める。
「この世界ではそれ以上の金属はない――少なくとも一般には知られていないのだ。その反面、この世界にしかない魔法などもある」
「ほう、そうなのか」
未知の魔法という点に反応する死の支配者。興味を引きそうな話題を選んでいることもあり、そう悪くない雰囲気だ。
「危険です、アインズ様。この女が言っていることがどこまで本当かわかりません。私たちを罠に嵌めて一網打尽にしようとしている可能性もあります」
「その懸念はもっともだ、アルベド。未知の世界で警戒をし過ぎるということはないからな。だが、彼女たちの話に今のところ矛盾はない。判断は一通り聞き終わってからで構わないだろう」
警戒は残しつつも、鷹揚な態度を見せるアインズ。その姿からは十分に支配者の威厳が感じられる。
「それはそうですが……そもそも私は人間如きがアインズ様と対等に話していることが我慢なりません」
「私は人間ではないぞ。種族としては半竜半人。ドラゴンと人間の血を引いている」
「半竜半人ですって……?」
「ほお? 竜人という種族は知っているが、竜と人の混血と会うのは初めてだ」
知っているというか横に控えているセバスが竜人だが、そこまで教えてやる義理はないので黙っている。
「そうだろうな。おそらく私の血族だけだろう。先祖の竜王が変わり者でね」
「なるほど……(非常にレアな種族というわけか)」
レア物コレクターの食指が少し動いた。
「それに私以外の5人も純粋な人間は2人だけだ」
「なかなか面白いパーティーだな(魔法詠唱者らしき老人と剣士が人間に見えるな。しかし、メンバーの半数以上が顔を隠しているなど非常に怪しげだが、この世界では普通なのか?)」
アインズたちも三人中二人が顔を見せていないのでお互いさまではある。
実際、冒険者で他種族混合パーティーはそう珍しくないが、ここまで個性的なメンバーが揃っているのはこの六人くらいだろう。
「では国に招くにあたって、改めて名乗っておこう。ドラウというのは冒険者としての名前だからな。――我が名はドラウディロン・オーリウクルス。竜王国にて女王をやっている」
ヘルムを脱ぎ、素顔をさらす。そこには10代半ばから後半くらいの少女の顔があった。
「……国家元首が自分で足を運んでいたのか?」
「何があるか分からないのでな。我が国で最も強い私が来たというわけだ。だが、立場としてはアインズ殿も同じではないか?」
「ふふふふ……それもそうだな。そちらが正体を明かしたのだ。こちらも同じように返すのが礼儀だな」
頷いたアインズは仮面とガントレットを外した。そこにあったのは骸骨の顔と手。
「ナイトリッチ……いや、さらにその上か」
ナイトリッチはエルダーリッチの上位種とされるアンデッドだ。
アインズの正体を知っていた竜女王だけでなく、仲間たちもこれほどの怪物を前にして取り乱しはしない。ただ、イビルアイは思うところがあるのか髑髏の顔を凝視している。
「そうだ。私は死の支配者オーバーロード。アンデッドの魔法詠唱者で最上位種族だ。アルベドよ。お前もヘルムを取れ」
「はっ」
ヘルムの下から現れたのは妖艶な美貌。それまで無言だったブレインやフールーダですら一瞬、目を奪われるような黒髪の美女だが、頭から生える山羊のような角が人間ではないことを主張している。
「……」
無言で睨んでいるアルベドにアインズが補足をする。
「彼女が私の護衛というのも嘘ではないが、正しい地位も紹介しておこう。彼女は――」
「アインズ殿の奥方かな?」
御方の言葉を遮るという真似をしたドラウディロン。ナザリックの者が見れば怒りだす行為だが、本来もっとも激怒する女の反応は別だった。
「そうよ貴女の見立ては正しいわ私こそ御身を愛することを定めていただいた唯一の女にして偉大なるアインズ様の正妃その隣に立つに最もふさわしき女アルベド!」
「う、おお……!」
あまりの早口でまくし立てるアルベドにツッコミが間に合わないアインズ。そして『愛することを定めて』のあたりに設定を書き換えた影響が見て取れ、アンデッドなのに精神的に効いている。
「やはりそうか」
「やはりそうよ!」
うっかり触れれば爆発しそうだった危うさ、もしくは出来る女といった気配は消え、そこには一人のチョロベドさんがいた。
「ん、んん……。そ、それでは仲間と相談してからになるが、近々、竜王国にお邪魔することになるだろう。次も一度、カルネ村で合流ということでいいのだな?」
側近の暴走を無かったことにして話を進めるオーバーロード。横のアルベドがチラッチラっと主に目線でアピールしているのも必死に見ないようにしている。
「ああ。だが、念のため、周辺国家の地図を渡しておこう」
「それは助かる。村長は詳細な地図を持っていなくてね」
地図を指しながら説明していくドラウディロン。
「ここが我が国、竜王国だ。もし何かあれば王城まで連絡してくれ」
「わかった」
こうして、ファーストコンタクトは大きな問題がなく終わる――かに思えたとき、予想外の人物から声が上がった。
「なあ……アインズ」
「む?」
席を立ち、ナザリックに帰還しようとするところを呼び止めたのはイビルアイ。
「貴様、アインズ様を呼び捨てにするとは何事だ!」
激高して武器のバルディッシュを振り上げるアルベド。即座に反応した仲間たちは身構える。
「待て!」
主からの制止の声にびくりと動きを止めるアルベド。
「アルベドよ。私のために怒ってくれるのは嬉しいが、特に気にすることでもない。下がっていろ」
「……はっ」
もの言いたげだったが、黙って後ろに下がる。
「さて……イビルアイだったな。私に何か用かね?」
「ああ……。帰るときに呼び止めてすまない。聞きたいことがあってな」
「ふむ」
――イビルアイがアインズに聞きたいこと……。過去に会ったプレイヤーのことか?
予想外の展開に一瞬、戸惑ったドラウディロンだが、すぐに落ち着きを取り戻し、イビルアイの動向を窺う。
「私と……どこかで会ったことはないか?」
「ん?」
「なんだ貴様、それはナンパのつもりか!? お前ごときがアインズ様に拝謁したことなどあるわけがない!」
「待てアルベドォ!」
再び激昂する側近を押さえつけるアインズだが、そちらを無視してドラウディロンは思考を回転させている。
――そうだ。二人が会ったことはない。同じ種族と目されるスルシャーナともイビルアイは面識がないはず。ならどういうこと……あ? いやいやいや、ちょっと待て、あり得るのかそんなことが? 今までそんな素振りはなかったはず……。
唐突に妙なことを言い出したイビルアイだが、ドラウディロンには思い当たることが一つあった。それは憶測として飛躍したものだったので、自分でもすぐには納得できないようなこと。
――イビルアイ、お前まさか
傍目には冷静さを保っている女王だが、内心は激しく動揺していた。
最後に爆弾を放り込んできたお騒がせ吸血姫。やはりそう簡単には事態は終わりそうになかった。
第一回接触結果
・接触組
アインズ好感度…+
アルベド好感度…+
セバス好感度…+
・居残り組
シャルティア好感度…-