竜の群を束ねる女王がドラゴンより弱いとでも思ったか 作:Amur
バハルス帝国――
皇帝ジルクニフは世界を滅ぼす魔樹、ザイトルクワエ討伐戦の報告書を見て震えていた。
「……本当にすまない。優秀なお前たちを信じてはいるのだが、念のため確認したい。この内容に間違いはないのだな?」
「はっ。私どもも現実のことか目を疑いましたが、間違いなく実際にあったことです」
四人組とザイトルクワエの戦いを目撃した騎士が皇帝に告げる。
「竜女王のブレス一発で城よりも巨大なモンスターが凍結、続けて放たれたフールーダの魔法で大炎上……なんだこれは? どこかの神話か何かか?」
「いずれは本当に神話となるかもしれません。すでに耳が早い吟遊詩人によって伝説の戦いとして歌われ出しています」
「いや、あれを目撃できたことは最高に幸運でした」
「然り然り。危険な場所故、行けなかった陛下は残念でしたな」
「我らが師のあの大魔法よ。私はあの日ほど、パラダイン様の弟子で良かったと思ったことはない」
「竜王国の女王陛下も凄まじく強かったが、それより気になったことがある。あの方、少し成長してなかったか?」
「言われてみればそうだったな。10歳くらいだったのが十代半ばくらいの容姿になっていた」
「やはりそうか……残念だ」
「え? お前まさか……」
歴史の生き証人となった騎士や魔法詠唱者たちは目を輝かせて先の戦いを振り返る。
「しかし、竜女王のやつは腕が立つと聞いていたが、ここまで強いのか。それに蒼の薔薇のイビルアイに謎の女戦士」
勝手に話し始めた臣下たちを怒る気も起きないジルクニフは、フールーダ以外の討伐メンバーの詳細を確認していく。
「この顔を半分隠した女戦士はスレイン法国の所属という話だったな?」
「はい。ですが、正体の詮索はしないことが法国が彼女を派遣する条件とされています」
「ああ、わかっている。各国共同作戦の中核に名前すら不明なやつを参加させることに最初は揉めたからな。結局、何かあれば竜女王が責任を取るとゴリ押ししたが、やはりそれだけの実力はあったわけだ」
さらにいえば国家元首であるドラウディロンが前線に立つということでも揉めたのだが、これもゴリ押しして通した。
「法国も恐ろしい強者を隠していたものです」
「うむ……」
「しかし、陛下。これでまたバハルス帝国の株が上がりましたな」
「そうだな。四人の内、一人が我が国の主席宮廷魔術師だ。イビルアイは王国の冒険者だが国家には属していない。世間が帝国と王国のどちらを評価するかは考えるまでもないな」
そのフールーダがずっと竜王国にいる現状は腹立たしいが、帝国の評価を上げてくれたことは素直に喜ぶジルクニフ。
「3年前の時点でフールーダは帝国全軍に比肩する強さと言われていたが、いまではどれくらいなのだ?」
ジルクニフの疑問に高弟の一人が答えてくれる。
「そうですね。仮に師がこの場にいたとして、王国民や建造物への被害などを考慮しない前提であれば――」
「あれば?」
「今日中にでもリ・エスティーゼ王国は終わるでしょう」
「はは! 今日中。今日中か! とんでもないな」
「師がその気になればランポッサⅢ世や貴族たちが集っている城に大魔法を放って全滅させることも容易いですからな」
「デスナイトを数体放てば王都を壊滅させることも可能でしょうね」
かつては伝説過ぎてあまり知られていなかったデスナイトだが、現在の帝国上層部にはその存在が周知されていた。
「おいおい。それだと死の都になるだろうが」
「ははは、まあな。だが、手段を選ばないのであればそれも可能というのが恐ろしいな」
再び盛り上がる臣下たちを眺めながら鮮血帝はボソリと呟く。
「いや、帰って来いよ爺……」
ーーーー
聖王国――
ローブル聖王国の女王カルカ・ベサーレスも魔樹討伐戦についての報告を受けていた。
「なるほど。聞いていた通り、恐ろしい怪物だったようですね」
「カルカ様。むしろ、
カルカに報告するのは神官団団長ケラルト・カストディオ。聖騎士団団長レメディオス・カストディオの妹である。
「ケラルト。あなたがそこまで言うなんて珍しいですね。どれほどのモンスターだったの?」
「推定難度にして250とのことです」
「え? ……ごめんなさい。もう一度言ってくれない?」
「魔樹ザイトルクワエは難度250(レベル80~85)です」
「…………は、はあああああ!?」
「参考までに言いますと、海の守り神様であるシードラゴンで難度100ほどです」
「海の守り神様の2.5倍……もしかしなくても神話級の怪物よね!?」
「はい。それを倒した四人も生きながら伝説の存在になりましたね」
「仮に魔樹が聖王国に来ていたら……」
「勝ち目はありません。国を捨てて逃げる以外なかったでしょう」
「そ、そうよね……。ドラウと仲良くしていて本当に良かったわ」
「はい。そう思います。これからも竜王国とは友好関係を続けていくべきです」
掛け値なしに世界の危機だったと実感して、冷や汗を流すカルカとケラルト。ただ一人、ピントのずれた聖騎士団長だけは別の反応をする。
「たしかに今の私ではあの魔樹と戦うなど出来なかった……くやしい! だが、いつか追い付いてみせるぞ、ドラウディロン! うおおおおおお!」
この世界において天上の戦いと言うべきものを目撃して尚、闘志を燃やすレメディオス。気合いを入れて鍛錬に行くのだった。
「貴方の姉が勝手に行ってしまったわ」
「申し訳ありません、カルカ様。どうも姉は竜王国の女王陛下をライバル視しているようで」
「レメディオスもとんでもない相手をライバルにしたものね……」
ーーーー
リ・エスティーゼ王国・王城――
「城下では世界を滅ぼす怪物を討伐した連合軍――特に中核となった四人の英雄の話で持ち切りだ。かの連合は竜王国の女王、ドラウディロン・オーリウクルス殿が中心となって結成されたもの。ラナーやレエブン侯の亡命であの国との関係が悪化していた我が国は参加しなかったが、これについて諸君の意見を聞きたい」
国王ランポッサⅢ世は貴族たちを集めて、先の魔樹討伐戦について意見を交わしていた。
「まず、ボウロロープ侯。そなたの考えはどうか?」
「はっ」
六大貴族の一人にして貴族派閥の盟主、ボウロロープ侯が前に出る。
「陛下が心配されていることは王国が国際関係で孤立しないか、竜王国と戦争になった場合に他国が協力する可能性はあるかの二つですな」
「うむ」
「まずは順番に整理していきましょう。これが本当に世界の危機だったのか? そしてそれを打倒した四人の英雄とやらの実力はいかほどか」
指を一本ずつ立てて話を進めていくボウロロープ侯。
「四人で手を組んで戦ったとなれば、個々の強さは同等でしょう。誰かが突出して強いわけでも弱いわけでもない。となれば想定される彼らの戦力と倒されたモンスターの脅威度を割り出すことは可能」
「ほう……。侯の見立てを教えてくれ」
「噂の四人は竜王国の女王、蒼の薔薇のイビルアイ、帝国のフールーダ・パラダイン、そして法国の女戦士となっています。ここで注目すべきは我が国の冒険者であるイビルアイです。彼女はアダマンタイト級の冒険者。つまりそれを個人としての強さの指標にします」
「なるほどな。アダマンタイト級冒険者が四人で討伐したと考えればよいか」
そこまでの話は納得できたランポッサⅢ世。イビルアイがアダマンタイト級の中でも突出して強いなど彼らは知る由もない。
また、本来の歴史では城に出入りしていた蒼の薔薇だが、この世界ではラナー王女が出奔している関係で、王国上層部との繋がりはほぼない。逆に竜王国とはそれなりの関係を築いている。
「では侯よ。アダマンタイト級冒険者とはどの程度の強さがあるのだ?」
「そうですな。それは私よりも戦士長殿の方が詳しいでしょう」
そう言ってボウロロープ侯は王国戦士長ガゼフ・ストロノーフを見る。
「ガゼフよ。そなたの考えを聞かせてくれ」
「はっ。私は2年前の御前試合で蒼の薔薇の一人、ガガーラン殿に勝っております。ですが、彼女がそれから成長していれば同じ結果になるかは分かりませんが」
「なるほど。とはいえ、ガゼフも日々の鍛錬を欠かしておらぬ。イビルアイとガガーランの力関係は分からぬが、高く見積もってもガゼフと同等といったところか。この考えで合っておるか? ボウロロープ侯」
「ご明察の通りです。つまりは最大限に高く見ても、くだんの魔物は戦士長殿が四人いれば倒せる怪物というわけです」
会議にて魔樹ザイトルクワエは4ガゼフ未満の強さと位置付けられた。
ボウロロープ侯が無能というわけではない。王国貴族の中では軍事関係においては有能な部類といえる。前提条件としているイビルアイが強過ぎなければこの推測も悪いものではなかっただろう。
「……世界を滅ぼすという魔物は城より大きいと吟遊詩人は歌っておる。戦士長殿はそんな怪物と戦えるのか?」
「いえ、ウロヴァーナ辺境伯。そのように巨大な相手は私が10人いても無理です」
「ははは、わかっておるわ。いくらなんでも人間が四人で倒せた魔物が城サイズのはずもない。まあ、そのあたりの表現は吟遊詩人ならではといったところだろう」
鷹揚に笑うボウロロープ侯。ランポッサⅢ世や他の貴族も同意して頷いている。あくまで彼らの常識ではこの判断が当たり前だった。
ただ一人、ガゼフだけは何か言いたげだったが、空気を読んだためか、口を開くことはなかった。
「では、陛下。アダマンタイト級相当が4人で倒せる相手。これが世界の危機でしょうか?」
「……一都市からすれば脅威ではあるが、国家単位、ましてや世界の危機とするにはいささか以上に言い過ぎであるな」
「そういうことですな。連合軍などと言われていますが、その内実は複数の国での合同軍事演習でしょう。そのついでにやや強めのモンスターを討伐した。参加した国の上層部にはこの事実がわかっている故、我が国が孤立することもありますまい。まあ、これをネタに竜王国が何か言ってくる可能性はありますが」
彼が問題にしているのは国家単位の話で、民からの評判は気にもしていない。このあたりが、国民感情も考慮するバハルス帝国皇帝との違いだろう。
「うむ。よくわかったぞ、ボウロロープ侯」
「はっ」
脳筋の割には納得できる説明をしたボウロロープ侯を下がらせる国王。
「外務尚書よ。我が国から仕掛けるつもりはないが、仮に竜王国と戦争になった場合、今回協力した他国があの国に手を貸すと思うか?」
重臣の一人、王国の外交を司る男にも意見を求める。多くのボンクラ貴族とは違い、事実上、国を動かしている各尚書は有能だ。
「大義なき戦争に法国や聖王国は協力せぬでしょう。亜人国家である評議国の動向は分かりませんが、あの国が今まで領土的野心を見せたことはありません。警戒すべきなのはバハルス帝国かと思われます」
「やはり鮮血帝か……」
「野心に溢れる帝国皇帝が竜王国と手を組んで、我が国に侵略してくる可能性は十分にあるでしょう」
「たしか皇帝に正妃はいなかったな。竜王国の女王と婚姻を結ぶなどすれば非常に危険であるな」
「はっ。陛下のおっしゃる通りかと」
ジルクニフが聞けば顔を真っ赤にして怒るような話をする王国上層部。
「竜王国との関係が良好であれば、第二王子のザナックとの縁談の可能性もあったかもしれぬが残念だな」
「そうですな。現状では難しいと思われます」
「……軍務尚書の見解として、竜王国の戦力はいかほどと見る?」
ランポッサⅢ世に意見を求められ、軍務を統括する重臣が前に出る。
「ビーストマンによる被害に苦しんでいた過去の竜王国と異なり、現在のあの国はドラゴンを使役しています。何頭いるのかまでは掴めておりませんが、国家規模以上の戦力があると考えられます」
「その点は心配無用です、陛下」
戦の話になると、すかさずボウロロープ侯が前に出て発言する。
「成長したドラゴンは強敵ですが、戦士長殿や我が精鋭兵団五千人であれば十分に倒せる相手です」
さらりと自身の精鋭部隊を自慢するボウロロープ侯。
一般的に強い個体とされる
ちなみに竜王国所属、白き竜王オラサーダルク=ヘイリリアルはドラウディロンに
「竜王国は単独で我が国と戦争が出来る国力ではありません。ですが、帝国の援軍として出てこられたら多少厄介と言ったところです」
「あい分かった。竜王国とはこれ以上の関係悪化は避けるとして、最大限に警戒するのは今まで通りバハルス帝国とする。皆も異論はないな?」
「はっ!」
こうして王国での御前会議は終了した。
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リ・エスティーゼ王国・王都の冒険者組合――
「我らが英雄イビルアイに乾杯!」
「カンパーイ!!!」
冒険者組合では魔樹ザイトルクワエを討伐した英雄の一人であるイビルアイを讃えて祝勝会が開かれていた。
「いや~、凄かったぜ。イビルアイ姐さんの活躍はよ!」
「まったくだぜ。オレはあのバカでかい魔樹を見たときに世界は終わったと思ったが、それに一番槍で向かっていく姐さんの雄姿ときたら!」
「ちくしょう。俺もこの目で見たかったぜ。ミスリル級以上じゃないと、あの作戦に参加できなかったからなあ」
「仕方ねえよ。トブの大森林の奥地は魔樹以外も危険なモンスターが山ほどいる魔境だ」
作戦に参加して四人組の戦いを目撃した者、彼らからその活躍を聞いた者などが次々にイビルアイを褒め称えていく。
「ふ、ふん……。騒々しい奴らだ」
王国きってのチョロインさんはクールを装っているが、褒められ過ぎて仮面の中の顔は真っ赤になっていることだろう。
「おめでとう、イビルアイ。これで名実ともに伝説の仲間入りね。まあ、元からではあったけど」
アダマンタイト級冒険者、蒼の薔薇のリーダーであるラキュース・アルベイン・デイル・アインドラが仲間の偉業を称賛する。
「俺も参戦したかったんだが、さすがにアレと戦ったら死ぬよな」
世紀の一戦に参戦できなかったことを悔しがるのはパーティーで最大の巨体を誇る戦士、ガガーラン。
「まだ無理だろう。ドラウたちと話し合ったが、あの魔樹の難度は250くらいとの結論になったからな」
「250って……この目で見てないと俺も信じられなかっただろうな」
盛り上がる彼女たちだが、そこに一人の剣士が訪ねてきた。
「突然すまない。あんたらが蒼の薔薇だな」
鋼鉄のように鍛え上げられた身体。髪はボサボサで無精ひげが生えている。その見た目からも強さの追求に重きを置いていることが窺える。
「ん? お前さんたしか……ああ! ブレイン・アングラウスか!」
「あら、ホントね。2年前の御前試合は私も観させていただきました。戦士長様との一戦は見事でした」
「アダマンタイト級冒険者の方々に知ってもらっているとは光栄だ」
ガガーランやラキュースに顔を覚えられているブレインだが、言葉とは裏腹にさほど嬉しそうではなかった。
「御前試合の決勝戦か……。今まではあのとき敗北したストロノーフこそを超えるべき壁としていたが、もはや違う」
「……お前もしかして、魔樹との戦いを見ていたのか?」
ブレインの言動から察しをつけたイビルアイが尋ねる。
「そうだ。俺は世界を滅ぼす魔樹とやらに興味があってあの場所に行った。そしてあんたらの戦いを見て――心底震えたよ。神話に出てくるような怪物。そしてそれにたった四人で立ち向かう英雄たち。自分がいた世界がどれだけちっぽけだったか思い知らされた……」
「……」
「なぜあんたはあそこまで強いんだ?」
「自分で言うのもなんだが、私は元から強かった。だが、そこから更に伸びることが出来たのはドラウ――竜王国女王ドラウディロンに鍛えられたからだ」
「竜女王……。あんたを含めた四人の内の一人か」
「イビルアイだけじゃなく、俺たちも女王様に死ぬほどしごかれて大分強くなったぜ。残念ながら、魔樹と戦うにはまだ足りなかったがよ」
「文字通り死にかけた。いや、死んでたかも」
双子忍者の片割れ、ティナが思い出したくもないと身体を震わせている。
「死ぬギリギリのところまで強敵と戦って、復活したらまた戦う……あれこそが戦神がおわすという死後も永遠に戦い続けられる“喜びの野”なのかもしれない」
ラキュースが遠い目をして体験を語る。
「そ、相当な鍛錬を積んだようだな」
アダマンタイト級冒険者でも死ぬような修行の話に若干引いているブレイン。
「私たちの話を聞いて、それでも尚望むなら女王に話を通してやろうか? 強者を鍛えるのはあいつの趣味のようなものだ。お前なら歓迎されるだろう」
「是非頼む! 俺は自分がどこまで強くなれるか知りたい。まだまだこんな場所で終わりたくないんだ」
「わかった。あの国に行くなら転移で一瞬だ。それまでに準備をしておけ」
「俺にはさほど準備も必要ない。先方の用意が出来たならいつでもいい」
まだまだ強くなれるかもしれないという期待と地獄の修行への若干の恐れから武者震いが止まらないブレイン。
尚、秘かな大ファンであったブレイン・アングラウスが思いがけず自分から竜王国に来てくれたことに歓喜した竜女王は、蒼の薔薇たちよりも5割増しの激しい修行で歓迎したという。
ーーーー
竜王国――
「ドラウ、ドラウ! ド・ラ・ウ!」
「なんだ、ツアー。お前らしくもなく声を荒らげて」
ドラウディロンはツァインドルクス=ヴァイシオンが遠隔操作する白銀の鎧に詰め寄られていた。
「そりゃ荒らげもするさ。魔樹との戦いのときに会った法国の神人……番外席次のことだけど」
「うむ」
「強過ぎないか? 私の知ってる神人の域を明らかに超えている。ぷれいやーに匹敵するかもしれない」
「私も詳しくは知らないが、両親ともに神人で奇跡的に父母のどちらのプレイヤーの血も覚醒したから強いとか。なかなか興味深い話だ」
法国の定義では神人とは六大神の血を覚醒させた者を指すので、八欲王の子孫などはまた別の呼び方をされている。番外席次の父親は後者、もしくは従属神(NPC)関係ともされるので、その場合は片親が神人というのが正確な言い方となる。
「いやいやいや、そんな軽く言うけど彼女は危険だよ。通常の神人だとスヴェリアーたち他の竜王でも対抗は出来る。でも彼女だけは無理だ。仮に評議国が法国と戦争になったら、私以外だと手に負えない」
「戦争しなければいいじゃないか」
「それはそうだけど……あの国の方針だと、いつぶつかっても不思議じゃないからさ」
「確かにな。いまの神官長たちは話の分かるやつらだが、次の世代もそうとは限らない」
「そうだろう、ドラウ」
「だが、異世界からの脅威への戦力と見た場合は頼りになるだろう?」
「む……それは否定しない。法国が強くなることは評議国の永久評議員としては困るけど、世界を守るという視点からだと別。難儀なことだよ……」
「神人といえば、世界盟約での扱いを緩和する話を番外としたな。他の竜王たちに話を通すのは頼んだぞ、ツアー」
「ええ……。番外席次が危険という話の流れでそれを頼む? だいたい、君が間に入るって言ってたよね」
「だから
「間ってそこ!? 評議国側の説得は君がしてよ! なんで私に丸投げなんだよ」
友人にもゴリゴリ押してくるドラウディロンに白銀鎧が震えていると、十代半ばくらいの少女がやってきた。女王直属の参謀であるラナーだ。
「ツアー様も大変ですね。いつも女王陛下がご苦労をおかけして申し訳ありません」
「分かってくれるかい、ラナー。この女王、ホント強引でさ」
「よくわかります。おかげで私も婚約者と過ごす時間が削られてしまって大変なのです」
「それは由々しき問題だ。労働環境の改善を要求するべきだろう」
「妙に仲がいいなお前ら……さては普段から私の悪口で盛り上がっているな?」
「いいや?」
「そんなことはありませんよ?」
「……」
しらばっくれる二人を女王はジトッと見るが涼しい顔で流される。
「――まあいい。例の時期まであと2年となった。現状の整理をしたい」
「百年の揺り返しまでもうすぐか。今回の来訪者は友好的だと助かるのだがね」
「プレイヤーと呼ばれる超越者でしたか。六大神や八欲王もその同胞だとか」
「うむ。連中がやって来るパターンは大きく分けて2つある。個人か拠点ごとかだ」
「個人であれば問題はないね。問題はギルド拠点ごとやってきたときだ。この場合、ぷれいやーは大勢の従属神を引き連れている。彼らの強さはピンキリだが、厄介さはぷれいやー以上だ」
「忠誠心が高いのでしたね」
「高いなんてもんじゃないよ。善悪を問わず、主であるぷれいやーの命令は必ず守る。忠誠心が行き過ぎて、所属ギルド以外の者とは会話にならないこともあるくらいだ」
「それは厄介ですね。術者の命令は絶対順守するゴーレムのようなものでしょうか?」
「ある意味それに近いかもね。一応、自我はあるから個体としては千差万別なんだけど、共通しているのが主への忠誠心。だから、対話は従属神でなくぷれいやーと直接することが望ましい。……まあ、八欲王のようなタイプでなければだけど」
「安心しろ、ツアー。あまりにも分からず屋であれば、竜王国式説得が唸りを上げる」
「それ要するにぶん殴るってことだよね!? 従属神たちはぷれいやーを害する者を絶対に許さないんだ。やるなよ、絶対やるなよ!」
「大丈夫だ、問題ない」
――ん~。例えばアルベドやデミウルゴスの目の前でモモンガさんを
危険な想像をしながら笑顔でツアーに頷き返すドラウディロン。
「え、大丈夫? こいつが一番不安要素じゃない?」
「不安要素です」
「おい。本人を前にして少しは隠せ」
「はははは。君の参謀も同意してくれてるよ」
「まったく……そうだ、ツアー。良い知らせがある。我が五色の魔竜に赤色が加わって――」
着々と準備を整えていくドラウディロンたち。
ナザリック来訪まであと2年――
次回はまた時間が飛んで、いよいよナザリック来訪編に突入します。