もとの世界
「·····した······り」
「·········た···いり」
「きの···た······いり」
「木下浬(きのしたかいり)!」
そう呼ばれた事に気付き思わず立ち上がる。
「お前、今も進路指導の最中だってのに···最近ずっと上の空って感じだぞ。そんな調子で高校卒業して大丈夫か?」
険しい目付きで見てくる先生。
本当に俺のことを心配しているようだ。
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ先生。これでも平均とってるんで」
うん、平均はとれている···平均は。
「俺はそこも心配なんだがなぁ」
先生の指導は長いことで有名だ。
心配してくれるのは嬉しいが早く家に帰りたい。確か今日は晩飯の具材を買ってくるように言わ れていた筈だ。遅くなったら何て言われるだろうか。
···何で今日に限って。全く。
「はぁ···」
進路相談が長引き一つため息を吐いた。
日が落ちていくのを横目に見ながら帰路につき、そこで今までの事について少し考えてみた。
「そう言えばもうすぐで卒業かぁ······」
僕にとって楽しかった事とは一体何だったんだろう。
そこまで多くはなかったが友達がいたこと?
いい高校に来れた事?
それとも修学旅行?
毎日平和だったとか?
どれもいまいちだ。
「···ハハっ! 毎日平和って何だよ!」
思わず笑い声とともに叫んでしまった。これじゃはたから見たら変な人だ。
そうこうしているうちにいつの間にか足は家に向かっており一つ忘れかけていた事を思い出した。
「······はっ!晩飯っ!!」
慌てて店の方向へとターンする。家族がまっているから早くしなければならない
腹が空いてる自身のためでもあるのだが。
今僕は店に向かって走っている。
その道中僕は変な熱にうかされたような奇妙な感覚を感じていた。
もっと落ち着いていれば良かったのかもしれない。何故かそれがずっと頭の中をまわっていた。
そしてその答えはすぐにわかった。
「··················」
あれ?
気がつけば僕は道路のまんなかに寝転がっていた。
いやそうじゃない。飛ばされていたのか···
···何に?···車ぁ?······あぁ、バスね。
体の左反面が血に濡れているのが分かる。バスのくせにどんな速度で走っていたのか。
次に家族の事が頭に浮かんだが顔も姿もボヤけていて誰一人としてはっきり見えなかった。
最後に薄れていく意識に中でこれだけははっきりとわかった。
僕、死んだのか
「·········皆、······ごめ···ん」
それが意識が完全に途切れた瞬間だった。
少ないですね、次は少し長めに