東方vocal最高 !
あ、特に意味はありません。
月が綺麗だ。空気もすんでいる。
辺りはもう真っ暗だが···
こんな空気、僕がもといた世界じゃもう味わうことなんて出来ないだろう。
それくらい居心地がいい。が······
···グゥゥ~
こんな音のせいで雰囲気が台無しだ。
もちろん原因は僕自信なんだが···
「···はらへった···」
これで、お握りの一つや二つあればまだ良かったのに···
僕の手元には今、食べ物がない。
あれだけカッコつけて、師匠···青娥さんのもとを離れたというのに都に着くことができず
一日がたち、二日目の午後六時ぐらいだろうか···それくらい時間がたっていた。
初めは、まぁまぁあった食料もいまではもうない。
いや、そもそも都までの道なんて最初から分からなかったのだ。
考えが甘すぎた。
師匠···青娥さんの買い物がいつも早かったせいで、ここは都の近くなんだ、とでも思い込んでいたのだろうか。
それにまだ頭のなかでは、青娥さんのことを師匠とよんでしまう。
道場での癖? が抜けきっていなかった。
都に着けば、親切な人が食べ物でも恵んでくれるかもしれない。
まぁ今、自分がどの辺りに居るのかさえ分からないが···
そんなことを考えてながらふらふらと歩いている最中だった。
「なぁあんちゃん···これいるかい? 」
そう言いながら話しかけてくる人の手には、お握りがあった。
道端にも親切な人は居るじゃないか······ !
そう思い、視線をその人の頭顔に移した。
そこには額から短い一本の角を生やした、見た目二十代後半くらいの"鬼"がたっていた。
体格は普通の大人くらいで、顔つきや雰囲気からしてもとても鬼とは思えなかった。
「······鬼 ! ? ウソだろっ·········ガハッ ! 」
全身に強い打撃を受け、後方に吹き飛ばされる。
突然のことに受け身なんてとれるはずもない。
奴がこちらに走ってきているのが分かる。
その手にお握りはなかった。
身体中に力を入れ直す。
一瞬でスイッチが入った。
目の前の鬼が自分を騙していたからなのか。
ただ、相手が鬼だからと言うだけか······
冷静になり構えなおす。
···ていうかこいつは何をしたいんだよ。
いきなり殴りかかってくるなんて。
いくら鬼とはいえ、正気の沙汰じゃない。
いや、鬼だから問題ないのか······?
···いやいや、問題おおありだ。
下手したら死んでた。
「いきなりっ、何っ、すんだよっ ! 」
鬼が放ってきた、三発の拳をなんとか避ける。
こういう敵は大抵、大振りの攻撃だから避けやすい、とかそういうわけでもない。
その証拠に、一発一発が速い。
「何ってそりゃあ、目の前に強そうな人間がいたら戦いたくなるのが
鬼って奴なんじゃないのかと思ってな ! 」
まるで鬼の腕から放たれる一発一発の攻撃がロケットのようだ。
前に戦ったときの鬼は、ここまで強くはなかった。
それに目の前のこいつは喋れるし···
ゴン !
クロスして、両腕でガードする。
やつの一撃を受けた腕から変な音がしたが、折れているわけではなさそうだ。
命力を腕に纏わせていなかったら、折れていたかもしれないが···
また、そのまま後方に吹き飛ばされるが、距離がとれたので良しとしよう。
「······人間の癖にお前の腕、もの凄いことになってるじゃないか··· ! 」
目の前の鬼が目を見開いている。
この鬼は何の話をしているんだろう。
命力を使ったからといって、腕が変形するわけでもない。
更に命力の強さを腕に高める。
少しめまいがした······腹の減りすぎかな·········
多分このまま避けていれば、少しの間は生きていられるだろう。
しかし、避けている最中に隙を見つけて攻撃するなんて、そんなのは無理だ。
······きた······!
奴の行動パターン、頭の中では僕が避けることを前提で向かってくるだろう。
そして、奴は僕が突っ込んでくることを想定してはいない筈だ。
つまり僕が立っているこの地点に着くまでは拳を振る体勢が出来ていない。
それを利用することにしよう。
「ハハハハ ! ! どうしたよ ! 避けてばかりじゃ死んじまうぞ ! 」
全く奴の言う通りだ。
お互いの距離が二メートルの距離まで近づいたそのとき。
大きく一歩前へ踏み出す。
腕に纏った命力付きの拳とともに。
ドン ! ! !
奴の目が見開かれるのが分かる。
鳩尾辺りに綺麗にあたると、体が砕け散ることはなく、十メートルほど後ろに転がっていった。
そのまま数秒がたった。
数秒間奴が動かない事に少し安心したが、奴は起き上がってきた。
「············」
おいおい、嘘だろ······
もう戦う力なんて残っていない。
どんどん近づいてくる。
あと五歩という所で、奴はその場に座り込んだ。
「······今まで俺の体にここまで負荷を与えたものは居なかった。
俺は負けた···殺すなりなんなり、好きにしてくれ。ここまで歩いてくるのも相当キツかったんだ」
奴はすべてが終わった、というような顔でそう言ってきた。
···と、言うことは、僕が勝ったってことで良いのかな。
殺すなりなんなりって······鬼って変な所で堅物なのか······?
流石に殺したくなんてない。
あ、そうだ。
「そういう物騒な事をするつもりはないよ。
その代わり今日の晩御飯、邪魔していいか? 」
妙に馴れ馴れしくなったが、いきなり殴ってきた相手に丁寧な言葉を使う必要もないと思う。
鬼はポカンと口を開けたまま、こちらを見ている。
「·········そ、そんなことでいいのか···? 」
「あぁ、それで構わないよ。と言うか、それにしてくれ」
腹が減ってるこの状態で、殺すも何もない。
取り敢えず、何か食べたかった。
「······分かった、そう望むのなら喜んでそうしよう」
そう言うと、鬼はスッと立ち上がった。
······え? 結構元気そう·········?
鬼のくせに結構人を騙すのか······?
······なかなかやるな。
そう言えばさっきから、鬼とか奴とか言ってたけど名前はあるんだろうか?
「お前···名前は何て言うんだ? 」
お前、何て言っちゃったけどまぁいいや。
「俺の名前か? そうだな、俺のことは
·········幽鬼、とでも呼んでくれ」
「分かったよ幽鬼、僕のことは浬でよろしく」
そういいながなら一人の人間と、一人の鬼は、暗闇の中を歩いていった。
浬「腹が減った···
あ、あんなところに饅頭が······! 」
鬼と戦う前に、石を食って重症の浬君でした。