「引っ越し作業キツイです」(-_-;)
「ここが俺の住んでる家だ」
幽鬼のあとをついて歩くこと10分。
幽鬼の家は以外と近かった。
そこは見た目、家と呼べるか分からないくらい凄くボロボロだった。
彼は人が住まなくなった小屋を使って生活しているみたいだ。
「少ししたら晩飯は出来るから、くつろいでてくれ」
「···あぁ、分かった」
腹減った。
ここに来て一層と増したような気がする。
···そう言えば鬼ってなに食べるんだっけ。
野菜とか食べるのかな···どんな料理なんだろう。
ま、まさか人肉とかいわないよな~···どうなんだろう。
······それだけは止めてくれ··· !
それともまさか僕が晩御飯とかいうんじゃ···
「そんなわけないだろう···」
そう言って幽鬼は皿を並べている。
······顔に出やすいのかな。
「ここにあるのは、ちゃんとした動物の肉だ」
ちょっと聞いてみようか。
「···あの、失礼かもしれないけど、鬼って普通はなんの肉を食べてるんだ ? 」
「俺は人の肉なんて食ったことはないぞ。
それに···」
そこで言葉を区切る。
それに···何だろう。
「······それに、俺は根っからの鬼じゃないんだ」
「···え? それって···」
と、言うことは元は···人間だったってことか······?
「その顔、なかなか察しが良いみたいだな。
そう、俺は人間から鬼に変わった男なんだよ」
「人間から······鬼、に···? いったいどうして······?」
し···青娥さんからもそういう話を少しは聞いてたけど、あまり深くは聞いてはいなかった。
「俺には元々、人間だった時の名前も、そして·········家族もいた。
嫁さんと、まだ産まれたばかりの赤ん坊もいた、二人とも今は都だ」
「なら、どうして···」
「なら、どうして、鬼になってこんなところにいるのか、だろう? ···」
そう言って、幽鬼は遠くを見つめる。
「鬼になって数年がたった。
俺が鬼になったのは、だいたい予測はついてる。
一つはここらの妖気が他の場所と比べて強いこと、もう一つは俺が人間だった頃の心の弱さ···だと思う」
「心の···弱さ······? 」
そんなことで鬼になるのか?
「···俺は昔な、都にすんでた頃、誰かは忘れたがある人間を見捨てた。
その人間の顔は思い出せないが······確か、その時は妖怪の退治屋をその人間とやっていたんだ···」
······
············
··················
「おーい ! ○○ ! そんなに急ぐなよ~」
その日の俺は相棒の○○と、都から少しはなれた土地の散策をしていた。
なんでも正体不明の妖怪がでたとかなんかで···
「そういや、お前の家、赤ん坊産まれたんだってな ! 」
「な、○○、何で知ってるんだよ」
まだ誰にも言ってなかったはずだ。
「情報は色々な所から入ってくるんだよ。
···こんなことより、早く帰って赤ん坊の顔、見たいんだろ? 」
長年の相棒の○○には、もう情報がまわってたらしい。
「なぁ、お前はここで引き返して、早く家族の方へ顔を出してやったり出来ないのか? 」
「···はぁ、なに馬鹿なこと言ってんだ。
俺と○○は古くからの相棒、どんな妖怪を相手にするときだって一緒に戦っただろ」
俺はそう言って○○の顔を見る。
そして、
「どんなやつが出てきたって、お前と一緒なら仕留めれると思うし家族の笑顔があれば、力も沸いてくるってもんだろう ! 」
そう、○○に言ったんだ。
でも○○はどこか寂しそうだった。
「······そうか」
あいつはそう言うと散策の往復地点から、歩くペースを少し早くしていた。
俺はその時使っていた退魔刀を力強く握りながら○○のあとをついていった。
問題はこれからだった。
都までもう少し、という所で○○は焦りはじめた。
それに疑問を持った俺は聞いてみたんだ。
「どうしたんだよ、そんなに焦って···○○らしくないぞ」
「ん? あぁ、心配しないでくれ···」
まぁ、そうだよな、とその時の俺はあまり気にしないことにしたんだ。
都に戻ってなにかしたい事でもあるんだろう、と。
俺は···そうだな···なんと言っても早く家族の顔が見たい、とか多分そんなことを考えていたんだ。
家族の事を考えていたからか···
周りの音が聞こえなくなるくらいに······
気がつけば必死に逃げろと叫んでいる○○がいた。
○○の目の前には······なにがいただろう。
どんな妖怪だったか思い出せないが、恐ろしいものだった事だけは覚えている。
○○はとにかく逃げろ、とそう叫んでいた。
「逃げろ ! 早く ! こいつの足止めはやっておくから ! 」
○○を見ると左腕の肘から先が、飛ばされたのかネジ切られたように無くなっていた。
「なにいってんだよ ! 俺も戦う ! 二人でやった方が絶対······」
「いいから早く行けよ ! お前には家族がいるだろ ! ! 」
「うるせぇ ! この場で優先されるのは相棒のお前の命だろが ! !」
そう言って俺は○○に向かって走りはじめた。
そしたら○○に言われたんだ。
「······そっか、ならお前の相棒やめるよ」
○○はこちらに刀の刃を向けた。
○○の目を見て分かった。あいつは本気だ。
でも、俺は動けなかった。
少しでも○○に近付いたら、全てを否定されてしまいそうだったから。
「······ごふっ ! ! 」
○○が血を吐く。
後ろから何かで貫かれた。
助けようにも足が動かない。
○○を貫いている奴は、○○に何かを刺しているせいでこちらには来ない。
動かずにただ、じっとしている。
「···はやぐ···行けぇぇぇええ ! ! 」
○○のそんな声を聞いたことがなかった俺は思わずあとずさる。
···あいつは優しいやつだったから。
どんな時だって○○と組めば負けなかった。
だから、今度も······
でも○○は重症だ。○○をそんなにした奴に俺一人じゃ勝てない。
それに、俺には家族がいる。
こんなところで死ぬわけにはいかない。
でも、だから、見捨てるのか······?
俺に···もっと、力があれば······良かったのか···?
俺は、どうすればいい···············?
気が付けば、俺は○○のいる方向と反対の方向に向かって走っていた。
相手がどんな奴かは忘れてしまったが、まだ助かるかもしれない○○を見捨てた形になったのだ。
○○はどんな顔をしていただろうか···
············
そして、逃げ切った俺は何日か辺りをさ迷った。
その数日、○○を見捨てた罪悪感にかられ食料も喉を通らず、フラフラと都に帰ってきた。
そして都の退治屋たちの反応を見て、はじめて気づいた。
自分は鬼になったのだと。
··················
············
······
ふぅ、と幽鬼がため息を吐く。
そして
「都から逃げてきた俺は、人が使わなくなったこの小屋に住み、
鬼として強そうな人間に喧嘩を吹っ掛けてるって訳だ」
そう付け加えた。
「幽鬼は、都に帰るつもりはないのか? 」
「······あぁ、ここでこんなことしてれば···あいつもやって来るかもしれないからな···」
「いや、幽鬼の考えは分かるけどそんなことでいいのか?
もしかしたらお前の相棒、都でのんびり暮らしてるかもしれないじゃないか
都に帰らなくていいのかよ」
「······俺は、鬼だぞ···どの面下げて都にいる家族や相棒に会いに行けって言うんだよ」
············イラッ
「はぁ、こんなうじうじしてる奴なんかには、そりゃあ誰も守れないだろうなぁ」
なんと言うか、僕の事を何回も殺してる鬼という種族がここまで弱々しいのを見ていられなかった。
「何だと ! ! ! 」
幽鬼が放つ怒声に、小屋が微かに揺れる。
「············。
···それならさ、父親として家族に会いに行く強さくらい、見せてみろよ」
「············! 」
「人間の僕も一緒に着いていく、何かあったら力になるから」
「··················分かった。
浬、お前と話して吹っ切れたような気がする」
「よし ! そうと決まればおかわりだご飯ついでくれ ! 」
茶碗を高くあげて、アピールする。
「おいおい、さっきの話からの切り返し早いな」
幽鬼はやれやれ、といった風に茶碗を受けとる。
「決まったことは決まったこと、今はご飯の時間だろ? 」
「はいはい、分かったよ」
茶碗を受け取った浬は、幽鬼を無事都に送り届ける決意を固めた。
浬「うまい ! 」
幽鬼「なぁ、俺のはなし聞いてたか?」
浬「え、あぁ、うん」
幽鬼「·········」
浬「モグモグ······」
幽鬼「······なんだかなぁ」
「モグモグ···」
幽鬼「誰だよ ! ? 」