裏切りの菅笠なんて捨てるんじゃ!!   作:紅乃 晴@小説アカ

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風雲金田城の巻!!その2

 

 

金田の城。

 

夜闇の中で城内の松明が灯る。城に押し入った仁と竜三は、天守閣の入り口を目前にして、蒙古の総大将であるコトゥン・ハーンと対峙していた。

 

彼に従い、卑しい笑みをこちらに向ける菅笠衆を見て、刀を握る手に力がこもった。

 

「冥人ども!!菅笠衆は我に降ったぞ!!」

 

竜三の悪い予感は当たってしまった、と仁は悔いる。矢立砦での彼らの様子を見た時点で、竜三はこうなる結末を予感していたのだろうか?手助けに来ると仁が信じて菅笠衆を待っていた間、奴らは蒙古へと降り、その体制を整えていたに違いない。

 

ハーンの言葉に仁の顔つきは険しいものとなった。蒙古の総大将はそう言った人の側面をうまく掠め取り、利用する計略に長けた男だ。

 

対馬の民を怯えさせ、好む好まざるに関わらず蒙古へと屈服させる。その中で、積極的に協力させる者には褒美を。反抗する者や協力しない者たちには凄惨たる罰を与えることが、奴のやり口だ。その悲惨な手腕を壱の島のあちこちで目の当たりにしていたのだ。

 

「飢えているだろう!ひもじかろう!民は苦しみ!日々、衰えていく力も感じておろう!」

 

それを知っている上で。

理解している上で。

なおもハーンはそう声を上げるのだ。

 

さも突然の事実であると言わんばかりに。対馬国が元軍の統治下にあるかのような粗暴な態度で。それが仁の怒りの琴線を激しく刺激した。

 

そしてハーンは常套句を口にした。志村にも幾回も問いかけた言葉を。

 

「故に、もう一度問おう、侍。我に降るか?」

 

その甘い言葉の裏にあるどす黒い邪悪に、仁は刀を構え、大声で返した。

 

「くどいぞ、ハーン!貴様の首を取り、志村殿を助け出し、そして蒙古を討ち滅ぼす!」

 

その蛮勇を、ハーンは無謀だと言って鼻で笑う。その覚悟と決意がなんの意味を為すのだと失笑した。

 

「誉とやらの為か?志村も同じことを言っておった。だが、誉とやらで民の飢えや、苦しみは救えるか?」

 

ハーンの言葉は仁の心に深く突き刺さった。

その言葉もまた事実だった。

 

侍の誉や、誇示で苦しんでいる民が救われている姿など、今の対馬には無い。今、対馬国の民が求めているのは誉や誇示を捨てようが蒙古を打ち倒す純粋な力だ。

 

「暖かい飯と寝床を約束すれば、民は簡単に我らに降る。お前たちもそうであろう、たかが二人の侍に何ができる」

 

ハーン率いる蒙古の軍勢。その背後にいる元軍、そしてモンゴル大国。ここでハーンを退けても、大国に目をつけられた日本はその脅威に晒され続ける。元軍を降さない限り、対馬は常に蒙古の脅威に晒されることになる。

 

そんな膨大な力を前に、自分たちは折れる事なく争うことができるのだろうか。

 

ほんの僅かにでも、折れそうになった思考を仁は外へと追いやる。そんなことを考えている暇がどこにある。ここまで来た以上、脅威と戦うなど百も承知だ。

 

ハーンに降るという選択肢など無い。交渉に応じることもない。主義、主張が根本的に異なる相手と折り合いをつける術を、今の仁は持っていない。

 

ならば、為すべきことは定まっている。

仁は刀を構えてハーンへと勝負をかけた。

 

「戯言を!」

 

「仁」

 

飛び出そうとした仁の前に手を出したのは、隣にいた竜三だった。菅笠をかぶる自分の親友は、遥かに冷静であり、仁の昂った戦意に水をかけて冷ますように言葉を放つ。

 

「お前は先に行け。志村様を助けろ」

 

「ならぬ!ここでハーンを討たなければ…」

 

「目的を見誤るな、仁!」

 

竜三の声に仁は目を見開く。

 

「我らの狙いは金田の城を奪還し、志村様を助け出すことだ!!奴が陽動で、志村様に危機が迫ってるやもしれん。お前は志村様を救ってこい!」

 

怒声のような声をあげて、竜三は仁を論する。ここに来た目的は蒙古を討ち滅ぼすためでは無い。そのために必要な土台を作るために来たのだ。志村という対馬の地頭を取り戻し、鎌倉との連携を持って蒙古を押し返すきっかけを作る。それが蒙古に対する反撃の狼煙だ。

 

その目的を、仁は怒りと昂りのあまり忘れていた。怒りに任せて戦っても何にもならないと竜三は言う。

 

彼はぶら下げていた段平を構えて、鋭い眼光を迸らせたまま仁に告げた。

 

「奴らの相手は、俺がする」

 

その言葉に、仁は返す言葉が見つからなかった。ただ、己の情けなさと、竜三の心強さを噛み締める。

 

「…かたじけない、竜三」

 

「気にするな。お前は前を見ていればいい」

 

「……死ぬなよ」

 

「無論だ」

 

少ない言葉を交わし、仁は竜三の背中を見つめてから、脇を抜けて天守閣へと向かう道へと走った。その様子を敵が指を咥えて見ているはずもない。

 

「おっと!ここから先に通すわけには…」

 

仁を見て駆け出そうとした菅笠衆の一人は、言葉の途中で事切れた。鞘に収まる刀の柄に手を添えたまま崩れ落ちた菅笠には、矢が深々と突き刺さっている。

 

「ここから通さない?ここから逃げられない?何を勘違いしている?」

 

竜三の地獄の底から響くような声に、その場にいる誰もが戦慄した。いつ弓を構えたのか。理解することができなかった。矢を構え、放つ。それだけで天守閣につながる道の近くにいる菅笠衆の命がむしり取られる。

 

「いつ貴様たちがそんな物言いができる優位な立場になった?自分たちの選んだ道すら理解できん阿呆どもが」

 

生殺与奪の権を持つのは自分たちだけだと驕った。それが敗因。それが油断。そして隙だ。

 

狼狽える隙など与えない。

戸惑う余裕も与えない。

 

間合いが遠い菅笠衆の頭部に、言葉を発しながら次々と矢を叩き込んでゆく。竜三一人に大きく上回っていたはずの戦力は、たった数秒の間に半分近く削り取られたのだ。

 

「お前たちは虎の尾を踏んだぞ、たわけが。蒙古の口車に乗って浪人の本懐すら見失った賊どもめ。生きてここから出られると思うなよ」

 

半狂乱になった菅笠衆の一人が、刀を抜いて弓を構える竜三へと斬りかかる。その刹那の最中、竜三は弓を肩にかけ即座に抜刀。菅笠の浪人が刀を振り下ろす前に一閃を放ち、その首をはねた。

 

背後で噴水のような血飛沫を上げてから倒れた浪人の姿など一瞥もせずに、刀についた血を振り払って、竜三は菅笠衆を手にしたハーンは切っ先を構えたのか。

 

「逆に問おう、ハーン。俺に降るか?」

 

その一言が、ハーンの怒りに火をつけた。

 

「…殺せ!!」

 

菅笠衆が刀を構える竜三へと襲いかかる。ただ、ハーンはその様子を全く安心して見ることが出来なかった。

 

 

 

////

 

 

 

ここを我々のモンキーパークとする!!!開場!!!

 

どうも、仁を先に行かせて殿という貧乏くじを引いた竜三です。キィぃングボンビィィイーー!!対馬の国では誉など浜で死にましたですぞ!!

 

納刀したままゆっくりと近づいてくる菅笠衆の一人に「正気かい!?」と言いたくなるよね。そんなモーションバレバレの攻撃など俺には効かぬぅ!!赤ゲージ攻撃!!見切った!!

 

チェスト菅笠ォ゛ーーイッ!!!!

 

よっしゃああああ!!!!

 

馬鹿めが!!多人数戦などこの竜三は慣れておるのだ!!この俺を越えられることなどできぬゥー!!下からくぐり抜けてくるような軽快なステップを刻んで斬りかかってきやがる!!!!さては貴様の!!サルだな!?モンキーにはモンキーで対応じゃ!!

 

あ゛ーっあ゛っあ゛っ!!あーっほっほっ!!

 

はい俺の勝ち!!来世でなんで負けたか考えておいてください!!チンパンになるならもっとIQを下げてチンパン振るんだよ!!人の心の光はあったけぇですわ!!

 

クナイと矢をフル装備した俺には勝てると思うなど片腹痛いわ!!む!横から殺気!!أنت أيضا ستكون طائرا

 

おっと、一瞬人としてダメな思考に陥りかけていた。やっぱりニュータイプはダメだな、私も鳥になりたいしか言わん。虹色の光を出して蒙古の精神とか全部破壊できたらいいのに。

 

さっきまで綺麗だった金田の日本庭園を菅笠衆の返り血で染め上げるのと数刻。菅笠衆の全員を斬首しました。何人か、致命打だけど、ほぼ見切りからのジャスガ、そして返す刀で悪即斬を決めたからヨシとしよう。

 

まぁ俺も返り血浴びまくってえらいことになってるけどな!!

 

「悪魔のようだな?竜三」

 

後ろで菅笠衆の惨殺パーティーを見つめていたハーンがそんなことを呟いた。はっはっはっ!悪魔でいいよ!!お話なんてするつもりないけどね!!

 

大型の戦斧を持つハーンの懐へと飛び込んで一撃!!ちぃ!受けられたか。

 

「話す気もないか?その野蛮さ…日本の侍の誉とやらは地に落ちたものだな」

 

口が達者だけど、聞く耳持たずに斬りかかる。しかし、相手も前回の教訓を活かしてるのか全く付け入る隙を見せない。俺が斬り飛ばした手には指がない。それがハーンのキレを良くしているようにも思えた。

 

戦斧の横一閃を後ろに下がって避ける。ようやく一息つけた。ねぇ、これって勝てないイベントバトルなんですかね?割としんどいから逃げるんならさっさと逃げて欲しいんですけど。

 

「竜三、その蛮勇さを持ちながら何故忠義を尽くす?志村という男は貴様のような野蛮な男など、認めるはずがあるまい。ここで戦っても褒美など貰えることなどない。貴様は危険視され、牢へと入れられるのだ」

 

ハーンは勝ち誇ったような顔でそう言った。まぁそうだろうね?俺はもう安達家の家来でもなんでもないんだ。ただの浪人。誰の命でもなく、蒙古と野盗を斬り殺している狂人扱いされても文句は言えんさ。

 

ハーンのいう通り、志村様を救出して蒙古を一旦でも押し返せて、平和がきたら俺は相応の罰を受けることになるかもしれん。

 

けどな、ハーン。

 

「それが、お前の首を取ることに、なんの関係があるんだ?」

 

その言葉に、ハーンの顔から表情が消えた。一息で入った間合い。紫電の一閃がハーンの胴を捉える。くそが、手応えが薄い。あいつの装甲固ぇんだよなぁ!!

 

「教えてくれよ、ハーン。お前を殺すことを躊躇う理由を。お前の首を取ることを止めさせる理由を。俺に教えてくれよ」

 

べったりと血がついた段平を払って、俺はハーンの元へと歩み寄る。息も上がっている。体はダルい。けれど、相手も同じだ。腹部に一撃を入れた。この戦いが不死属性付きのバトルだろうが、肩腕一本くらい置いていってもらう。

 

「お前は総大将で、俺はお前に主君を討たれている。それが現実。それが事実。それが俺にとっての全てだ。ゆえに、お前に何を言われようが俺がお前を殺さない理由にはならぬ!!」

 

そう叫んで走り出そうとした瞬間、俺の足元に火矢が打ち込まれた。ちぃ!蒙古の増援か!豊玉方面から打たれた火矢の雨を刀で返す。火は草に燃え移り、ハーンと分断するように俺を隔てた。

 

「竜三、貴様では我々には勝てん」

 

「かもな?けど、お前だけは〝俺たち〟が確実に殺してやる」

 

反対側から現れた蒙古の軍勢。だが、城を取り戻すために来たわけじゃなさそうだ。負傷したハーンを支えて城内を後にしてゆく。追ってもどうせ強制的に見失うんだろ?霧とか木の葉とかが舞ってさ!!

 

とりあえず憂さ晴らしに遠くから矢を打ってくる蒙古へ長弓で破裂矢を叩き込みながら尻尾を巻いて逃げるハーンを見つめる。

 

天守閣では仁が志村様の救出に成功している頃だろう。

 

後一歩まで追い詰めた悔しさが残る中、俺にとってのゴーストオブツシマ、第一部はこうやって苦い幕を下ろしたのだった。

 

 

 

 

 

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