裏切りの菅笠なんて捨てるんじゃ!!   作:紅乃 晴@小説アカ

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お待たせしました!!

展開がまとまったので更新します!!


高野山砦で蒙古狩りじゃああああ!!

 

それは吉報であった。

 

高野山砦にて境井仁を捕らえたという報告は、破竹の勢いで豊玉を奪還していく対馬の侍たちの心を折るには充分な材料と言えただろう。

 

いく何重にも張り巡らせた〝冥人〟を捕らえるための罠。第一目標であった竜三を捕らえることは叶わなかったが、片割れである境井仁を捕らえられただけでも僥倖と言えるだろう。

 

ハーンは自身が選んだ精鋭を連れて足速に志村城から高野山砦へと向かう。竜三を捕らえて処刑するという文がここまで効果を発揮するとはな。

 

手早く仁を打首にして、次はそれをダシに竜三を釣り上げるか。

 

そんなことを考えながらハーン一行は高野山砦にたどり着く。しかし、そこは異様な光景であった。門を守る兵が事切れた上に壁に磔られていたのだ。頭部には矢が突き刺さっている。あたりには夥しい量の血が流れていた。

 

精鋭である兵たちが辺りを警戒しながら高野山砦の門を開く。

 

その先には血濡れの段平を構えた竜三が立っていた。

 

 

 

 

 

 

おっと鴨がネギを背負って鍋に飛び込んできたぞぉ?

 

高野山砦からお送りしております、竜三です。コトゥン・ハーンが間抜け面しているな?それもそうか!仁を捕らえたと連絡を受けて悠々と高野山砦にきてみれば砦の戦力ほぼ駆逐された上に人がいるところに俺の竜三がいるのだからな!!

 

そんなこと思ってたらハーンの護衛の頭に矢が突き刺さった。早い、早いよ巴さん!?ゆなとタカがハーンの姿を見て目をむいてるってのに、関係ねぇって言うくらいの勢いでハーンの連れてきた精鋭(笑)を滅殺していく。

 

仕方ないね。腕のいい弓取りの射程距離で呆けている相手が悪いわ。俺だったら矢を受け止めてすぐに打ち返しながらダッシュで距離を詰めるね。

 

そこそこの護衛引き連れた総大将が目の前にきてくれたのだ。それをぶち殺さないことに理由がありますか?ここで会ったが百年目と言う奴でぃ!!

 

 

「待て、竜三」

 

 

ハーンの連れた護衛の七割くらいの頭を打ち抜いたところで、ハーンが待ったをかけた。あっ、その言葉の後に巴がもう一人撃ち抜いたわ。ごめんね、言葉でもう止められないのよ。ギリギリと弓の弦をしならせると、ハーンは腰から何かを取り出し、天へと掲げる。

 

どこからどう見ても発炎筒です。増援でも呼ぶんですか?よっしゃあ来いや!!この場にモンキーパークを開場させてやろうじゃねぇか!!

 

 

「いま、志村がコソコソと隠れて準備をしている布陣の周囲を我が兵が囲んでいるぞ」

 

 

その言葉で、俺と巴の矢を放とうとした気迫は少しだけ飛散した。そこから先は言うまでもないなと、ハーンはニヤリと笑みを浮かべていた。うっわ腹立つその顔に矢をぶち込んでやろうか。

 

 

「この発炎筒を上げれば、一気に攻め入る手筈となって…」

 

 

その言葉が終わる前に、ハーンの隣にいた護衛の頭に矢が突き刺さって崩れ落ちた。射ったのは巴ではない!この俺だぁーっ!!

 

 

「竜三!?」

 

「志村様もその覚悟の上であの場に布陣されたのだ、仁」

 

 

驚いている仁の言葉に俺は即座に返した。

 

ハーンがあの陣地を知ってるのは百も承知。にも関わらず志村様はあの場から退こうとしないし、あの場から陣を移すつもりもない。もちろん、外壁や周辺には兵を配置しているし、蒙古からの襲撃も想定済みのはずだろう。

 

なら、ここでハーンの言葉に屈する理由などない。

 

人質を取ったつもりか?残念だったな、その程度では人質にもならん。そうしたかったら縛った志村様を目の前で見せつけてでもしてみやがれ。

 

目を向けるハーンに、俺は再装填した鏃を向けてギリギリと弦をしならせる。

 

 

「武士ならばその覚悟もあろう!」

 

「やめろ、竜三!叔父上を…」

 

 

そんな俺に縋り付くように懇願する仁。捕らえられていた衰弱もあるのか、その目からは覇気は感じなかった。

 

対馬の冥人と恐れられる鬼気迫る目をしていない。俺が知る仁だ。そんな昔馴染みの友が今まで見せたことがないような顔で俺を止めてくる。

 

仁と俺は、この時点で明確な違いがあったように思えた。

 

本来なら志村城攻略の前に多くのものを失った仁は、その悲しみを原動力に〝毒〟に手を出し、ハーンや蒙古に容赦のない怒りを向けていたはずだ。

 

しかし、仁は友の裏切りにあってもいないし、巴の行った非道も見ていないし、蒙古がもたらした惨状を目の当たりにする機会も減っているし、何より目の前でハーンにタカを殺されていない。

 

彼の価値観や武士道をぶち壊す機会を俺が〝奪って〟しまったからだ。蒙古に対する怒りも、憎しみも。対馬の民が苦しんでいる様も、悲しみも、その全てを俺が仁から多く奪ってしまった。

 

そして、その怒りの片鱗を俺が背負ってしまったのか。ハーンに向ける矢には明確な怒りと憎しみが込められている。

 

この矢を放つことに俺は一切の躊躇はない。

 

この男は間違いなく、安達の当主をその手にかけたのだ。殺す理由はそれで充分に事足りる。たとえ志村様が蒙古に殺されようとも、それはそれ、これはこれと割り切れてしまうほどに俺はハーンに殺意を抱いていた。

 

たとえ、何もかもを失ってもこの男だけは地の果てまで追い詰めて残酷に殺してやる、と。

 

そうか、変わったのは俺の方だったか。

 

 

「…竜三!!」

 

 

その言葉を最後に、俺はギリギリとしならせていた弓の弦から力を抜いた。鏃を下げて、ハーンを睨みつける。殺意は消えていない。だが、ここで仁からの信用を落とすにはいかない。〝後の出来事のために〟も。

 

 

「それでいい」

 

 

満足そうに言うハーン。すると、横で怯えていたはずの兵たちが態度を一変させて俺たちを囲むように展開する。真っ先に狙われたのは矢を構えていた巴と俺だ。

 

抜き身の剣をぶら下げたまま、蒙古の言葉を喋って奴らが近づいてくる。ハーンへの攻撃はしない。だが、降伏するとは言っていない。

 

切りつけられて死ねばそこまでだ。仁の声を聞いて即殲滅は諦めたが、抵抗しないとは言っていないからね!!

 

相手が青ゲージで斬りかかってきたら即座に切って返してぶった斬る体制を取っていたら、砦の外がやけに騒ぎ始めていた。

 

 

「仁殿!」

 

 

やってきたのは馬に跨った安達家率いる武士たちだった。安達家次男の繁成指揮のもと仁救出にやってくれたのだ。砦に攻め入る前に一報を入れていたのが功を成したか!

 

突如として現れた軍勢に狼狽えるところを見ると、さっきのハーンの言葉はブラフだったと言うわけだ。

 

 

「ええい、邪魔が入ったか!」

 

 

ならば奴を生かす理由は消えた。俺は下ろしてた鏃を上げてハーンへ狙いを定める。

 

 

「ハーン!!今日こそ仕留める!!」

 

 

全集中!!ハーンの顔面に狙いを定めて射った一撃ではあったが、ハーンの脅威的な反応でその一撃は即殺の位置から逸れる。

 

腕の関節部。鎧で覆われていない箇所に突き刺さると、ハーンは苦悶の表情を浮かべて手に持っていた発炎筒を地に落とした。

 

その拍子に発炎筒に引火。放たれた行先を見て、俺は思わず言った。

 

 

「おっと」

 

 

発炎筒が放たれた先は、高野山砦の弾薬が積まれた荷車だった。火薬満載な荷車に発炎筒からの火が引火。それに気づいたハーンも俺も、すぐに砦に背を向けた。

 

 

「全員、砦から出ろー!!」

 

 

疲労困憊の仁を担ぎ上げて、全員が砦の門から飛び出すと引火した火薬が大爆発を起こした。衝撃波で吹き飛ばされる武士や蒙古兵。パラパラと雨のように降り注ぐ破片やチリから身を守って、俺たちはゆっくりと身を起こす。

 

 

「全員、無事か?」

 

「ええ、なんとか…」

 

「全く、冥人の口車に乗せられて酷い目にあったよ」

 

「身体中が痛い、疲れた、寝たい」

 

 

タカやゆな、巴がボロボロの様子で立ち上がった。俺もすぐに立ち上がって辺りを見る。どうやら繁成や安達の兵士たちも無事のようだが、爆炎に紛れてハーンたちは逃げおおせたらしい。

 

くそ、逃したか。

 

次こそ確実に仕留めてやる。

 

そんな決意を新たにしていると、ふらふらと立ち上がった仁が俺を睨みつけていることに気がついた。

 

 

「竜三。さっきの言葉、本気であったのか?」

 

 

さっきの言葉。おそらく志村様に対することだろうか。そんなこと、今の俺になどうでもいいことだ。

 

 

「さてな。だが、あの様子から見てハーンの言葉はハッタリだったようだ」

 

「そう言う意味ではない!どういうことをしたのか、わかっているのか。竜三!」

 

 

もし、あの言葉がハッタリではなかったら。俺がハーンを追い詰めていたらやつは発炎筒を放って仲間に知らせていただろう。

 

そして攻め入る蒙古の軍により、志村城奪還の計画が破綻していた可能性があった。

 

対馬弍の国を奪還するために志村城を蒙古の手から取り戻すことが最重要とされている以上、志村様が座する拠点を攻められと言うことは対馬国の敗北に直結すると仁は訴えているのだろう。

 

だが、それは志村様を頭と考えていることが前提。仕える者が居ない俺からすれば、志村城を奪還しようがどうしようが関係はない。

 

どちらにしろ、結局は対馬国に散らばった蒙古はいなくならないし、俺の目的は豊玉のさらに北側にいる「菊池 花」にケジメをつけさせることだけだ。

 

志村城の奪還など、〝ついで〟でしかない。

 

 

「対馬に蔓延る悪鬼どもを駆逐するために何が一番必要か。よく考えるんだな、仁」

 

 

そう言って高野山砦を巴と共に後にする俺を見送る仁の顔は見ていない。

 

ただ、それ以上仁が俺に責める言葉を投げなかったのが答えだった。

 

志村城奪還。

 

俺にできることは蒙古をいち早く制圧し、フラグをへし折る事。そして花にケジメをつけさせて、ハーンを殺し、蒙古を全てぶち殺す。

 

ただそれだけだ。

 

 

 

 

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