裏切りの菅笠なんて捨てるんじゃ!!   作:紅乃 晴@小説アカ

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志村城で蒙古狩じゃああああああ!!!前編

 

 

「誉は浜で死にました……!」

 

 

えー、どうもご無沙汰しています。高野山砦の救出作戦後、仁とギスギスした関係が継続している竜三です。そして今はなし崩し的に巻き込まれた志村城奪還作戦に身を置いております。

 

仁のセリフ通り、今は志村城天守閣門前で蒙古の卑劣な火薬炸裂作戦によって足止めを余儀なくされている状況で、門まで掛かる橋も爆薬によって崩落している有様。鎌倉幕府から派遣された武士や技師によって急ピッチの復旧作業が行われているけど、橋が通れるようになるのは多分夜明けくらい。

 

目の前で志村様にぶたれた仁は、例の如く武士らしく正面突破にこだわる志村様の作戦に反発して、有名な「誉浜で死す!!」のセリフを吐いて、志村様の主屋を後にして行きました。

 

まぁー気持ちはわかるよ。蒙古ってば卑劣な手を使うの大好きだし、相手からすればおそらく天守閣までに配置されていた敵兵は捨て駒だったっぽいしね!!

 

天守閣の門裏はおそらく火薬満載の馬を待機させているに違いない。その馬はどうしたかって?たぶん志村城に繋がれてた馬を拝借したんじゃね?さすが蒙古、やることが汚い。

 

天守閣の道のりで俺と巴が先陣切って蒙古ぶち殺しまくって、血の海の中で「ゲェーハッハッハッ!!パーフェクトワールド!!」って荒ぶってたら幕府から派兵された武士達にドン引きされました。お前らも家の軒先に鍛錬がてら射った男女の生首吊るしてんだろうが!この程度でドン引きするなんて情けない!!

 

だが、仁が毒に手を出してなかったことと、俺が先陣切って猿ムーブかましたお陰で、仁の所業に対するヘイトも随分と緩和されたみたいで竜三さん的には満足かな。その分、俺と巴が危険分子として目をつけられてるがな!!本場の鎌倉武士と斬り合えるなら良い経験になりそうだから、オルァ!!こいやぁ!!って覇気を出したら怯まれました。失望しました、前川のファン辞めます。

 

まぁそんな冗談はさておき、出て行った仁を追わずに俺が志村様の主屋に留まっている要件をすまなさなければならぬ。

 

 

「志村様、無礼を承知で言います」

 

 

我が子のように育ててきた仁からのはじめての反抗的な態度に焦燥した背中が印象的な志村様は、何も言わずに俺の言葉を聞いてくれていた。うむ、無礼者でぶった斬られても文句は言えないんでハキハキと喋っていくゾォ!

 

 

「仁の奴は昔からああでした。正しいと信じ歩み出した道を迷いなく歩く。そんな男です」

 

「……ワシが捕えられている間、あやつの身に何があったのかは承知しているつもりだ」

 

 

そう言って志村様は苦しげな顔つきでこちらに振り返る。

 

うむぅ、まぁ志村様ってばハーンのクソ野郎と金田の城で一緒だったからなぁ。様をつけろよデコ助野郎とハーンに言われたら笑顔で段平をその顔面に突き立てるわこんちくしょう。モンキー(格闘ブンブン丸)の力は素晴らしいぞぉ、ルークぅ!!若干思想が暗黒面に落ちかけるが気を取り直す。

 

 

「だがな竜三よ。武士である以上、その道を踏み外してはならん。たとえそれが正しき道だとしても、外道に通ずる道ならば踏みとどまらねらばらぬ。……戦場とはそういうものなのだ」

 

 

理を持って外を制する、とも言うからね!いくら殲滅力高くても人道に反するものは罰せられるのが世の常ですよ。俺が言うのもちゃんちゃらおかしいけどさ。

 

 

「対馬の旗本を背負う以上、徒に命を散らすと知りながらも突き進むこともまた、頭目の役目というわけでございますね」

 

「皆まで言うでない、馬鹿者め」

 

 

志村様は俺の方を見て小さく笑った。おぉ、割と志村様から認められてんのかな?俺。伊達に仁と一緒に対馬を駆けずり回って蒙古ぶった斬り続けた訳じゃなかったわけか。それとも、安達家の当主達からの進言でもあったのかね。まぁ、今となってはこだわる理由もないけど。

 

 

「志村様。仁の奴はまだ甘いところはありますが、必ずや良き武士となりましょう。親友の俺が保証いたします」

 

「そんな戯言、そなたに言われるまでもなく分かっておる」

 

 

志村様は、対馬の頭目。幕府にも謁見が叶い、彼の一声で今のように鎌倉から派兵が来る。それほどの人脈と権力を有する人だ。そして、志村様が目にかけてきた仁は、その頭目の後継者として最も近い位置にいる。

 

彼の背後にある書状の中には、おそらく仁を境井家ではなく、志村家の「志村 仁」として正当な頭目の後継者と認める幕府の書状があるはずだ。仁にはその器がある。そうなるべき男だと俺は思う。それは、この世界をゲームとして駆け抜けていた頃から思っていたことだ。

 

アイツ以外にこの対馬を導ける男はいない、と。

 

俺は志村様の前で、膝を下り、地に頭を伏せた。いわゆる土下座だ。こんな姿は安達家の前当主相手にしかした事はない。この時代のこういった行為は、現代のソレとは計り知れないほど意味合いが異なる。まさに命をかけた振る舞いとも受け取れる行為なのだ。

 

 

「志村様、仁を……俺の唯一の友のことを頼みます」

 

 

地に頭を伏せたまま、俺は志村様に懇願した。そのとき、志村様がどんな表情をしていたのかは分からない。だが、俺には関係はなかった。

 

 

「……竜三、其方は……」

 

「私はすでに安達家から抜けた身です。ですから、私の為すことは安達家になんら関係はありませぬ。それだけは何卒、御容赦くださりますよう、重ねてお願い奉ります」

 

 

何かを察したような声を上げる志村様に畳み掛けて懇願する言葉を吐き出す。今の俺は安達家の家来でもなく、単に仁の後ろに引っ付いて来ているだけの浪人にすぎない。権力も後ろ盾も持たない一介の浪人風情には過ぎた行いかもしれないが、それでも俺は志村様に懇願するしかなかった。

 

境井 仁という男が、俺にとっては命を賭けるに相応しい男だから。

 

 

「共に戦って来た巴……政子様や、安達家の当主は蒙古により乱れた島を奪還すべく尽力しておりました。何卒、蒙古打倒の後に幕府へのお取り次ぎを」

 

 

俺がこれからする所業には誰も関係はないとも付け加える。ここから先は俺一人が背負うべき道だ。仁が背負う二度と治らない傷は、俺が奪い取る。頭を下げ続ける俺に、志村様は息を呑むように沈黙を置いて、静かに答えてくれた。

 

 

「……ああ、武士として其方に約束しよう」

 

「かたじけありませぬ」

 

 

 

 

 

 

 

 

叔父との意見の対立に、何か案はないかと策を巡らせていた仁の元へ、頭目の主屋から出てきた竜三が声をかけた。

 

 

「仁!」

 

「竜三…」

 

 

手招きする親友の後を追って軒先の隅に行くと、竜三は小さな声でいい案があるんだと言った。

 

 

「日の出とともに再び本陣へと攻め入る。その前に策を講じよう。俺にいい考えがあるんだ」

 

「本当か?」

 

「ああ、任せろ」

 

 

作戦としては、強力な睡眠薬を蒙古達の酒に混ぜて、敵が寝入った隙に天守閣を奪還すると言うものだった。睡眠薬は知り合いの薬師から調達すると竜三は言い、仁もそれならば天守閣奪還は成ると考えた。

 

 

「では、日の出前に橋の下のところで」

 

「わかった。仁、顔が強張ってるぞ。少しは寝ろ」

 

「お前もな、竜三」

 

 

疲れが見える仁の肩を叩いて軒先から離れる。仁が休むために兵舎小屋に入ったのを見計らって、竜三は夜営地の隅で物資の整理や、武器の整備をする堅二とタカに話しかけた。

 

 

「堅二、仁に酒を振舞ってくれ。随分と疲れている様子だ。タカはゆなを連れて仁の話し相手になってくれ。決起の時までには気も紛れるだろう」

 

 

そう言うと、二人は快く頷いてくれる。

 

 

「へい、あっしにお任せくださぇ」

 

「わかりました、竜三様」

 

「頼むぞ」

 

 

堅二は酒を持って、タカはゆなを連れて仁が休む小屋へと向かって行った。竜三はそれを見送ると、傍に置いてあった鉤縄を手に取る。夕暮れが終わり、夜のとばりが降りようとしている。

 

志村城の天守閣門の下。崩落した橋を縫うように伸びる畦道に降りた竜三だったが、そこで待っていたのは巴だった。

 

 

「巴……」

 

「私を置いて、勝手に……どこにいくもりなんだい?」

 

 

一目見るだけで、巴も充分な装備を整えていたし、竜三も段平2本を腰から下げて、短弓と長弓をそれぞれ背中に装備している。暗器であるクナイや手裏剣も装備済みだった。

 

 

「ここから先は修羅の道だぞ、巴」

 

「元より花の奴を殺すんだ。進む道は修羅道。それに竜三とならどこへだって……だろう?」

 

 

簡単にそう言った巴に、竜三は何も言わずに横を通り過ぎる。了承だと思って巴も後に続こうとしたが、途端、振り返った竜三が巴の鳩尾に拳をめり込ませた。

 

 

「りゅ……竜三…どう……し……て」

 

「悪いな、巴。俺は……裏切りの竜三なんでな」

 

 

言い終わる頃には、巴は意識を失っていた。ふと横を見ると、弓矢を構えた石川先生が立っていた。だらりと意識を失った巴を抱き上げて、弓矢を構え続ける石川先生へ歩み寄る。

 

 

「貴様が巴を殴ったとき、この矢を頭に叩き込もうか真剣に迷ったぞ」

 

「……先生。巴を頼みます」

 

「言われるまでもないわ」

 

 

憎まれ口を叩きながらも、横に抱えていた巴を石川先生へ渡す。餞別だ、と交換するように渡された矢筒を受け取り、竜三は石川先生へ頭を下げて、畦道を下り、鉤縄で堀の向こう側へと渡って行った。

 

 

「ふん、最後まで気取った男だった。気に入らんわ……」

 

 

そう吐き捨てて巴を抱えた石川先生が兵舎小屋へと引き上げていったのだった。

 

 

 

 

 

夜が明ける頃合い。仁は竜三と約束していた場所にやってきていたが、肝心の竜三が現れる気配がまったくしなかった。

 

 

「竜三は?」

 

 

そう問いかけるが、ゆなもタカも竜三の行方を知らないと言う様子だった。もうしばらく待ってみるかと身を整えた時。

 

天守閣内部で大きな爆発音が響き渡った。

 

咄嗟に振り返ると、天守閣を囲う塀を越える火柱が上がっており、その中からは蒙古兵達の混乱したような声が響き渡っていた。

 

 

「正門の奥からだ!」

 

「火の手?火薬の爆発か…!?」

 

 

事態を飲み込めない仁は耳にしてしまう。

 

混乱する蒙古兵たちの声に混ざって、刀が振られる音と、蒙古の断末魔の悲鳴が。

 

 

「城門の中からだ!!」

 

「竜三…!!」

 

 

志村の指揮の元、すぐに出陣の準備が始まったが、事態はすでに動き始めていた。

 

 

 

 

 

 

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